JAMSTEC

中期観測研究計画

平 成 10 年 1 月: 海洋科学技術センタ-


中期観測研究計画における「みらい」運航の策定について


  1. 今後3年間の基本方針
    1. エルニーニョ、アジアモンスーン等の季節─数年スケールの気候変動現象及び 地球温暖化と海洋との関連の解明は、わが国が早急に取り組むべき課題である。 今後3年間、これらの現象解明に重点をおいた観測研究を実施する。
    2. 「海洋生態系の解明」については、アリューシャン列島付近が、深海生物の調査研究のうえで重要ながらも荒天により観測の空白域となっているため、 同海域の観測研究を実施する。
      なお、「プランクトン群集の観測研究」については、今後3年間は日本近海において海洋科学技術センターの 他の船舶により実施し、「みらい」を用いた観測は、平成13年度以降実施することとする。
    3. 「海洋底ダイナミクスの解明」については、海洋科学技術センターの他船舶で集中実施されるため、 他の課題と平行して航行中可能な海底マッピングを行うこととする。

  2. 運航の策定にあたり考慮した点
    1. トライトンブイの西部熱帯太平洋海域、黒潮続流域への展開及びそれに伴う観測研究を10月、3月を中心に行う。
    2. 3月は西風のアジアモンスーンが活発な時期であり、ブイの展開とあわせ、この時期に西部熱帯太平洋の観測研究を行う。
    3. 熱帯降雨観測衛星(TRMM)と連携した観測研究が重要である。TRMMは97年11月に打ち上げられ、設計寿命が3年であることから、 TRMMとの連携を考慮した大気─海洋相互作用に係る観測研究を実施する。
    4. 「みらい」の夏期北極海の航行能力を活用し、同海域の観測研究を夏期に実施する。
    5. 北太平洋域は、二酸化炭素の吸収等、海洋観測研究に重要な海域でありながら観測の空白域となっていた(特に冬季)。 本海域を中心とした観測研究を、季節変動の解明にも考慮しつつ行う。
    6. 赤道域における基礎生産力については、年々変動の解明を考慮した観測研究を行う。



平成10年度海洋地球研究船「みらい」研究航海概要
    MR−98−K1
    高緯度における物質循環の研究

  1. 概要

     高緯度海域である北西部北太平洋は海水温度が低く、荒天時が多いため、特に冬季において二酸化炭素を始めとする物質が大気-海洋間で活発に交換されていると考えられ、海洋における炭素循環に関して重要な海域の一つである。さらに栄養塩の蓄積された深層水の湧昇に関連し、植物プランクトンの基礎生産力が一年中高く、またケイ藻種が優先種であるので、表層で生物により固定された二酸化炭素は多くの物質とともに、中・深層へ活発に効率よく輸送されていると考えられる。
    また、北太平洋全域には低塩分で特徴づけられる北太平洋中層水が存在しており、その移動・混合過程は北太平洋の物質循環に重要な役割を果たしていると考えられる。

  2. 研究内容

     北西部北太平洋及びその隣接海域において時空間的に連続して生物地球化学パラメ-タ-の観測を行い、粒状物の生成・分解過程、粒状物質/溶存物質/ガス成分の輸送過程、及びその堆積過程を把握し、高緯度海域の地球環境変動に関わる役割を解明する。

  3. 主たる海域

    北西部太平洋海域

  4. 日程

    平成10年11月1日(日)〜12月15日(火) (45日間)

  5. 寄港地:関根浜 ─ 釧路 ─ 関根浜

  6. 乗船研究責任者予定

    海洋科学技術センター海洋観測研究部
    日下部 正志






平成10年度海洋地球研究船「みらい」研究航海概要
    MR−98−K2
    赤道域における基礎生産力観測研究

  1. 概要

     赤道太平洋域の東側では、卓越した貿易風により深層から海水が湧昇し、これにともなって栄養塩類が有光層内に運ばれるため高生物生産となっていることが知られている。この西側暖水域の低生産、東側昇湧域の高生産の構造は、数年規模の気候変動として有名なENSO(El-Nino-Southern Oscillation:エルニ-ニョ・南方振動)に呼応して大きく変化するが、現在の所、生物学的によく理解されているとは言えない。

  2. 研究内容

     基礎生産力、新生産力、植物色素濃度及び、基礎生産に影響を与える因子である栄養塩、溶存酸素濃度、溶存二酸化炭素濃度、海中光を計測し、この海域の特徴を詳細に把握するとともに、基礎生産機構の解明及びその変動を解明する。

  3. 主たる海域

    赤道海域

  4. 日程

    平成10年12月23日(水)〜平成11年1月31日(日) (40日間)

  5. 寄港地:関根浜 ─ グアム ─ ハワイ ─ 関根浜

  6. 乗船研究責任者予定

    海洋科学技術センター海洋観測研究部
    河野 健






平成10年度海洋地球研究船「みらい」研究航海概要
    MR−99−K1
    西部熱帯太平洋の観測研究

  1. 概要

     南アジアから北東アジアに及ぶ地域において社会的、経済的影響の大きなモンス-ン変動やエルニ-ニョの解明を目的とし西部熱帯太平洋の暖水プ-ル域(将来にはインド洋も含む)における大気と海洋の変動の観測研究を行う。この観測研究では、トライトンブイの展開が大きなウエイトを占める。

  2. 研究内容

     トライトンブイとTAOブイのデ-タを中心とした混合層の熱・水収支、運動量収支の観測を実施する。混合層のメカニズムに対する塩分効果、赤道波動による収束・発散の諸問題を解明する。また南半球から暖水プ-ル域へ、さらに暖水プ-ル域からインドネシア多島海を通じてインド洋への水・熱輸送の変動について調べる。

  3. 主たる海域

    西太平洋赤道海域

  4. 日程

     平成11年2月12日(金)〜3月26日(金) (43日間)

  5. 寄港地:関根浜 ─ グアム ─ ホニアラ ─ マジェロ ─ 関根浜

  6. 乗船研究責任者予定

    海洋科学技術センター研究業務部
    黒田 芳史




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