海洋研究開発機構

6)地震が起きた震源域の海底は?


今回発生した津波は、震源域のスマトラ島ばかりでなく、スリランカやインド、タイ等で大きな被害をもたらした。このような大きな津波を引き起こした海底ではどのようなことが生じているのであろうか?

先に概説したメンタワイ断層の南端のスンダ海峡沖において、2002年10月に海洋研究開発機構(当時の海洋科学技術センター)が保有する有人潜水調査船「しんかい6500」による調査航海が実施されていた。この調査航海はインドネシアやドイツとの共同研究の一貫として、10数回の潜航調査が行われたが、偶然にもその目的は、今回のような巨大地震によって海底がいつどのように変動したのかを探るものであった。

調査海域はスンダ海峡沖で、今回のニアス島周辺と同じように、スマトラ断層の南端がメンタワイ断層とぶつかる特異な場所である。2001年に行われたこの地域の詳細な海底地形調査によって、スマトラ断層の南端延長と考えられる特異な地形のリニアメント(地形図上でみられる直線的地形)が発見されており(後にこれが断層線であることが確認された)、このリニアメントに沿って潜水調査船等を使った調査が行われた(図12参照)。その結果、水深2000 mを越える深海底で、80 cmを越えるような断層に伴う直線的な地形段差が発見された(図3)。「しんかい6500」を使って詳細に観測を行った結果、その段差地形は崩壊が進んでいないことと同時に堆積物に覆われていないことから、段差形成がまだ十分に新しいことが分かった。また、その延長では、上からマリンスノー等の堆積物が絶え間なく降ってくる場所にもかかわらず、海底に露出する断層面を発見することができた。残念ながら、活断層に沿って発達すると考えられるシロウリガイやバクテリアのコロニー、湧水現象はここでは見つかっていない。

人工地震波を使って得られた地下断面のイメージ記録では、リニアメントの直下で、明らかに断層によって地層が幾重にもずれており、断層線に沿った高まりが観察された。広域に観察を続けると、陸上のそれと同じように地形的な変位がはっきり現れる場所が長く続くが、一部で不明瞭になる場所が存在し、そこを挟んで高まりが断層の反対側に移っている様子も明らかになった。

今回の場合においても、地震によって破壊された断層に沿って海底は大きく変位し、海底に直線的な段差地形を作ったことが予想される。このような段差は、地震に伴う破壊に起因して一瞬にして形成され、その変位は海面まで伝搬して津波を引き起こす原因となったであろう。


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