海洋研究開発機構

8)日本近海の巨大地震・津波


日本近海は北から千島海溝、日本海溝、伊豆・小笠原海溝、南海トラフ、琉球海溝と、沈み込み帯境界のみが存在する。このため日本の沿岸(特に太平洋岸)はしばしば巨大地震や津波に襲われてきた。

地震の規模を示すマグニチュード(M)は、地震により放出されるエネルギーに対応する。基本的には、地震を起こした断層面の面積が大きいほどマグニチュードも大きくなる。地震時に滑った領域は、逆に言えば普段はプレートの沈み込みに「抵抗」して、動いていない領域である。このような領域を「固着域」、あるいは「アスペリティ」と呼ぶ。M8クラスの地震では、アスペリティは100kmほどの大きさを持つ。

一方、これまで世界におきた最大の地震は、1960年5月22日に起こったチリ地震で、マグニチュードは9.5である。この地震では、余震域が1300kmにも及んだ。また、今回のスマトラ島沖地震はM 9.0(米国地質調査所発表)であり、余震域は1000kmの長さを持つ。現在、日本近海で巨大地震として注目を集めているのが南海トラフでの地震である。今回のスマトラ島沖地震と同じように沈み込むフィリピン海プレートは斜めに沈み込んでおり、似たような地質や地下の構造が考えられている。但し、地震発生の頻度はより頻繁で、歴史をひもとくと1707年の宝永の時代には東海沖から四国沖の東海、東南海、南海の広域な範囲で地震が一度に起き、強震動被害とともに、大きな津波が東海から四国までの広い海岸を襲ったことが歴史資料等から知られている(図1図2)。

南海巨大地震発生帯の調査研究
 フィリピン海プレートは南海トラフに沿って年間4cmの速度で本州の下に沈み込んでいる(図3)。南海トラフに沿って、マグニチュードが8を超える巨大地震が約180年間隔で発生している(図2)。南海トラフの地震断層は現在ほぼ固結している。このためプレート境界断層でほとんど地震が起こらない。

 我々は地球内部の情報の多くを地震波特性から得ているため、大きな地震が起こらない南海トラフの下が今どうなっているのかよくはわかっていない。勿論、海底直上での観測も精力的に行っているが、地震断層面は海底から少なくとも5〜6km下に位置するため、断層付近の物性について十分な精度で理解するまでには至っていない。

  観測とは別に、1944年に発生した東南海地震時の地震波や津波の記録から、断層に沿ってすべった様子(量やその場所)が推定できる。図3で示すように、地震を引き起こした地殻の破壊は★印から始まり、その後北東に伝播して、最大で3 mを超えるずれを生じさせた。これまでの記録等から、地震の震源域、つまりアスペリティの位置は、地震毎にあまり変化していないことがわかっているので、次回の東南海地震の際にも同じ領域がずれると考えられる。

  南海トラフにおける地震断層の正体と挙動や、次の巨大地震に至る過程を明らかにすることを目的とし、統合国際深海掘削計画(IODP)では、「巨大地震の巣」にある断層岩の採取や、歪等の孔内長期モニタリングを実施する計画が進行している。ここでは、紀伊半島南東沖約120kmの海域において、現在海洋研究開発機構で建造している地球深部探査船「ちきゅう」(図4)を使い、水深約2000 mの海底からさらに最大で深度6000 mまで掘削する計画が進んでいる(図5)。

  掘削により断層自体の理解や長期孔内計測を実施する等、巨大地震の発生や伝播過程についての研究が進むことは、地震や津波による被害の規模の予測精度を高めることに大きく貢献すると期待されている。また、高精度地下構造探査や海底長期モニタリング調査を併せて押し進めることで、将来起こるであろう南海トラフ地震の被害を軽減するための礎として大きな役割を演じうる。


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