プレスリリース

  1. TOP
  2. プレスリリース
  3. 南海トラフプレート境界断層の現場再現実験から断層のすべり特性を解明―スロー地震と巨大地震の発生メカニズムの解明に貢献―
2023年 9月21日
国立大学法人東京大学
国立研究開発法人海洋研究開発機構
国立研究開発法人産業技術総合研究所

南海トラフプレート境界断層の現場再現実験から断層のすべり特性を解明
―スロー地震と巨大地震の発生メカニズムの解明に貢献―

海洋研究開発機構高知コア研究所の奥田 花也 研究員(研究当時:東京大学大学院理学系研究科博士課程)、産業技術総合研究所の北村 真奈美 研究員と高橋 美紀 研究グループ長、東京大学大気海洋研究所の山口 飛鳥 准教授らによる研究グループは、産業技術総合研究所活断層・火山研究部門所有のガス圧式高温高圧変形試験機を用いて、紀伊半島沖の南海トラフのプレート境界の温度・圧力・鉱物種条件を再現し、プレート境界断層のすべり特性を実験的に調べました。その結果、沈み込みに伴う鉱物種の変化によって、プレート境界断層の摩擦係数が増加することがわかりました。一方、沈み込みに伴って形成された鉱物種(イライト)がもつ特性によって、温度上昇にしたがって摩擦係数のすべり速度依存性が正から負へと変化していき、結果としてプレート境界断層での地震が発生しやすくなっていくことがわかりました。

近年の地震観測網の発達に伴い、プレート境界では津波を引き起こすような巨大地震だけでなく、揺れをほぼ引き起こさないスロー地震という現象も観測されています。スロー地震は巨大地震の引き金になる可能性が指摘されていますが、地震の発生メカニズムや発生条件の観点から巨大地震とスロー地震の関連性の解明が望まれてきました。しかしながら、スロー地震と巨大地震のいずれも、どのようなプレート境界のすべり特性によって引き起こされているかは未解明でした。

本研究は、スロー地震域から巨大地震発生域に至るまでのプレート境界断層の地震発生条件として、すべり特性を支配するパラメータの空間分布の実態を解明し、論文として発表しました。これまでの地震観測の結果との比較や、本実験結果を用いた数値シミュレーションを行うことで、南海トラフで発生する地震の波動伝播や津波発生過程のより詳細な検討が可能になると期待されます。

 詳細は、東京大学のサイトをご覧ください。

国立研究開発法人海洋研究開発機構
海洋科学技術戦略部 報道室
お問い合わせフォーム