ダッチハーバー入港、航海終了
- 記事更新日:
- 2011年11月 4日
2011.10.27
ヒーリー号は、アリューシャン列島のダッチハーバーに、戻ってきました。1ヶ月前は緑に覆われていた山々には、白く雪が積もって、冬の訪れを感じます。航海終盤はずっと荒れ模様の天気だったので、久々の晴れです。今回の航海に参加した研究チームはここで下船し、それぞれの帰路に着きます。私達も、飛行機でアンカレッジ、シアトルを経由して、日本に帰ります。
今回の航海では、風や波が高くて、予定していたJAMSTECの係留系作業はできませんでしたが、海中に残してきた観測機器は、来年の夏に、私達がJAMSTECの観測船「みらい」で、再び北極海に来るまで、休まず観測データを取り続けてくれます。
伊東
もうすぐ航海終了
- 記事更新日:
- 2011年10月31日
2011.10.26
ヒーリー号は観測を終え、北極海を後にして、ベーリング海をダッチハーバーに向けて、南下しています。この数日、風速10-25m/sの強風の中を進んでいます。昨日の朝食時には船の揺れで、お皿がテーブルの上を滑って動いてしまい、滑り止めになるゴム製のテーブルクロスを敷いて食事をしました。乗船研究者は、揺れの中、それぞれの観測機材の後片付け、荷造り、研究室や居室の掃除など、下船の準備に追われています。
10日前は気温がマイナス17度の海域にいましたが、今は4度まで上がったせいか、暖かく感じます。日本に帰ると、しばらくは横須賀の秋が暑く感じると思います。
伊東

sailwxで作成したHealy号の航跡図(9月17~27日)
荒天 . . .
- 記事更新日:
- 2011年10月24日
2011.10.21
ヒーリー号は、北緯71度まで南下してきました。最北点で氷点下17度まで下がっていた気温が、ここ数日は氷点下1-2度まで上がっているので、暖かく感じます。今日はバロー域での係留系の回収を予定していたのですが、一日中、風速15mの強い風が吹いていて、中止になりました。9月までは、日照時間が長く、穏やかな天気の日が多いこの海域も、10月になると風が強く、波が高い日が多くなり、予定通りに観測をするのが難しくなります。明日は天気が回復しますように。
伊東
水圧
- 記事更新日:
- 2011年10月21日
2011.10.20
今日は、水温、塩分など、海水の性質を測るCTDと呼ばれる機械を、この辺りで最も深い水深3000mまで下ろす観測がありました。今回は、CTDと一緒に、乗船者が思い思いの絵を描いた、発泡スチロールのカップも沈めました。海の中では、海水の重さで、水圧と呼ばれる力がかかっています。水深100mでは地上の10倍、1000mでは100倍もの大きな力です。上がってきたカップは、3000mの水圧で、半分以下に小さく縮んでいました。伊東

船内生活
- 記事更新日:
- 2011年10月20日
2011.10.18
今回、私達、研究チームは、9月初めから3週間余りの乗船ですが、乗組員は5月にアメリカ西海岸のシアトルを出港してから来年1月初めにシアトルに戻るまで、半年間にも及ぶ長期航海です。乗組員は、土日も関係なく、3交代の24時間体勢で、船を動かし、観測のサポートなどをしてくれます。長い船内生活にメリハリをつけるためか、船内では、スポーツ、クイズ大会、映画鑑賞など、色々な行事が催されています。また、土曜日の夕食は、毎日大勢の乗組員の食事作りで忙しい、厨房のコックに変わって、当番で食事を作ることになっています。先週土曜日は、研究チームが夕食にピザ作りをしました。
伊東
「砕氷船」
- 記事更新日:
- 2011年10月18日
2011.10.16
ヒーリー号は、北緯75度40分、今回の観測計画の最北点まで来ています。昨日は、できたばかりの海氷がまばらに浮かんでいる海域を進んでいましたが、北に進むにつれて、一面が海氷に覆われた白い海に変わりました。でき始めて10日ほどの新しい海氷で、厚さは20cmほどです。ヒーリー号は、船の重みで氷を砕きながら進む砕氷船で、この位の厚さの海氷はもとともせずに、バリバリと砕きながら、どんどん前進していきます。
伊東
バンクス島
- 記事更新日:
- 2011年10月17日
2011.10.14
ヒーリー号は、北緯74度、カナダ多島海の西端にあるバンクス島のすぐ沖で、観測をしています。気温はマイナス7度、水温もマイナス1度近くまで下がっていますが、まだ海氷は見当たりません。5-6年前までは、夏でも何メートルもある厚い氷あって、砕氷船では近づくことができなかった海域ですが、2007年以降の海氷減少で、夏には海氷が融け切るようになりました。この時期でも海氷が無いのは、とても珍しいことです。今まで、海氷に阻まれ、ほとんど観測されていなかった未知の海域なので、リアルタイムの観測データを示すモニターに注目が集まります。
伊東
ヒーリー号はバンクス島に向かって東へ
- 記事更新日:
- 2011年10月17日
2011.10.13
ヒーリー号乗船中の伊東さんから、海氷分布を示す衛星写真と航海軌跡・計画を示した図が送られてきました。現在は、アラスカ沖から東に進み、カナダ・マッケンジー湾の沖合で、バンクス島に向かっています。この衛星写真では、バンクス島の沖合でも開水面が広がっている様子ですが、はたして実際の海域はどうなのでしょうかね。
菊地@横須賀本部から...
海を調べる(1) 係留系
- 記事更新日:
- 2011年10月14日
ヒーリー号がダッチハーバーを出港して1週間経ちました。北緯71度まで北上し、アラスカの沖まで来ています。9月までは穏やかな天気の日が多い北極海も、10月には太陽が出ている時間が日に日に短くなり、寒い日が多くなってきます。今日は、気温は氷点下2度まで下がりました。
ヒーリー号では、様々な機械を使って、海の中を調べる観測をしていますが、昨日、今日は、係留系の回収、設置が行なわれました。係留系とは、海底に錘を沈めて、その上に浮き玉と海の流れや海水の成分を測るセンサーをつけて、数ヶ月~一年間、連続で測定する観測のことです。北極海は、冬~春は、厚い海氷で覆われてしまうため、砕氷船であってもなかなか近づくことはできませんが、係留系では、船が行けない時期のデータも取れる利点があります。
写真は、昨年の9月から1年間海の中にあった係留系を、船に引き上げているところです。1年前に海の中に置いてきた機械たちとの嬉しい再会ですが、鉄製の大きな浮き玉をクレーンで吊るして引き上げるに大掛かりな作業なので、緊張が高まります。
伊東投下式センサーによる水温・塩分観測 (XCTD観測)
- 記事更新日:
- 2011年10月14日

2011.10.05
銃のような筒から海中にセンサーを投下し、海水の水温・塩分の分布を計測するのがXCTD (eXpendable Conductivity, Temperature and Depth)観測システムです (上写真)。我々は砕氷船ローリエ号の航路に沿って、約40 km間隔でXCTD観測を行っています。観測結果はすぐさまパソコンで解析され、下図のような水温分布が得られました。カナダ・アラスカ沖の陸棚斜面(西経134~155度)に沿った水温分布です。海洋表層には日射で温められた水温の高い水があり、水深 100~150mには結氷温度に近い冷たい水があります。この冷たい水は、冬季に太平洋から北極海に流れ込んできた水です。さらに、下層には比較的水温の高い水があります。これは、遥か大西洋からやってきた水です。
今一度、表層近くに着目すると、アラスカ・バロー沖 (西経152~154度付近)に海洋表面から水深130m付近まで達する暖かい水があります。この暖水は、太平洋からアラスカ西岸の陸棚域・バロー海底谷を経て、海盆域に運ばれているものと考えられます。昨年の海洋地球観測船「みらい」の北極航海では、直径100kmを超す暖水渦が捉えられました。その渦の水塊は、上記と同じアラスカ西岸の陸棚域を経て海盆域に来た暖かい水で、アンモニアなどの栄養分が多く、北極海の生態系にもインパクトを与えていることが分かりました参照: http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20110826/

砕氷船ローリエ号のXCTD観測で得られたカナダ・アラスカ沖の陸棚斜面に沿った水温分布
海氷に閉ざされた最北の観測点
- 記事更新日:
- 2011年10月12日


2011年10月3日、本航海で最も北に位置する観測点に到着しました。前夜より海氷が出始めたため、砕氷船ローリエ号は航行速度を落とし、観測点を目指しゆっくりと北上を続けました。夜が明け観測点に到着すると、そこは海氷に覆われた真っ白な世界。この観測点では、海中の水温や塩分、流速を計測するセンサーを取り付けた海洋物理係留系、そして海中を沈降する粒子を捕獲するセジメントトラップ係留系の2系を設置しています。本航海では、この2系を回収し、新しい係留系を再設置する予定でした。しかし、海氷に閉ざされた海域での回収は難しいと判断し、来年この海域を調査予定のJAMSTEC海洋地球研究船「みらい」に委ねることにしました。北極海の厳しい環境を調査し、それが気候変動に及ぼす影響を明らかにしようと、この北極海に乗り込んできたわけですが、自然はそう簡単に答えを教えてはくれません。しかし、このような観測によるデータの積み重ねが、未来を知る鍵となるわけです。来年、また「みらい」でここを訪れ、大気・海洋系から生態系に及ぶ総合的な観測を行いたいと思います。
西野
海氷に閉ざされた最北の観測点
セディメントトラップ係留系の回収に成功
- 記事更新日:
- 2011年10月11日

2011.10.2
カナダ砕氷船ローリエ号での観測ミッションの中で、現地時間10月1日昼ごろ、昨年JAMSTEC海洋地球研究船「みらい」でNorthwind深海平原に投入していただいたセディメントトラップ係留系Station NAP10tの回収に成功しました(^^) (上写真:これから船上に回収されようとするセジメントトラップ。ブリッジより西野が撮影)。この係留系に関わってくださった全ての方に感謝をします。作業中は、強く吹雪いた時もありましたが、波は基本的に穏やかで回収作業には助かりました。
海面に浮上させた係留系の回収作業は船によって手法が異なります。今回は浮上した係留系のトップをモーターボートで捕まえに行き、本船の傍まで引っ張ってくる作業から始まりました。デッキ上での回収作業の過程では、係留系のロープを人力で地引網のように引き上げる場面もあり、船員さんやInstitute of Ocean Sciences (カナダ)のスタッフにもいろいろと助けて頂きました。係留系は機材や部品の交換などを終えて、夜前にNAP-11tとして再投入しました。来年はまた違う船での作業になるかと思いますが、ぜひ回収を成功させたいです。
回収したセディメントトラップに装着された試料ボトルには、目的とする沈降粒子(マリンスノー)が全てのボトルに含まれていました。下写真は、その試料ボトルの一部を時系列に並べてみたもので、左端の1番が去年10月で、右端が今年9月です。ボトルの底の黒っぽい沈殿物が沈降粒子です。海氷に覆われて船がなかなか近づけない時期の試料も得ることができました。日本へ輸送された試料は、関係する研究者へ分配され様々な分析・研究に利用されます。北極海の沖合で年間を通じた沈降粒子の観測研究は過去の事例がまだまだ少ないので、この試料の分析結果がこの海域の研究に少しでも役立つものになればと思います。
昨年はここより西側の海域にもセディメントトラップ係留系CAP-10tを設置したので、そちらの回収もこの先予定しています。しかし、現場は現在海氷が広く覆っているようです。海面が海氷でほぼ覆われている状況で係留系を浮上させても回収をするのは困難なので、CAP-10tの回収は来年のチャレンジになってしまうかもしれません...。
小野寺時系列に並べたセディメントトラップの試料ボトル。ボトルの底の黒っぽい沈殿物が沈降粒子。
ヒーリー号はベーリング海峡を抜けて北上中
- 記事更新日:
- 2011年10月 5日
ヒーリー号は、ダッチハーバーを出港してから17ノットで北上中です。最初は、甲板に出ると飛ばされてしまいそうな程の強い風でしたが、だんだん天候も回復して、船の揺れも収まってきました。この航海では、ベーリング海では観測が無いので、北極海の最初の観測点まではノンストップでどんどん進んでいきます。10月4日夕方に、北極海の入り口、ベーリング海峡を抜けました。北極海の北の方では、どんどん海氷が出来始め、海氷域が広がり、海水温もマイナスまで下がっていますが、北極海の南の端、ベーリング海峡は水温がプラス5度と、まだまだ夏の名残を見せています。
この航海では、アメリカ各地の大学や研究所から、海洋物理や海洋化学、海鳥や海獣などの様々な分野の研究者が33名も乗船しています。観測点までの数日間で、観測プラン、スケジュールを詳しく決める、観測ミーティング(下写真)が行われています。明日からは、いよいよ観測開始です。
伊東ヒーリー号もうすぐ出港
- 記事更新日:
- 2011年10月 3日
アメリカ沿岸警備隊砕氷船ヒーリー号の航海に参加する伊東、伊代の2名は、10月1日の夕方に飛行機でダッチハーバーに到着し、無事にヒーリー号に乗船しました。本日、10/2の17時にダッチハーバーを出港し、ベーリング海を北上して、ベーリング海峡を目指します。現在のベーリング海は海況が悪く、出港後の数日間は荒れる予定です。船が揺れても観測機材が動かないようにロープで固定したり、慌しく出港の準備をしています。
伊東
写真:上はダッチハーバー停泊中のヒーリー号。下はアンカレジからダッチハーバー空港に到着したところの様子。
(追記)
ヒーリー号の航海情報も、sailwx(以下のサイト)で見ることができます。菊地@横須賀本部から...
http://www.sailwx.info/shiptrack/shipposition.phtml?call=NEPP
私の研究 ~放散虫~
- 記事更新日:
- 2011年10月 3日
地球は、その表面の多く (70%) が海で占められていることはよく知られています。しかし、海の底の多くが海洋プランクトンの遺骸(いがい)で覆われていることは皆さんご存知でしょうか? なんと海底を覆う海洋プランクトンの遺骸の厚さは500 mを超えることも少なくないのです! その遺骸のほとんどは、珪藻、放散虫(レディオラリアあるいはラジオラリアとも言う)、有孔虫、ハプト藻などから成ります。その中で、今回は私 (池上)が研究対象としている放散虫についてお話したいと思います (参照: http://researchmap.jp/ikesun/)。
放散虫は外洋では、赤道海域から南大洋や北極海などの高緯度海域まで広く分布する単細胞の原生動物プランクトンです。海洋のごく表層から深海 (水深8000 mでも生きたものが確認されている)まで鉛直的にも幅広く多様な種が棲み分けしています。現在の海には約1,000種の放散虫がいますが、化石を含めると現在までに約1万5,000種が記載されています。
放散虫は非晶質シリカの内骨格を持つため、CCD以深 (炭酸塩が溶けてしまうような深度)の海洋堆積物中でも化石として保存されます。従って、様々な堆積環境下で採取することが可能なのです。放散虫の骨格の大きさは40 μm~400 μm (0.04~0.40 mm)と非常に小さく、顕微鏡観察が必要です。このような微小な化石のことを微化石 (びかせき)と呼びます。観察により得られた放散虫微化石の産出量や群集組成などから、地層が堆積した時代や、環境を推定することができます。そのため、放散虫は地質学の分野で大きな役割を果たしてきました。
これらの特徴に加え、放散虫の魅力を語る上で欠かせないのが、その形の美しさです。まるでシャンデリアやレース飾りのような美しい骨格は、時に美化石と呼ばれます。皆さん、ぜひインターネットなどで画像検索してみて下さい。きっとご興味を持たれるはずです。写真は、第11回九州大学総合研究博物館公開展示において、来場者に配布したポストカードの一部です。
私 (池上)は、海底地層を形成するもとになる、海洋沈降粒子 (海洋で生産されたプランクトンの遺骸や粘土鉱物などの一部) 中の現生放散虫の研究を行っています。海洋沈降粒子のフラックス (沈積流量)や組成の変動を調べることで、現代の海洋炭素循環や環境変動を知ることができます。
この海洋沈降粒子の変動を調べる上で欠かせないのが、セディメント・トラップという観測装置です。セディメント・トラップは海中に設置してから、約1年の間、2週間ごとに沈降粒子を自動捕集してくれます。セディメント・トラップを毎年設置することで、沈降粒子の季節変動のみでなく、経年変動も時系列で知ることができます。
今回の北極航海で、私は、JAMSTECの小野寺さんとともに、セディメント・トラップの回収と再設置に取り組みます。北極海でのセディメント・トラップの設置は去年が初めてで、今年が2年目となります。これから毎年北極海で設置を続けて行くことで、よりその重要性が増していくことでしょう。
池上(九州大学)


第11回九州大学総合研究博物館公開展示において、来場者に配布したポストカードの一部 (参照: http://researchmap.jp/muzw6srwr-59571/#_59571)。
もう一つの北極海航海がスタート
- 記事更新日:
- 2011年10月 1日
2011年に、JAMSTEC北極チームが参加する、もう一つの北極航海、アメリカ沿岸警備隊「ヒーリー号」の航海も、もうすぐ始まります。日本からの参加者は、私、伊東素代と、マリンワークジャパン伊代道さんの2名です。ヒーリー号の乗組員、大学、研究所の研究者を合わせると90名近くもいる乗船者の中で、たった二人の日本人ですが、頑張っていきたいと思います。
ヒーリー号の母港はアメリカ西海岸のシアトルですが、今年の7月初めに北極海に入ってから、北極沿岸の港で水や食料の補給、乗組員の交代をしながら、6ヶ月間ずっと、母港には戻らず、北極海での観測を続けていきます。そのため、観測に参加する私達の方が、北極海近くの港まで出向いていって、そこから乗船することになります。
私達は、9月30日に成田を出て、シアトル経由で、15時間かけてアンカレッジまで来ました。今日はアンカレッジに一泊して、明日の飛行機で、アラスカ アリューシャン列島の島でカニ漁の基地として有名な、ダッチハーバーに向い、そこでヒーリー号に乗船する予定です。今日のアンカレッジの昼間の気温は12度、もう白樺が紅葉していて、山は雪で白く、肌寒いです。
伊東

マリンスノーをとらえるセディメントトラップ...再び
- 記事更新日:
- 2011年9月30日
現在、カナダ北岸を航海しています。天気は曇りがちですが、波は穏やかな日が多いです。私(小野寺)は、珪藻や珪質鞭毛藻など珪質の殻を持つ植物プランクトンの沈降粒子(マリンスノー)や、海底堆積物に含まれる珪質殻の化石群集を研究で扱っています。
北極海には、北太平洋起源の海水がベーリング海峡から北極海へ流入していて、その多くはアラスカ北岸から現在私たちがいるカナダ北岸を沿うように流れてきています。1999年5月に北大西洋で、本来は北太平洋亜寒帯にのみ生息し大西洋側では生息していなかった珪藻の一種Neodenticula seminaeを、海外の研究者らが大量に発見しました。その研究者らの論文(Reid et al., 2007)によると、この珪藻が大西洋に出現したのは、この珪藻を含む太平洋水がベーリング海峡を通り、私たちが現在航海をしている北極海の北米沿岸を経由して大西洋側に到達したためです。1998年夏季は、北極海で海氷のない水域が北米大陸沿岸に連続して広がっており、夏季の海氷分布の変化がこの珪藻の進出に関係したようです。ほかの説として、船のバラスト水による人為的な輸送も考えられます。しかし論文によると、当時の北極海航路は輸送量が限られており、主要な亜熱帯経由の航路だと、亜熱帯域を移動する過程で問題の亜寒帯固有種は生き残れないとしています。
この種は北太平洋亜寒帯において、沈降粒子の一翼を担う代表的な珪藻種とされており、生物ポンプによる海洋中深層への粒状有機炭素の輸送を考える上で重要な種の一つとされています。このような種が今後北極海にも定着するかどうか、あるいは北極海や北大西洋において、珪藻をめぐる生態系や海洋中深層への粒状有機物輸送に変化が今後出てくるのかどうか個人的に興味を持っています。
過去の地質時代に目を向けると、グリーランド沖において、この珪藻種の出現が約125万年前から約84万年前にかけての間だけ見つかっています。この年代は、氷期‐間氷期サイクルがそれまでの4万年周期から10万年周期へと移り変わる地球表層環境の大きな遷移期にあたります。過去の変遷と現在から将来にかけて起きることは必ずしも同じではないと思いますが、北極海とその周辺海域における過去と現在の環境変動の両方について、これから少しずつ調べていければと思っています。今回のSir Wilfrid Laurier号乗船の目的は、昨年北極海の2箇所に沈めたセディメント・トラップ(沈降粒子を捕捉する装置; 写真)の回収と再設置です。なんとか成功すると良いのですが...。
小野寺

海洋地球研究船「みらい」より2010年に設置したセジメント・トラップ. このセジメン・トラップを今年はカナダ砕氷船ローリエ号で回収する(撮影: 筑波大学・佐藤真奈美)
Laurier号、観測ミッションのスタート
- 記事更新日:
- 2011年9月28日

西野

水路航行中
- 記事更新日:
- 2011年9月27日
現在、我々は北米大陸とビクトリア島に挟まれた水路をカナダ沿岸警備隊の砕氷船ローリエ号で航行中です。水路と言っても幅は 50 km以上あり、陸は遠くにしか見えません。この水路は夏場、北極海沿岸の町に物資を運ぶ船が航行します。カナダ沿岸警備隊はそれらの船が安全に航行するため、水路に標識となるブイをいくつも設置します。夏も終わろうとする今、この船の任務は設置した標識ブイを回収することです (上写真: 標識ブイの回収)。朝から船乗りたちが慌ただしく働いています。標識ブイをすべて回収後、我々の観測ミッションが始まります。
我々も、観測ミッション前だからといって、のんびりしているわけにはいきません。観測に備え、測器のセッティングや組み立てなどの準備に追われています (下写真)。今は波静かな水路を航行中なので、船の揺れも小さく、船内生活は快適です。しかし、これから外洋に出ると船の揺れが予想されます。船が揺れると作業ができないと同時に、船酔いで頭の回転も鈍ります。今のうちにできるだけ多くの仕事を片付けておかなければ...。
西野

Laurier号航海の情報
- 記事更新日:
- 2011年9月26日

2011年の北極海航海に関して、9月20日からブログでその様子を公開しています。既報の通り、現在、西野・小野寺・池上・宇野の4名がカナダ沿岸警備隊の砕氷船S.W.Laurier号に乗船しています。sailwxによる 情報を見たところ、9月27日現在、アムンセン湾を出てカナダ海盆に入った様子。この後、北極海での観測航海の様子が送られてくるでしょう。sailwx でのLaurier号の様子は、以下のサイトから見ることができます。
http://www.sailwx.info/shiptrack/shipposition.phtml?call=CGJKご安航を、祈って。
菊地@横須賀本部
ケンブリッジベイへの移動、乗船:その2
- 記事更新日:
- 2011年9月24日
ビクトリア空港からチャーターした航空機に乗って、砕氷船ローリエ号の待つケンブリッジベイへ向かいました。ケンブリッジベイへ向かう途中、窓から眺める景色が素晴らしかったです。
途中の雪山の景色も良かったのですが、ケンブリッジベイに近くなってからのツンドラの原野が僕にとっては特に印象的でした。
雪山の景色

ツンドラの原野
樹木も山も無く、広大で平坦な地がひたすら続いているのです。その平坦な地に大小さまざまな湖沼や池が存在していました。
ケンブリッジベイの空港に到着すると、ジャコウウシの剥製が出迎えてくれました。ジャコウウシは現在、カナダ北部、デンマーク(グリーンランド)に自然分布し、夏季はツンドラ内の水辺、湿原に生息します。ユーラシア大陸では約3,000年前に絶滅してしまいました。

ケンブリッジベイ空港と、ジャコウウシの剥製
ケンブリッジベイは北米大陸のさらに北、クイーンエリザベス諸島の島の一つであるビクトリア島南岸に位置し、カナダのヌナブト準州に属します。ヌナブト準州はイヌイットの自治による州で、その面積は日本の約5倍、人口は約3万人です。その中でも大きな町であるケンブリッジベイには現在約1300人が住んでいます。ケンブリッジベイを少し散策してみたかったのですが、空港から直接ヘリコプターで乗船だったので、今回は船から町を眺めました。
池上(九州大学)ケンブリッジベイ到着、そして乗船
- 記事更新日:
- 2011年9月24日

2011年9月20日、 我々はカナダ沿岸警備隊の基地のあるビクトリアをチャーター機で飛び立ち、北極海の玄関口、アムンゼン湾に面するイヌイットの町、ケンブリッジベイに到着 しました。原野の中につくられた砂地の滑走路に降り立ち、冷たい風を受けると日本の夏が遠い過去のように感じます。砕氷船ローリエ号は沖合に停泊してお り、空港からヘリコプターに乗り、船まで移動します (写真)。乗船後は、荷物を出したり、船内生活のレクチャーを受けたり、避難訓練を受けたりと慌ただしい時間が過ぎていきます。さあ、いよいよ航海の始まりです。
西野
写真は、ケンブリッジベイの空港から砕氷船ローリエ号に向かうヘリコプター (池上(九州大学)撮影)
2011年、夏の終わりの北極海クルーズ
- 記事更新日:
- 2011年9月20日
日本では暑かった夏も終わり、秋の訪れが待ち遠しい頃ではないでしょうか。北極では間もなく訪れる厳しい冬を前に、まさに今、海氷が一年のうちで最も後退する時期を迎えています。米国の研究機関 (National Snow and Ice Data Center)によると、今年は9月9日に海氷面積が最小となり、その面積は観測史上 2番目に小さい記録となったようです。北極海で観測を行う我々にとって、この時期は最も行動範囲が広がる時期でもあります。
今回、我々はカナダ沿岸警備隊所属の砕氷船ローリエ号(上写真)の 北極海クルーズに参加し、海洋観測や係留系観測を行います。砕氷船なので氷海域の航行も可能ですが、海洋観測や係留系の設置・回収にとっては海氷は障害物 でしかありません。ですから、観測作業のことを考えるとなるべくなら海氷を見たくありません。とはいえ、海氷は美しい北極海の風景を作っている主役でもあ ります。この北極海クルーズ中に、観測報告とともに、美しい北極海の風景に出会えたら、それもまた報告したいと思います。
2011年9月18日、我々は日本を発ち、カナダ沿岸警備隊の基地のあるビクトリアに到着しました。ここから空路でローリエの浮かぶ北極海に向かいます。
西野

日本より参加のカナダ砕氷船ローリエ号観測隊。ビクトリア空港にて撮影。左より、小野寺(JAMSTEC)、池上(九州大学)、西野(JAMSTEC)、宇野(マリンワークジャパン)
観測報告会@IMR
- 記事更新日:
- 2011年1月31日
2011.01.28
ベルゲンのIMRにて、今回の観測報告を私が、バレンツ海と日本の冬の寒さに関する最新の研究成果を堀研究員が発表しました。IMRは北大西洋セクターの気候変動と漁業資源に関するモニタリングを行っている研究機関なので、我々の発表も興味津々だったようです。
午後からはIMRの比較的新しい船である「G.O.Sars号」を見学しました。「みらい」の半分程度の大きさですが(4096t)、各種設備が充実しており、居室も「Johan Hjort号」より広く快適そうです。バレンツ海だけではなく、南大洋にも行くらしく、荒天時の揺れを軽減する「減揺装置」がついています。船内を案内してくれた一等航海士の顔が誇らしげだったのが印象に残ります。
猪上
Some statistics (クルーズレポートより)
- 記事更新日:
- 2011年1月28日
#科学的に意味のないものも含みます。
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航海期間:2011年1月13日から26日までの 14日間
観測期間:2011年1月18日から26日までの 9日間
(IMR側の計画が順調に進んだため予定よりも4日程度早く終了)
ラジオゾンデ&XCTD観測:ノルウェー海からバレンツ海(大西洋側北極海)での35点
(観測期間中、3人で無休で1日4回の観測を継続)
観測緯度:北緯65度 6分(Stn.1)から北緯76度15分(Stn.23)
観測経度:東経 0度40分(Stn.1)から東経31度16分(Stn.25)
観測期間中の...
最高気圧:1022 hPa(Stn.10)、最低気圧: 987 hPa(Stn.21)
最高気温:+ 6.0℃(Stn.14)、最低気温:-15.0℃(Stn.23)
最高表面水温:+ 7.8℃(Stn.2)、最低表面水温:- 1.0℃(Stn.19)
sailwxによる最高風速:35knot(Stn.16付近)
sailwxによる最低気温:-17.0℃
(1/23 13:00~1/24 09:00...多分途中からセンサーが変になったと想像しますが...)
#残念ながら波高のデータがないのでした。波も高かったと想像します。
総ラジオゾンデ観測長:664,188m、総XCTD観測長:13,777m
ラジオゾンデ最高到達高度:22,547m(Stn.17)
航海中の摂取アルコール量:0(Dry shipですので)
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まぁざっと眺めてみても、とても大変な観測作業だったと思います。
特にトロムソ寄港・出港(Stn.11)から最北観測地点(Stn.23)のあとまでの4~5日間は、低気圧の通過とそのあとの寒気の吹き出しのために、気圧変化も激しく、気温も下がり、太陽の光もなく(極夜)、雪・波・風さまざまな悪条件が重なった中での観測だった様子です。そのような環境の中、安全に気を使い、無事に作業を終えた3名に感謝します。本当に、ほんとうに、ご苦労様でした。
船を降りた3名は、昨日(1/27)中にトロムソからベルゲンに無事移動したとのこと。
航海後の打合せのために、今日(1/28)は出発前に寄ったIMRを再訪問する予定です。
そしていよいよ帰国です。みなさんの無事の帰国をお待ちしております。
菊地@横須賀本部から...

予想外に早く航海終了
- 記事更新日:
- 2011年1月27日
キャプテン等による操船は6時間交代のようで、
いつも我々はその交代の時間帯に観測準備を始めていました。
一回2時間程度かかる観測を6時間ごとに
我々3人全員が分担して作業するのですが、
主担当を18時間ごと(3回に一回)に割り当てていたので、
副担当の者は早めに切り上げて自由時間としていました
(傍目には日本人はいつも観測しているように見えます)。
したがって睡眠時間も細切れではありますが、十分にとれるわけです。
揺れが激しいときは私はなかなか眠れませんでしたが。
バレンツ海の航海は、想定外の時化を考慮した時間的に余裕のある
運航計画のようで、通常通り観測をこなせた場合は早めに終わります。
クルーズリーダーのMagnusさんによると、
バレンツ海としては普通の揺れだったそうです。
というわけで、1月26日17時にトロムソ港に入港した時点で
我々の観測も終わってしまいました。
実際観測を行っていたのは9日間という短い期間でしたが、
実に様々な気象・海況を経験しました。
観測に協力してくれたキャプテン、クルー、研究者の皆様に
心から感謝いたします。
猪上
バレンツ海を一周
- 記事更新日:
- 2011年1月26日

2011.01.25
ようやく暗い海を抜け、太陽の光がさす緯度まで戻ってきました。いわばバレンツ海を小さく一周した形になります。
ノルウェーの船員さんたちはこれから沿岸域の最後の観測を行い、その後船はトロムソにむけての帰路につきます。
停泊中に、数日ぶりの日の光がうれしくて写真を撮っていたら、あっという間に雪雲に追いつかれ、あたりは一面吹雪の海に変わりました。まだまだここは気象の変化が激しい、バレンツ海なのだと思い知らされます。
堀
東経31度観測線
- 記事更新日:
- 2011年1月25日
北緯76.5度から73度まで一気に南下してきました。気温も昨日の-17℃前後から
-2℃くらいまで上昇してきました。昨日から観測している東経31度ラインはIMRが
毎年4回程度、季節ごとに海洋観測しているセクションで、10年以上のデータの
蓄積があり、我々もそのデータを利用させてもらっています。
昨日の観測の様子を見ていたら、海洋の音響装置に海洋観測装置(CTD)が
上下するのが映っていました(写真のV字の線がその時系列)。気温は-15℃
以下だったのですが、水温は+2℃で相対的に温暖です。海洋上層には魚が
たくさんいたらしく、赤くそのエコーが映っています。
生物資源が豊富なんですね、バレンツ海は。
猪上
海から湧き出す「湯気」
- 記事更新日:
- 2011年1月24日

2011.01.23
今回の航海の最北端、北緯 76 度 30 分、東経31度13分に到達しました。昼の2時とはいえ、太陽の光はまったくなく、暗黒の水平線に対してほのかに曇り空を見分けることができる程度です。
甲板に出てみると、海からはもうもうと白い「湯気」があがっています。気温が -15度くらいなのに対して、水温が 0 度もある(高い)ため、より温かい海から大気にむかって熱が放出されている証拠です。
バレンツ海は、冬であっても海氷におおわれない稀有の海です。また、ほんの少し北にはがっちりと海氷に覆われた海が、南にはユーラシア大陸があり、氷・ 海・陸が近接して存在するという意味でも珍しい海です。この猫の額のように狭い海には、気象学、気候学、そして海洋学的にも面白いテーマが詰まっているの です。
これから船は東経 31 度 13 分の線をまっすぐ南下します。私もそろそろ、光のさす世界が恋しくなってきた頃です。
堀寒気の中を進む
- 記事更新日:
- 2011年1月24日

2011.01.23
北緯76度を越え海氷域に近くなったせいもあり、気温は-10度を
下回っています。低気圧が通り過ぎて15m/s以上の強風が再び
吹き始め、船はこの航海一番の揺れです。
バレンツ海はメキシコ湾からの暖流の行き着く先の一つですので、
水温は比較的暖かいのですが、さすがに北上してくると水温も
低下してきます。Johan Hjort号は「みらい」のような耐氷船では
ないので、海氷は船にとって極めて危険な存在なのですが、
ノルウェーの気象情報や海氷情報が正確なのか、10ノットという
通常の航海速度で暗闇を北東進しています。
猪上

追記:
上の図は、気象観測支援データサイトで公開している海氷・海水温分布合成図
(1月22日のもの)、下の図は、sailwx.infoで見ることができる現在(1月23日
23:00UTC)までのJohan Hjort号の航跡図です。参考まで。
菊地@横須賀本部より...
クマの島に到達
- 記事更新日:
- 2011年1月24日

2011.01.23
Bear Island、ノルウェー語でビョルンオイヤ、どういうわけか日本語ではビュルネイ島と呼ばれる島は、バレンツ海のまっただなかにある小島です。こんなところでも、9名ほどの方が常駐して、毎日の気象観測などの業務をしているそうです。
私たちがこの島に到着したのはお昼前で、運良く太陽の光が若干あったので肉眼で島を見ることができました。税関の手続き上、この場所に数時間の停泊を行い、次の目的地、北緯
76 度を目指します。
堀
船内のシャワー
- 記事更新日:
- 2011年1月24日

2011.01.22
船だとお風呂やトイレは共同という場合も多いのですが、今回乗船している Johan Hjort 号は個室ごとにユニットバスがついているのが豪華です。
写真ではよくわかりませんが、このシャワーは洗面所の部分と段差も仕切りもなく、シャワーを浴びると水がそのままトイレと洗面台のところまで流れだしてしまいます。
それでは不便だろうとと思っていたら、大半の水は少しだけついている傾斜にそって流しに吸い込まれるとともに、船が揺れることで洗面所にあるもうひとつの流しに向かうので、シャワールームが水没ということはありませんでした。
しかも床暖房があるので、そのスイッチを入れておけば小一時間で部屋は乾いてしまいます。
このバスの床暖房、湿気やカビに悩まされる日本のお風呂にもちょっとだけほしい気がしました。
堀
バレンツ海に到着
- 記事更新日:
- 2011年1月24日

2011.01.21
夜のうちにフィヨルドを抜けると、一転して波が荒々しくなりました。ここが今回の観測の目的地、バレンツ海です。
現在グリーンランドの南で発生した低気圧が接近中のため、風はときおり 20m/s を越え、白波がたって恐ろしいほどです。日の光はさらに弱くなり、昼をはさんだ数時間に薄明が広がるばかりです。
このバレンツ海で起こる大気と海洋の現象が、あるいは日本へ影響をおよぼすかもしれないということが、今私たちの注目しているテーマです。それについてはまた後日、ゆっくりとご紹介したいと思います。
風と揺れが強いため、ゾンデの放球といった観測には危険が伴います。安全帯をつけたり、さまざまな工夫をこらしてリスクを減らすことが重要になってきました。これまで以上に安全に気をつかう、緊張した観測が続きます。
堀
観測活動の船内広告
- 記事更新日:
- 2011年1月21日
Johan Hjort号の今回の航海には研究者はほとんど乗船しておらず、
船員と数名の技術者がルーチンの海洋観測を行っています。なので、
水温や塩分のプロファイルを見させてもらい、質問などしても、
分からないといわれることが多いです。したがって、こちらの
大気・海洋観測について説明してもあまり反応がありません。
ただ、大きなバルーンを膨らませる様子は興味があるらしく、向こうから
何をしているのか?と聞かれることも増えてきました。そこで、もう少し
JAMSTECの観測を知ってもらうために、食堂にポスターを貼ってみました。
船側の協力があってこその観測ですから。
猪上
飾り毛布?
- 記事更新日:
- 2011年1月21日

2011.01.21
先だっての船室紹介の写真で、タオルが可愛らしくたたんであるのに気づかれた人もいるかもしれません。先日シーツを替えてもらった日に船室にもどる と、バスタオルとハンドタオルが寝床を作っているように織り込んで置かれていました。ちゃんと白いタオルがピンクのタオルの中に織り込まれていて、まるで 小人の寝床のようでした。
昔、青函連絡船の客室などで提供されていたサービスの一つに、飾り毛布とか、花毛布と呼ばれる、毛布を花や灯台の形に折る技法がありました。以前 JAMSTEC の 公開セミナーで実演が行われたり、当機構の「かいよう」でNHK おはよう日本の番組の一部として収録が行われたことがあるそうです(実演しているのは、日本海洋事業株式会社の社員さんだそうです)。
ともすれば殺風景な船の客室に夕食を食堂でとって戻ってみるとこんな素敵なサービスがしてあれば気分も上々という、古き良き時代の名残ですね。今はその技法の多くが失われつつあるのだそうです。
この「花タオル」(ベッドタオル?)はちょっとインパクトに欠けるのですが、シーツを替えてくださった船員の心遣いを感じます。
堀
私の船室紹介
- 記事更新日:
- 2011年1月21日

2011.01.21
先日シーツの交換をしてもらいましたので、ちょっとすっきりとした船室をご紹介します。
部屋の居住空間の大きさは四畳半といったところで、その半分をベッドが占めています。写真では上の方に切れていますが、このベッドの上には実は壁に折りたたまれた2番目のベッドがあって、この部屋を二人で共有することもできます。
ベッドの横にはソファとテーブルと椅子、そして写真には写っていませんが、手前にはクローゼットがあります。ひとりで過ごすには、ちょっと狭いですが十分な大きさです。
部屋は船の下から2番目の階にあって、小さな丸窓は波が高いと時折水面下に没してしまいます。
つまりこの壁一つ隔てた向こうは暗くて冷たい海なのですが、そのへんは怖いのでなるべく考えないようにしています。
堀
~~~
追記ですが......、2010年9月にJohan Hjort号でバレンツ海での観測を行った際は、多くの研究者・技術者が乗船していたため、私と細野さんの二人で、この1つの部屋を使っていました。
はい、さすがに二人一部屋はとても狭かったです。まぁ楽しい航海でしたが...。
菊地@横須賀本部から...トロムソ出港
- 記事更新日:
- 2011年1月21日
2011.01.20
バレンツ海に向かう前に、給油と数名の乗船者の下船を兼ねて、
トロムソに7時間寄港しました。煌々と輝く北極教会がお出迎えです。
久しぶりに揺れがない状態で、不思議な感覚です。
ゾンデ観測は停泊中でも実施します。トロムソ空港にかなり近いため、
堀研究員の巧みな英語力で航空管制と電話で放球のタイミングを調整し、
予定通り観測ができました。
これから北上し、バレンツ海へ向かいます。
猪上
トロムソ入港
- 記事更新日:
- 2011年1月21日

2011.01.20
ノルウェー現地時間の20日の朝に、予定通りトロムソに入港しました。トロムソは入り組んだフィヨルドのなかにある小島に生まれた小さな街ですが、久しぶりに人間の住んでいる陸地に近づいた私たちには街の灯りがとてもはなやかにみえます。
これから夕方まで燃料の補給や、荷物の入れ替えなどを行い、旅の後半、バレンツ海にむけて出港します。
運がよければ、お昼ごはんは久しぶりに地上に降りて街で食べられるかもしれません。
堀
月明かりの海
- 記事更新日:
- 2011年1月20日

2011.01.19
船は前半の観測を終え、11ノットと足早に一路トロムソにむけて進んでいます。明日の朝にはフィヨルドについて、数時間の寄港を行う予定です。私たちにとっては、一週間ぶりに船が揺れない、落ち着いた海になるのでほっと一息をつけそうです。
本日の 0 時の観測では、月明かりが海を照らして波が銀色に輝くその向こうに街の灯りがいくつか見えて、目を楽しませてくれました。
トロムソを出発したら、いよいよ旅の目的地、バレンツ海です。
堀
明るいうちに
- 記事更新日:
- 2011年1月20日
だんだん明るい時間が少なくなってきているので、記録用にいろいろな写真や
ビデオを撮っています。特に外国船で観測をする場合は、事前の情報量が
限られているので、次回参加する人のためにもいろいろな情報が必要です。
今回は9月の観測のときと違い、デッキに他の観測機材が置かれているため、
放球スペースが非常に限られた状況で観測しています。
猪上
ノルウェーの船員さんたちの仕事
- 記事更新日:
- 2011年1月20日

2011.01.19
今回の観測はノルウェー海洋研究所の定期航海に便乗させていただいて実施しています。ではノルウェーの船員たちはなにをしているかというと、決められた海 の線上でプランクトンを収集したり、CTD といわれるプローブを海に沈めて海の温度と電気伝導度を調べたりしています。
ノルウェーは日本同様に海洋資源の豊かな国ですので、こうした地道な調査が重要視されているのですね。日本で皆さんが口にされる生サーモンは、ノルウェーからチャーター便で届くものがほとんどだと聞きます。ノルウェー海洋研究所は、そうした養殖業のための基礎データ収集も行っている組織です。
こうした地道な調査が、遠く離れた日本の食卓の安全までつながっているわけです。
堀
船のうえの 24 時間
- 記事更新日:
- 2011年1月20日
定時の観測が始まりましたので、このへんで船の生活の24時間をご紹介したいと思います。観測は1日に4回、6時間ごとに行っていますので、その間に睡眠、仕事、食事などを上手に割り振らなくてはいけません。でも逆に、観測時間が生活のリズムを整えてくれるので調子が出てくるとむしろ楽な面もあります。
* 朝5:30起床、6時からゾンデ放球のための準備に入り、6:30 に放球。同時に XCTD という、海のなかの電気伝導度と水温を調べるプローブを投下します。
* 朝7:30、朝食:ゾンデの観測がまだ終了していないので、朝御飯のときだけは観測を中座して食べてからまた観測部屋に戻ります。
* 午前中:休息、お仕事
* 11:30、昼食
* 12:00、12Zのゾンデ放球準備に入り、12:30 に放球&XCTDします。
* 午後:休息、お仕事
* 17:30、夕食
* 18:00、18Zのゾンデ放球の準備に入り、18:30 に放球&XCTD。
* このあたりで仮眠
* 0:00、00Z のゾンデ放球のための準備に入り、0:30 に放球&XCTD
それぞれのゾンデ放球後に、少なくとも一人は観測機器について1時間半ほどの観測を見守らなくてはいけませんので、3人で交代しながら休息をとります。
堀

作業部屋で、ゾンデ観測準備中。真ん中が猪上主任研究員。赤い防寒服を着て放球に備えているのが、堀研究員。(写真は細野さんより)

低くなる太陽
- 記事更新日:
- 2011年1月20日

2011.01.18
船が北上するにつれて、少しずつですが日の出は遅くなり、そして日の落ちるのが早まっていきます。この写真は今日の昼のゾンデ放球時に撮影したものですが、真昼でも太陽はそれほど昇らず、水平線を横切ってからまた沈んでいきます。さらに北に、バレンツ海に到達するころには太陽とは一時お別れです。
光があるうちに、ゾンデ放球の様子や、観測の現場の風景を撮影したりしています。
堀
北極圏
- 記事更新日:
- 2011年1月20日
北緯66度を越え、ロフォーテン諸島へ向けて北東進し始めました。
我々の観測も開始しました。気温や湿度の鉛直分布を観測するラジオゾンデと、
水温や塩分を観測するXCTDです。現在までに2回実施しました。
北極圏へ突入し、日が短くなってきたので、昼間でも夕焼け程度の明るさです。
夜は晴れていると月が明るく、雲もくっきり見えます。
猪上
船の揺れ対策
- 記事更新日:
- 2011年1月20日

2011.01.17
先日の低気圧との遭遇から、船内の椅子には写真のようにゴムバンドがかけられるようになりました。もともと船に備え付けの椅子はキャスターなどがついていないのですが、それでも揺れが大きくなると椅子ごと横倒しになってしまうので、こうした対策がとられているのです。ほかにも洗面台の扉の留め金や、机の上に必ず敷かれている滑り止めのゴムシートのように、船の中には普段の生活とは少し違うところがところどころあります。
堀
ブリッジ
- 記事更新日:
- 2011年1月17日
2010.01.16
昨日からの暴風は止み、うねりの残る中、北西へ進んでいます。海洋観測も再開
されたので、ブリッジでは船長が操舵席とCTD観測の操縦席を行ったり来たりし
ています。船内では船長を含め、半袖姿の人がちらほら。南西風が入り込んでい
るため、北緯63.5度にして気温+8℃。東京よりも暖かいかもしれません。
猪上
Johan Hjort号は今どこに
- 記事更新日:
- 2011年1月17日
http://www.sailwx.info/shiptrack/shipposition.phtml?call=LDGJ
ここに書かれている表を見たところ......
1月15日18:00から19:00頃は、47knotの南風が吹いていたのですね。
それはそれは大変だったと思います。ご苦労様です。
猪上さん、情報ありがとうございました。
どうやら天候・海況も少しは回復して観測が再開したようですね。
安全に気をつけて、頑張って下さい。
文責:菊地@横須賀本部から...

荒れる海にて
- 記事更新日:
- 2011年1月17日

2010.01.15
低気圧の影響で海は昨日から荒れ模様になっています。ノルウェーの船員たちも観測ができずに、何時間も同じ場所で漂流して待機していることもあります。
船に乗船しての観測がはじめての私にとってはまず最初の試練です。
薬を服用して船酔いを抑えているのですが、それでも長い間身を起こしている頭の奥のほうからしびれるような感覚がやってきて、それをそのまま放置していると錆の味のする唾液が口の中に広がって「これはいけない」とベッドに横になる、という繰り返しです。
それでも今日になってかなり慣れてきたのか、昨日ほどは酔いを感じません。窓から海をみて、そそり立つ波を楽しむ余裕もでてきました。
堀
荒天待機
- 記事更新日:
- 2011年1月17日
航海が始まって3日目ですが、さすが冬の北大西洋、発達した低気圧が早速ご挨拶です。30m/s弱の南風が吹き続け、波が高く船は大揺れ。全ての観測が一旦中止で、荒天待機状態です。
日本を出発して約1週間経ったことだし、船内で洗濯をしてみることにしました。それらしいボタンを押して、スタートさせてみたのですが、脱水が中途半端に終わっていました。ノルウェー語で意味不明な部分があったようです。乗組員のThomas さんとBenteさんをつかまえて、使い方をなんとなく教わりました。
タッキ(ありがとう) 。
猪上
IMRの船
- 記事更新日:
- 2011年1月15日
Johan Hjort号は水産系の船だけあって、トロールやプランクトンネットの観測を詳細に実施しているようです。ノルウェー沿岸は暖流が北上しているため、北緯63度付近でも海洋の表層は6℃と暖かいです。低気圧が近づいてきているため、船の揺れが大きくなってきました。
我々の観測を始める場所(北緯65度以北)に到達するにはまだ2,3日かかりそうです。
猪上
トロールによる海洋生物調査もやっています。
旅の道連れ
- 記事更新日:
- 2011年1月15日

2010.01.14
今回乗船させていただいているのはノルウェー海洋調査研究所(Institute of Marine Research, Norway (IMR))の船で、ノルウェーの水産資源の調査のために運行しています。私たちは彼らの観測のじゃまにならない範囲で乗船を許可されていますので、船のスケジュールは基本的にノルウェー側の都合に従わなければなりません。
今日は北緯62度57分、東経3度55分の観測地点に停船し、これから丸一日同じ場所を漂ってプランクトンなどの観測を行うそうです。北へと急ぐ私たちにとっては待ち時間が続くことになります。
船には魚を狙うカモメたちが群れをなして着いて来ていましたが、停船とともに彼らも水面に降りて波間を漂っています。船がトロール漁をおこない、魚の分け前にあずかるまでは、彼らもじっと待ち続けるのでしょう。
堀
フィヨルドのなかを航行する
- 記事更新日:
- 2011年1月14日
2010.01.14
航海が始まって一日が経ちました。現在北緯62.5度、東経4.5度付近に停泊中の船のなかでこの記事を書いています。
航海最初の目標は、ノルウェー沿岸から北西方向へまっすぐ伸びる線上の観測ですが、先の記事にも書いていたように、この線の最南端までは波を避けるためにフィヨルドのなかを航行していました。 氷河が削った地形であるフィヨルドは水が鏡のように落ち着いていて美しい風景ですが、浅瀬が多く、航行は気をつかう場所でもあります。
窓から外を見れば、雪をかぶった岩山が周囲に広がっていて、見る人を誘いだすようです。
堀

フィヨルドを超えて
- 記事更新日:
- 2011年1月14日
いよいよベルゲンを出港しました。ノルウェー沿岸はフィヨルドで入り組んでいるため、外洋に出るにも時間がかかります。しかし最初の観測点に到達するまではフィヨルドや小さな島々の合間を縫って北上し続けます。というのも、一旦外洋に出ると波が高いため、観測の準備を整えるのが困難になるためのようです。
海図には灯台のマークがたくさんついており、夜はそれを頼りに航行しています。今夜は月明りで雪に覆われた島々がよく見えますが。
猪上

(船のナビゲーションシステムの図、猪上主任研究員より)

(雪と霧の中に浮かぶ フィヨルド内の小さな島、細野さんより)
Johan Hjort号観測航海スタート!
- 記事更新日:
- 2011年1月14日

予定通り、1月13日現地時間午前9時30分に、Johan Hjort号はベルゲンを出港し、18日間の航海に出発しました...と連絡がありました。このあとノルウェー海とバレンツ海での観測が始まります。下の地図は猪上主任研究員から送られてきた今回の航海予定です。ノルウェー海洋調査研究所(IMR)による海洋観測とともに、我々はラジオゾンデとXCTDを用いた大気海洋相互作用に関する観測を行います。
何より航海の無事を祈っています。
文責:菊地@横須賀本部...

観測準備完了
- 記事更新日:
- 2011年1月13日
天気は回復し、昨日よりも明るい一日でした。ブリッジの屋上から雪化粧したベ
ルゲンの街並みが見えます。ブリッゲンとフロイエン山をバックに写っているの
は、今回参加する我々3名(左から猪上、堀、細野)。どんな航海になるので
しょうか? 明日1/13 9時出港です。
猪上
後ろに見えるのは、世界遺産であるブリッゲンとフロイエン山。
雨の中の艤装作業
- 記事更新日:
- 2011年1月12日
Johan Hjort号の母港のベルゲンは雨で有名な街。昨日も今日もみぞれや雨が
降っています。日本から発送した機材はIMRの倉庫に到着済みで、早速船へ積み
込みました。観測に必要なアンテナ類の艤装は停泊中にした方が断然楽なので、
冷たい雨が降っていましたがさっさとやってしまいました。明日も雨でしょうか
ら。世界遺産のブリッゲンは対岸に見えますが、標高320mのフロイエン山は中腹
から雪がかぶっています。
猪上
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Johan Hjort号に乗船するためにノルウェー・ベルゲンに出発した猪上主任研究員から早速レポートが届きました。堀研究員、観測支援をして下さる細野さんともども無事に到着したとのこと。良かったです。レポートをアップしておきます。(菊地)
気象観測支援データサイト
- 記事更新日:
- 2011年1月12日
このサイトでは、現在も北極域の日々の海氷・海水温分布、海氷インデックスとGPV2日予報、低気圧経路予測などの情報を、準リアルタイムで配信しています。
http://www.jamstec.go.jp/rigc/nhcp/climate/realtime/mirai/
今回のJohan Hjort号航海に際しても、バレンツ海の大気・海氷・海洋状況を事前に入手し、観測計画策定に役立てることは非常に大切です。
現在、北極海中央部には1050hPaを超える立派な高気圧が居座る一方で、大西洋側には低気圧が並んでいます。9月とは異なる状況です。どのような観測結果が得られるのか、楽しみにしています。
(文責:菊地@横須賀本部から...)


北極航海ブログ再開!(Johan Hjort号観測航海 2011冬)
- 記事更新日:
- 2011年1月 8日
9月にも同様の観測を行ったバレンツ海ですが、日本の気候への影響が示唆される重要な領域です。あれから気象・海洋環境がどれだけ変わったのでしょうか。

10月に海洋地球研究船「みらい」による北極航海(MR10-05)が終わると同時に更新を止めていた当サイトですが、今回の観測の進捗や、写真など、送られてきた情報を、改めまして「北極航海ブログ」として更新・ご紹介します。
「みらい」北極航海を終えて
- 記事更新日:
- 2010年10月21日
54日間の「みらい」北極航海が終了しました。乗船研究者は、ダッチハーバーで、「みらい」を下船し、それぞれ、アンカレッジ経由で、飛行機で帰国の途につきました。一方、「みらい」は、私達と交代でダッチハーバーから乗船した、次の航海の乗船研究者達を乗せて、既にベーリング海、北太平洋での、次の観測航海が始まっています。
「みらい」の航跡を見ると、いくつもの場所で交差しています。今航は、耐氷船「みらい」の観測が最もやりやすいはずの、9月中旬の天気が悪く、融け残った氷の帯も多かったので、航路選定が難しく、計画変更も相次ぎ、乗船者全員に負担が多い航海になってしまいました。日々刻々と変化する海氷状況の中で、完成した絵を想像しながらパズルのピースをはめていくように、観測計画を立て直し、実施していくことは、氷を割ってどんどん海氷域を進むことができる砕氷船での北極観測には無い苦労ですが、乗船者、陸上から支援してくれた人々、全員の力で素晴らしい観測航海を実現することができました。また、「みらい」が誇る海洋、気象、地質等、多岐に渡る観測設備や、それらを扱う乗組員や観測技術員のスキルとプロ意識は、日本だけで無く、外国の乗船者も驚くほど、高いものです。今回のような質、量の総合的な北極観測は、「みらい」でしか実現しなかったと思います。
最後になりますが、中山船長、石岡船長をはじめ「みらい」乗組員の皆様、GODI、MWJ 観測技術員の皆様、乗船研究者の皆様、MR10-05に関わった全ての皆様に、感謝します。これから、今航で得た素晴らしい観測データを、研究成果として発信していくことで、今航海をサポートしてくれた皆様へ、恩返しできればと思っています。

観測終了
- 記事更新日:
- 2010年10月17日
13日をもって北極海での観測が終了し、現在はダッチハーバーへ向けて南下中です。風速20m/sを越える荒天で、結局集合写真も船の中で撮影しました。その後、船長から一人ずつ乗船証明書が手渡されました。入り乱れた航跡が今航の観測の厳しさを物語っています。
出港時には満載だった燃料も水も底をつきそうになっているのかもしれませんが、それに見合うだけの観測成果がずっしりと研究者の手中にあります。観測を支えてくださった船長をはじめ乗組員の皆様、観測技術員・研究者の皆様、陸上支援の方々、ありがとうございました。
船内からの私の報告はこれにて終了させていただきます。毎日このブログにお付き合いくださったたくさんの方々に感謝いたします。
(文責:猪上)
みらいの「未来」へのメッセージ
- 記事更新日:
- 2010年10月17日
みらいはようやく45日間の航海を終えて、いまはベーリング海峡をこえてダッチハーバーに向けて航行中です。長い観測に携わったみなさん、お疲れ様でした!
今日は乗船していたStephan Rellaさんから、「みらい」の「未来」にむけたメッセージと、素敵な詩をよせていただきました。日本にいる私たちも、しばし心を北極にむけて読んでみたいと思います。
- - - - -
Hello! I would like to thank everyone onboard for this great cruise, for all experiences and conversations in this world on its own.
"Mirai" means future. The future is invisible, but as real as Mirai. Therefore by believing in the invisible, we believe in the future. This is true for Arctic science trying to uncover the unseen for the welfare of environment and mankind, but it is also true for trust in this world and beyond this world.
こんにちは。このすばらしい航海に乗船していた方々に感謝します。多くの会話や体験をさせていただきました。
みらいという言葉は、未来という意味です。未来は見えないものですが、みらいと同様に確かに存在するものです。目に見えぬものを信じることにより、私たちは未来を信じます。これは、地球環境や人類の幸福のために目に見えぬものを捜し求めるという北極の研究そのものです。 またそれは、この世界を信じるということですし、未だ見ぬ世界を信じるということです。
Towards the light
Alone in grayish waters
She travels through the time
Listens to the tales of wind
Mingled in the brine
Her heart is moving up and down
Towards the rise of sun
She never knew she's not alone
In glorious light she lands
Stephan Rella (from Austria; Post-Doc at NIES, Tsukuba)
ゾンデクルー大集合
- 記事更新日:
- 2010年10月13日
残り2日となったゾンデ観測ですが、今日は屋外に置いてあるヘリウムガスを使いきってしまうために、手放球をすることにしました。15時30分はゾンデ観測を担当する人間が全員起きている時間帯なので、これを機会に集合写真を撮りました。この7人でラジオゾンデを200個以上放球。これは去年の最多記録136個を大幅に上回る数です。それだけ今年は観測するターゲットが多かったわけで、その主たる原因が北極低気圧でした。
海氷面積を変動させる北極低気圧の観測的研究は研究業界を見回してもほとんど例がありません。これはラジオゾンデとドップラーレーダーの同時観測ができる船が他国にはないからです。「みらい」独自の観測設備で他国の砕氷船をもって
してでも不可能な観測を今年はできたわけです。航海後すみやかに解析結果を論文にまとめ世界に発信したいところです。
北緯70度よりも南に来て、荒れるベーリング海が間近です。乗船者全員の集合写真も撮っておきたいですね、首席!
(文責:猪上)
風がはこんでくるもの
- 記事更新日:
- 2010年10月13日
地球を温暖化させる最も大きな原因は、我々が排出する二酸化炭素を中心とした気体が大気中で増加することによるものだとされています。しかし、これら温室効果気体による気温上昇は実際より高いと見積もられています。それでは一体何が抑制しているのでしょうか。それは大気中に浮遊する微小な液体や固体の粒子(エアロゾル)が鍵を握っているようです。
エアロゾルには地球を寒冷化させる働きがあるとされています。ひとつはエアロゾルそのものが太陽光を散乱・吸収する直接効果と、もうひとつはエアロゾルが雲などの核として物理的・光学的特性を変化させる間接効果です。
欧州では1980年代から全球平均よりも急激に温暖化していることを、耳にしたことがあると思います。その原因は、過去30年で霧などの発生日数が約半分になったことによるものだとされています。時を同じくして始まった大気汚染を削減する努力が、霧などを発生させる化石燃料起源エアロゾルの放出量減少を引き起こし、逆に急激な気温上昇を引き起こしていた皮肉な結果を生んでしまいました。
そして、海洋大気中に浮遊するエアロゾルは、海面に沈着して海洋表層の生物生産を活発にしてくれる働きもあります。エアロゾルの化学成分をみてやると、生物活動に必要な栄養素を成分としたものがあり、それが光合成活動を活発にさせ二酸化炭素を海に取り込んでくれる。
北極海に浮遊するエアロゾルはどこから運ばれてきているのか。私は本航海で、これまで推定に過ぎなかったエアロゾルの海面沈着量の直接測定を試み、洋上に浮遊するエアロゾル量の測定や化学成分の分析をすることで、エアロゾルのもつ働きを少しでも明らかにできればと思っています。
(文責:近藤・東大 AORI)

エアロゾル海面沈着量の直接測定システム(左)とエアロゾルを採取したフィルターサンプル(右)
船上でのリフレッシュ
- 記事更新日:
- 2010年10月12日
私の部屋の近くにはこんな案内があります。
「娯楽室エリア」。なんだかわくわくしてきます。早速行ってみましょう。

洋室です。ここには漫画・小説が大量に置いてあります。あとあまり利用者はいないようですがカラオケも完備。娯楽室は他にもDVDが置いてある和室があります。畳の香りに誘われて、飲み会なんかもたまにここで行われているそうです。また、簡単な運動器具が置いてある運動室やサウナルームもあります。

長旅の航海、研究に没頭し気が滅入ることもしばしば。たまに息抜きすることがいい仕事に繋がります。船員、研究員が常にハイパフォーマンスを発揮できるよう、このような施設があるのはとても喜ばしいことです。航海も残りわずかですが、私はまだお世話になりそうです。
(文責:国立環境研究所/筑波大学 篠崎)
今週の一枚
- 記事更新日:
- 2010年10月11日
JAMSTECのトップページにリンクされている「今週の一枚」のコーナーでは、珍しい写真や画像が紹介されています。みらい北極海航海からもこのブログではお見せしていない画像を採り上げています。1回目は白い虹とラジオゾンデの放球シーン、2回目は発達した低気圧の衛星画像、そして今週は後部デッキから撮影したオーロラの写真(MWJの佐藤弘康さん撮影)です。
厳しい環境下で見ることができる美しい北極海の一コマをいろいろな角度で紹介してきました。次回の一枚は数週間後になってしまうかもしれませんが、首席が何やら企画しているようですよ。
(文責:猪上)
私の部屋紹介:船の4人部屋
- 記事更新日:
- 2010年10月10日

今日は「研究員(16)(17)(18)(19)」の部屋をご紹介します。この部屋は北海道大学の藤原周さんと松野孝平さん、筑波大学の秋山昇平さん、弘前大学の佐藤和敏の4人部屋です。
入口から入ると共有スペースがあり、四隅にそれぞれの小さい個室があります。このフロアーは船橋(ブリッジ)の4階下にあり、研究員の居室の他に理髪室や食堂、自動販売機など他階にないものもあります。また、食堂が部屋の近くにあり、今日のメニューがすぐにわかります。
この部屋の特徴は観測などが多忙で、昼間この部屋の方はほとんど居ません。しかし、昼夜問わず訪問者が多いのもこの部屋の特徴で、他の部屋の方が居ることが多く賑やかな部屋です。
また、坊主率が高く現在75%となっています。下船までに100%にすることを密かに狙っているとか・・・
さらに夜はちょっとした宴会会場となります。皆さんとは専門分野も大学も違いますので、色々なお話が聞けてとても楽しいです。
しかし、宴会が多いと部屋が汚れることも多くあります。そのため、共有合スペースの清掃はこの部屋の掃除夫によってこまめに行われています。個室の清掃まではいきわたりませんが・・・
残り一週間余り、そろそろお酒もつまみも尽きてきました・・・
(文責:弘前大学 佐藤和敏、写真提供&添削:北海道大学 藤原周)
後部操舵室屋上からの眺め
- 記事更新日:
- 2010年10月 9日
みらい北極海航海では、ドップラーレーダーを常時動かしているため、至近距離でレーダービームが届く箇所は通常立ち入り禁止です。昨日他の機材のメンテナンスのためにレーダーを短時間止めたため、後部操舵室の屋上に登る機会があり
ました。
右舷側では丁度CTD観測が終了し、水切りをしているところです。デッキ中央ではピストンコアで採取した泥を処理しています。後ろを振り返るとラジオゾンデの放球。いろいろな場所で各観測が実施されいているの分かる場所でした。
最近は雪が降ったり、晴れたり変化が激しいです。デッキには雪が積もり、観測の前に雪かきが必要な場合があります。海氷域は毎日確実に南下し、つい5日前に行ったところが既にみらいでは行けない領域になっており、寂しさに似た不思議な感覚に襲われます。この航海もあと1週間を残すのみ。観測も大詰めです。
(文責:猪上)
もうちょっと知りたい微生物のこと
- 記事更新日:
- 2010年10月 8日
この間、とても美しいオーロラが出ました。寒空&満点の星空の中オーロラを見る、という感動の渦の中にいながらも、私は「あの星、微生物みたい。数えてしまう」と言ってしまって、その場が一瞬エーッとなりました。研究室の帰り、自転車をこぎながら見る星空も、顕微鏡下の微生物に見える時が多々あります。
私は大学で海洋微生物を勉強していて、2年前と今年、北極の微生物研究を行うために「みらい」に乗船させてもらっています。今回は同じ研究室の秋山君(彼は昨年北極航海に乗船)と参加しました。
前述の「活躍する女性観測技術員たち(2)」でイケダさんとヨシダさんが植物プランクトンのCO2吸収能の見積りを担っているのに対して、私達はもっと深い、光の届かない中深層における微生物(中でも「古細菌」)のCO2固定能を見ようとしています。
1滴の海水の中に数百~数十万個、古細菌がいます。これらのうちの何割かが、CO2固定能を有している可能性が言われ始めたのが、ここ数年。膨大な体積の海洋中で、本当に古細菌がCO2固定していたら、、、それは莫大な量カモしれません。今回の北極航海で取りためたサンプルを片手に、微生物の謎に一歩でも近づけたらと思います。
(文責:佐藤千恵(筑波大学))

蛍光顕微鏡下の微生物

採水の様子(カゴいっぱいの海水サンプル。この後ろ過して微生物をフィルター上に集め、研究室に持ち帰って分析します。)
流氷の天使達
- 記事更新日:
- 2010年10月 7日

ずばりクリオネ (種名:Clione linacina、和名:ハダカカメガイ) です。無殻翼足類の1種で、最も大きく、最大8.5 cmにも達します。北極海や亜北極域 (北太平洋亜寒帯域やオホーツク海など) に分布し、有殻翼足類Limacina属の数種だけを殻から引きずり出して捕食します。泳ぐ姿はかわいらしいですが、いざ餌を食べるとなると半狂乱状態で獲物に食いつきます。
左の写真の個体はアラスカ沿岸で採集したものを撮影しました。お腹が黒くなっているのは、右の写真の有殻翼足類Limacina helicina (ミジンウキマイマイ) を捕食したものが残っているからです。Limacina helicinaは石灰質でできた螺旋状の薄い殻を持ち、一対の翼足を用いて遊泳します。最近注目されている海洋酸性化によって、その存在が危ぶまれている種でもあります。殻を持っているだけに、クリオネと比べると重そうにパタパタと泳ぎます。
現在、1~3 cmのクリオネを12匹とミジンウキマイマイを数匹ほど飼っています。たまに水変えをしますが、海氷のある北極海では塩分の変動の幅が大きいので、濃度の調節をしないと直ぐに弱ってしまいます。ウェットラボに訪れる訪問者を癒してくれる2大巨頭です。
(文責 北海道大学 浮遊生物学研究室 松野 孝平)
船上のハッピーバースデー(その2)
- 記事更新日:
- 2010年10月 6日
用意周到なグループもいます。
部屋の片隅では土井さんの誕生日会。なんと乗船前にダッチハーバーでケーキを購入し、自ら誕生日会をプロデュース。ケーキは1ヶ月間冷凍保存!作業用ヘルメットには誕生日が記載されたシールが張ってあり、さりげなく自己主張も。関係者は大方Xデーを知ることに。
主賓は終始ご満悦。赤・青・緑のカラフルなクリームのかかったアメリカンケーキを楽しくいただきました。当日はなんとピザの差し入れもありました。
(文責:猪上)
船上のハッピーバースデー
- 記事更新日:
- 2010年10月 6日

数ヶ月も船の生活をしていると、その間に誕生日が訪れる乗船者がいます。数日前に誕生日@北極海をむかえたのが、アラスカの研究所IARC(International Arctic Research Center)のロブさん。研究者、観測員が集まって小さな誕生日会をしました。
陸上と違って物がそろえられない船上では、飾りつけも大変です。写真見えるでしょうか?マリンワークジャパンの佐藤さん力作、カップラーメンの容器とアルミホイルでできた手作りのくす玉です。ワインやお菓子を持ってきてくれる人もいれば、私も乗船前に急遽買った、粉を混ぜて作る杏仁豆腐を作って持参しました。持ち寄りのパーティ、なかなか温かな誕生会になりました。
(文責 佐藤千恵(筑波大学)、 写真 佐藤弘康(MWJ))
海氷が消えてまた押し寄せるアニメーション
- 記事更新日:
- 2010年10月 5日

オーロラ
- 記事更新日:
- 2010年10月 5日
GODIの末吉さんは深夜の観測を担当していますが、ついに昨夜きれいなオーロラの撮影に成功(魚眼レンズ使用)。オーロラのカーテンの向こうには昇りはじめた月と無数の星。こんなに晴れている夜は珍しいです。
例年、乗船者の中には立派な一眼レフを持ってくるカメラ小僧が数人はいるのですが、今年は見かけていないようです。シロクマも昼間には登場していないようなので、カメラを使う機会が少ないせいかもしれません。
10月になり、夜が長くなってきました。海は急速に冷え始め、毎日刻々と海氷域が南下してきています。みらいの観測できる場所もいよいよ狭くなってきました。
(写真:末吉 GODI、文責:猪上)
初めての北極海
- 記事更新日:
- 2010年10月 5日
「みらい」の北極航海には何人かの学生さんも乗船しています。今回は北極海に初めてきた弘前大学の佐藤さんから感想が届いています。
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今回北極海に来たのは初めてですが、船に乗って観測するのも初めてです。最初は慣れないことばかりで大変でしたが、気がつけば1カ月が経っていました。振り返ると、この1カ月なかなか体験できないことばかりだったと思います。
ラジオゾンデ観測や他観測の見学やお手伝い、初めて見た海氷やクリオネなどの生物。その中でも特にオーロラはとても感動的でした。空にカーテンのように広がり、降り注ぐように見えるものもあり、北極へ来ているんだなと改めて実感しました。
観測以外の生活でも色々なことが体験できました。特に乗船している方はそれぞれ研究している分野や出身地なども違うので、色々な話が聞けてとても楽しいです。
まだまだ北極海を航海していたいですが、残りも約2週間となってしまいました。残りの期間一体どのようなことが体験できるのか非常に楽しみです。できればまた北極海に来てみたいです。
(文責:弘前大学 佐藤和敏)
活躍する女性観測技術員たち(3)期待のルーキー
- 記事更新日:
- 2010年10月 4日

マリンワークジャパン期待のルーキーが担当するのは、海に溶けている炭酸系物質の測定。彼女は大学時代に野球部員としてグラウンドで活躍し、今は観測技術員として世界の海で活躍しています。分析サンプルのひとつひとつに一球入魂。一生懸命な様子がとても初々しいですね。野球部で鍛えた体力と精神力で、寒い北極海の観測に大きく貢献してくれるでしょう。
炭酸系物質の測定は、北極海の淡水化・酸性化、また炭素循環や生物活動の研究に欠かせません。海氷融解が急激な速さで進行している北極海は、淡水化と酸性化の影響で、世界のどの海よりも、炭酸カルシウムを殻にもつプランクトンにとって住みにくい環境になってきています。炭酸カルシウムを殻にもつプランクトンがダメージを受ければ、食物連鎖網を通じて、より高次の生態系に影響を及ぼす可能性があります。今変わりつつある北極海の様子を海水から探るために、期待のルーキーをはじめとする炭酸系分析チームの活躍が期待されます。
(文責:西野)
活躍する女性航海士
- 記事更新日:
- 2010年10月 4日
みらいでは各部署とブリッジとの連絡をトランシーバー越しに密に行います。いくつかの観測が同時進行していると、各部署からひっきりなしに連絡が飛び交います。ブリッジ側の受け手は女性三等航海士の和久井さん。トランシーバーに応答しつつてきぱきと仕事をこなしています。
ラジオゾンデ観測をする際にも連絡をとって、船の相対風を変えてもらったりしているのですが、今日はゾンデ放球も手伝ってもらいました。現場を知ってもらうことで、今後の観測作業がよりスムーズに進むことでしょう。
ブリッジの机には海図や海氷・天気図、今後の観測作業・運航計画などの書類がたくさん並んでいます。研究者の観測リクエストに応え、かつ船の安全運航を両立しなければならないブリッジ。ダッチハーバーまであと2週間、よろしくお願いします。
(文責:猪上)
(写真:ブリッジの様子)
プランクトンネット
- 記事更新日:
- 2010年10月 4日
今回は、プランクトンネットについてご紹介させて頂きます。
皆さんは子供のころ虫捕りをしたことはありますでしょうか?公園や空き地で喜んで振り回していた記憶のある方も多いと思います。プランクトンネットはその時に使っていた網と目的は同じです。ほしいものを取るのです。しかし、捕まえるために追いかけまわしたり忍び寄ったりするわけではありません。
プランクトン採集の場合、「定量的」という言葉が一つキーワードになってきます。現場の水中内の動物プランクトン量を正確に捉える、ということです。そのためには①ネットを通過した海水中の動物プランクトンを全て採集することと、②ネットが濾した海水の量を知る必要があります。今回は①について説明したいと思います。
私が行っている動物プランクトン採集は、プランクトンネット (口径45 cm、目合い0.335 mm) を水深150 mから鉛直的に毎秒1 mの速さで曳く、というものです。動物プランクトンは素早く泳ぎますが、いかんせん抵抗の大きな水中ですし、しかも彼らのサイズが小さいですから網から逃げられることは殆どないと考えられます。オキアミなど遊泳力の高いものを定量的に採集する場合は、船を低速で走らせたままネットを曳いたりします。
しかし、全て採集すると言いましても、当然ネットの目合い (網目の大きさ) に左右されます。目合いが大きければ小さなプランクトンは採集できませんし、小さすぎればすぐに目詰まりをおこしてしまい、水柱を全て濾すことが出来なくなります。
ここで先ほど言いました、ほしいものを取る、です。
私が研究しているカイアシ類のサイズは0.5 mm程度から大きくても1 cmです。このサイズのものを全て採集できればよいので、私が北極海で曳いている目合い0.335 mm のネットで採集すれば定量的に必要な動物プランクトンを採集出来ている、ということになります。

この写真は、海に投入する際のプランクトンネットです。ネットは所定の水深まで降下させた後に、海中を鉛直的に一定の速度で曳きます。網目にかかったプランクトンは、ネットの末端にあるコッドエンド (円柱形のプラスチックケース) に集められます。

この写真は海中からあがってきたプランクトンネットを海水で洗っているところを撮影したものです。ネット地に付着しているプランクトンを全てコッドエンドに集めるために勢いよく洗っています。このように定量的に採集されたプランクトンは、研究室に持ち帰り、顕微鏡を使って種毎に取り分け、数を数えます。
海氷に覆われていた北極海では、このようなプランクトンネット観測を行った研究は非常に少ないので、今回採集した試料は、大変貴重です。これらを解析することで、変わりつつある北極海の海洋生態系を知るためには欠かせない情報となることでしょう。
(文責 北海道大学 浮遊生物学研究室 松野 孝平、写真 北海道大学 衛星計測学研究室 藤原 周)
JAMSTECカレンダー
- 記事更新日:
- 2010年10月 1日
遅ればせながら、みらい船内時間でも9月が終わります。居室を含めた船内のいたるところにJAMSTECのカレンダーがあります。今年の9月のページは去年の北極航海の写真が載っていました。カレンダー製作者が今年の航海のことを考慮して9月にしてくれたのかもしれません。
今日が9月最後だと思うと、去年といろいろ比較したくなってしまいました。去年は最低気温が-10.1℃(9/19)まで達したのに、今年はまだ-7.9℃(9/24)です。みらい最北記録を更新したものの、ベーリング海峡を越えてからの平均気温もまだ0℃程度で、今年はどうしちゃったのでしょう?
他国の砕氷船(アメリカ・カナダ・ノルウェー・ドイツ・ロシア・中国・韓国)がどんどん北極海に入り込んでいる時代ですが、残念ながら来年・再来年のみらい北極航海はないことが決まっています(次回は2013年)。他の海域よりも変化の激しい北極海、3年後にはどうなってしまっているのでしょうか?日本の北極海研究が置いてけぼりにされないよう、今年のみらい独自のデータセットから新しい知見を発掘していきたいと思います。
(文責:猪上)
一足先に観測(バレンツ海)から帰国
- 記事更新日:
- 2010年10月 1日
先に堀さんから報告してもらいましたが、「みらい」とはおよそ180度反対側で行っていましたバレンツ海でのRV J.Hjort号は9月25日にノルウェー東端の街Kirkenesに入港し観測が終了、そして先日無事に帰国しました。
観測の前半はSvarlbard諸島の東側で、穏やかな天候の中、ノルウェー海洋調査研究所が水産調査を行っている横でラジオゾンデとXCTDによる観測を行っていました。船の近くで、たくさんを鯨を見ることもできました。
そして観測の後半は東経31-32度線を、同じようにラジオゾンデとXCTDをしながら南下してきたのですが......、1020hPaを超えていた気圧がみるみるうちに下がり、気がつくと993hPaに。風はどんどん強くなり、うねりは大きくなり...。結局北緯75.0度付近(9月24日未明)では少しの間観測を続けることができなくなりました。航海が終わってから衛星観測の写真を見たのですが、低気圧のど真ん中を突っ切ってきたのですね。苦労したわけです。はい。
...そのかわり、なかなか面白いデータが取れたのではないかと思っています。180度反対側の「みらい」が観測したデータとの比較も楽しみです。
(文責:菊地)

9月24日にバレンツ海付近を通過中の低気圧。
活躍する女性観測技術員たち(2)
- 記事更新日:
- 2010年10月 1日

お笑いやスポーツ界では女性コンビが大活躍していますが、ここ「みらい」の中でも注目を浴びている女性コンビがいます。マリンワークジャパンの新人ヨシダさんと、彼女をやさしく指導する先輩のイケダさんです。
彼女たちの活躍の場は、甲板上の水槽。この水槽で海水から採取した植物プランクトンを育てるのです。植物プランクトンが炭素や窒素をどれくらいの速さで体内に取り込んでいるか測定するためです。この実験は、温暖化ガスである二酸化炭素(CO2)を北極海がどれくらい吸収できるか見積るために行われています。
大気から海洋に溶け込んだCO2は、光合成によって植物プランクトンの体内に取り込まれ、有機炭素となります。植物プランクトンは遺骸や動物に食べられ糞粒となり、それらが沈降することで、有機炭素が海洋深層へ運ばれます。つまり、植物プランクトンは、大気中からCO2を吸収し、深層へ運ぶ役割を担っているのです。今、北極海で起きている海氷減少の影響で、植物プランクトンの光合成が活発になるのかどうかは、北極海がCO2を吸収できる海になるかどうかを探る鍵となるのです。北極海のCO2吸収能力の見積もりは、彼女たちの腕にかかっているのです。
そんな彼女たち、いつも言葉をかけ合いながら実験しているのですが、それがときどき漫才に聞こえるのは私だけでしょうか?本当に息の合った絶妙なコンビだなと思います。
(文責:西野)
夜ワッチの特権
- 記事更新日:
- 2010年9月30日
ズバリ、オーロラです。私は昼番なので、まだ見てないのですが、前夜のラジオゾンデ観測の野帳を見ると、たまにオーロラが見えたとのコメントがあります。
写真は、GODI長浜主任観測技術員の昨日の野帳です。ゾンデ放球時に雲量がどれくらいか、雲はどんな種類か(層雲St、乱層雲Ns、積雲Cuなど)を毎回スケッチするのですが、夜番だと人によっては月がきれいとか、オーロラが見えたような気がする、などの(わりと好き勝手な!?)コメントが入ります。昼間なら虹が見えたとか、海氷があればその旨も。
北極航海はたいてい霧や層雲(St)で覆われて、絵心は問われないのですが、今年は低気圧に付随したいろいろな雲で空がにぎやかで、他の観測担当者のスケッチを見るのが楽しいです。
(文責:猪上)
船上セミナー開催
- 記事更新日:
- 2010年9月29日
みらいではたくさんの観測項目があり、その実施に向けて24時間体制で観測技術員や乗組員の協力を受けています。ところが、研究者は自分の課題の目的をアピールする機会が限られるため、サポートする側にその観測の意図・意義が十分伝えられない場合があります。
何に興味があるのか、そのためにはどのような観測が必要なのか、お互いの意思疎通を図るために、首席が船上セミナーを企画しました。本来、2週間前くらいから始める予定だったのですが、荒天等で観測計画の変更が激しく慌しかったため、開催がだいぶ遅れてしましました。
初回の今日は伊東首席と西野研究員。観測の合間を縫ってたくさんの方に来ていただきました。カナダやアメリカの砕氷船が観測していない西の領域が海洋物理・地球化学的には重要そうです。今航では去年は行けなかった東経領域にも入れたので、興味深いデータが得られた模様。「今年のこれまでの観測結果は、...」と口にすると、皆さん身を乗り出して聴き入っていました。やはり、自分の担当した観測項目は興味ありますもんね。
(文責:猪上)
本船の予報官
- 記事更新日:
- 2010年9月29日

「みらい」では、海氷の分布や風による海氷の移動を予測して、観測計画を決めていることは、以前のこのブログで紹介された通りですが、それに加えて、行く先での波や風の強さも頭に入れて、観測計画を決めなくてはいけません。
ただ、船上では、陸のように、ニュースで天気予報をやっているわけではないので、猪上研究員が、天気予報図から、「みらい」が今いる場所や今後行く場所の天気を読み取り、日々の観測ミーティングで解説しています。また、いざ、現場に行ってから、悪天候で観測が中止になると、限りある観測日数で航海全体の予定をこなすのが難しくなってしまいます。そこで、猪上研究員の天気予報を元に、あらかじめ、荒天で観測が中止になりそうな場所は避けて、後回しにするなど、海氷、天気、観測の全体計画を考えて、ほぼ毎日、計画を立て直しています。
今航では、9月中旬から低気圧に悩まされ続け、それは今も続いています。ある地点の数日後の風速や波高など、時間、空間分解能の粗い北極域の天気予報図からは判断が難しい内容を、猪上研究員に相談することもあり、本人曰く、そういう時は、本務の気象観測よりも、神経を使っているとのこと。これから先には、CTD観測より天候の基準が厳しい、ピストンコアなどの大掛かりなミッションも残っています。それらをいつ実施するか、本船の予報官 猪上研究員の天気予報を頼りに、観測計画を練る日々が続きそうです。
(文責:伊東)
白い金平糖
- 記事更新日:
- 2010年9月27日
朝方パチパチとあられが降ってきました。これまでも何度か小さいのは降っていましたが、今回のは直径4mm程度で雪印(樹枝状六花)が太ったような大きなものもあります。雲内で強い上昇流があるのでしょう。
それもそのはず、みらいはここ数日低気圧と共に行動しており、通常の霧や層雲によるどんよりとした空模様ではなく、時々晴れ間があるものの比較的背の高い積雲系に囲まれています。台風の目のように中心付近では風も穏やかで観測も可能なのですが、低気圧を形成する渦状の雲(スパイラルバンド)の外にひとたび出ると猛烈な風と波がみらいを襲い、ほとんどの観測がキャンセルとなります。
どうしてこのような低気圧が発生したのか、その手がかりを見つけるのもこの航海の目的でもあります。
(文責:猪上)
私の部屋シリーズ:番外編
- 記事更新日:
- 2010年9月27日
人気がなくなった海洋研究開発機構の居室です。
「みらい」の観測が始まり、そして先週からバレンツ海での観測が始まってからは、北極海総合研究チームと寒冷圏気候研究チームで残っているのは私一人になってしまいました。
それもそのはず。JAMSTEC における北極研究は太平洋側・大西洋側の2つの海の航海、観測の準備、さまざまなデータ解析作業を片手で数えられるスタッフでこなしていますので、航海が重なればこうしたことが起こります。
誰もいないオフィスに朝やってきて、夕方まで仕事をして電気を消して帰るのはなかなか寂しいものです。人がいる部屋のにぎやかさばかりが耳につきます。
といっても陸上支援が暇なわけではありません。毎日の支援サイトのチェック、定時連絡の受信、そしてブログの更新などといった広報作業、そして問い合わせに対する対応などが、それなりに入ってきます。
「みらい」の観測が終わるまであとひと月弱、この部屋から、はるか洋上の観測をサポートする縁の下の仕事が続きます。
(文責:堀)
朝食の絶品
- 記事更新日:
- 2010年9月26日
ズバリ、いかの塩辛です。朝はあまりモリモリ食べないのですが、これがあるとごはんが進んでしまいます。それもそのはず、この塩辛はみらいの中で作っているそうです。
司厨長の濱邊さんによると、イカの仕入れは八戸。10ケース程度購入するそうで、大変な量らしいです。イカゴロがたくさんはいっているのがポイントとのこと。
私の出身地である函館のイカもおいしいのですが、八戸のも美味しいなあと思いました。そして何より手作りというのがうれしいですね。
(文責:猪上)
「みらい」は最北記録を達成:9/23
- 記事更新日:
- 2010年9月25日
結氷が始まり、増加しつつあった海氷面積が再び減少していることは、22日のブログで紹介された通りですが、「みらい」もここにきて本船の最北記録を更新し、23日に北緯79度11分、西経164度57分に到達しました。今までの最北記録は2009年の北緯79度でしたが、今年はそれよりも更に20km北に進んでいます。
最北点では、結氷が始まり、できたての氷が辺りを埋め尽くしていました。今日は秋分の日ですが、ここでは既に秋を通り越して冬の気配です。気温マイナス1℃、吹雪の中で、CTD観測を行ないました。
今日の最北点到達で、「みらい」は、2008年から3年連続で、最北記録を更新したことになります。「みらい」は就航以来、北極海の激変を目の当たりにして来ましたが、このまま夏に氷が減り続ければ、やがて「みらい」でも北極点まで行ける日が来てしまうのでしょうか。
(文責:伊東)
アイスバンド
- 記事更新日:
- 2010年9月25日
出来始めの海氷を見ると北極海に冬が訪れたんだなと感じます。
今日(現地9/23)みらい観測史上最北の北緯79度以北に行って感じたのは、海氷があるのに気温が-1℃程度で暖かいということです。実際水温の-1.4℃より高いことも時々あり、なんで海氷が存在しているんだろうと不思議に思っていました。
今日は大雪だったんですが、水温がマイナスの場合、海に降った雪はどうなるんでしょう?海面には直径数cmの雪球のようなものが風向と平行にたくさん並んでいました。風で形成される小規模な海水循環(ラングミュア循環)で、雪が海面でとけずに収束してこのような縞模様が形成されたのかもしれません。
この縞模様が見えた場所よりもう少し北にいったところでは蓮葉氷など、明らかに海が凍ってできた海氷が一面に広がっていました。現在みらいは海氷に囲まれないように急いで南下中です。
(文責:猪上)
地球の歴史を記録した海底堆積物
- 記事更新日:
- 2010年9月25日
現在、地球は深刻な温暖化が進んでいますが、気候変動は現代に限ったことではありません。過去にも、人の影響ではなく自然レベルで大規模な気候変動が何度も起こっていたことがわかっています。例えばこれまでに、5500万年前は北極海の水温が約23℃といった温暖な時期であったことや、2万年前はカナダ全域が厚い氷にすっぽりと覆われているといった寒冷な時期であったことなどが報告されています。
そのように地球の過去の姿を明らかにする方法の一つに、海底の堆積物を用いた研究があります。堆積物中にはプランクトンの遺骸や、陸から運ばれた粒子などが含まれ、海洋や地球の歴史が記録として残されています。
さて、そんな海底堆積物の採取方法ですが、本航海では主にピストンコアラーと呼ばれる採泥機器を用いています。このコアラーには、コア・バレル(海底に突き刺さる中空の金属管)の中に上昇するピストンが付いています。このピストンの動きによりコア・バレルから水が押し出され、最小限のかく乱と圧縮で堆積物を得ることができます。
このように言うのは簡単ですが、実際にコアを採るとなると、数時間におよぶ海底地形の調査や堆積物に対してコアラーの最適な仕様への調整など、やることは山ほどあります。今回私は一研究者として乗船させていただいていますが、本当に多くの方々の協力があって得られるものだと目の前で知ることができました。それでいて、目的に沿った堆積物が得られるかどうかは結局のところ採ってみないとわからないといったまるで宝くじのようなもので、掘削のときはいつも祈るような思いです。
北極海は地球上で最も早く気候変動影響が出るにも関わらず、そのアクセスの難しさから古海洋研究ではいまだ未知の海域となっています。こうして本航海で得られた堆積物コアの分析結果は、近い将来の気候を予測する上で大変重要なものとなるでしょう。
(文責:国立環境研究所/筑波大学 篠崎)

マリンスノーをとらえるセディメントトラップ
- 記事更新日:
- 2010年9月24日
先日セディメントトラップという機材を北極海の深海域に係留しました。
海の生物粒子や粘土鉱物などの一部は、沈降粒子"マリンスノー"として深海や海底へ輸送されます。セディメントトラップは、この沈降粒子を集めて粒子の沈降フラックスや沈降粒子の組成を調べるための装置です。
沈降粒子フラックスや粒子組成は季節や年によって異なるので、セディメントトラップは、海洋における炭素循環や海洋表層環境の時系列変動を探る手がかりとして利用されています。今回用いる機材には26本のボトルが付いていて、一年後にトラップを回収しにくるまで約2週間おきに沈降粒子を自動で捕集してくれます。
観測船「みらい」は海氷に覆われた水域には進めないので、係留系による観測は北極海の一年を通した時系列データの取得に効果的です。今回係留した海域は、海氷減少が近年著しいとされるエリアの一つです。今後、予想されているように北極海の海氷域が少しずつ減少していくと、中・長期的な視点で北極海の海洋生態系にも大きな影響が広がる可能性があります。そのような可能性を考え、まだ海氷が残っている現在の環境動態を今回の係留実験で少しでも捉えておきたいと思います。
このセディメントトラップ観測を複数年実施することができれば、沈降粒子試料から表層海洋環境の経年変化をより詳しく調べることもできるでしょう。しかし今は機材を投入したばかりです。来年初秋にセディメントトラップを無事回収し再設置に成功するまで、待ち遠しい日々が続きます。
(文責:小野寺 丈尚太郎、写真:佐藤真奈美)
船の上の生活:自販機
- 記事更新日:
- 2010年9月24日
私はまだお世話になったことがないのですが、船内にはコカコーラ社の自販機があります。コーラ、コーヒー、ジュース、お茶などが入っています。乗船中は現金を使う機会は基本的にありませんが、ここでは必要です。意外と利用者がいるようですよ。
通信を担当している観測士の徳長さんが丁度缶ジュースを補充していたので訊いたところ、人気No.1 は意外にもピンクグレープフルーツジュースだそうです。ビタミンCをたくさんとって疲労回復といったところでしょうか。
私の部屋には乗船前にあらかじめ注文しておいた野菜ジュースや牛乳などがたっぷり残っているので、しばらくはこちらを飲み続けます。
(文責:猪上)
海の中の「よそもの」
- 記事更新日:
- 2010年9月23日

海の中には植物プランクトンなどの肉眼では見えないものから、魚やクジラなど大きな生き物まで様々な海洋生物が生存しています。その中でも私が研究している動物プランクトンは、植物プランクトンを摂餌し魚などに食べられることによって、植物プランクトンが光合成によって作り出したエネルギーを魚などへの高次捕食者へと受け渡す役割を持っています。その動物プランクトンバイオマス (生物量) の中で優占するのが、カイアシ類 (Copepoda) です。
写真はバロー渓谷で採集した太平洋産種の大型カイアシ類Neocalanus cristatus C5です。C5というのは発育段階 (copepodid stage) のことで、彼らは脱皮をする度に遊泳肢 (swimming leg) の数や腹部 (urosome) の節の数が増えます。写真の個体は、遊泳肢が5本で腹部の節が4つあることからcopepodid stage 5だということが判別できます。この種は北太平洋の亜寒帯域からベーリング海に分布し、当該海域の動物プランクトンバイオマスに優占します。つまり、北極海では「よそもの」です。
写真の個体は、ベーリング海から北極海に流れてきたものを私がプランクトンネットで採集し、顕微鏡下で撮影したものです。新鮮なので色素の分布がよく分かります。また、体内にある透明な液体は油 (ワックスエステル) です。彼らは春から夏に体内に油を蓄積した後に深海へ潜り、秋から冬にかけてそのエネルギーを使って休眠し、そこで成熟し産卵します。
私が注目しているのは、彼らがこのまま北極海で生き続け、子孫を残していくことができるかどうかです。勿論、北極海にも同じようなカイアシ類が分布していますので、流されてきた「よそもの」が北極海産のカイアシ類と競合関係にあると考えられます。温暖化によって海氷面積が激減した今、彼らの運命は変わりつつあるのかもしれません。
(文責:北海道大学 浮遊生物学研究室 松野)
追記:9月26日に正確を期するために一部表現を改めました
海氷面積再考。真実の値はどこに?
- 記事更新日:
- 2010年9月22日
9/15付で米国雪氷データセンター(NSIDC)が今年の北極海の海氷面積が9/10に最小値に達したという報告を出しました。ところがその後も減少は続いていたので、21日付でその旨が追記されています。
海氷面積の算出には日本のJAXAが開発したAMSR-Eというセンサが一般的に利用されていますが、各研究機関でその面積を算出するアルゴリズムが異なるため、面積の値が結構ばらつくことは研究者レベルでは常識となっています。私が良く見るサイトは JAXA-IARC、ドイツのブレーメン大学、アメリカのNSIDCの3つですが、今年のように観測史上3番目に少ないものの、値が拮抗する2番目の2008年と比較する場合、どの値を信じればいいのか分かりません。
データの特性を理解した上で研究者が利用する場合はいいとしても、ニュース等で報道される場合には数字だけが一人歩きするので、利用する側にも注意が必要です。どこの研究機関で発表している値なのかを明示しないと意味がありません。
今年の6月にノルウェーのトロムソで行われた海氷に関するワークショップ(2ndInternational WS of the CliC Arctic Sea Ice WG)でもこのことが議題に挙がっており、海氷業界としてどのアルゴリズムで正式な値を発表するのがいいのか、あるいは各アルゴリズムから得られたプロダクトのを平均値を正式な値にする方がいいのか、意見が分かれておりコンセンサスを得るにはまだ時間がかかりそうです。
みらいでも衛星画像を頼りに海氷のないところを選択的に航海していますが、強風でどんぶらこと流れてきた氷塊が突然現れると、やっぱり真値は現場にあるんだなとあらためて気づかされます。
(文責:猪上)
[速報] 北極の海氷、ふたたび減少
- 記事更新日:
- 2010年9月22日
「みらい」はいま何時? 海の上での時間について
- 記事更新日:
- 2010年9月21日

船内でも密か読まれているブログ
- 記事更新日:
- 2010年9月21日
実はこのブログはみらい船内でもオフラインで公開されています。ブログっぽいことは去年の航海でもしていたのですが、通信環境の問題から船からは読めませんでした。せっかく船から情報発信しているんだから、現場でも楽しめた方がいいですよね?
今年はJAMSTEC寒冷圏気候研究チームによる日本初のイリジウムオープンポートの導入により、北極海上でもwebからブログにアクセスし(ダウンロードする)、陸上と同じように船内webで読める環境が実現されました。私がカメラを持って観測現場をうろついていると、「ブログ?」などと聞かれます。乗船している皆さんが主役ですから、私としてはたくさんの方に船内の様子をどんどん報告して欲しいのですが...
このイリジウムオープンポートは、寒冷圏気候研究チームの堀研究員が作成した海氷図や天気予報図をこちらの都合の良い時間にwebからアクセスしてダウンロードできるので、日々の観測計画作成に重宝しています。特に風と海氷の動きを予想するには、これらの資料が必要不可欠です。本来JAMSTECとしてみらいに常設するべきと思いますが、今年は当研究チーム所有のアンテナと受信機を設置しています。
(文責:猪上)
活躍する女性観測技術員たち
- 記事更新日:
- 2010年9月20日
みらい北極海航海では観測をサポートしてくれる強力な観測技術員27名が乗船しています。そのうち9名が女性です。私が高層気象観測で毎日お世話になっているのは GODIの土井さん。先日強風で撮影する機会を逸してしまったので、今回紹介します。
今年4月に入社したそうなのですが、5月からすぐに熱帯の航海へ。帰国後もドック入りのみらいのメンテナンス、そして現在の北極海航海。怒涛の半年だったようです。北極海航海は初めてですが、手放球は御手の物。あと4週間頑張ってもらいましょう。
ちなみにみらいに乗船している研究者は15人で首席を含めた3名が女性です。ノルウェーの研究船に乗船中の菊地チームリーダーによると、向こうでは18名の研究者のうち半数が女性とのことで、日本との違いに驚いているようです。
(文責:猪上)
朝日拝むも荒天
- 記事更新日:
- 2010年9月20日
久々に朝日を見ました。みらいは西経175度付近に移動したので、船内時間(アラスカ夏時間)に対する日の出時刻が午前9時くらいでだいぶ遅くなりました。
webcam画像には朝日に染まるレドーム(中にドップラーレーダーがある)がきれいに写っています。手前に見えているつらら状のものは何かのアンテナでしょう。webcam自体も着氷がひどく、船首方向はまともな画像が取得できていませ
ん。
さて、今日は荒天の隙をついて係留系の設置が無事行われました。午後から次第に風速が10m/sを越え始め、暗雲が広がり、のち雨。朝の晴れ渡る空はどこかへ行ってしまいました。夜には雨で融け始めたつららが落ちて割れる音が響いてい
ます。
みらいは荒天の中、東経領域を目指しさらに西進しています。
(文責:猪上)

風の観測の重要性
- 記事更新日:
- 2010年9月17日
先日日本ではアメダスの観測機器に夏草がまきついていて正確な気温が測れていなかった可能性があるというニュースがありましたが、野外での観測はこのようなハプニングとの戦いでもあります。
今日は猪上研究員から風速の観測でのこれと似たできごとについて報告がありました。
- - -
風速は海洋観測をするときの船の体勢作りや、海洋観測が実施可能かどうかの判断基準の一つとなるため、正確な値が必要です。
昨日から船体の着氷がひどく、ついに風速計が氷で固まってしましました。船にはいくつか風速計があるのですが、順次計測不能に。私の部屋からもその様子が見え、明らかに向かい風で航走しているのに、羽が動いていませんでした。幸い昨日からの強風は止み、海洋観測には支障はありませんでした。今日、船の方がフォアマストに登って、測器のメンテナンスが施されました。
去年の航海では-5℃以下でもこのようなことはなかったのですが、今年はここ数日-1℃くらいの日が続き、着氷しやすい状況だったのかもしれません。甲板の雪かきの前に氷割りが先でした。
(文責:堀、猪上)

凍った雨
- 記事更新日:
- 2010年9月17日
みらいが最北端に到達し南下している途中で、あられのようなものが降りました。外に出てみると確かに顔にビシビシたたきつける小さな粒。最初はあられかと思いましたが、よく見ると透明な氷の粒でした。
実はみらいが航海している領域は海面付近(氷点下)よりも上空の1km付近の方が気温が高い(プラスの気温)のが特徴です。2-3km上空の雪雲から降ってきた雪がこの暖かい層でとけて雨になり、1km以下の寒冷な層で再氷結したもの(凍雨)が観測されたのだと思います。直径は1mm程度でした(写真参照)。ちなみに数時間後は、降雪となりました。気温が下がって雪がそのまま下層まで到達したのでしょう。
さあ、甲板の雪かきが必要な時期になってきました。
(文責:猪上)
「みらい」は今航の最北点に到達(9/15)
- 記事更新日:
- 2010年9月16日
「みらい」は北西の観測点を目指して進みましたが、氷の壁に阻まれ、引き返しました。このUターンのポイント、北緯78度37分、西経169度41分は、今航の最北点です。
北緯78度では、気温、水温とも-1度まで下がり、夏も終わりを迎えています。
耐氷船「みらい」は、薄い海氷は割れるのですが(写真)、1~2mもある厚い海氷を割って進むことはできません。そのため、1998年の就航以来、北極海南部の観測を中心に行なってきました。
最近は、2008年、2009年に続いて、3年連続で、78度以北の高緯度域まで到達しています。このように、耐氷船「みらい」の北極海での航行範囲が広がっていることは、北極海の海氷が大幅に減少していることの表われでもあります。
(文責:伊東)
ひっそりとした控室
- 記事更新日:
- 2010年9月16日
北極海での観測は24時間体制で行われており、観測の準備や後処理、観測プランの変更などに対応するため、控室には交代で常に2~3人が待機しています。また、控室 には、観測のいろいろな情報が集められるため、観測点に船が到着する直前には研究 者や観測技術員が集まり賑やかになります。
その控室が今日はひっそりとしています。昨日から荒天でほとんどの海洋観測が中止になっているからです。
でも、みんな、暇をもてあましているわけではありません。天候回復後の観測プランの立て直しや情報収集、たまったサンプルの分析、データ整理等で、休んでいる暇はありません。また、観測がいつ再開されるか分からないので、いつでもスタンバイの状態で待機しつつ仕事をしています。
本日午後3時ごろ、天候の回復が見込めないので、夕食時間の5時までスタンバイ解除になりました。たかだか2時間ですが、少し気持ちに余裕を持ち、仕事や休息ができたことでしょう。明日天候が少し回復しそうなので、朝4時から観測スタンバイです。
荒天で、いろいろな観測が中止になりましたが、気を取り直し、観測に臨みたいと思います。
(文責:西野)

ようやく寒くなりました
- 記事更新日:
- 2010年9月15日
今日は東風が猛烈で、私が見た瞬間値は19.9m/sでした。当然船も揺れ、予定していた観測のほとんどはキャンセルし、ただひたすら北上する日となりました。
現在北緯78度目前ですが、ようやく気温も氷点下になり、水温も-1℃以下で結氷温度(-1.8℃)に近づいています。海氷域は目前かと思いきや、波が荒いのでその気配は感じられません。いろいろな測器も着氷し始め、甲板も滑りやすくなってきました。気象観測でお世話になる吹流しも凍ってしまい、役立たずです...
これからは海氷がどんどん広がってくる時期に入ります。海氷とどう向き合って観測するか、残り一ヶ月間悩まされます。
(文責:猪上)
ロングイヤービンからの報告
- 記事更新日:
- 2010年9月15日
ロングイヤービンで Johan Hjort 号の寄港を待っていた菊地チームリーダーから連絡が入りました。現地はただいま摂氏 0 度ほど、雨の中、乗船予定の船を確認したので午後から乗船して観測の準備に入るそうです。
ロングイヤービンは北極海のスヴァールバル諸島にある街ですが、今回観測のために乗船する Johan Hjort 号はここを出航し、東経30度付近を大気・海洋の観測をしながら航行する予定です。この領域の海の情報は下流である日本の天候などを知るのに重要なヒントとなるはずです。
ちょうど「みらい」が地球を半周回った逆側を北上中で、二つの船が同時に北極海を観測することになります。
(文責:堀)

「みらい」が北に航行中
- 記事更新日:
- 2010年9月15日

船の上の生活:私の部屋シリーズ(2)
- 記事更新日:
- 2010年9月15日
首席研究員部屋は、「研究員(2)」の左隣です。このフロアーは、船橋(ブリッジ)の2階下で、他には、機関長、機関士、研究員の居室、お風呂、洗濯機、トイレなどがあります。首席研究員部屋は、仕事をする机、椅子や、打ち合わせ用のテーブルがある執務室と、ベッド、洗面台、トイレがある寝室に分かれています。船首方向に窓があり、空、海、海氷の状況を見ることができます。
船内では、限られた空間を、無駄なく使っているため、窓のある居室は、それほど多くありません。「みらい」が関根浜を出港してから3週間、ダッチハーバーを出港してからでも1週間以経ちます。だんだん船内生活が長くなってくると、まさに「私の部屋」という言葉がしっくりくるようになってきます。一期一会の観測チャンスを逃さないように、残り1ヶ月も、船長、乗組員の皆さん、観測技術員、研究者の皆さんの協力の元で、頑張っていきたいと思います。
(文責:伊東)
表層ブイ投入で海氷観測に貢献
- 記事更新日:
- 2010年9月15日
以前にも指摘したとおり、北極海では気象観測データがほとんどありません。高層気象観測はみらいが行く9月10月のみ充実しますが、それ以外は皆無です。一方、表層のデータは通年である程度確保できるよう国際的な枠組みで観測体制が
維持されています(国際北極ブイ計画:IABP)。
今日はその一環として米国ワシントン大学から依頼された表層ブイ(SVP)を3個投入しました。このブイは気圧・水温・位置情報を衛星通信で数時間毎に自動送信し、北極海の天気図の作成や研究者用の大気データの作成に利用されます。海に投入したので、今は海流や風によって流されますが、海が凍り始めると海氷と共に漂流します。したがって冬は海氷の移動速度も観測することになります。1970年代からの継続的な観測により、海氷の動きは10年で8.5%の割合で動きが激しくなってきているという報告があります。海氷が薄くなってきていることが一要因のようです。
みらい北極海航海では海氷を対象とした直接観測は困難ですが、このような形で国際的にも貢献しています。
(文責:猪上)

上空の風
- 記事更新日:
- 2010年9月14日
日は数日前の穏やかな状況から一転し、船上で10m/sの西風が吹き続けていました。
強風下のラジオゾンデ観測の手放球の様子を撮影しようとしたのですが、風であまりにもバルーンが暴れるので私も手伝う羽目に(ものすごい縦に伸びて大変でした)。3人がかりでようやく放球できました。この風はいったい何なんでしょうね。みらい北極海航海のために我々が新設した監視カメラ(撮影間隔:5秒)がその一端を捕らえていました。
波状(のこぎり状)の雲が左舷側で夕日に照らされて見えています。このような雲は風が鉛直方向に急変するような場所で形成されます(KH波)。上空で風速の急変するところがあるのでしょう。実際、高層気象観測では対流圏上層で40m/s以上も吹いており、今航の観測ではいまのところ最も強い風でした。
さて、明日から再び北上。どんな風が吹くのでしょう。
(文責:猪上)

バロー海底谷の観測
- 記事更新日:
- 2010年9月14日
ベーリング海峡から北極海に入って来た水は、アラスカ沿岸に沿って北上し、バロー海底谷を通って、北極海のより内側に広がります。この海流は、季節によって、流れの強さや、温度、塩分などの海水の特徴が、大きく変化します。この場所では、観測機器をロープでつなぎ、錘をつけて海の中に沈める、係留系観測を行ないました。観測船で北極海に入れるのは、夏だけですが、海流の通り道であるこの地点に、観測機器を残してくることで、一年を通しての海の流れや海水の特徴などが分かります。「みらい」は1ヵ月後には北極海を離れますが、観測機器は、来年、再び私たちが、ここに来るまで、観測を続け、貴重なデータを取り続けてくれます。
(文責:伊東)
海からの便り
- 記事更新日:
- 2010年9月12日
日本ではまだまだ残暑が続いているようですが、「みらい」は現在北緯72度付近のアラスカ沖で観測を行っているため寒さが身にしみます。北極海にやって来たなあという感じです。
本航海では、北極海のいろいろな場所で測器を海に下ろし、海水の流れ、温度、塩分、光の強さ、溶存酸素濃度、植物プランクトン(クロロフィル)の量などを計測しています。また、12リットルの大きなボトルに海水を採取し、各研究機関で手分けして海水中のいろいろな成分を分析するために、各種のビンに小分けします (写真1)。
そのうち一部の海水サンプルはすぐさま船内の実験室で化学分析され、例えば硝酸やリン酸、ケイ酸など植物プランクトンの栄養分となる成分の濃度が測定されます (写真2)。海の流れや物理・化学環境を知り、そこに住む生き物の様子を探ることは、今変わりつつある地球環境の理解に欠かせません。
このような海からの便り(海水サンプル)をたくさん集めて、環境変化に対する海や地球の叫びに耳を傾けたいと思います。
(文責:西野)

船の上の生活:私の部屋シリーズ(1)
- 記事更新日:
- 2010年9月12日
今日、椅子にシーツと枕カバーの替えが置かれていました。去年の記憶によるとだいたい1週間のペースで交換だったと思います。慌しい1週間でしたが、こういう生活面でふと時間の経過に気づかされます。爪を切ったり、洗濯物がたまってきたり。一ヶ月経つと今度は髪がうっとうしくなるんでしょうねぇ。
さて、私の部屋は首席部屋の隣の「研究員(2)」という部屋です。机や椅子、ベッド、冷蔵庫、洗面台、テレビなど生活と仕事が一緒くたになった空間です。去年はノートPCでちまちま観測データを解析していたのですが、大きいほうがやりやすいので今年はノートPCに加えデスクトップPCも持ってきちゃいました。窓からはフォアマストが真正面に見え、「白い虹」を撮影したインターバルカメラはこの窓際に置いています。夜はテレビをつけたまま寝ます。これは、私の場合ドップラーレーダーに何か面白いエコーが映っていないか、夜中に目が覚めたときにちら見するためです。
他の研究者の部屋はどんな様子なんでしょう?そのうち首席の伊東さんのお部屋も紹介してもらいましょう。
(文責:猪上)
もうひとつの北極航海が始まります
- 記事更新日:
- 2010年9月11日

海氷を後退させる高気圧の風
- 記事更新日:
- 2010年9月10日
そろそろ日本でも今年の北極海の海氷減少について騒がれるころではないでしょうか?今年の海氷面積は、既に去年の最小値を下回っています。詳しい値の発表は専門の研究機関に譲りますが、特に9月に入ってから急激に減少した分が2009年より少ないかどうかを決めたように思います(正直私はダッチハーバー出発前はそれほどまで減らないのではないかと思っていました)。
9月に入ると日射も少なくなり海もそれなりに冷え始めるので、海氷はとけづらい状態になります。ところが、海氷は風で北極海から押し流されて減ることもあり、その現象がここ1週間続いています。風を駆動するのは低気圧や高気圧(観測支援資料を参照)。
みらいはアラスカのバロー岬付近で観測をしていますが、ちょうど海氷が減るのに都合の良い位置に高気圧が出現しています。図はみらいで観測された気圧の時系列です。1日で10hPa上昇しました。この高気圧は日付変更線あたりの氷縁域(北緯80N付近)へ南風をもたらすので、さらに海氷域が後退しそうです。
(文責:猪上)


船内での作戦会議
- 記事更新日:
- 2010年9月10日
みらいはアラスカの最北端バロー岬沖を目指して一旦南下中です。
調査指揮室では座り込んで何やら作戦を練っています。明日はバロー沖でピストンコア等による採泥が行われる予定で、その場所決めで悩んでいるようです。観測の実施には測器の準備はもちろんのこと、海底地形の下調べなど、研究者だけ
ではなく観測技術員や船側の協力が必要不可欠なのです。
海底堆積物の解析から高緯度域の古気候変動の記録が復元されることを期待しています。
(文責:猪上)
寒さが身に染みる手動によるゾンデ放球
- 記事更新日:
- 2010年9月 8日
「みらい」の上では現在、ゾンデの集中観測中です。船には自動放球装置があるのですが、時として甲板から手動で風船を飛ばさないといけないこともあります。その寒そうな様子が猪上研究員から届きました。
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今日は今航初の手放球でした。
みらいでは多数の観測をこなすため、各ステーションで実施する観測項目の順番を決めます。通常、海洋観測にかなり時間がかかるので、私が担当しているラジオゾンデ観測(バルーンを取り付けたセンサで上空の気温や湿度、風向風速を計測)のために船の体制を整えることが困難な場合は、自動放球ではなく手放球で対応します。寒さにまだ慣れていないので、2℃でも風が吹けばかなり寒く感じます。
自動放球装置があるのに手で放球する、何だか矛盾しているかもしれませんがこれがみらいの北極海航海です。それだけ観測課題がひしめきあっています。そのほかの研究課題はそのうち乗船研究者の方にこのブログで紹介してもらいましょう。
昼食は大人気のドライカレー。食堂に入ってくるなり歓声をあげている人も。
(文責:猪上)
白い虹を越えて
- 記事更新日:
- 2010年9月 7日
私の居室では定点カメラで1分毎に海と空の様子を撮影しています。あまりはっきりしませんが、白っぽい虹が前方に見えました。どうして白っぽく見えるのかはよく分かりませんが、昨日までの霧雨とは違い、今日は高気圧の周辺を北上しているため、霧があっても薄く上空は晴れていることが関係しているのかもしれません。
みらいは一気に北上し北緯74度を越えました。気温も水温も2℃くらいとなり、みなさん冬支度です。お昼の鍋焼きうどんをおいしくいただきました。
猪上
食堂での席替え
- 記事更新日:
- 2010年9月 6日
今日は日曜日でした。特に観測がお休みになるわけでもなく、みなさん通常業務です。変わったことと言えば、首席のアイデアにより夕食で席替えをしました。
通常、船長などが座るメインテーブルには研究者側から首席や各研究課題のPIが向かい合う形で着席します(その他の人は自由席)。したがって、食堂ではお互いに特定の人としか交流できませんでしたが、日曜の夕食だけ研究者側のメインテーブルのメンバーを総入れ替えすることにしました。今日は学生さんや若手の研究者が着席。でも、観測中だったので船側の方はあまり時間が合わなかったようです。
ちなみに今晩のメニューはシチュー、鰹のたたき、白身魚のマリネでした。
(文責:猪上)
霧に浮かぶ島、ディオミード島
- 記事更新日:
- 2010年9月 5日
伊東首席が送ってくださった記事にあったディオミード島についてちょっと興味がわいたので調べていました。
ベーリング海峡の真ん中にあるこの二つの小島の真ん中には日付変更線と国境が走っており、西側の大ディオミード島がロシア領、東側の小ディオミード島がアメリカ領になっています。初めてベーリング海峡に到達した探検家、セミヨン・デズニョフが1648年に発見した島でしたが、その後不明となりました。ベーリング海峡に名前を残すヴィトゥス・ベーリングによって1728年 8月16日に再発見されたこの日がロシア正教で聖ディオミードの祭日であったことから、この名前になったということです。
この季節に海からのぞむディオミード島は幻想的な姿を見せるそうです。乗船中の猪上研究員からもその様子を報告する連絡が入ってきました。
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ベーリング海峡から本格的な観測が始まりました。CTD観測やプランクトンネットなどの海洋観測、ドップラーレーダーやラジオゾンデ観測など。ベーリング海峡を北上する際、海面水温が10℃から3℃に急激に低下していました。水温が急に低くなる場所では、大気が冷やされて霧ができることがあります。Little Diomede Islandの海面付近にだけ霧が発生し、まるで海に浮かんでいる島のようでした。(猪上)
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「みらい」はいま、おそらく過去の探検家たちが見たのと同じであろう幻想的な島の横を抜け、北極海にはいろうとしています。
(文責:堀)
ベーリング海峡を通過
- 記事更新日:
- 2010年9月 5日
みらいは、北極海の入り口、ベーリング海峡に到達しました。この海峡は、中央にある2つの島、Little Dimede Island(アメリカ)、Big Diomede Island(ロシア)の間で、アメリカとロシアに分かれています。みらいでは、アメリカ側(東側)の水道を観測しました。
ベーリング海峡では、太平洋側と北極海との水位差で、ほぼ一年中、北へ向かう流れがあり、夏は、暖かくて、塩分が低く、栄養分の豊富な水が、北極海へ海水が流れ込んでいます。今日のみらいでの観測では、水温が10度になっていました。この暖かな海水の流入は、最近の北極海の海氷減少にも関係しています。
(文責:伊東)

船上の非常訓練
- 記事更新日:
- 2010年9月 5日
今日は低気圧の近くを北上しているため雨が一日中降っています。気温はまだ9℃ですが、風が10m/s以上吹いているので体感温度はもっと寒く感じます。北極航海は気温も水温も低く、船も凍りつくので安全面にも気をつけなければなりません。
本格的な観測が始まる前に今日は非常訓練を実施しました。非常警報と総員退船警報が鳴った時の各人の非難方法の確認です。
みなさん救命胴衣を着用し決められた携行品を持参して第一係留ブイ庫に集合しました。
写真はイマーションスーツの着用方法について説明を聞いているところです。インナーもしっかりしているので、着用にはコツが必要そうですね。
(文責:猪上)
「みらい」北極航海2010 Leg2 開始。クジラとの遭遇
- 記事更新日:
- 2010年9月 5日
9月2日10時にみらいはダッチハーバーを出港しました。これから45日間の航海となります。午後から安全教育、観測ミーティング、金毘羅参りを行い、夜は懇親会でした。
出港50分後にブリッジから鯨が多数いる旨のアナウンスが入りました。あまり良く撮れてませんが、背びれが見えました。潮を吹いている様子も見えました。きっと専門家だと種類まで分かるんでしょうね。写真を撮りにいったころには、船に気づいてしまったせいか近くにはほとんどいなくなってしまいました。
(文責:猪上)
Leg2 関係者が乗船
- 記事更新日:
- 2010年9月 3日
アラスカ現地時間午前11時ころに乗船しました。みらいの目の前に韓国の巨大な貨物船が停泊しており、最初みらいが全く見えませんでした。
乗船後すぐに私物の整理や測器の準備にとりかかり、慌しい一日でした。夜はleg1を終えた研究者や船員は久々の陸上で買い物や夕食をしてきたようです。ダッチハーバー名物のカニを食べに行った人もいるとか。
明日からベーリング海峡へ向けて北上です。
(文責:猪上)
ダッチハーバーのホテルにて
- 記事更新日:
- 2010年9月 1日
みらい北極航海leg2関係者27名はダッチハーバーに2泊します。たいていGrand Aleutian Hotelに宿泊します。ホテルの周辺にはスーパーやホームセンターがある程度で、あとは山と海に囲まれています。空き時間は散歩したり、買出しに行ったり、と人によって様々。
私は去年に引き続き「ゆるハイク」をしてきました。今回は標高128mのBunker Hillからの眺めです。赤い屋根の建物がホテルです。向こうに見える標高498mのBallyhoo山が去年登った山。山麓に空港があり、少し海岸沿いに行くと、明日みらいが着岸するCity Dockがあります。
(文責:猪上)
ダッチハーバー到着
- 記事更新日:
- 2010年9月 1日
アンカレッジからダッチハーバーへの空路は北極航海乗船者にとって毎回鬼門です。天候が不順だったりその他の理由で。。。
今朝、関係者20名は9:35の便で出発の予定でしたが、機材繰りの影響でずるずると12時まで待たされ、結局キャンセル。後発の4つの便に振り分けられ、私が出発したのは17時くらいでした(21時ダッチハーバー到着)。さらに到着してからも、まだ荷物が届いていない方が数名おり、夜まで空港待機です。明日には全員の荷物がそろうことを祈るばかりです。
(文責:猪上)
Leg2 乗船者アンカレッジに到着
- 記事更新日:
- 2010年8月30日
「みらい」に乗船している研究者や船員は全員が青森県から乗船するわけではありません。一部はアメリカ・アンカレッジを経由して、アリューシャン列島のダッチハーバーから出発する Leg2 から乗船します。
Leg2 から乗船する猪上研究員から、アンカレッジに無事到着との連絡が入りました。
ダッチハーバーから乗船する研究者・観測技術員の大部分は本日(8/29)空路でアンカレッジに到着しました。気温は日がかげると長袖シャツ1枚では寒く感じますが、幸い晴れていますので心地よい涼しさです。
今回気象観測を担当するJAMSTEC研究生の佐藤和敏君(弘前大学4年生)は、みらい北極航海はもちろんのこと海外旅行も初めてで、乗船前からワクワクドキドキしています。アンカレッジのダウンタウンでは、船上で利用できそうな手袋や作業着を購入し、準備に余念がありません。円高なのでお財布のひもも緩みがちのようです。夕食はアラスカ名物のサーモン料理をいただきました。
明日ダッチハーバーへ向けて最後の空路の移動です。
船の上では夏も終わり
- 記事更新日:
- 2010年8月28日
みらいは、47°16′N、161°23′E、千島列島のおよそ600km東を、北東に航行中です。日本を出てから、ずっと天候に恵まれ、揺れもほとんど無く、順調に進んでいます。昨日の昼に20度近くあった気温は、今日の昼には12度まで下がり、風を切って進む船上では、肌寒いくらいで、乗船者も半袖から長袖に衣替です。先週は、気温30度以上の横須賀で、航海出発の準備をしていたので、かなりの温度差です。北極海の観測を終えて帰国する10月下旬には、横須賀も涼しくなっている頃でしょうか。この後も、「みらい」はアリューシャン列島のダッチハーバーを目指して、北上していきます。
「みらい」北極航海2010の航路について
- 記事更新日:
- 2010年8月27日

「みらい」八戸港に寄港
- 記事更新日:
- 2010年8月25日
「みらい」は今朝8時に八戸港に寄港し、長期の航海に備えて給油や食料の補給を行なっています。救命ボートの試験、出国の手続きを済ませて、夕方には、アリューシャン列島のダッチハーバーに向けて、出港します。乗船研究者は、 これから始まる観測に備え、八戸寄港中も、関根浜で積み込んだ観測機材の準備、 試験などを行なっています。

「みらい」出港の様子。そしてちょっとゆかいな乗船者
- 記事更新日:
- 2010年8月24日



「みらい」北極航海2010 Leg1 出港!
- 記事更新日:
- 2010年8月24日
「みらい」出航準備中
- 記事更新日:
- 2010年8月23日

夏と冬のせめぎ合い
- 記事更新日:
- 2010年8月23日

一方、海氷上はどうでしょう? JAMSTECでは毎年4月に北極点付近に海洋・気象データを取得するための氷上ブイを設置しています。このブイは海氷と共に漂流し、現在は大西洋側の北緯85度付近で観測を続けています(右図赤線)。真夏の8月上旬ころまでは気温が0℃前後でしたが、先週あたりから0℃を下回ることが多くなってきました。冬の始まりです。
しかし海氷は気温が氷点下になっても、海が十分暖かければ融解はまだ進行します。海氷面積のその年の最小値が9月中旬頃になるのはこのためです。したがって「みらい」は、海氷の融解期から形成期へと転じる季節の変わり目に北極海で観測をすることになります。
(猪上)
全方位監視カメラの設置
- 記事更新日:
- 2010年8月22日


いよいよ出航に向けた荷物の搬出
- 記事更新日:
- 2010年8月21日



赤外線カメラ NEC Avio Thermo Shot F30 を導入
- 記事更新日:
- 2010年8月20日

支援サイト紹介 (3) 海氷 + SST 合成図
- 記事更新日:
- 2010年8月20日
支援図 (1) で海氷のインデックスを紹介しましたが、この図は海氷だけではなくて多くの下層雲や低気圧も撮影されていて、海氷だけをみるのは難しかったと思います。
支援サイト紹介 (2) 低気圧経路図
- 記事更新日:
- 2010年8月19日

支援サイト紹介 (1) 海氷インデックスと予報図
- 記事更新日:
- 2010年8月17日

GPSカメラで場所と方位も記録
- 記事更新日:
- 2010年8月16日
大気観測では6時間毎にラジオゾンデで上空の温湿度や風向風速を観測します。その際、晴れていたのか、海面は氷で覆われていたか、などの状況を写真で記録します。船は移動するので、位置も方角もバラバラです。したがって時間・空間が常に変化する洋上の観測では、GPSデータが解析上重要です。
これまでは、せっかく撮影した写真も撮影時刻を手がかりに船のGPSデータと付き合わせて、位置情報を確認しなければならず面倒でした。

(猪上)
グリーンランドに出現した巨大氷山
- 記事更新日:
- 2010年8月12日

[出航準備] カメラハウジングのテスト
- 記事更新日:
- 2010年8月11日
北極とはどこを指すのか?
- 記事更新日:
- 2010年8月 8日

2009 年「みらい」北極航海をふりかえる
- 記事更新日:
- 2010年8月 7日
「みらい」は去年も北極海で観測を行っています。そのときの様子は北極海総合観測MR0903ブログで振り返ることができます。屋外用監視カメラの準備
- 記事更新日:
- 2010年8月 6日
今年の北極の状況
- 記事更新日:
- 2010年8月 5日

イリジウムアンテナ艤装@下関
- 記事更新日:
- 2010年8月 4日
「みらい」気象観測支援用データサイト公開
- 記事更新日:
- 2010年8月 3日
2010年9月2日から10月16日に海洋地球研究船「みらい」による北極海航海(MR10-05)が実施されます。船の運航および臨機応変な観測の遂行のため、衛星データと気象データを準リアルタイムで配信します。
北極、しかも洋上ではインターネットを介したデータ取得は困難です。そこで今回は Iridium Openports と呼ばれる、衛星通信設備を日本で初めて導入し、航海中でもデータ通信を可能にする試みに取り組んでいます。
本データサイトは洋上で観測をしている「みらい」に乗船している研究者に準リアルタイムで広域の海氷・大気状況を伝えることで観測スケジュールや運航の判断材料にすることを目的にしています。
観測期間中は毎日更新されますので、これから北極の海氷が極小となり、秋に向かって増えてゆく様子や、北極の低気圧経路の予測図をごらんいただけます。
http://www.jamstec.go.jp/rigc/nhcp/climate/realtime/mirai/
(堀)














