平成14年4月18日
海洋科学技術センター

    「地球シミュレータ」世界最高の演算性能を達成

 海洋科学技術センター(理事長 平野拓也)は、地球規模で起こる地球温暖化や環境変動、異常気象、地殻変動等の数値シミュレーションによる解明を高精度で実施することを目的として開発してきた世界最大級の超高速並列計算機システム「地球シミュレータ」が、Linpackベンチマークテスト(注1)で35.61テラフロップス(TFLOPS)の世界最高の演算性能を達成(注2)し、この性能は、Linpackベンチマークレポートを公表している米国テネシー大学 Jack J.Dongarra博士に提出し、確認を受けていたが、本日4月18日(日本時間)、承認され正式に登録された。(参考資料1
 なお従来、世界中のスーパーコンピュータの内で最も高性能なシステムは、最新のTOP500(注4)によると、米国のASCI Whiteシステムで、7.226テラフロップス(ピーク性能12.288テラフロップス:ピーク性能比58.8%)であり、これに比べ計算速度で約5倍の性能を有するものである。

 「地球シミュレータ」は、単体性能8ギガフロップスのベクトルプロセッサ(注3)8個が16ギガバイトの高速メモリを共有する構成を1ノードとし、640ノードがデータ転送速度12.3ギガバイト/秒の高速ネットワークにより結合されている。従って、総プロセッサ数は5,120個でピーク性能約40テラフロップス、主記憶容量は10テラバイトである。
 今回記録したLinpackベンチマークテスト値35.61テラフロップスは、640ノードの内638ノード(5,104プロセッサ)を用いて得られたもので、ピーク性能に対する実測性能比は87.2%となる。(参考資料2

 「地球シミュレータ」は、宇宙開発事業団(理事長 山之内秀一郎)、日本原子力研究所(理事長 村上健一)及び海洋科学技術センターが共同で研究開発を進めてきたもので、平成14年2月末に完成後、3月11日より海洋科学技術センターに設置された地球シミュレータセンター(センター長 佐藤哲也)により一元的に運用が開始されたところである。

【本件に関する問い合わせ先】         
海洋科学技術センター            
地球シミュレータ運用推進課 山田、菊地 
電話 045-778-5751・5755
総務部普及・広報課 鷲尾、野澤     
電話 0468-67-9066    
ホームページ http://www.jamstec.go.jp


【用語の説明】

(注1)Linpackベンチマークテスト

 スーパーコンピュータ等の計算性能を比較する目的で作られたベンチマークのうち、最も標準的で広く用いられているもの。大規模線形方程式の解放を実施した際の演算性能(ギガフロップス値:注2)を計測する。Jack J.Dongarra博士(テネシー大学)が提唱した。

※テスト結果については、レポートとしてweb上に随時更新掲載されており、これにより、今回の地球シミュレータにおけるテスト結果が世界最速であることを確認している。 
(レポートHP http://www.netlib.org/benchmark/performance.ps)

(注2)テラフロップス(TFLOPS)

 1テラフロップスとは、1秒間に1兆回の浮動小数点演算を行う能力を示す用語。「テラ」は1兆(10の12乗)倍を示す接頭語。因みに「ギガ」は10億(10の9乗)倍を示す接頭語。
 今回は、Linpackプログラムの計算を実行させた際、35.61テラフロップス、すなわち平均して1秒間あたり35.61兆回の浮動小数点演算の性能を記録した。
(注3)ベクトルプロセッサ
 ベクトル(配列)演算を1つの命令で高速に処理するプロセッサ。これに対して、ほとんどのパソコンやワークステーション等に使用されているスカラープロセッサがある。ベクトルプロセッサはスカラープロセッサに比べ高価ではあるが、高い実効性能を引き出しやすい。

(注4)TOP500

 TOP500とは、世界中に設置されたスパコン等の大規模計算機システムのデータを収集し、計算性能の上位500位までを順位とともに紹介した表、及びそのWebサイト。1993年に現在の形で開始され、毎年2回ずつ更新される。計算性能の比較にはLinpackベンチマーク(注1)を利用。
(参照HP http://www.top500.org/