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プレスリリース

2017年 3月 1日
国立研究開発法人海洋研究開発機構

三陸沖での東北海洋生態系調査研究船「新青丸」による
海底観察等の結果について(速報)

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦、以下「JAMSTEC」という)は、東北マリンサイエンス拠点形成事業「海洋生態系の調査研究」(注1)の一環として、平成29年2月11日~2月27日の間、三陸沖において東北海洋生態系調査研究船「新青丸」及び無人探査機「ハイパードルフィン」による海底環境や海底地形、生物分布に関する海底観察等の調査を実施しました。その中で、平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の余震とされている、平成28年11月22日に福島県沖で発生した津波を伴う地震発生域近傍での調査も行いましたので、その結果についてお知らせします。

1.実施内容

本調査では、東北地方太平洋沖地震及びその余震による海底環境や海底地形、生物分布への影響を明らかにするため、「ハイパードルフィン」を用いた潜航調査、マルチビーム音響測深機(注2)による精密地形調査及びサブボトムプロファイラー(注3)による地質構造調査を行いました。

2.結果概要及び今後の展望

昨年11月22日に福島県沖で発生した地震発生域近傍(図1)において、「ハイパードルフィン」による2回の潜航調査(図2)を行った結果、北緯37°12'付近において、明瞭な変位地形は観察できなかったものの、北東方向へ観察をしていったところ、北緯37°13'付近から幅1-2m程度の割れ目が検出され、その一部ではヨコエビが大量に集まっている様子が観察されました(図3)。また、北緯37°18'付近での潜航では、明瞭な高さ2m程度の地形段差(注4)を視認し(図4)、そこでは白い変色域(図5)が観察されました。観察された地形段差は、北東-南西走向に延びていることも確認されました。潜航調査に先立ち、潜航域を含む高精度のマルチビーム音響測深機により地形調査を行い、地形段差の北東-南西走向の連続性が確認されました。また、サブボトムプロファイラーによる海底下の地層構造のデータも取得し、堆積状況や堆積物を切る断層の情報も得ることができました(図6)。これらの地形段差や割れ目が、11月22日に福島県沖で発生した地震によって生じたものとは現段階では断言できませんが、段差や割れ目面の新鮮さから比較的最近生じたものであることを示唆しており、福島県沖の地震で生じた可能性は高いと考えております。

正確な断層の規模や方位は、津波の規模などを推定するモデルやシミュレーションに活かされるため、今回得られた地形段差や割れ目は、断層の規模や方位を評価する上で貴重なデータであり、今後データや画像の解析について進めていきます。

注1 東北マリンサイエンス拠点形成事業

三陸沖の巨大地震や津波による海洋生態系への影響を研究し、被災地漁業の復興へ貢献することを目指した東北大学、東京大学等と協力したプロジェクト。文部科学省の海洋生態系研究開発拠点機能形成事業費補助金にて実施。

注2 マルチビーム音響測深機

船底の左右から複数の音波を発信させて音波の反射波を多チャンネル受波器で受信し、往復時間から船底と海底の間の距離を測り、そのデータから海底の地形図を作る。船底の左右から複数の音響ビームを発信させて、水深を面的に測量し海底の地形図を作成する。

注3サブボトムプロファイラー

サブボトムプロファイラーは、海底下からの反射信号を処理することによって、海底下数十mまでの地層構造をイメージできる。

注4 地形段差

福島県沖で発生した地震発生域(図1)は水深が浅いため、マルチビーム音響測深機による精密海底地形調査はあまり行われておらず、地震後の「新青丸」などによる緊急調査で2m程度の北東−南西走向の直線的な地形段差がいくつか検出されている(平成28年11月22日既報平成28年12月8日JAMSTECトピックス参照)。

図1

図1. 潜航調査の位置図。福島県の沿岸からおよそ30 km離れた場所で2潜航実施した(図上の赤三角で示す)。気象庁による震源位置(図上の黄色の星印で示す)は潜航調査地点から東北東に20km(#1999)、北東に約30 km(#2000)離れている。海底地形図は最近のマルチビーム音響測深データ(海上保安庁海洋情報部・JAMSTEC、東北沖の海底地形データの取りまとめ、地震学会ニュースレター、23, 2, 35-36, 2011)に基づく。青線の範囲は図2に対応する。

図2

図2. 各潜航の航跡図(赤線は航跡図、赤丸は始点、赤三角は終点を示す)と福島県沖地震後の調査データに基づいた詳細海底地形図。黄色の星印は気象庁による震源位置を示す。地形調査は「新青丸」KS16-19航海(乙坂重嘉・日本原子力研究開発機構)、「よこすか」YK16-16航海(藤木徹一・JAMSTEC、藤浩明・京都大学)、YK16-17航海(中村恭之・JAMSTEC)、海上保安庁海洋情報部航海、そして本航海によって行われた。×印は防災科学技術研究所による11月22日の余震分布を示している、深度により色分けされている(中央のスケールバー(km)参照)。

図3

図3. 幅1-2m程度の割れ目の底部に大きさ7㎜程度のヨコエビが大量に集まっている。水深138m。(潜航#2000)

図4

図4. 北緯37゜18’付近の割れ目。段差の壁面は浸食を受けてないことから、最近形成された段差であることを示唆している。水深142m。(潜航#1999)

図5

図5. 割れ目の底でみられた白い変色域。海底下からの化学物質(メタン・硫化物)の湧き出しに伴いバクテリアがマット状になった可能性が高い。水深142m。(潜航#1999)

図6

図6. サブボトムプロファイラーで北緯37°18'に沿った測線で取得された地下の堆積構造。矢印は潜航調査で地形段差が認められた地点を示す。縦方向に10倍拡大して表示している。


三陸沖での東北海洋生態系調査研究船「新青丸」による海底観察等の結果について(速報)
国立研究開発法人海洋研究開発機構
(本研究航海について)
東日本海洋生態系変動解析プロジェクトチーム 生態系モニタリングユニット
主任技術研究員 笠谷 貴史
技術副主幹 土田 真二
(報道担当)
広報部 報道課長 野口 剛
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