平成18年6月2日
独立行政法人海洋研究開発機構


深海巡航探査機「うらしま」により伊豆半島東方沖において地すべり痕確認
-深海底微細地形 の把握に成功-(速報)

1. 概要
   海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)は、海底精密調査を目的として深海巡航探査機「うらしま」を用いた伊豆半島東方沖の音響探査(平成18年5月17日から22日)を実施し、深海底における海底微細地形データ(海底表層の反射強度分布図)を取得し、地震等により発生したと思われる地すべりの痕跡を示す地形を確認することに成功しました。深海底傾斜地において詳細な海底の状況を把握したのは、今回が初めてです。

2. 調査内容
(1)調査期間 平成 18年5月17日〜5月22日
(2)調査海域 伊豆半島東方沖(初島沖 6km)
「初島沖深海底総合観測ステーション」(以下、ステーション)の周辺
の水深 1,300mから1,000mの傾斜地(最大傾斜16°)を含む海域(図1)、 (総航行距離65km)(面積として 5平方km)
(3)調査方法 深海巡航探査機「うらしま」(写真1)搭載のサイドスキャンソナー による音響探査

(4)調査結果

 
  1. 「うらしま」で取得したデータを用いて作成した海底微細地形図(海底表層の反射強度分布図)からは、ステーション西側斜面に周囲の地形とは明らかに異なる反射強度の強い筋があり、これらは地震等による地すべりの痕跡を示すものと思われます(図2-1)。さらに、その東側には、砕(さい)屑(せつ)物(ぶつ)(岩石が砕けたもの)によるものと思われる強反射の領域が扇状地状に分布しています(図2-2)。
  2. 「うらしま」によって、予めプログラムした 調査経路(緯度、経度および海底からの高度(今回約 100mに設定))に基づき深海底傾斜地を正確に航行し、計測することにより、面的かつ高精度なデータを取得することに成功しました (図3) 。

3. 今後の予定
   今回取得したデータをもとに、過去の潜航調査の画像などと合わせて解析を進め、地形・地質構造との対比などから平成18年4月21日に発生した泥流との関連についても明らかにしていきたいと考えています。今後、「うらしま」の活用により断層活動や海底地すべりなどの調査が、短時間により海底に近い場所でより高い精度で実施できることとなり、その活動の履歴や発生機構がより詳細に解明されることが期待されます。

お問い合わせ先 :
海洋研究開発機構
地球内部変動研究センター
海洋底観測研究グループ 研究員 笠谷 貴史
046(867)9230
海洋工学センター 
先端技術研究プログラム サブリーダ 月岡 哲
046-867-9377
経営企画室
報道室長 大嶋 真司
046-867-9193