K2点/S1点観測データサイト

漂流型セジメントトラップデータ

観測定点K2及びS1で実施した漂流型セジメントトラップデータを掲載しています。
データは2010年以降のデータを両観測点分で1つのexcelファイルにまとめてあります。

1. 漂流型セジメントトラップ

亜表層の沈降粒子や動物プランクトンを捕集するために、基礎生産力を測定した観測点K2とS1において “ナウアー(Knauer)型“筒状セジメントトラップ(写真1) を投入した。本トラップはポリカーボネイト製のバッフル付透明筒(開口面積:約0.0038 m2 、アスペクト比(縦横比): 620 mm長 / 75 mm幅 = 8.27を8本束ねたものであり、Knauer (1979)が紹介したトラップに準じたものである。投入前にはそれぞれのトラップに高塩分水(表層ろ過海水20Lに塩化ナトリウム100gを加えたもの)を装填した。このセジメントトラップを水深60, 100, 150, 200mに設置した。回収後、筒内の沈降粒子が全て沈降するようにセジメントトラップを甲板上で数時間放置した。その後、上澄み海水をサイホンで排水し底部の沈降粒子のたまった捕集カップを取り外し実験室に持ち込んだ。8本中4本分の沈降粒子は、全粒子束、炭素、窒素、微量成分の測定用に、ヌクレオポアフィルター(孔径0.4μm)もしくはGF/Fフィルターでろ過した。これらのサンプルを化学分析が実施されるまで冷凍保存した。残りの沈降粒子は中性フォルマリン溶液で保存した。これらは冷蔵保存した。


(1)観測点K2
漂流型トラップ設置深度: 60、100、150、200m
観測実施期間
MR10-01: 2010年1月23日~1月25日
MR10-06: 2010年10月28日~10月31日
MR11-02: 2011年2月25日~3月1日
MR11-03: 2011年4月19日~4月22日
MR11-05: 2011年7月1日~7月6日
MR12-02: 2012年6月11日~6月14日


(2)観測点S1
漂流型トラップ設置深度: 60、100、150、200m
観測実施期間
MR10-01: 2010年1月30日~2月2日、2010年2月8日~2月10日
MR10-06: 2010年11月8日~11月11日
MR11-02: 2011年2月15日~2月18日
MR11-03: 2011年4月28日~5月2日
MR11-05: 2011年7月25日~7月30日
MR12-02: 2012年6月28日~7月1日


写真1 漂流型セジメントトラップ

2. 化学分析

2.1 全粒子束
実験室において, フィルター上サンプルは~ 50°Cで24時間乾燥した。デシケーター内で放冷後、重量を測定した。全粒子束(Total Mass Flux: TMF, mg m-2 day-1) はサンプル重量、トラップ開口面積、捕集期間から計算した。測定誤差(セジメントトラップ間誤差)は10%以下であった。


2.2 有機炭素、無機炭素、窒素
GF/F上フィルターを乾燥後、重量測定した。全炭素、窒素測定用サンプルはすずディスクで包んだ。有機炭素測定用サンプルは、炭酸カルシウムを除去するために、塩酸噴霧下のデシケーター、もしくはタッパウエア内に設置、24時間放置した。その後、再び乾燥させてから、“すず(tin)”ディスクで包んだ。“すず”ディスクで包んだサンプルを元素分析計(Parkin-Elmer 2400)のオートサンプラーに装填、同装置で全炭素濃度、窒素濃度、有機炭素濃度を測定した。標準試料として市販のアセトアニリドを用いた。無機炭素濃度は全炭素と有機炭素の差分とした。測定精度は概ね3%以下であった。しかし捕集量の少ないサンプルの場合は測定誤差が10%以上であったり、無機炭素濃度(全炭素と有機炭素の差分)がマイナスになる場合があった。その場合には別途、高周波数プラズマ発光分析計(ICP-AES)で測定したCaの値から無機炭素濃度を算出した。


2.3 微量元素
微量元素は高周波数プラズマ発光分析計(ICP-AES)で測定した。ICP-AES用サンプルはフユージョン法で分解し硝酸溶液とした(フージョン法:Huang et al., Limnol. Oceanogr.: Methods 5, 13-22, 2007 and references in this paper)。ヌクレオポアフィルター上試料の重量測定を行った後、フィルターごとグラファイトるつぼに入れた。るつぼに入った試料上に約140mgのホウ酸リチウム(Lithium metaborate:LiBO4) を計り入れ、試料と混ぜ合わせた。その後、グラファイトるつぼをマッフル炉に入れ、950℃下で15分間放置した。その後、“溶岩状になった”試料+ホウ酸リチウムを素早く、テフロン容器内の6%硝酸溶液約20mlに入れ常温下で撹拌した。約1時間の撹拌後、グラファイトを除去するためにGF/Fフィルターでろ過、ろ過試料を6%硝酸溶液で約50mlにメスアップし重量を測定した。
微量元素(Si, Ca, Fe, Ti, Mn, Mg, Ba)の濃度を ICP-AES (Perkin-Elmer Optima 3300DV)で測定した。 濃度を求めるための検量線作成用試料は硝酸ベースのICP-AES 標準溶液 (Kanto chemicals nos. 20,277-20,280)で作成した。また標準試料は産業技術総合研究所(旧地質調査所)が配布している玄武岩(JB-1)、あるいは花崗岩標準試料(JG-3)(Imai, 2000, もしくは
http://riodb02.ibase.aist.go.jp/geostand/welcomej.html)を使用した。これらの標準試料は、セジメントトラップ試料と同様に、フュージョン法で硝酸溶液とした。測定誤差は全ての元素が5%以下であった。ただし捕集量が少なかったサンプルのTi, Mn, Ba濃度(通常は浅いトラップの場合)しばしば検出限界以下であったり、誤差が大きくなった。

3. データの説明

各列データは以下のように計算されている。