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2023年 8月 8日
国立研究開発法人海洋研究開発機構

国際深海科学掘削計画(IODP)第400次研究航海の開始について
~北西グリーンランドの氷床史と気候変動~

国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)(※1)の第400次研究航海として、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号(※2)による「北西グリーンランドの氷床史と気候変動」(別紙参照)が、2023年8月12日から開始されます。

グリーンランド氷床を掘削し、北半球の氷河作用のメカニズムを解明することは、将来の地球温暖化を予測するための鍵となります。本研究航海では、大西洋北東に位置するバフィン湾の北西グリーンランド縁辺域の7つのサイトにおいて、漸新世から完新世までの厚い半遠洋性および氷河性海洋堆積物を掘削し、さまざまな時間スケールで氷床に影響を与える海洋、大気、軌道要素、地殻変動等とそのフィードバックを把握します。また、氷床と海水準が温暖化する気候にどのように応答するのか、という課題に取り組みます。

航海には、インド、オランダ、スイス、スウェーデン、中国、デンマーク、ドイツ、日本、ニュージーランド、米国から計27名の研究者が参加し、うち日本からは2名が乗船予定です。

【用語解説】

※1
国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)
平成25年(2013年)10月から開始された多国間科学研究共同プログラム。日本(地球深部探査船「ちきゅう」)、米国(ジョイデス・レゾリューション号)、ヨーロッパ(特定任務掘削船)がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を推進する。
※2
ジョイデス・レゾリューション号
IODPの科学掘削に米国が提供する掘削船。
ジョイデス・レゾリューション号
JOIDES Resolution©IODP

別紙

北西グリーンランドの氷床史と気候変動
NW Greenland Glaciated Margin

1.日程(現地時間)

IODP第400次研究航海
2023年8月12日 研究航海開始(出港地:レイキャビク(アイスランド))
2023年10月12日 研究航海終了(入港地:レイキャビク(アイスランド))

※予定は、新型コロナウィルス感染症の状況、航海準備状況、気象条件や調査の進捗状況等によって変更となる場合があります。

2.日本から乗船参加する研究者(予定)

 
氏名 所属/役職 担当専門分野
関 宰 北海道大学低温科学研究所/准教授 有機地球化学
横山 由香 東海大学海洋科学部/助教 物性科学

3.研究の背景・目的

 IODP 第400次研究航海は、北西グリーンランドの氷床縁の7つのサイトにおいて、過去3,000万年前までの地層を掘削し、極域の気候変動などの古環境の復元を目的とした航海です。現在、地球温暖化による将来の海面水位上昇が危惧されていますが、その予測は、地球温暖化に対する氷床の応答感度に大きく依存します。グリーンランド氷床が完全に融解した場合、海面は約7 m上昇するため、温暖化に対するグリーンランド氷床の安定性の理解はとても重要な課題といえます。この航海では、「過去に実際に起こっていた地球の気候変動において、グリーンランド氷床はどのように反応し、海面水位変動に寄与したのか?」を明らかにすることを目的としています。そのために、過去3,000万年にわたる気候変動に対するグリーンランド北西部の氷床変動を解明し、それに伴う氷河作用、さらには他の気候要素との相互作用を解析する予定です。本研究からは、将来の気候変動や海面変化の予測における重要な知見が得られることが期待されます。

Knutz, P., Jennings, A., and Childress, L.B., 2022. Expedition 400 Scientific Prospectus: NW Greenland Glaciated Margin. International Ocean Discovery Program.

本研究航海の掘削地点および広域図

図 本研究航海の掘削地点および広域図
オレンジ色の丸は主要掘削予定点、黄色の丸は予備の掘削点を示す。図中右下の広域図のうち紫色の点は、出入港予定のレイキャビク(アイスランド)を示す。(IODP Exp. 400 Scientific Prospectusより)

表 本研究航海の主要掘削予定点一覧(作業予定日数は切り上げ、優先順位の高い順に表示)

 
サイト名 水深(m) 目標掘削深度(m) 作業予定日数
MB-23A 1,821 422 9
MB-02C 1,957 522 9
MB-31A 531 282 5
MB-30A 618 303 3
MB-06D 614 561 5
MB-17A 655 230 3
MB-07B 736 978 13

*図はIODPウェブサイトより引用したものを改変

【参考】IODP Copyright Statement

https://iodp.tamu.edu/about/copyright.html

国立研究開発法人海洋研究開発機構
(IODPおよび本航海の科学計画について)
研究プラットフォーム運用部門 掘削計画支援室
室長 斎藤 実篤

(報道担当)
海洋科学技術戦略部 報道室
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