本課題では、四次元仮想地球の基盤データとして、過去の海洋環境を精緻に再現した海洋データ同化(海洋再解析)プロダクトと海洋環境の将来予測データセットを、海洋大循環モデルMRI.COMをベースとして整備している。この海洋モデルは気象庁気象研究所で開発されたもので、気象庁の現業解析・予測システムと同じものであることから、気象庁が日々配信している予測データと合わせることで、日本周辺海域の過去・現在・将来を同じ海洋モデルを基盤としたデータセットとして利用することができる。

本課題の海洋生物分布推定モデルは、過去に得られた水産/海洋生物データと過去を再現した海洋再解析との統合解析により構築し、これを現業予測データや将来予測データセットに適用することで、リアルタイム漁業情報サービスや温暖化時における適応策策定のために必要な海洋生物分布予測情報を創出することができる。

海洋デジタルツインの基盤としての海洋環境データセット

海洋デジタルツインの基盤としての海洋環境データセット

過去再現・リアルタイム・将来予測の全てのプロダクトを海洋モデルMRI.COMにより創出している

FORA(北⻄太平洋海洋⻑期再解析データ)

北⻄太平洋海洋⻑期再解析データ10km格⼦で⽇々の海況を再現したデータセット

JAMSTECと気象研究所との共同で1982-2016年の35年間にわたる海洋再解析データを作成しました。

FORA-WNP
解析領域 117-200E, 15-65N
分解能 水平0.1*0.1°(約10km)
(160E以東、50N以北は1/6°)
鉛直54層
境界値 NPからネスティング
海氷モデルあり、外力はJRA55

4次元変分法データ同化システムMOVE-4DVARを用いて、船舶・Argoフロート・衛星等の海洋観測データを統合し、高解像度で海洋環境を再現したデータである。

船舶・ブイ・アルゴフロート・人工衛星等の海洋観測データを
「データ同化」により数値モデルと統合して現実の海洋環境を再現したデータ
(数値シミュレーションと違い実際に起きた日々の現象を再現)

FORP(日本近海域将来予測データ)

第5次結合モデル相互比較プロジェクトCMIP5の複数の気候モデル出力や大気再解析データを外力として、10km格子と2km格子の領域海洋モデルを用いて作成された海域の過去再現・将来予測データセットである。 https://diasjp.net/ds2022/dataset/ds14.html

気候予測データセット2022として公開
気候予測データセット2022として公開
https://diasjp.net/ds2022/

高解像度の海洋モデルを用いて気候モデルによる予測結果をさらに細かく表現する
⇒「正しい黒潮」を再現した上で、将来の気候を予測する

改良した日本周辺モデル
河川流出の精緻化・潮汐過程の導入

FORP(Future Ocean Regional Projection data)

FORP(領域海洋将来予測データセット)は、CMIP5(第5次結合モデル相互比較プロジェクト)の複数の気候モデル/シナリオによる大気データを外力として、高解像度の領域海洋モデルシミュレーションにより作成された将来予測データセットです。10km格子の北太平洋領域(NP10)と2km格子の日本周辺海域(JPN02)の2種類のデータセットがあり、NP10はRCP2.6, RCP8.5の2シナリオ、MRI, MIROC, GFDL, IPSLの4モデルによるアンサンブル、JPN02はRCP2.6, RCP8.5の2シナリオ、MRI, MIROCの2モデルによるアンサンブルにより構成されています。
現在気候から2100年までの日本周辺海域における海面水温の将来予測結果を見ると、モデルメンバーにより水温上昇の様子が異なっているものの、緩やかに上昇していく様子が表現されていますが(図1)、それぞれのメンバーの空間分布を見ると(図2)温度上昇のパターンもモデルにより異なっていることが示されています。

【NP10】 (10*10km spatial resolution)
2 scenarios (RCP2.6, RCP8.5)
4 models (MRI, MIROC, GFDL, IPSL)
【JPN02】(2*2km spatial resolution)
2 scenarios (RCP2.6, RCP8.5)
2 models (MRI, MIROC)
(図1)Area mean SST time sequences (FORP-NP10)
(図1)Area mean SST time sequences (FORP-NP10)

日本周辺海域における海面水温の将来変化 (FORP-NP10結果)

(図2)気候値の将来変化(2086-2095年平均と2006-2015年平均の差※RCP8.5)SST change([2006-2015]-[2086-2095])
(図2)気候値の将来変化(2086-2095年平均と2006-2015年平均の差※RCP8.5)
SST change([2006-2015]-[2086-2095])

気象庁現業解析・予測値

気象庁が日々現業解析・予測を行っている海況データは気象業務支援センターより入手可能である。この予測を行っている海洋モデルは、FORA・FORPを作成したものとほぼ同一のものであり、FORAをベースに作成した漁場推定モデルに現業予報値を適用することにより、リアルタイム漁場予測を実現することができる。

気象庁日本沿岸海況監視予測システムGPV

  • 気象庁の現業予測システムの更新に伴い、2020年10月から配信開始された海況予測データ
  • 日本近海(約2km格子)と北太平洋域(約10km格子)の2種類

北太平洋域モデルベースで4次元変分法データ同化(MOVE-4DVAR)を行い、
日本近海モデルでダウンスケーリング予測実験を行う

気象庁日本沿岸海況監視予測システムGPV
気象業務支援センター資料より