東京都 沖ノ鳥島・南鳥島に関する研究調査事業

沖ノ鳥島・南鳥島周辺海域における
好適漁場推定モデルを活用した漁場管理情報の創出

東京都の沖ノ鳥島や南鳥島は排他的経済水域(EEZ)設定の重要な離島であり、周辺海域の状況把握・管理が責務であるが海洋生態系情報は少ない。また、海洋環境を網羅的に計測することは不可能であるが、数理モデルの活用により生物分布推定が可能になってきた。
本研究は、沖ノ鳥島・南鳥島周辺海域のカツオとキンメダイを対象に、漁場を推定する手法を開発して、効率的かつ持続的な漁業およびEEZ管理に必要な好適漁場情報を創出する。

カツオ好適漁場推定・予測

カツオ漁場データと海洋再解析データを統合解析して構築したハビタットモデルに対して、数値シミュレーションによる海況予測データ(MOVE/MRI.COM-JPN)を適用して沖ノ鳥島・南鳥島周辺海域におけるカツオの好適漁場を推定した。


沖ノ鳥島周辺

南鳥島周辺

MAXENTハビタットモデルによるカツオの漁場推定図(2008/1/1〜12/31)

AIS vessel position data

日本のカツオ一本釣り漁船のAISによる漁船位置データを行動解析することにより、操業位置を推定した結果を用いてハビタットモデルを構築した。

Trajectory and estimated fishing position of Japanese commercial vessels for
								Skipjack Tuna
Trajectory and estimated fishing position of Japanese commercial vessels for Skipjack Tuna
(2015/1/1~2017/12/31)

キンメダイハビタットモデル構築

沖ノ鳥島・南鳥島周辺海域での分布

伊豆半島沖から八丈島周辺にかけての伊豆七島や、黒瀬海盆・銭洲海底谷、明神海山・須美寿海丘・鳥島海丘の周辺で分布適地として高い値の範囲がひろがっていることが分かった。また、小笠原諸島、小笠原海台東海山、硫黄島・福徳岡ノ場周辺でも分布適地として高い値の場が見られた。
JAMSTECが所有する深海映像データからキンメダイの生息域を特定し、ハビタットモデルを構築した。

推定されたキンメダイ類の分布適地
推定されたキンメダイ類の分布適地

宮崎水試

漁場推定図

宮崎県水産試験場との共同研究「高解像度海況予測モデルを活用したガイダンス手法の開発と宮崎県沖における主要浮魚の漁場推定への適用研究」の一環として、日向灘沖で操業されている中型巻き網漁船による漁業データと海洋環境データとの統合解析により漁場推定モデルを作成している。

マサバ(2017年3月-4月)

マサバ(2017年3月-4月)

ウルメイワシ(2018年6月-11月)

ウルメイワシ(2018年6月-11月)

VMS vessel position data

宮崎水試から提供を受けたVMS(vessel monitoring system)により得られた漁船位置データに隠れマルコフモデルを適用することで漁船の操業状態を特定して漁場位置を推定した結果を用いて漁場推定モデルを作成した。

VMS vessel position data
VMS trajectory of purse seine fishing vessel off Miyazaki

文部科学省宇宙航空科学技術推進委託費事業「ひまわり・しきさいを活用した 好適漁場推定技術の高度化」

文部科学省宇宙航空科学技術推進委託費事業「ひまわり・しきさいを活用した好適漁場推定技術の高度化」(H30-R2年度)の一環として、インドネシアInstitute for Marine Research and Observation (IMRO)との協力により、漁場探索で大きなコストとなる漁船の燃油消費を抑え安定的な収益確保を図るスマート漁業を実現するための高精度な漁場推定を実現することを目的として、セレベス海におけるメバチマグロ漁についての漁場予測モデル開発を実施した。

メバチマグロ
メバチマグロ

研究対象海域:セレベス海

(Gordon et al.,2019)
(Gordon et al.,2019)
インドネシアの漁業管理区域
インドネシアの漁業管理区域

HSIとS200の空間分布(2016年)

漁場推定図

漁場推定図

S200分布図

S200分布図

海洋の特徴現象抽出

潮目・フロント・渦は漁場形成に重要である(漁業者の経験知)という知見に基づき、海洋データにフロント抽出手法を適用して漁場推定モデルに反映する。

特徴現象の抽出手法

Cayula and Cornillon (1992)のフロント抽出法

  • a)ウインドウレベル処理
  • (1)ヒストグラム解析
  • 1.山か2山かを判定
  • 2.山を分割してフロント値を決定
  • (2)結合解析
  • 分割したSST値の連続性を評価
  • (3)フロントピクセルの決定
  • (雲によるノイズ除去も考慮)
  • b)ローカルレベル処理
  • フロントピクセルをつなぐ処理
Cayula and Cornillon (1992)のフロント抽出法
  • どのようなフロントが抽出されるかは、この手法を適用する海面水温データの品質(空間解像度・雲除去程度・観測頻度)に依存する。
  • Cayula and Cornillon(1992)の手法では、ウインドウサイズが異なると結果も異なる。
    →複数の異なるウインドウサイズを適用することで空間スケール別のフロント抽出を行う

フロント抽出から派生する特徴パラメータを
漁場推定モデルへの入力値として使用する

フロント抽出から派生する特徴パラメータを漁場推定モデルへの入力値として使用する