「しんかい6500」特別ミッション

「しんかい6500」特別ミッション
 -こぼさずお湯を注げ-

「その岩石を採取してください。そうそう、真ん中の石です。」
「ここで堆積物柱状コアを採取してください。あ、あと5cm右でお願いします!」
「測定器を海底に設置して、ツマミをひねって起動してください。」

海底実験や観測の成否を決めるのはパイロットのさじ加減ならぬ、「マニピュレータ加減」。有人潜水調査船「しんかい6500」を使った多くの研究成果の裏側には、華麗なマニピュレータさばきが隠し味になっています。今回、JAMSTEC50周年の機会に、「しんかい6500」パイロットの技術の高さを、何か身近な形で表現できないかと考え、「特別ミッション」という形で皆さんにマニピュレータさばきを紹介することにしました。

JAMSTECとおなじく発売50周年を迎える「カップヌードル」にお湯を注ぐことはできるのか?
「カップヌードル」は世界初のカップ麺。海の調査でも船上での深夜に及ぶ実験や調査準備の大事なアイテムです。JAMSTECと同じ1971年に誕生した、50周年仲間で共演をしてみました。

本番一発撮りだったのですが、大西チーフパイロットは危なげなくクリア。 お湯が溢れたり、容器をにぎりつぶしたり、というNG動画集を作る必要は全くありませんでした。
とっても心配そうだった飯島コ・パイロットも結果的には大成功でした。

今回初めて「しんかい6500」を知ったという方もいらっしゃると思います。これを機会に、「しんかい6500」も活躍している、JAMSTECのYoutubeチャンネルの動画にも興味を持って頂けると嬉しいです。ちなみにこの動画は約3分間。「カップヌードル」にお湯を入れてから出来上がるまでの時間を楽しめるように編集してあります。是非ご活用ください。

「しんかい6500」はその名の通り、水深6500mまでの深海に、2名のパイロットと1名の研究者(もしくはパイロット1名、研究者2名)を導く有人潜水調査船です。日本近海を始めとして、太平洋、インド洋、大西洋など世界中の海底での発見や科学観測を成し遂げてきました。日本の深海研究を語る上で、なくてはならないひとつがこの「しんかい6500」です。

「しんかい6500」には2本の腕(マニピュレータ)がついています。7つの関節がある油浸均圧型電気油圧サーボ方式のマニピュレータで、持ち上げ力は72kg。そして握力は数百キログラムの力持ちです。パイロットが操作し、生物や岩石試料の採取や、観測機器の設置・操作等を行います。

今回の撮影は神奈川県横須賀市にあるJAMSTEC本部の潜水調査船整備場で行いました。「しんかい6500」が陸にある時は、ここで船上ではできない細かな整備を行っています。整備を行うのもパイロットを含めた「しんかい6500」運航チームの皆さんです。

本編では使われていませんが、カセットコンロのつまみも「しんかい6500」のマニピュレータを使って操作しました。
さすがに「カップヌードル」のフタはうすすぎて、マニピュレータではつまめませんでしたが、厚みをもたせることができたら開けられたかもしれません。

今回はJAMSTEC創立50周年ということで、同じ年に誕生した「カップヌードル」の動画内での使用を許可していただきました。事前の調整及び確認にご協力いただいた、日清食品グループの皆様に感謝申し上げます。おかげさまでユニークな作品に仕上がりました。
千葉司令、大西チーフパイロット、飯島コ・パイロットを始め、「しんかい6500」運航を担う日本海洋事業の皆さんには調査の準備などでお忙しいなか、事前準備から撮影当日、その後のVチェックなどもご協力いただきました。普段の潜航でもお世話になっていますが、改めて技術の高さに舌を巻きました。ありがとうございました。
撮影に使用した「カップヌードル」はすべて美味しくいただきました。