温暖化による気候変動が顕著に現れると考えられる北半球寒冷圏にあって、北極海に注ぐ大河川流域では、20世紀前半から長期的に河川流量が増加する傾向にあります。さらに近年では降水の増加に伴い、永久凍土の融解や、河川流量の急増する様子が明らかとなり、寒冷圏陸域での「水循環の強化」ともいうべき様々な現象が顕在化しつつあります。その実態を知るには、雨や雪として大陸上にもたらされた水がどのように大気や海洋に戻るのかを明らかにすること、特に寒冷圏では積雪・凍土・土壌水分・植物活動の季節進行によって、気候や水循環に遅れて影響を与える「メモリー」としての効果を明らかにすることが重要になります。しかし、陸域の水循環変動に関わる諸過程の実態はいまだ理解が不十分で、その広域的な影響も不明なことが数多く、詳細な気象・水文観測に基づいた実証的な研究が必要な状況にあります。本研究課題では、北半球寒冷圏での海洋-大気―陸域をつなぐ水循環の変動系について、以下の3つを答えるべき問いととして、研究に取り組んでいます。
I.最近の北半球寒冷圏陸域での水循環(降水・蒸発散・河川流出)は時空間的に大きく変化しているのか?
II.陸域の積雪・凍土・土壌水分・植生が果たす「気候・水文メモリー」としての効果はあるのか?
III.そして北極流入河川は,なぜ長期的増加傾向があるのか?
これらの問いを解明するため、本研究課題では、北半球寒冷圏の大河川流域にて、多地点での気象・水文に関する現地観測と様々な観測データ解析を通じて、陸域での水の貯留・蒸発散・流出過程の実態を解明します。同時に、これらの水循環過程に関する数値モデルを構築し、それを広域に適用することによって、大河川流域における水循環変動の全体像の解明と、その変動の将来予測を目指します。

















