情報・計算デザイン研究開発グループ/可視化環境/CAVE型VR装置
CAVE型バーチャルリアリティ(VR)装置
CAVEとよばれる方式のVR(Virtual Reality)装置は、イリノイ大学シカゴ校で開発されました。 既に世界中にCAVE型のVR装置が導入されています。 地球シミュレータセンターにも一台CAVE装置があります。 このCAVEにはBRAVEという名前が付けられています。
CAVEの中心部分は大きなスクリーンに取り囲まれた部屋であると言えます。 CAVEシステムには様々なバリエーションがありますが、 通常のCAVEには、正面、右面、左面の3つの壁面に加え、床面の合計4つのスクリーンがあります。 壁面には背後に置かれたプロジェクターからステレオ画像が投影され、 床面には天井に設置されたプロジェクターからステレオ画像が投影されます。 立体眼鏡をかけた体験者がこの部屋の中に入り込むと、 文字通り体ごとステレオ画像に取り囲まれるので、高い没入感が得られます。
地球シミュレータセンターに設置されたCAVE型VR装置「BRAVE」。
CAVEの特徴は、大きなスクリーンでできた部屋に入り込んで立体画像を見るということだけではありません。 体験者がかける眼鏡には、位置と方向を測るセンサーがついているため、 CAVEの計算機システムには、その眼鏡をかけている人の目の位置と視線の方向が常時モニタリングされています。 この視点情報を使い、各スクリーンに映し出すべき立体画像をリアルタイムで変更しています。 そして、その瞬間に体験者から見えるべき画像を高速に(一秒間に数回から20回以上も)計算し、 各スクリーン(壁面+床面)に適切な画像が常投影されるよう計算している仕組みになっています。
地球シミュレータセンターのCAVE装置BRAVEは、 この部屋の4つの面(3つの壁と床)にステレオ映像が投影されます。 データを解析するシミュレーション研究者(ここではビューアと呼ぶ)は、 液晶を使ったシャッターつきの立体眼鏡をかけ、 この部屋の中に入ります。 この眼鏡は、右と左に交互に高速にシャッターがおりる仕組みになっています。 右目用の画像がスクリーンに投影される瞬間、 それに同期して左目にはシャッターがおりるので、 常に右目は右目用の画像を、左目は左目用の画像を見ることで画像が立体視が実現されます。 ビューアはステレオ画像に文字通り取り囲まれるため、 常に広い立体視野角が保証されます。 (つまりきょろきょろと見回してみても常に目に立体画像が入ってきます。) これがCAVE装置で非常に高い没入感が得られる重要な要因の一つです。 スクリーン同士の境目でもステレオ画像が互いに滑らかにつながるように投影されます。 可視化物体のコントロール、つまりVR世界とのインターフェースにはワンド(またはワンダ) と呼ばれる手持ちのコントローラ(一種の3次元マウス)を使います。 眼鏡とワンドには磁気センサーがついており、 ビューアの視点の位置・視線方向や、手の位置・向きをリアルタイムで検出しています。 ビューアがCAVE内部を自由に歩き回ったりしゃがみ込んだりしても、 常にその位置から見えるべき映像がリアルタイムで4つのスクリーンに投影されるため、全てが自然に見えます。 たとえば目の前に何か仮想物体(ボール)が浮いているとして、 その向こう側を見たければ、自分の足で歩いていってボールの向こう側に回り込み、 振り返ってみればよいのです。
CAVEの没入感、現実感は非常に高く、産業や教育、心理学の研究から芸術にまで使われています。 我々はVR装置として優れた機能をもつこのCAVE装置を、 シミュレーションデータの可視化という目的のために使っています。