研究領域
領域テーマA
全球規模の気候変動予測と基盤的モデル開発

気候変動予測の基盤技術を高度化し、
社会の知りたい疑問にわかりやすく答える

領域代表者 渡部 雅浩(東京大学大気海洋研究所 教授)
領域代表者 渡部 雅浩(東京大学大気海洋研究所 教授)

 2015年の気候変動枠組条約締約国会議におけるパリ協定で、産業革命前を基準として世界の平均気温上昇を2℃未満に抑え、さらに1.5℃未満を目指すという目標が明文化されました。そのため、各国で一層の温暖化適応・緩和策が推進されつつあります。そのベースとなる一次情報は、温室効果ガスの将来の排出経路に対する全球的な気候の応答であり、世界の主要な気候モデリングセンターが協力して実施してきた結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP)が提供するデータです。
本テーマでは、これまでのプログラムで開発されてきた全球気候モデルを用いて最新の第6次CMIPに積極的に参画するとともに、独自の気候モデルシミュレーションを多数実施することで、近未来の適応・緩和策を策定する上で必要な予測情報を創出します(図1参照)。これらを活用し、近未来気候変動予測、海水位変動、極端現象、雲・放射過程と気候感度の不確実性といった科学的重点課題への取り組みを加速させ、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次報告書にも貢献します。国内外で、異常気象の増加に対する一般社会の関心がさらに高まっており、我々が展開してきたイベントアトリビューション研究を発展させることで、「現在起きている異常気象に対する温暖化の寄与はどのくらいで、それが近未来にどう変わるか?」といった、社会の知りたい疑問にわかりやすく答えを出すような温暖化サイエンスを実施します。
上記の目的達成のためには、地球シミュレータのような計算機が必要なのはもちろんですが、気候モデル自体の性能向上が欠かせません。気候モデリングは基幹的科学技術であり、本テーマでは、気候モデルの表現する雲などの物理過程の高度化と高解像度化、近未来気候予測に必要なデータ同化技術の高度化などを進めます。

課題 代表者
(ⅰ) 地球環境変動予測の向上に資する気候モデル高度化
a 近未来気候変動予測とCMIP6 実験の推進 建部 洋晶 
海洋研究開発機構 ユニットリーダー
b 物理プロセスの高度化による気候モデル開発 鈴木 健太郎 
東京大学大気海洋研究所 准教授
c 陸面モデルの高度化 芳村 圭
東京大学生産技術研究所 准教授
(ⅱ) 気候変動予測の不確実性低減と科学的知見の深化
a 気候感度に関する不確実性の理解と低減 小倉 知夫 
国立環境研究所 主任研究員
b 過去の気候変動・異常気象の要因分析と将来予測 渡部 雅浩 
東京大学大気海洋研究所 教授
c 全球非静力学モデルによる雲・降水・循環過程の理解 野田 暁 
海洋研究開発機構 ユニットリーダー
図1
図1:パリ協定の1.5℃、2.0℃目標が達成できた世界での、各国・地域の“CO2排出による気候変動への責任の重さを表す指標(横軸)”と“単位責任量あたりの(現在100年に1回の)暑い昼の頻度増加(縦軸)”の関係。
仮に世界が公平なら縦軸は一定値になるが、実際は責任の軽い(CO2排出量が少ない)国・地域ほど単位責任量に対する暑い昼の増加が大きいという不公平性があります。2.0℃から1.5℃への緩和目標の引き上げは、単に暑い昼の増加を抑えるだけでなく、この不公平性を低減する効果があります。
図2
図2:気候モデル MIROC6
全球気候システムモデルは将来気候予測の重要な基盤技術であり、これを高度化することが本テーマAの重要課題の一つです。