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プレスリリース

2016年 11月 30日
国立研究開発法人海洋研究開発機構
日本地球掘削科学コンソーシアム
国立大学法人新潟大学
国立大学法人静岡大学
国立大学法人金沢大学

国際陸上科学掘削計画(ICDP)オマーン掘削プロジェクトの開始
~地殻-マントル境界の物質と物性の理解に向けて~

国際陸上科学掘削計画(ICDP: International Continental Scientific Drilling Program)(※1)の一環として、オマーン掘削プロジェクト“Scientific Drilling in the Samail Ophiolite, Sultanate of Oman”が12月1日から開始されます。

オマーンには、オフィオライトと呼ばれる、白亜紀の海洋地殻とマントルから構成される海洋プレートがアラビアプレートの大陸縁辺に乗り上げて陸上に露出している地層があります。オマーン掘削プロジェクトは、このオマーンオフィオライトを複数の地点で掘削し、地殻から上部マントルまで連続的に情報を取得しようとする科学掘削計画です。

地震探査(※2)によって海洋プレートを調べると、海底下5~6kmで急に地震波速度が速くなることが知られています。この速度が変わる境界はモホロビチッチ不連続面と呼ばれ、地殻とマントルの境界であると考えられてきました。しかし、その境界を実際に見ることは難しいため、モホロビチッチ不連続面が本当に地殻とマントルの境界であるのかはわかっていません。また、オマーンオフィオライトは、かつて地殻とマントルだった岩石を陸上で見られる貴重な場所ですが、表面に露出している地層は風化しており、そこから得られる情報量には限界があります。

そこで、本プロジェクトでは、オマーンオフィオライト南部地域の6サイトで計15本の掘削を行い、風化を受けていない新鮮な岩石コア試料を回収するとともに、孔内検層(※3)、地下水の採取およびモニタリングなどを実施します。また、掘削したコア試料の記載および解析は、ICDPと国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)(※4)の連携の一環として、2017年夏に地球深部探査船「ちきゅう」上の最新のラボ設備を活用して実施される予定です。これらから得たデータをもとに、地殻-マントル境界とモホロビチッチ不連続面との関係、海洋プレートの形成と熱水変質の過程、風化作用への生物の関与などの広範な科学的課題に取り組む計画です。

日本からは、海洋研究開発機構、新潟大学、静岡大学、金沢大学などから、学生・ポスドク10名を含む計29名が本プロジェクトに参加します。また日本のほか、米国、欧州からの研究者も含め、計50名以上が参加します。

なお、本プロジェクトは、日本学術振興会の科学研究費助成事業、基盤研究A「オマーンオフィオライト陸上掘削による地殻-マントル境界の物性とモホ面の実態解明(※5)」、および基盤研究S「最上部マントルの構造とモホ面の形成過程の研究~海と陸からのアプローチ~(※6)」の一環としても行われます。

※1 国際陸上科学掘削計画(ICDP: International Continental Scientific Drilling Program)

ドイツ、米国、中国が主導国となり、1996年(平成8年)2月から始動した多国間科学研究協力プロジェクト。日本は1998年より加盟。「気候と生態系」「持続可能な地下資源」「自然災害」の3つの科学テーマを掲げ、地球変動の歴史を知り地下の活動的プロセスをとらえるために、各種陸上科学掘削計画を推進している。日本では、海洋研究開発機構が代表機関を、日本地球掘削科学コンソーシアム(※7)の陸上掘削部会が代表窓口を担当している。

※2 地震探査

人工地震を発生させて地下へ地震波を送り、その地震波の伝わり方を観測することで地下の構造を調査する手法。

※3 孔内検層

掘削孔内に沿って様々な物理量を連続的に測定し、孔壁の深度に対応した物理・化学的性質の変化を知る手法。

※4 国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)

2013年(平成25年)10月から開始された多国間科学研究協力プロジェクト。日本(地球深部探査船「ちきゅう」)、アメリカ(ジョイデス・レゾリューション号)、ヨーロッパ(特定任務掘削船)がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、海底下生命圏等の解明を目的とした研究を推進している。

※5 基盤研究A「オマーンオフィオライト陸上掘削による地殻-マントル境界の物性とモホ面の実態解明」

2016年(平成28年)度より4年間の予定で実施される研究プロジェクト(代表: 高澤栄一、新潟大学自然科学系・教授)。マントル−地殻境界相当層を掘削し、コア試料の岩石学・地球化学・構造地質学的解析から、地球科学の未解決問題であるモホ不連続面の実態と、地殻−マントル境界の構造と物理的特性を明らかにすることを目的とする。また、掘削試料を地球深部探査船「ちきゅう」で記載・解析することにより、学生・若手研究者の養成および日本の海洋掘削技術の向上・発展に貢献する。

※6 基盤研究S「最上部マントルの構造とモホ面の形成過程の研究~海と陸からのアプローチ~」

2016年(平成28年)度より5年間の予定で実施される研究プロジェクト(代表: 道林克禎、静岡大学理学部・教授)。小笠原・マリアナ海溝とオマーンオフィオライトのかんらん岩について、岩石構造組織の発達過程、弾性・電気伝導度・透水率等の物性測定、岩石−水反応実験などの多角的アプローチから、マントルとモホ面の形成過程を解明することを目的とする。この海と陸のかんらん岩の構造岩石学的特徴を比較検討して、最上部マントルの発達過程とそれを支配する要因を考察する。

※7 日本地球掘削科学コンソーシアム(J-DESC: Japan Drilling Earth Science Consortium)

地球掘削科学の推進や各組織・研究者の連携強化を目的として、国内の大学や研究機関が中心となって2003年に設立されたコンソーシアム。IODPをサポートするIODP部会と、ICDPをはじめとする陸上掘削科学をサポートする陸上掘削部会から構成されている。主な活動は、地球掘削科学に関する科学計画・研究基盤の検討、関係機関への提言、地球掘削科学に関する科学研究などの有機的な連携、研究人材育成、国際プロジェクトへの支援及び協力、情報発信・普及啓発の実施など。

別紙

1.日程(現地時間)

2016年12月1日
掘削開始
2018年4月30日
掘削完了(予定)

なお、掘削作業の進捗状況などによって変更される場合があります。

2.日本から参加する研究者 (五十音順)

氏名 所属 / 役職
秋澤 紀克 京都大学 / 特定研究員
阿部 なつ江 海洋研究開発機構 / 主任技術研究員
Americus Perz 金沢大学 / 大学院生
荒井 章司 金沢大学 / 特任教授
石井 慶佑 新潟大学 / 学部生
石丸 聡子 熊本大学 / 助教
海野 進 金沢大学 / 教授
柿畑 優季 静岡大学 / 大学院生
日下 葵 北海道大学 / 大学院生
モー キョー 海洋研究開発機構 /研究開発センター長代理
草野 有紀 産業技術総合研究所 / 研究員
近藤 健太郎 秋田大学 / 学部生
斎藤 実篤 海洋研究開発機構 / グループリーダー
Sayantani Chatterjee 北海道大学 / 大学院生
鈴木 知也 北海道大学 / 学部生
佐藤 智紀 海洋研究開発機構 / 研究技術専任スタッフ
仙田 量子 海洋研究開発機構 / 技術研究員
高澤 栄一 新潟大学 / 教授
田村 明弘 金沢大学 / 博士研究員
田村 芳彦 海洋研究開発機構 / グループリーダー
ピトン・マリ 北海道大学 / 特任助教
星出 隆志 秋田大学 / 助教
丸山 桃子 北海道大学 / 学部生
道林 克禎 静岡大学 / 教授
宮崎 隆 海洋研究開発機構 / 主任技術研究員
宮下 純夫 新潟大学 / 名誉教授
森下 知晃 金沢大学 / 教授
山田 泰広 海洋研究開発機構 / 研究開発センター長
吉田 有希 新潟大学 / 大学院生

3. オマーン掘削の概要と科学目的

オマーンオフィオライトは、アラビア半島東端に乗り上げた白亜紀の海洋プレート(地殻+最上部マントル)の断片で、オマーン国とアラブ首長国連邦にわたって分布し、世界最大の露出規模を有します(下図)。オマーン掘削プロジェクトは、オフィオライトを複数の地点で掘削し、地殻から上部マントルまで連続的に情報を取得する包括的な掘削プログラムです。掘削孔から採取した岩石コアの記載と分析、地球物理学的孔内検層、地下水の採取と計測及び微生物試料の採取などを行います。これらの試料およびデータを利用し、海洋プレートの形成過程、熱水変質作用、生物的および非生物的風化作用などの広範な科学的課題に取り組みます。

オマーン掘削プロジェクトの究極的な目標は、海洋地殻および最上部マントルを形成・改変するあらゆる諸過程を解明することです。特に、中央海嶺における海洋プレートの形成過程、海洋底の熱水変質、海洋地殻と海水間の物質移動及び沈み込み帯における海洋プレートのリサイクルなど長年にわたり未解決な問題の解決が期待されます。さらに、地表水や大気から二酸化炭素を吸収する天然の風化過程及びそれに付随する地下生物圏に関する研究も実施します。

オマーン掘削プロジェクトでは、最先端の孔内検層ツールを導入し、掘削孔から様々な物性データ取得を行います。地表踏査(*1)で得られた空間的な情報と掘削コアから得られる連続的情報を有機的に組み合わせて、マントル流動とモホロビチッチ不連続面(*2)の物理的な性質を明らかにし、地殻−マントル境界の総合的な理解に到達することも目標としています。これにより地球科学の未解決問題の一つであるモホロビチッチ不連続面の物質科学的実態の解明に取り組みます。

オマーン掘削プロジェクトは、掘削技術の向上および若手研究者養成に大きく貢献することも目標としています。オマーンで掘削したコアを日本に運び、停泊中の地球深部探査船「ちきゅう」の最新設備を活用して、世界の研究者の指導のもとに学生が集中的に記載・解析するという独創的な方法を計画しています。その過程を通して岩石記載と孔内検層に秀でた若手研究者を育成します。


図:オマーンオフィオライトの分布図。丸印が掘削予定地点。地殻、マントル、その境界であるモホ面を掘削し、連続的な情報取得を狙う。

*1 地表踏査

研究者・技術者が自ら地表を歩いて、地形や地質などの地表で観察できる地学現象を調べること。地学調査の最も基本的な調査手法のひとつ。

*2 モホロビチッチ不連続面

地下深部において地震波の速度が急激に変化する面のことで、大陸で地下約25~75km、海洋で約5~6kmの深さのところにある。モホ面と略される。

(国際陸上科学掘削計画・科学掘削について)
・国立研究開発法人海洋研究開発機構 海洋掘削科学研究開発センター
研究開発センター長 山田 泰広
・日本地球掘削科学コンソーシアム 陸上掘削部会 部会長 小村 健太朗
(防災科学技術研究所 地震津波防災研究部門 主任研究員)
・国立大学法人新潟大学自然科学系(理学部) 教授 高澤 栄一
・国立大学法人静岡大学理学部 教授 道林 克禎
・国立大学法人金沢大学理工研究域自然システム学系 教授 森下 知晃
(報道担当)
・国立研究開発法人海洋研究開発機構 広報部 報道課長 野口 剛
・国立大学法人新潟大学 広報室 広報室長 小奈 裕
・国立大学法人静岡大学 総務部 広報室副室長 秋山 和廣
・国立大学法人金沢大学 総務部 広報室広報係長 寺口 浩史
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