アルゴフロートによる戦略的観測を開始(2014.08.26)

海洋循環研究グループでは、今年度計画していた中部北太平洋域での戦略的観測を開始しました。 中部北太平洋域は、アルゴフロートによる観測データやそれらを活用した統合データセット(1, 2)の解析から明らかになってきた、 気候変動モニタリングにとって重要な海域の一つです。
この戦略的観測を行う目的は、北太平洋の中・長期変動に深く関係することが指摘されている水塊(中央モード水)の形成・変質過程の解明にあります。南北2.5度間隔に7台投入するという集中的なアルゴフロートの投入を、7月に実施された学術研究船「白鳳丸」KH14-3航海にて完了しました。
今回使用したアルゴフロートはSBE社製NAVISフロートで、イリジウム衛星通信システムを用いた双方向通信が可能な機種です。 従来のアルゴフロートのようにデータを受信するだけでなく、陸上からのコマンド送信により観測周期のパラメータを投入後に変更することができるので、 従来不可能であった、投入日時がバラバラであっても観測周期を修正して同期した観測を行うことが可能です。 白鳳丸航海にて、7月21日から25日にかけてアルゴフロートを7台投入しましたが、投入後陸上からコマンドを送信して観測周期を変更させ、 8月10日には全てのフロートの同期を完了しました。現在では10日に1回、2000m深までの水温・塩分データを同じ日時で取得できるようになっています。
なお、この中部北太平洋海域は全球アルゴ観測網の中でも長年空白域となっていたため、 今回のアルゴフロート投入によって観測網を充実させることが出来、国際アルゴ計画にも大きく貢献します。

1. 気候変動研究のための四次元変分法海洋環境再現データセット(ESTOC)
2. Argo解析グリッドデータセット(MOAA_GPV)

今年度の投入計画と、戦略的観測実施海域(概要)
米国SBE社製NAVISフロート(納品時写真)

フロートWMO番号投入日(UTC)取得プロファイル数同期観測開始日(UTC)最新浮上日(UTC)観測設定
49021372014/07/2142014/08/102014/08/20プロファイル深度=2000dbar,
漂流深度=1800dbar,
観測周期=10日
49021382014/07/216
49021392014/07/225
49021402014/07/235
49021412014/07/234
49021422014/07/245
49021432014/07/254

表:白鳳丸KH-14-3航海で投入したフロート7台のWMO番号、投入日、観測設定、2014/08/20(UTC)現在のプロファイル数および最新浮上日