ダッチハーバー入港、航海終了
- 記事更新日:
- 2011年11月 4日
2011.10.27
ヒーリー号は、アリューシャン列島のダッチハーバーに、戻ってきました。1ヶ月前は緑に覆われていた山々には、白く雪が積もって、冬の訪れを感じます。航海終盤はずっと荒れ模様の天気だったので、久々の晴れです。今回の航海に参加した研究チームはここで下船し、それぞれの帰路に着きます。私達も、飛行機でアンカレッジ、シアトルを経由して、日本に帰ります。
今回の航海では、風や波が高くて、予定していたJAMSTECの係留系作業はできませんでしたが、海中に残してきた観測機器は、来年の夏に、私達がJAMSTECの観測船「みらい」で、再び北極海に来るまで、休まず観測データを取り続けてくれます。
伊東
もうすぐ航海終了
- 記事更新日:
- 2011年10月31日
2011.10.26
ヒーリー号は観測を終え、北極海を後にして、ベーリング海をダッチハーバーに向けて、南下しています。この数日、風速10-25m/sの強風の中を進んでいます。昨日の朝食時には船の揺れで、お皿がテーブルの上を滑って動いてしまい、滑り止めになるゴム製のテーブルクロスを敷いて食事をしました。乗船研究者は、揺れの中、それぞれの観測機材の後片付け、荷造り、研究室や居室の掃除など、下船の準備に追われています。
10日前は気温がマイナス17度の海域にいましたが、今は4度まで上がったせいか、暖かく感じます。日本に帰ると、しばらくは横須賀の秋が暑く感じると思います。
伊東

sailwxで作成したHealy号の航跡図(9月17~27日)
荒天 . . .
- 記事更新日:
- 2011年10月24日
2011.10.21
ヒーリー号は、北緯71度まで南下してきました。最北点で氷点下17度まで下がっていた気温が、ここ数日は氷点下1-2度まで上がっているので、暖かく感じます。今日はバロー域での係留系の回収を予定していたのですが、一日中、風速15mの強い風が吹いていて、中止になりました。9月までは、日照時間が長く、穏やかな天気の日が多いこの海域も、10月になると風が強く、波が高い日が多くなり、予定通りに観測をするのが難しくなります。明日は天気が回復しますように。
伊東
水圧
- 記事更新日:
- 2011年10月21日
2011.10.20
今日は、水温、塩分など、海水の性質を測るCTDと呼ばれる機械を、この辺りで最も深い水深3000mまで下ろす観測がありました。今回は、CTDと一緒に、乗船者が思い思いの絵を描いた、発泡スチロールのカップも沈めました。海の中では、海水の重さで、水圧と呼ばれる力がかかっています。水深100mでは地上の10倍、1000mでは100倍もの大きな力です。上がってきたカップは、3000mの水圧で、半分以下に小さく縮んでいました。伊東

船内生活
- 記事更新日:
- 2011年10月20日
2011.10.18
今回、私達、研究チームは、9月初めから3週間余りの乗船ですが、乗組員は5月にアメリカ西海岸のシアトルを出港してから来年1月初めにシアトルに戻るまで、半年間にも及ぶ長期航海です。乗組員は、土日も関係なく、3交代の24時間体勢で、船を動かし、観測のサポートなどをしてくれます。長い船内生活にメリハリをつけるためか、船内では、スポーツ、クイズ大会、映画鑑賞など、色々な行事が催されています。また、土曜日の夕食は、毎日大勢の乗組員の食事作りで忙しい、厨房のコックに変わって、当番で食事を作ることになっています。先週土曜日は、研究チームが夕食にピザ作りをしました。
伊東
「砕氷船」
- 記事更新日:
- 2011年10月18日
2011.10.16
ヒーリー号は、北緯75度40分、今回の観測計画の最北点まで来ています。昨日は、できたばかりの海氷がまばらに浮かんでいる海域を進んでいましたが、北に進むにつれて、一面が海氷に覆われた白い海に変わりました。でき始めて10日ほどの新しい海氷で、厚さは20cmほどです。ヒーリー号は、船の重みで氷を砕きながら進む砕氷船で、この位の厚さの海氷はもとともせずに、バリバリと砕きながら、どんどん前進していきます。
伊東
バンクス島
- 記事更新日:
- 2011年10月17日
2011.10.14
ヒーリー号は、北緯74度、カナダ多島海の西端にあるバンクス島のすぐ沖で、観測をしています。気温はマイナス7度、水温もマイナス1度近くまで下がっていますが、まだ海氷は見当たりません。5-6年前までは、夏でも何メートルもある厚い氷あって、砕氷船では近づくことができなかった海域ですが、2007年以降の海氷減少で、夏には海氷が融け切るようになりました。この時期でも海氷が無いのは、とても珍しいことです。今まで、海氷に阻まれ、ほとんど観測されていなかった未知の海域なので、リアルタイムの観測データを示すモニターに注目が集まります。
伊東
ヒーリー号はバンクス島に向かって東へ
- 記事更新日:
- 2011年10月17日
2011.10.13
ヒーリー号乗船中の伊東さんから、海氷分布を示す衛星写真と航海軌跡・計画を示した図が送られてきました。現在は、アラスカ沖から東に進み、カナダ・マッケンジー湾の沖合で、バンクス島に向かっています。この衛星写真では、バンクス島の沖合でも開水面が広がっている様子ですが、はたして実際の海域はどうなのでしょうかね。
菊地@横須賀本部から...
海を調べる(1) 係留系
- 記事更新日:
- 2011年10月14日
ヒーリー号がダッチハーバーを出港して1週間経ちました。北緯71度まで北上し、アラスカの沖まで来ています。9月までは穏やかな天気の日が多い北極海も、10月には太陽が出ている時間が日に日に短くなり、寒い日が多くなってきます。今日は、気温は氷点下2度まで下がりました。
ヒーリー号では、様々な機械を使って、海の中を調べる観測をしていますが、昨日、今日は、係留系の回収、設置が行なわれました。係留系とは、海底に錘を沈めて、その上に浮き玉と海の流れや海水の成分を測るセンサーをつけて、数ヶ月~一年間、連続で測定する観測のことです。北極海は、冬~春は、厚い海氷で覆われてしまうため、砕氷船であってもなかなか近づくことはできませんが、係留系では、船が行けない時期のデータも取れる利点があります。
写真は、昨年の9月から1年間海の中にあった係留系を、船に引き上げているところです。1年前に海の中に置いてきた機械たちとの嬉しい再会ですが、鉄製の大きな浮き玉をクレーンで吊るして引き上げるに大掛かりな作業なので、緊張が高まります。
伊東投下式センサーによる水温・塩分観測 (XCTD観測)
- 記事更新日:
- 2011年10月14日

2011.10.05
銃のような筒から海中にセンサーを投下し、海水の水温・塩分の分布を計測するのがXCTD (eXpendable Conductivity, Temperature and Depth)観測システムです (上写真)。我々は砕氷船ローリエ号の航路に沿って、約40 km間隔でXCTD観測を行っています。観測結果はすぐさまパソコンで解析され、下図のような水温分布が得られました。カナダ・アラスカ沖の陸棚斜面(西経134~155度)に沿った水温分布です。海洋表層には日射で温められた水温の高い水があり、水深 100~150mには結氷温度に近い冷たい水があります。この冷たい水は、冬季に太平洋から北極海に流れ込んできた水です。さらに、下層には比較的水温の高い水があります。これは、遥か大西洋からやってきた水です。
今一度、表層近くに着目すると、アラスカ・バロー沖 (西経152~154度付近)に海洋表面から水深130m付近まで達する暖かい水があります。この暖水は、太平洋からアラスカ西岸の陸棚域・バロー海底谷を経て、海盆域に運ばれているものと考えられます。昨年の海洋地球観測船「みらい」の北極航海では、直径100kmを超す暖水渦が捉えられました。その渦の水塊は、上記と同じアラスカ西岸の陸棚域を経て海盆域に来た暖かい水で、アンモニアなどの栄養分が多く、北極海の生態系にもインパクトを与えていることが分かりました参照: http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20110826/

砕氷船ローリエ号のXCTD観測で得られたカナダ・アラスカ沖の陸棚斜面に沿った水温分布
海氷に閉ざされた最北の観測点
- 記事更新日:
- 2011年10月12日


2011年10月3日、本航海で最も北に位置する観測点に到着しました。前夜より海氷が出始めたため、砕氷船ローリエ号は航行速度を落とし、観測点を目指しゆっくりと北上を続けました。夜が明け観測点に到着すると、そこは海氷に覆われた真っ白な世界。この観測点では、海中の水温や塩分、流速を計測するセンサーを取り付けた海洋物理係留系、そして海中を沈降する粒子を捕獲するセジメントトラップ係留系の2系を設置しています。本航海では、この2系を回収し、新しい係留系を再設置する予定でした。しかし、海氷に閉ざされた海域での回収は難しいと判断し、来年この海域を調査予定のJAMSTEC海洋地球研究船「みらい」に委ねることにしました。北極海の厳しい環境を調査し、それが気候変動に及ぼす影響を明らかにしようと、この北極海に乗り込んできたわけですが、自然はそう簡単に答えを教えてはくれません。しかし、このような観測によるデータの積み重ねが、未来を知る鍵となるわけです。来年、また「みらい」でここを訪れ、大気・海洋系から生態系に及ぶ総合的な観測を行いたいと思います。
西野
海氷に閉ざされた最北の観測点
セディメントトラップ係留系の回収に成功
- 記事更新日:
- 2011年10月11日

2011.10.2
カナダ砕氷船ローリエ号での観測ミッションの中で、現地時間10月1日昼ごろ、昨年JAMSTEC海洋地球研究船「みらい」でNorthwind深海平原に投入していただいたセディメントトラップ係留系Station NAP10tの回収に成功しました(^^) (上写真:これから船上に回収されようとするセジメントトラップ。ブリッジより西野が撮影)。この係留系に関わってくださった全ての方に感謝をします。作業中は、強く吹雪いた時もありましたが、波は基本的に穏やかで回収作業には助かりました。
海面に浮上させた係留系の回収作業は船によって手法が異なります。今回は浮上した係留系のトップをモーターボートで捕まえに行き、本船の傍まで引っ張ってくる作業から始まりました。デッキ上での回収作業の過程では、係留系のロープを人力で地引網のように引き上げる場面もあり、船員さんやInstitute of Ocean Sciences (カナダ)のスタッフにもいろいろと助けて頂きました。係留系は機材や部品の交換などを終えて、夜前にNAP-11tとして再投入しました。来年はまた違う船での作業になるかと思いますが、ぜひ回収を成功させたいです。
回収したセディメントトラップに装着された試料ボトルには、目的とする沈降粒子(マリンスノー)が全てのボトルに含まれていました。下写真は、その試料ボトルの一部を時系列に並べてみたもので、左端の1番が去年10月で、右端が今年9月です。ボトルの底の黒っぽい沈殿物が沈降粒子です。海氷に覆われて船がなかなか近づけない時期の試料も得ることができました。日本へ輸送された試料は、関係する研究者へ分配され様々な分析・研究に利用されます。北極海の沖合で年間を通じた沈降粒子の観測研究は過去の事例がまだまだ少ないので、この試料の分析結果がこの海域の研究に少しでも役立つものになればと思います。
昨年はここより西側の海域にもセディメントトラップ係留系CAP-10tを設置したので、そちらの回収もこの先予定しています。しかし、現場は現在海氷が広く覆っているようです。海面が海氷でほぼ覆われている状況で係留系を浮上させても回収をするのは困難なので、CAP-10tの回収は来年のチャレンジになってしまうかもしれません...。
小野寺時系列に並べたセディメントトラップの試料ボトル。ボトルの底の黒っぽい沈殿物が沈降粒子。
ヒーリー号はベーリング海峡を抜けて北上中
- 記事更新日:
- 2011年10月 5日
ヒーリー号は、ダッチハーバーを出港してから17ノットで北上中です。最初は、甲板に出ると飛ばされてしまいそうな程の強い風でしたが、だんだん天候も回復して、船の揺れも収まってきました。この航海では、ベーリング海では観測が無いので、北極海の最初の観測点まではノンストップでどんどん進んでいきます。10月4日夕方に、北極海の入り口、ベーリング海峡を抜けました。北極海の北の方では、どんどん海氷が出来始め、海氷域が広がり、海水温もマイナスまで下がっていますが、北極海の南の端、ベーリング海峡は水温がプラス5度と、まだまだ夏の名残を見せています。
この航海では、アメリカ各地の大学や研究所から、海洋物理や海洋化学、海鳥や海獣などの様々な分野の研究者が33名も乗船しています。観測点までの数日間で、観測プラン、スケジュールを詳しく決める、観測ミーティング(下写真)が行われています。明日からは、いよいよ観測開始です。
伊東ヒーリー号もうすぐ出港
- 記事更新日:
- 2011年10月 3日
アメリカ沿岸警備隊砕氷船ヒーリー号の航海に参加する伊東、伊代の2名は、10月1日の夕方に飛行機でダッチハーバーに到着し、無事にヒーリー号に乗船しました。本日、10/2の17時にダッチハーバーを出港し、ベーリング海を北上して、ベーリング海峡を目指します。現在のベーリング海は海況が悪く、出港後の数日間は荒れる予定です。船が揺れても観測機材が動かないようにロープで固定したり、慌しく出港の準備をしています。
伊東
写真:上はダッチハーバー停泊中のヒーリー号。下はアンカレジからダッチハーバー空港に到着したところの様子。
(追記)
ヒーリー号の航海情報も、sailwx(以下のサイト)で見ることができます。菊地@横須賀本部から...
http://www.sailwx.info/shiptrack/shipposition.phtml?call=NEPP
私の研究 ~放散虫~
- 記事更新日:
- 2011年10月 3日
地球は、その表面の多く (70%) が海で占められていることはよく知られています。しかし、海の底の多くが海洋プランクトンの遺骸(いがい)で覆われていることは皆さんご存知でしょうか? なんと海底を覆う海洋プランクトンの遺骸の厚さは500 mを超えることも少なくないのです! その遺骸のほとんどは、珪藻、放散虫(レディオラリアあるいはラジオラリアとも言う)、有孔虫、ハプト藻などから成ります。その中で、今回は私 (池上)が研究対象としている放散虫についてお話したいと思います (参照: http://researchmap.jp/ikesun/)。
放散虫は外洋では、赤道海域から南大洋や北極海などの高緯度海域まで広く分布する単細胞の原生動物プランクトンです。海洋のごく表層から深海 (水深8000 mでも生きたものが確認されている)まで鉛直的にも幅広く多様な種が棲み分けしています。現在の海には約1,000種の放散虫がいますが、化石を含めると現在までに約1万5,000種が記載されています。
放散虫は非晶質シリカの内骨格を持つため、CCD以深 (炭酸塩が溶けてしまうような深度)の海洋堆積物中でも化石として保存されます。従って、様々な堆積環境下で採取することが可能なのです。放散虫の骨格の大きさは40 μm~400 μm (0.04~0.40 mm)と非常に小さく、顕微鏡観察が必要です。このような微小な化石のことを微化石 (びかせき)と呼びます。観察により得られた放散虫微化石の産出量や群集組成などから、地層が堆積した時代や、環境を推定することができます。そのため、放散虫は地質学の分野で大きな役割を果たしてきました。
これらの特徴に加え、放散虫の魅力を語る上で欠かせないのが、その形の美しさです。まるでシャンデリアやレース飾りのような美しい骨格は、時に美化石と呼ばれます。皆さん、ぜひインターネットなどで画像検索してみて下さい。きっとご興味を持たれるはずです。写真は、第11回九州大学総合研究博物館公開展示において、来場者に配布したポストカードの一部です。
私 (池上)は、海底地層を形成するもとになる、海洋沈降粒子 (海洋で生産されたプランクトンの遺骸や粘土鉱物などの一部) 中の現生放散虫の研究を行っています。海洋沈降粒子のフラックス (沈積流量)や組成の変動を調べることで、現代の海洋炭素循環や環境変動を知ることができます。
この海洋沈降粒子の変動を調べる上で欠かせないのが、セディメント・トラップという観測装置です。セディメント・トラップは海中に設置してから、約1年の間、2週間ごとに沈降粒子を自動捕集してくれます。セディメント・トラップを毎年設置することで、沈降粒子の季節変動のみでなく、経年変動も時系列で知ることができます。
今回の北極航海で、私は、JAMSTECの小野寺さんとともに、セディメント・トラップの回収と再設置に取り組みます。北極海でのセディメント・トラップの設置は去年が初めてで、今年が2年目となります。これから毎年北極海で設置を続けて行くことで、よりその重要性が増していくことでしょう。
池上(九州大学)


第11回九州大学総合研究博物館公開展示において、来場者に配布したポストカードの一部 (参照: http://researchmap.jp/muzw6srwr-59571/#_59571)。
もう一つの北極海航海がスタート
- 記事更新日:
- 2011年10月 1日
2011年に、JAMSTEC北極チームが参加する、もう一つの北極航海、アメリカ沿岸警備隊「ヒーリー号」の航海も、もうすぐ始まります。日本からの参加者は、私、伊東素代と、マリンワークジャパン伊代道さんの2名です。ヒーリー号の乗組員、大学、研究所の研究者を合わせると90名近くもいる乗船者の中で、たった二人の日本人ですが、頑張っていきたいと思います。
ヒーリー号の母港はアメリカ西海岸のシアトルですが、今年の7月初めに北極海に入ってから、北極沿岸の港で水や食料の補給、乗組員の交代をしながら、6ヶ月間ずっと、母港には戻らず、北極海での観測を続けていきます。そのため、観測に参加する私達の方が、北極海近くの港まで出向いていって、そこから乗船することになります。
私達は、9月30日に成田を出て、シアトル経由で、15時間かけてアンカレッジまで来ました。今日はアンカレッジに一泊して、明日の飛行機で、アラスカ アリューシャン列島の島でカニ漁の基地として有名な、ダッチハーバーに向い、そこでヒーリー号に乗船する予定です。今日のアンカレッジの昼間の気温は12度、もう白樺が紅葉していて、山は雪で白く、肌寒いです。
伊東

マリンスノーをとらえるセディメントトラップ...再び
- 記事更新日:
- 2011年9月30日
現在、カナダ北岸を航海しています。天気は曇りがちですが、波は穏やかな日が多いです。私(小野寺)は、珪藻や珪質鞭毛藻など珪質の殻を持つ植物プランクトンの沈降粒子(マリンスノー)や、海底堆積物に含まれる珪質殻の化石群集を研究で扱っています。
北極海には、北太平洋起源の海水がベーリング海峡から北極海へ流入していて、その多くはアラスカ北岸から現在私たちがいるカナダ北岸を沿うように流れてきています。1999年5月に北大西洋で、本来は北太平洋亜寒帯にのみ生息し大西洋側では生息していなかった珪藻の一種Neodenticula seminaeを、海外の研究者らが大量に発見しました。その研究者らの論文(Reid et al., 2007)によると、この珪藻が大西洋に出現したのは、この珪藻を含む太平洋水がベーリング海峡を通り、私たちが現在航海をしている北極海の北米沿岸を経由して大西洋側に到達したためです。1998年夏季は、北極海で海氷のない水域が北米大陸沿岸に連続して広がっており、夏季の海氷分布の変化がこの珪藻の進出に関係したようです。ほかの説として、船のバラスト水による人為的な輸送も考えられます。しかし論文によると、当時の北極海航路は輸送量が限られており、主要な亜熱帯経由の航路だと、亜熱帯域を移動する過程で問題の亜寒帯固有種は生き残れないとしています。
この種は北太平洋亜寒帯において、沈降粒子の一翼を担う代表的な珪藻種とされており、生物ポンプによる海洋中深層への粒状有機炭素の輸送を考える上で重要な種の一つとされています。このような種が今後北極海にも定着するかどうか、あるいは北極海や北大西洋において、珪藻をめぐる生態系や海洋中深層への粒状有機物輸送に変化が今後出てくるのかどうか個人的に興味を持っています。
過去の地質時代に目を向けると、グリーランド沖において、この珪藻種の出現が約125万年前から約84万年前にかけての間だけ見つかっています。この年代は、氷期‐間氷期サイクルがそれまでの4万年周期から10万年周期へと移り変わる地球表層環境の大きな遷移期にあたります。過去の変遷と現在から将来にかけて起きることは必ずしも同じではないと思いますが、北極海とその周辺海域における過去と現在の環境変動の両方について、これから少しずつ調べていければと思っています。今回のSir Wilfrid Laurier号乗船の目的は、昨年北極海の2箇所に沈めたセディメント・トラップ(沈降粒子を捕捉する装置; 写真)の回収と再設置です。なんとか成功すると良いのですが...。
小野寺

海洋地球研究船「みらい」より2010年に設置したセジメント・トラップ. このセジメン・トラップを今年はカナダ砕氷船ローリエ号で回収する(撮影: 筑波大学・佐藤真奈美)
Laurier号、観測ミッションのスタート
- 記事更新日:
- 2011年9月28日

西野

水路航行中
- 記事更新日:
- 2011年9月27日
現在、我々は北米大陸とビクトリア島に挟まれた水路をカナダ沿岸警備隊の砕氷船ローリエ号で航行中です。水路と言っても幅は 50 km以上あり、陸は遠くにしか見えません。この水路は夏場、北極海沿岸の町に物資を運ぶ船が航行します。カナダ沿岸警備隊はそれらの船が安全に航行するため、水路に標識となるブイをいくつも設置します。夏も終わろうとする今、この船の任務は設置した標識ブイを回収することです (上写真: 標識ブイの回収)。朝から船乗りたちが慌ただしく働いています。標識ブイをすべて回収後、我々の観測ミッションが始まります。
我々も、観測ミッション前だからといって、のんびりしているわけにはいきません。観測に備え、測器のセッティングや組み立てなどの準備に追われています (下写真)。今は波静かな水路を航行中なので、船の揺れも小さく、船内生活は快適です。しかし、これから外洋に出ると船の揺れが予想されます。船が揺れると作業ができないと同時に、船酔いで頭の回転も鈍ります。今のうちにできるだけ多くの仕事を片付けておかなければ...。
西野

Laurier号航海の情報
- 記事更新日:
- 2011年9月26日

2011年の北極海航海に関して、9月20日からブログでその様子を公開しています。既報の通り、現在、西野・小野寺・池上・宇野の4名がカナダ沿岸警備隊の砕氷船S.W.Laurier号に乗船しています。sailwxによる 情報を見たところ、9月27日現在、アムンセン湾を出てカナダ海盆に入った様子。この後、北極海での観測航海の様子が送られてくるでしょう。sailwx でのLaurier号の様子は、以下のサイトから見ることができます。
http://www.sailwx.info/shiptrack/shipposition.phtml?call=CGJKご安航を、祈って。
菊地@横須賀本部
ケンブリッジベイへの移動、乗船:その2
- 記事更新日:
- 2011年9月24日
ビクトリア空港からチャーターした航空機に乗って、砕氷船ローリエ号の待つケンブリッジベイへ向かいました。ケンブリッジベイへ向かう途中、窓から眺める景色が素晴らしかったです。
途中の雪山の景色も良かったのですが、ケンブリッジベイに近くなってからのツンドラの原野が僕にとっては特に印象的でした。
雪山の景色

ツンドラの原野
樹木も山も無く、広大で平坦な地がひたすら続いているのです。その平坦な地に大小さまざまな湖沼や池が存在していました。
ケンブリッジベイの空港に到着すると、ジャコウウシの剥製が出迎えてくれました。ジャコウウシは現在、カナダ北部、デンマーク(グリーンランド)に自然分布し、夏季はツンドラ内の水辺、湿原に生息します。ユーラシア大陸では約3,000年前に絶滅してしまいました。

ケンブリッジベイ空港と、ジャコウウシの剥製
ケンブリッジベイは北米大陸のさらに北、クイーンエリザベス諸島の島の一つであるビクトリア島南岸に位置し、カナダのヌナブト準州に属します。ヌナブト準州はイヌイットの自治による州で、その面積は日本の約5倍、人口は約3万人です。その中でも大きな町であるケンブリッジベイには現在約1300人が住んでいます。ケンブリッジベイを少し散策してみたかったのですが、空港から直接ヘリコプターで乗船だったので、今回は船から町を眺めました。
池上(九州大学)










