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プレスリリース

2017年 4月 3日
国立研究開発法人海洋研究開発機構

海底ごみの映像や画像を集めた「深海デブリデータベース」を公開
~深海に沈むごみの情報を公開し、海洋環境に関する課題解決に貢献~

1.概要

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦、以下「JAMSTEC」)国際海洋環境情報センター(以下「GODAC」)は、JAMSTECの潜水調査船や無人探査機等による潜航調査で撮影された映像や画像に映っている海底ごみの情報を抽出し、「深海デブリデータベース(図1)」として公開を開始しました。

現在、GODACから配信している深海映像・画像のデータベースである「深海映像・画像アーカイブス(図2)」で一括りに取り扱ってきた“海底ごみ”が映っている深海映像・画像から、深海に沈むごみの種類を細かく分類するとともに、インターネットを通じて広く情報発信するためのデータ公開サイトを構築し、今般、公開に至りました。

「深海デブリデータベース」では、映像や画像から同定した海底ごみの種類による分類、海底ごみが撮影された潜航調査場所、深海に沈んだごみの映像や画像を見ることができます。深海生物と同様、深海に沈んだごみの様子は日常生活で見ることがないため、海底におけるごみの様子や地質・地形、生態系との関係の理解や、環境問題として教育現場等様々な分野での活用、さらには国際的にも対応が進められている海洋ごみ問題への対処に寄与することが期待されます。

2.背景

JAMSTECでは、1982年の有人潜水調査船「しんかい2000」による潜航調査時から、深海生物や地質・地形、観測機器の設置、深海環境における実験の様子などを映像や画像に撮影しており、その映像や画像には様々な潜航調査地点で深海底に沈んだごみも映っています(図3)。1991年には有人潜水調査船「しんかい6500」の潜航調査で、日本海溝の水深約6280mの深海にある割れ目の底部でマネキンの頭部を発見(図4)し、さらに翌年にも同じマネキンが観察されています(図5)。また、1998年には無人探査機「かいこう」によって10000mよりも深い海底でもポリ袋と見られる映像(図6)が撮影されています。

これらの潜航調査で撮影された映像や画像は観測データとして保管管理し、現在、JAMSTECの深海映像画像配信サイトである「深海映像・画像アーカイブス」から総計3万時間以上の映像、130万枚以上の画像をインターネットに広く公開しています。「深海映像・画像アーカイブス」で公開している映像や画像には、被写体を示すタグ(インデックス)を付与し、タグには深海生物の名称や特異な地形、観測活動等を示している他、映像や画像から目視で確認できる“海底ごみ”も対象にしています。

海洋ごみは、沿岸に漂着して地域の景観や環境に悪影響を及ぼすとともに、漂流するごみは船舶の航行への妨げにもなります。また、深海底や極域など人的活動のない海域でも発見されるものであり、そこに生息する海洋生物や生態系に直接影響して、人間の健康や漁業など経済活動等にも影響するものです。国際動向としても2015年のG7エルマウ・サミットにおいて海洋ごみ問題に対処するための首脳宣言が出され、これを受けて国連や2016年のG7伊勢志摩サミット、環境大臣会合、科学技術大臣会合などで対応が進められています。

こうした海洋ごみの問題対処に寄与するため、GODACでこれまで一括りに取り扱ってきた深海映像や画像に偶然映っている海底ごみの情報を見直して細かく分類するとともに、個別の映像や画像からごみ単位の情報を抽出する作業を行いました。これと並行して情報を公開するためのウェブサイトを構築し、この度、JAMSTECのウェブサイトで公開するに至りました。

3.データの意義

潜航調査で撮影された映像や画像は、視覚的で理解しやすいため、研究者のみならず教育現場を始めとして様々な分野において使用され、深海環境の理解・把握を進める上でも重要なデータであるため、深海調査映像や画像の二次利用数は増加の一途を辿っています。海面を漂流したり、海岸に漂着したりする海洋ごみとは異なり、深海に沈んだ海底ごみは海底付近での状況を知る機会が限られるため、潜航調査で撮影された深海映像や画像は状況把握のための貴重なデータです。

沈んだ海底ごみの周囲では深海生物が生息する様子なども観察(図7)されているため、深海生物や生態系にごみが及ぼす影響を把握できる可能性があります。また、海底の割れ目に密集する様々なごみの様子などから地形や地質とごみの蓄積の関係性を把握できる可能性もあります。

さらに、深海域で沈殿したり、浮遊したりしている様々な種類のごみの様子を画像から容易に理解・把握することができるため、海洋環境問題へのリテラシー向上にも役立つと考えられます。

4.今後の展望

今後も機構が実施する深海調査研究で撮影された深海生物等の様々な映像や画像から、海底ごみの情報を継続的にアーカイブし、「深海デブリデータベース」から発信するとともに、海洋環境問題の一つとして深海に沈んだ海洋ごみに対する理解増進を進めていきます。

また、将来的には、海流シミュレーションなどを用いた海底ごみの発生源推定や、海底下におけるごみの分布推定など、科学的アプローチから海洋環境問題の課題解決に貢献していきたいと考えています。

図1

図1 深海デブリデータベース
(URL: http://www.godac.jamstec.go.jp/catalog/dsdebris/j/

図2

図2 深海映像・画像アーカイブス
(URL: http://www.godac.jamstec.go.jp/jedi/j/

図3

図3 全潜航調査地点(紫の点)と海底ごみが観察された潜航調査地点(橙の点)

図4

図4 日本海溝の水深約6280m付近で見つかったマネキンの頭部。(「しんかい6500」第67回潜航:1991年7月15日撮影)
(URL:http://www.godac.jamstec.go.jp/catalog/dsdebris/j/detail/index.html?class=video&vid=6K0067C2SV20_00194900

図5

図5 図4の撮影の翌年に観察したマネキンの頭部。堆積物が増えるとともに深海生物が乗っている。(「しんかい6500」第130回潜航:1992年7月19日撮影)
(URL:http://www.godac.jamstec.go.jp/catalog/dsdebris/j/detail/index.html?class=video&vid=6K0130C2SV30_01474500

図6

図6 マリアナ海溝の水深約10900m付近で撮影された複数のポリ袋と思われる海底のごみ。(「かいこう」第73回潜航:1998年5月20日撮影 )
(URL:http://www.godac.jamstec.go.jp/catalog/dsdebris/j/detail/index.html?class=video&vid=KAIKO0073BCSV20_01570000

図7

図7 日本海隠岐堆の水深約910m付近で撮影された海底ごみに付着するイソギンチャクとオオグチボヤ(「ハイパードルフィン」第1055回潜航:2009年9月22日撮影 )
(URL:http://www.godac.jamstec.go.jp/catalog/dsdebris/j/detail/index.html?class=photo&vid=HPD1055OUT0007

国立研究開発法人海洋研究開発機構
(「深海デブリデータベース」について)
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(報道担当)
広報部 報道課長 野口 剛
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