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プレスリリース

2017年 9月 25日
国立研究開発法人海洋研究開発機構
サイデン化学株式会社

深海極限環境にヒントを得た乳化技術の実用化研究に着手
― 環境に優しい水ベースの機能性ナノ材料を共同開発 ―

1.概要

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦、以下「JAMSTEC」という。)とサイデン化学株式会社(代表取締役社長 籠島 嘉隆、http://www.saiden-chem.co.jp、以下「サイデン化学」という。)は共同で、深海極限環境にヒントを得たナノ乳化技術MAGIQ® (Monodisperse nAnodroplet Generation In Quenched hydrothermal solution)を利用した水系アクリルナノエマルション製造プロセスの実用化に向けた研究開発に着手いたします。

2. 背景

塗料や接着剤市場は、その約6割が有機溶剤ベースの製品で占められています。これらの製品を、環境に優しい水ベースの製品へと置き換えるための研究開発が活発に進められていますが、有機溶剤ベースの製品と比べると、水ベースの製品は塗膜の透明度などの性能面で劣るために思うように置き換えが進んでいないのが現状です。

水ベースの塗料や粘着剤に広く用いられているのが、微細なポリマー粒子を水に分散したアクリルエマルションと呼ばれるナノ材料です。優れた塗膜透明度を有する水ベースの塗料・接着剤を開発するためには、アクリルエマルションに含まれるポリマー粒子のサイズを極限にまで微細化することが必要です。

水ベースアクリルエマルションで国内トップのシェアを持つサイデン化学では、ポリマー粒子の超微細化を実現する手法として、深海熱水噴出孔(図1)に存在する高温・高圧環境での水の特異な性質にヒントを得て、JAMSTEC海洋生命理工学研究開発センターで開発された革新的ナノ乳化技術「MAGIQ(2013年5月14日既報)」に着目しました。昨年度、埼玉県先端産業創造プロジェクト(http://www.saitama-leading-edge-project.jp)による新技術・製品化開発費補助金の支援を受けて、JAMSTECとサイデン化学が共同で行ったフィージビリティースタディーでは、MAGIQによるナノ乳化技術とサイデン化学の重合技術を組み合わせることで、直径50ナノメートル以下のポリマーナノ粒子からなるアクリルナノエマルションを製造することに成功しました。

3.今後の展望

この度、JAMSTECとサイデン化学の共同提案「超臨界ナノ乳化による新規水系高分子ナノマテリアルの開発」が平成29年度埼玉県産学連携研究開発プロジェクト補助金(ナノカーボン分野)に採択されたことを受けて、両者は、今後2年をかけてアクリルナノエマルションの実用化に向けた製造プロセスの最適化を進めます。サイデン化学では2020年を目処に、本技術を用いた最初の製品を上市する予定です。

JAMSTEC海洋生命理工学研究開発センターが開発したMAGIQは産業界からの注目度が高く、技術の普及に向けたオープンイノベーションプラットフォームの整備(2016年1月19日既報2017年8月1日既報)や製造能力の引き上げを目指した実用性検証(2016年10月3日既報)が急ピッチで進んでいます。今後も民間企業と密に連携したオープンイノベーション体制によって、研究成果の積極的な社会還元を進めていく予定です。

図1

図1 深海の熱水噴出孔から噴き出す熱水。

(本研究について)
国立研究開発法人海洋研究開発機構
海洋生命理工学研究開発センター長 出口 茂
サイデン化学株式会社
開発本部 新素材グループ長 金台修一
(報道担当)
国立研究開発法人海洋研究開発機構
広報部 報道課長 野口 剛
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