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2023年 6月22日
高知大学 海洋コア国際研究所
海洋研究開発機構

有孔虫の石灰質の殻形成に関する代謝メカニズムを解明
―海洋酸性化を生き抜くユニークな進化―

高知大学海洋コア国際研究所と国立研究開発法人海洋研究開発機構の研究チームは、蛍光標識による細胞観察とシングルセル発現遺伝子比較解析によって、有孔虫の石灰質殻の形成に関連する遺伝子群の同定、代謝経路の推定に世界で初めて成功しました。

サンゴや貝類など石灰質の殻や骨格を形成する海洋生物は数多く存在しますが、石灰化に関する分子メカニズムの全容を解明することは困難でした。本研究チームは、殻を形成している状態の有孔虫個体から発現遺伝子を抽出し、殻を形成していない個体と比較することによって、石灰質成分の形成・析出に関連する遺伝子群の全容を把握することに成功しました。この結果、石灰質(炭酸カルシウム)成分に必要なカルシウムイオンを海水から取り込んで利用し、二酸化炭素(CO2)から重炭酸イオンを細胞内/外で産生していることがわかりました。有孔虫は細胞内の過剰なカルシウムを殻の形成に利用することが示唆され、これまで殻や骨格が生物自身の防衛などのために発達したという定説に対し、新しい役割を提示しました。さらに、これら2つの石灰化に主要なイオンに関係するタンパク質遺伝子について他の生物と比較した結果、有孔虫が独自に関連遺伝子を進化させてきたこともわかりました。有孔虫は5億年以上前から地球上に生存する、石灰質殻を作る最も古い真核生物の1つです。過去5億年の間には、現在よりも地球が温暖で海洋が酸性化していた時代があります。そのような環境中でも、有孔虫は石灰化を維持してきたことが化石記録からも示唆されており、有孔虫の石灰化メカニズムは人類が直面している現在の海洋酸性化に耐え抜く能力をもっている可能性があります。

本研究は、2023年6月22日(日本時間)に米国科学雑誌「Science Advances」に掲載されます。

詳細は、高知大学のサイトをご覧ください。

国立研究開発法人海洋研究開発機構
海洋科学技術戦略部 報道室
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