2015年10月6日 ダッチハーバー入港

  • 船内は10月6日を迎え,入港日となりました。アラスカ州の南西の果て,ウナラスカ島(アマラスカ島だったかも!?)のダッチハーバーに入港です。北緯53度56分,西経166度29分。気温は8℃。ずいぶん温かくなりました。。。私は,港に船が入っていく様を見るのが好きなので船橋に上がって写真を撮ってきました。いやぁ,曇天。雨っぽい。。。昨年の入港時はいい景色だったんですが。

  • ベーリング海峡を抜けた後,回航中は片付け作業や書類書きでほどほど忙しく過ごしておりました。合間(10月4日)に乗船者の集合写真を撮ったりもしました。北極海を抜けた後,気温が上がっているにもかかわらず,みなさんは北極感を出すために,普段は来ていない極寒対応のジャケットなどをわざわざ着込んで写っております。仕込み,やらせの類です。

  • 引き続きLeg. 2に乗船する方々は一時の休息,下船して帰国する方は飛行機で帰ることになります。予報通りに低気圧がダッチハーバーの周辺に直撃していたため,予定通りに帰れるか不安が残りますが,さし当りこれにてLeg. 1の北極航海日誌を終了したいと思います。船長はじめ船員の皆さま,研究者および観測技術員の皆々さまには大変お世話になりました。ありがとうございました。また,読者の皆さまにも長い間お付き合いしていただきありがとうございました!

  • 最後に着岸した船の写真を,と思ったのですが,下船したらすぐに空港に向かわないといけないので,GODACの澤野さんが展開図から作成したペーパクラフトでお別れしたいと思います。それではまたいつの日か。

(杉江)


MR15-03 Leg1 Memorial
ダッチ入港
ペーパークラフト

2015年10月4日 観測終了!

  • まずは,更新を怠ってすみませんでした。低気圧の接近により,北緯68度付近が荒れ続けたため,荒天やCTDトラブルのために観測がキャンセルになったり,低気圧の合間を縫って行った係留計の回収作業も残念な結果となるなど,明るい話題がなかなか無かったのです。ご承知ください。

  • さしあたり,ウェットラボの写真を撮ってみたりしました。左から,東大の塩崎チーム,北大の亀山研,JAMSTECの小野寺チーム,その奥の方にまた亀山研,その奥にJAMSTECの藤原さんの実験スペースが写されております。ネタが尽きてきた感が否めませんね(笑)

  • 本航最後の観測は北緯66度,西経168度45分の観測点でした。トラブルがなかったわけではないですが,けが・病人を出すことなく調査を完了できたことは大変喜ばしいものです。後は持ち帰った試料から,いち早く,最良の成果を出すのみですね。大口を打ち込み始めた私の手は震え始めましたが。。。

  • 現地時間では,10月4日をちょうど過ぎたころ。本船は,北緯62度50分,西経167度20分あたりを南下中。気温は4度を超え,JAMSTECの藤原さんいわく,「この辺りは常夏だ!」とのこと。んなこたぁないんですが,氷点下に慣れた身体には,厳しい寒さではありません。もちろん軽装では外に長居はできませんが。

  • さて,本航海のleg 1も残すところあと2日あまり。このまま順調に入港し,帰国組は飛行機に乗れるといいのですが。天気予報図を見る限り,入港日の前後にダッチハーバーに低気圧が直撃。。。おいおい,頼むよ。

(杉江)


ウェットラボ
2015年10月3日 現在位置

2015年9月29日 実は,航海日誌を書くのがメインの仕事ではないのです!

  • 昨晩の時化は少し長く続き,2つも観測点をスキップすることになってしまいました。これからは1~2日ごとに低気圧が襲ってくる模様。恐ろしや。西経168度46分に沿って南下中,現在(日本時間の9月30日23時)北緯69度43分。気温は0度前後ですが,水温が4.8度と高く,南のベーリング海を抜けた温かい南の水の影響が色濃く出始めました。

  • 頻繁に本航海の様子を書いてきたキミ(杉江)は何をやっているのかね,という意見をいくつか頂戴したので僭越ながら少し紹介いたします。

  • 研究の対称は植物プランクトンです。彼らは生態系の基盤です。お家の基礎がシロアリに食われると家が倒壊するのと同じく,植物プランクトンが無くなれば海洋生態系は完全に崩壊します(ごく一部の熱水噴出孔などの特殊な例を除きます)。

  • 一方では,近年叫ばれる地球環境の変化。不確実な要素はまだまだたくさんありますが,どうも我々人間の活動に伴う二酸化炭素が地球を暖め,北極の氷が小さくなっているとのこと。また,二酸化炭素は,炭酸水のごとく,海に溶け込むことで少し酸性になります(海洋酸性化と言います)。現在のペースで環境変化が起こり続けると,将来の海洋環境ではどのようなことが起きてしまうのだろうか。崩壊へ向かうのか,はたまた生産性が向上するのだろうか。

  • そこで私は,さまざまな地球環境の将来像がある中で,北極で起こりそうな温暖化などの影響を調べるための調査をしております。現場の海水を採集し,将来予測される環境を模擬した条件下で現場にいるプランクトンたちを培養しておりました。培養は甲板に設置した水槽内で行いまして,培養ボトル内の生物,化学環境に関して精査するわけです。

  • 実験室では様々な専門の機材を使っております。向かって左側はろ過器で,海の中の粒子成分や,ろ過した後のろ液の成分を調べるための機材が並んでおります。向かって右側に見えるコロコロしたタンクの中に実験後のプランクトンが入っており,この中身を精査しようとしているところです。左側が片付いているのは実験直前だからで,このあとカオス的に実験機材が氾濫し始めます。実験中は必死なので,その様子の写真はございませんが。そして,昨日めでたく実験は終了いたしました。面白い結果が出てくることを願っ...

  • おっと,自分の実験のことで熱く書きすぎてしまった感がありますね。最後に一昨日の豪勢な夕飯の写真でも掲載いたします。フィレステーキ,白身魚のムニエル,スモークサーモン,ポタージュスープ,パン,ライス,サフランライス。完食=でぶ。なんと恐ろしいメニューでしょうか。心を鬼にして残さないと成人病まっしぐらです。美味しいけれど残さないと体に悪い。実験との戦いのみならず,洋上では己の食欲との戦いが毎日,毎食繰り広げられております。負けてたまるものかっ!

(杉江)


杉江実験室
杉江培養実験
過去の夕飯

2015年9月28日 晴れのち,嵐

  • 現地時間で9月28日。北緯74度30分,西経168度45分。本航海の最北端の観測点に到着しました。ここからはベーリング海峡に向けて南下する観測です。いよいよ終盤。。。の怒涛の観測が始まりました。

  • 昼は晴れ。また甲板に出てパノラマ撮影。空,海,雲の色がパステルカラーで幻想的です。風は10m/s前後とやや強めですが,まぁ穏やかなものでした。

  • しかし,夜になると海は本格的な荒れ模様。風速は20 mを越え,波高は4~5mに。台風21号に伴う,与那国島の瞬間最大風速81mには到底及びませんが,ほどほど時化ております。そして,観測点102番でついに本航海で初の,荒天による観測中止。観測点を一つスキップすることになりました。幸か不幸かプランクトンネットが鯉昇りのように風にたなびく姿をみることはかないませんでした。氷点下の外気で暴風の甲板は極寒のため,個人的には見たいとも思いませんが。

  • 少しは収まってくれるといいのですが。こうしてPCで記事を書いているとじわじわと船酔が襲ってくるので,本日はこの辺で。

(杉江)


晴れだけど。
南下中

2015年9月26日 本日ハ晴天ナリ

  • 曇天,降雪など,すっきりしない天気ばかりの北極海ですが,週に1,2回は晴れ間がのぞきます。本日は,北緯73度18分,西経160度46分の観測点にてセディメントトラップの係留を行いました。午前中に行った採水の時は曇天で風も強かったのですが,午後からは晴れ間が現れ,微風の穏やかな海況になり,無事にトラップの係留を終えることができました。これもまた来年引き上げに行かなきゃね。

  • しかし何だかいつもより太陽がまぶしく感じる。久々の晴天だからでしょうか。それとも,太陽高度が低い高緯度では,太陽と海からの反射の両方の光が届くからでしょうか!?船橋甲板に出て,180度のパノラマ撮影をしてみました。向かって左側が船の前方,ぐるっと回って右側が後方です。なかなかの絶景。ま,海と空しか見えませんけどね。

  • 晴れ
  • そして日が暮れると綺麗な満月が見えてきました。久しぶりに月を見た気がします。そんな中,6時間おきに行われるラジオゾンデによる大気観測が始まりました。月とゾンデ。このラジオゾンデには,温度,湿度,気圧の測器とGPSが備えられており,上空大気の風向風速等を観測しております。北極圏における気象の理解の高度化に何役も買うことになるでしょう。。。

  • このままずっと穏やかな海況だといいんですけどね。しかし,大島研究員の情報によると,明日には低気圧の影響で風が強まるとか。荒天時の寒さや轟音,船の揺れが伝えられると面白いのですが。。。

(杉江)


ゾンデ放球

2015年9月25日 氷縁はいずこへ

  • バロー沖での暖水塊,渦などの観測を終え,船は西へ向けて航路をとり始めました。只今,北緯73度12分,西経157度47分。水深は2600mほど。気温は0.6度と,ここ数日の中では高めですが,風速が10~15mと,体感温度は極寒のままです。

  • 本日は,海氷に近づいて氷縁付近での観測を行いました。氷が解けている際の貴重な場所だけあり,皆が研究用の海水試料を欲しがりました。採水項目は盛りだくさん,水を採るためのボトルも多種多様にたくさん準備されました。私は観測ワッチ時間外のため,採水には参加せず,写真係に徹しておりました♪

  • 予報から推測された氷縁は,北緯72度50分付近だったのですが,ここ数日の南風で北緯73度12分より北に移動していたようです。氷縁での観測といいながら,見渡せば小さな氷がちらほらあるばかり。大きな海氷でもバスくらいの大きさでしょうか。距離感がなくなり,さらに指標となるものもないので,海の上に浮かんでいるものの大きさは全然わかりません。ただ,海氷は海の上より下の方がはるかに大きいので,侮ってはいけません。安直に近寄るなかれ。しかしまぁ,氷縁という割には氷が少ない。本船は耐氷船なのにぎりぎりまで攻めないんだなぁ,ちぇ。なんて思っておりました。

  • が,しかし。水深は2600m。採水器を海底近くまで降ろして,上がってくるまでに2時間程度かかります。いったん降ろしてしまえば船はなかなか動けません。2時間の間に,突如流れてきた海氷の集団に囲まれるかもしれません。そうすると,身動きが取れなくなります。極寒の海で孤立。。。嫌だ。絶対に避けなければなりませんよね!十分な安全を確保したうえで,さらに安全を見た上で,船長や主席の判断だと思います。

  • 毎度のことですが,興味本位でアブないところに近づきたい研究者を,確固たる理性で安全な航海を確保していただいている船員さんたちには頭が上がりません。毎度毎度,大変お世話になっております。今後とも,どうぞよろしくお願いいたします。

(杉江)


採水項目たくさん
小さな氷
浮氷ちらほら

2015年9月22日 風のない日

  • 9月22日。北緯72度15分,西経156度付近を航行中です。外気は-5~-4度。海水温もマイナスでした。ここ数日は風が弱く,今朝はついに1m/sを下回り,ほぼ無風状態でした。

  • 風が無くなると,波が立たなくなり,その状態が続くと,海はいよいよ鏡面のようになります。見渡す限り空を映し出す鏡。北極海でこのような状態になるのは非常に珍しいことのようです。音もなく静かで,とても綺麗な瞬間です。さらに今日は虹まで見ることができました。海面に映る様は,ボキャブラリーが貧困な私には,「見事!」としか言いようがありません。写真のように曇った中に見られる北極の虹は,微細な氷を通った光が織りなす情景のようです。

  • しかし,明日,明後日には低気圧が近づく予報のようです。嵐の前の何とやらなのかもしれませんが,つかの間の絶景に心を洗われる瞬間でした。

(杉江)


べた凪ぎ

2015年9月21日 光プランクトン

  • 部屋を暗くして海水をろ過しているとろ紙の上の水が無くなった瞬間に小さな粒がたくさん光るんです。青く鮮やかに。何者なんでしょうか。。。北極海には光る生き物が数々いるとの話も聞きました。知らないことが多いなぁ,北極。

  • 光るプランクトンとして比較的よく知られているのは,ヤコウチュウではないでしょうか。漢字では,「夜光虫」とかき,夜光る虫なわけです。昼でも光っているでしょうが,昼に見えるほどは明るく光らないのでそんな名になったのでしょうか。しかし,このヤコウチュウは温暖なところに生息しているといわれているし,大きさも1ミリ程度と,単細胞のプランクトンとしては非常に大きい部類に入ります。しかし,透明なボトルに海水を入れて目を凝らしてみてもヤコウチュウはいません。どうも違う輩が光っているようです。何やつ!?どちらさまか,ご存知の方がいらっしゃったらお教えください。

  • さて,わからない輩のことはとりあえず置いておき,ヤコウチュウについて少し調べてみました。これみよがしに知識をひけらかさせていただきます。

  • ヤコウチュウのように,光る小な動物を英語ではphosphorescent animalculeと言うそうです。Phosphorescentは燐光。リンが酸化されるときの青白い光,墓地で出る「ひとだま」のような光です。続くanimal + culeですが,animalは動物。anima-はラテン語で息や生命を意味するそうな。-culeは微小ということのようです。分子(molecule)などに同じ語尾がありますね。

  • また,ヤコウチュウの学名は,Noctilucaといいます。渦鞭毛虫とよばれる原生動物に分類されております。学名の語源ですが,辞書によると,Nocti-は,夜,夜中を意味し,その元は,ローマ神話に出てくるNox(Nyx)という夜の女神のようです。接尾語の-lucaは光。光の単位のルクス(lux)の元になっているようです。ほほう,ヤコウチュウは夜に光る女神という意味を込めてつけられた名前なんだな。

  • さて,今日も勉強した。お酒も回ってきたところで,本日はこの辺で失礼します。

(杉江)


光る何がしか

2015年9月19日 今日もオーロラは元気いっぱい

  • 「みらい」は北緯72度16分,155度57分辺り。先日からあまり移動しておりません。外気は-4~-3度ほど。しかし,風はほとんどなく,海は凪いでおります。

  • 昼間は曇っておりましたが,夜になると星空...というよりは,またもオーロラが出現しました。今夜もまた,なんとも派手でな演出,感謝感激雨嵐でございます。あまりに明るくて暗闇でも足元が見えるほどでしたよっ!海にまで映って何とも空前絶後な風景です。

  • 陳腐な説明は不要でしょうから,さし当り写真をご覧ください。超広角で,かつ,明るいレンズのカメラが欲しくなりますね。

  • ちなみに,調査ですが,もちろんついでで書いているわけではございませんが,順調に進められております。

(杉江)


海に映るオーロラ
空から降り注ぐオーロラ
明るいオーロラ
残り香オーロラ

2015年9月18日 あれもこれも

  • 「みらい」は北緯72度10~30分,西経155~156度付近を航走しております。
    外気は-3~-1度。風が7~8m前後なので,体感温度は-10度くらいでしょうか。しかし,海には波がなく,穏やかでした。

  • 本日の朝は,ニスキン採水器による採水ののち,セディメント・トラップというものの設置でした。大型の「ろうと」の下にカップがついております。今回は水深約250mと1260mの2つの深さに設置され,1年間係留している間に上から降ってくるものを捕集する装置です。その他,物理,化学,生物学的な成分を各種センサーで連続的に測定し,北極海の環境変化が海洋生態系に及ぼす影響を把握しようという試みです。どんなデータが採れるか楽しみですね。

  • 続いて,クロージングノルパックというプランクトンネットによる観測です。これは,指定した水深でネットを閉じることができるネットで,どの深度にどのような生き物が生息するかを調査するための測器です。しかし,大きな問題がある測器でもあります。とても時間がかかるのです。例えば,0~500mの水深で,0~50,50~100,100~250,250~500mの4層,それぞれに生息する生き物を調査するためには,4回もネットを曳網しないといけません。外の体感温度は-10度。さむい。ネット担当の研究者(小野寺,杉江)のみならず,船員さんも寒さでもじもじしながら耐え忍ばなければならないんです。あぁ,寒かった。

  • プランクトンネットの観測の時には,雪が降っておりました。上空の気温がぐっと冷えてきたようで,雪の結晶がしっかり見えます。綺麗なもんだ。。。さむいぜ。

  • 日が暮れ(22時過ぎ),夜には大イベントがありました。雲が無くなった空には,満天の星空。画面右手にうっすらとオーロラも写り込みました。しかし,今日のオーロラはこんなものではありませんでした。空のあちらこちらにオーロラが見え,刻一刻と形を変えて,消えかけてはまた強く光っておりました。寒さを忘れ...ることは一切ありませんでしたが,非常に壮大な演出でした。トラップ投入の成功を祝う太陽のコロナ爆発があったのでしょう。

  • 終わる気配のないオーロラ。ふと真上を見上げると,また大きく,濃いのが出てきたではありませんか!レンズを上に向けてカメラを甲板に置き,30秒間シャッターを開けてみました。

  • あれ?船が旋回してないか?

  • 写真を見てみると,弧を描く星の中にオーロラ。まぁ,こんなのも良いんじゃないでしょうか。

  • さて,またオーロラを見れることを期待して,本日はこの辺で。仕事を中断してまでオーロラを見たが故,やらなければならないことが。。。

(杉江)


トラップ1
トラップ2
クロージングノルパック
雪の結晶

ばっちりオーロラ
星空と薄いオーロラ
船体回転しはじめた

2015年9月17日 冬が始まってきたかも!?

  • 雪はしょっちゅう降っていたので,記事にするほどのことでもないな,と思っていたところ,甲板に,5 mmくらいの白く丸い球がたくさん転がっていました。雹でも降ったのか。と思ったら,それは融雪剤とのこと。ふぅん。

  • ただいま,北緯72度20分,東経155度20分あたりを右往左往しております。正確には狭い範囲を東西に移動しながら観測をしているところです。(○に「み」が本船のおおよその位置。画像は堀研究員より提供していただきました。)

  • 表面付近の水温は1℃以下,外気温は-4℃。ほほぅ。どうりで融雪剤を撒くわけだ。

  • 周囲の話によると,9月中旬は北極海の氷が溶けるフェーズから結氷し始める折り返しの時だとのことです。経験則の通り,寒くなってきたわけです。さぁ,冬が始まるよ。

  • 海氷の張り出しが無ければ,現在地よりもっと北や,西のロシアの北側など,広域の調査を計画していた本航海。予定していたところに行けておりません。しかし,興味深い海洋物理現象を見つけたため,現在の位置で比較的長い期間滞在しているというわけです。きっと充実したものになるはず。。。

  • あと数日はこのあたりで調査をする予定です。私はといいますと,つい先日より忙しくなる実験を開始したので,更新頻度が低くなるやもしれませんが,ご承知いただけると幸いでございます。私以外の方からの記事を期待するばかりでございますが。

  • そうそう,ご存じない方がほとんどだと思いますが,これは私の航海日誌ではなく,北極航海全体のブログなんですよ。。。

現在位置と氷の状況

(杉江)


2015年9月14日 月並ではございますが

  • 航海のことを書くたびに採水器の写真を上げている気がいたしますが,今回も水中から上がってくる採水器の連続写真を撮ってみました。

  • 画像は1週間前,9月7日のチャクチ海で調査をした時のことだったと思います。左上の写真で,水の中にある採水器が緑がかって見えるのは,そこいる植物プランクトンの色です。チャクチ海の植物プランクトンが多いのは,目でみてもよくわかりました。本航海主席の西野さんのお話では,クジラも多いそうです。植物プランクトンは,クジラの餌の餌,あるいは,餌の餌の餌,もしくは,餌の餌の餌の餌。。。実際はもっと複雑怪奇な関係もあるでしょう。

  • さて,採水器に話を戻します。円柱状のものはニスキン採水器といいます。蓋を開けて沈め,船上から信号を送り,指定した水深で蓋が閉まるようになっております。この枠には36本の採水器が装着できるので,36層の深度から水を採ることができます。例えば,3600 mの水深であれば,100 m毎に水が採れるわけです。100 m毎でいいのか?

  • 都会では,100 mの間にコンビニや飲食店があったり,道路,人(普通),人(ブランド品まみれ),人(はだか⇒逮捕)などがあるわけですが,一方のサハラ砂漠では100 m進んだところで砂ばかり。

  • 海の中でも,水温や塩分,植物プランクトン量が細かく変化する深さと,変化の大きくないところがあります。前者は海の表面ちかくで,後者は深層となります。ですので,採水は水深に対して均等に行うのではなく,表面に近いところでは細かく,10~25 m毎に採水し,100 mを超える水深では50~200 m毎くらい,1000 mより深いところでは,500~1000 m毎にしか採水しません。海のダイナミックさが表面と深層では全然違うんですね。

  • お,気づけば長いと思っていた航海も折り返しだ。

採水器の揚収(2015年9月7日付)

(杉江)


2015年9月11日 雪の日

天気は吹雪。さっすが北極!
  • 海氷の影響でなかなか北上できず,北緯72度,西経156度のバロー周辺を東西南北に小刻みに,海氷の状況をみながら,大気観測,海水中の生物,化学成分の調査や,水塊構造の観測をしております。

  • 現場の気温は0度を少し下回るくらい。しかし,この日は風が強く,15~20m/sと弱い台風が来たような状況でした。そして雪が降るものですから,吹雪に。そんな夜でした。

  • 日没後の観測は,船の強烈なライトが甲板上を明るく照らします。その光の筋を通過する雪の結晶はキラキラ反射しておりました。綺麗なもんだと写真を撮ってみましたが,その美しさはちっとも表現できず,青く光る蛍の群れが描いた天の川のような画に。まぁこれでも雪がたくさん降っている様が伝わるでしょうか。

  • すると,甲板上を照らしていたライトが海を照らしたので少し離れたところから撮ると,光の道が雪によって映し出されました。綺麗なm...

  • ......ぅあぁーー,さっむっぅ!!

  • 海氷の存在によって航海計画は変更に変更が加えられておりますが,観測自体は順調に安全に進められております。

(杉江)


雪1
雪2

2015年9月10日 また1年後に会おう

天気、場所など
  • 一昨日から本日までは,係留計の回収と設置がメインの作業でした。係留計とは,読んで字の如しですが,海に係留して観測をする機器です。

  • バローの沖,北緯71度40分,西経155度付近に昨年設置した4つの係留計を回収し,新に3計設置する作業です。気温は-0.7度,風は10~15 m/s,時折20m/sと強く,雪交じりのお天気でした。

  • そんな中ではありますが,係留計の設置は人手が必要なので,甲板上には多くの人が作業に携わっておりました。トップブイといわれる黄色の球(もう海に入っています)やオレンジの浮きとともに,流向,流速,水温,および塩分を測定するための機器がロープに括り付けられ,鉄の錘とともに沈められました。

  • 「また来年,引上げに来ますから。寒いと思うけどまた1年間データとってきてね。」

  • めでたく,すべての係留計の回収と再設置が完了いたしました。すばらしい!(時々回収できないこともあります)

  • さて,次の観測は,バローから北の位置にあるであろう渦の探索です。直径が数十kmの巨大な渦です。この渦は海の流れを変え,その周辺の生き物はその影響を大きく受けるので,そこでの物理,化学,生物の応答を見よう,というのが本航海の一つの大きな目的です。

  • んが,しかし,海氷が登場しました。。。 本船は耐氷船ではあるものの,安全第一,船体を痛める危険性が高い,氷の多い海域は避けます。ということで,北東方向への渦探査をやめ,北西方向に走り始めました。

  • 残念なことに,今年は「みらい」が調査しようとしている海域に見事に海氷が残っております。同乗している小野寺さんに伺ったところ,今年の北極海の海氷は例年と比較して非常に少ない水準とのこと。ただ,調査したい海域に海氷が多いようで。。。

  • 北の方角を見ながら,「はぁぁ~~」っと息をかけ,氷を解かしてみようとおもいます。

(杉江)


船橋より
係留計設置1
係留計設置2
海氷を避け西へ

2015年9月9日 流氷の天使らしいな,お前。

  • さて,本日9月9日はバローという町の少し沖合の辺りの観測でした。北緯71度20分,西経157度20分くらい。気温は0~1度。風は弱く,ほぼ無風の時間帯もありました。そんな中,プランクトンネットの観測が2時間ごとに3回もやってきました。雪交じりの天気でしたが,風が弱かったので何とか甲板上で遭難することなく観測を終えました。

  • そんな今日はクリオネが豊漁でした。2~3トンの水に1個体ほどいたのではないでしょうか(これでも多いんですよ)。今回使用しているプランクトンネットは,クリオネのような柔らかそうな生き物を無傷で採取するようにはできておりませんので,大概傷だらけで動かない個体が多いのですが,1匹だけ元気に水揚げされたので写真を撮りました。

  • 流氷の天使と呼ばれるだけあって,採れれば人気者で,「かわいい~」などと言われ,写真を撮られ,ちやほやされております。しかし,採取する側(私)は寒いし,次のプランクトンネット観測が始まったりするので,愛でることなく,さっさとホルマリンやエタノール漬けにしないといけません。さらば,クリオネちゃん。

  • クリオネは分類上では,ハダカカメガイ科に属する貝類です。しかも巻貝。貝殻は退化して無くなっておりますが。ぱたぱた羽ばたいて見えるのは,親戚のカタツムリでいうところの,地面を這う脚の部分。翼のような脚なので,翼脚類と呼ばれます。大変な偏食家で,リマシナという巻貝(貝殻あり)しか食べません。殻のあるリマシナが殻のないクリオネに食べられるさまは,まるでナメクジがカタツムリを食べるようなものですね。

  • 陸上では毛嫌いされるナメクジ,歌にもなるほど愛されるカタツムリ。ナーメナメ,クージクジ,ナーメクジー♪ではイマイチ語呂が悪かったのかな。一方のクリオネは殻がないのに愛される。ハート形の頭と赤い内臓がキュートに見えるからなんだろうな。ドンマイ,ナメクジ。

  • さて,明日から2日間は係留計の設置と回収と海水の物理観測(密度,流向・流速,乱流など)が始まります。このまま海が穏やかでありますように。

(杉江)


クリオネ1
クリオネ2

2015年9月8日 オーロラなの?

  • 9月8日。 北緯40度くらいから昨日までは曇天もしくは霧の天候が続いておりましたが,雲の切れ間が現れました。北緯71度,西経160度あたりだっただろうか。

  • つ,ついに現れました!オーロラです!!!
    見た目はまさに夜空に浮かぶ薄い雲のようで。。。色はやや青みがかっているような,いないような。。。ぼやーんとしてて。。。

  • 見たいのはこんなんじゃないんだけどなぁ。。。

  • 適当に画像処理ソフトで色付けしてみました。
    こんなのが見たいのです。

  • さして感動することもなく,淡々とオーロラ観測終了。また次があるさ。

(杉江)


オーロラそのまま
オーロラ色付け

2015年9月7日 冬のお便り

残暑厳しいニッポンでは皆様いかがお過ごしでしょうか。こちら北極では雪が舞いました。。。
  • ベーリング海峡から北上し,北緯71度0分,西経168度45分の観測点での観測を終え,しばらく東方にあるバローに向けて航走中です。外気は1℃前後。海の表面の水温は5~6℃。風が10m/sとやや強いので外での作業が辛くなってまいりました。「辛」いに棒を一本足すと「幸」せになると言いますが,本船の甲板上にそのような棒は今のところ見当たりません。おーい,どこだーぃ!

  • 本日はプランクトンネットの観測の写真を撮りましたのでアップします。
    円錐型のネット。目の細かい網戸のようなものでできていて,その目合いは,330µmと62µmです。0.033cmと0.0062cm。とても細かいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが,前者は「大型」の動物プランクトンを捕集するため,後者は「小型」の動物プランクトンと一部の植物プランクトンを捕集するための目合いです。これらは動物プランクトンの群集動態や殻をもつプランクトンの殻の性状を調査するために採取しております。

  • このプランクトンネットの観測がとても寒い。とっても寒い。甲板上の外気は1℃前後,風速10m/s,本日はさらに雪。写真に写り込むほどは降っておりませんでしたが,私の気力を折るには十分な破壊力でした。いやぁ,寒かった。しかし,まだ北極は本気を出していない模様です。さらに寒く,風の強い日もあるとのこと。しかも頻繁に。そうだよね,北極だもんね。

  • 昨日は写真には写らないほどに薄いながらもオーロラが出ました。いつの日かばっちり綺麗なオーロラの写真を載せられるよう,残暑厳しい日本からお祈りいただければ幸いかと存じます。

(杉江)


プランクトンネットの観測
採取したサンプル

2015年9月6日 調査開始っ!

  • 本船はようやくベーリング海峡に至り,北極海の海の内のひとつ,チャクチ海に到着いたしました。日本時間9月6日,23時半ごろ,船内時間で6日の午前3時半の現在,北緯66度39分,西経168度45.5分を北上中。先ほど3つめの観測点が終了したところです。

  • 北極海と聞くと,極寒のイメージが強く,狭い船上の甲板ですら遭難するんじゃないか,と思っていたのですが,ベーリング海峡を抜けてしばらくの間は,南のベーリング海から北極海へ流入する温かい水のお陰でさほど寒くはありません。楽勝♪。。。といっても,気温は5℃を下回り,海水温は7.8℃。風がそこそこ強く,風速10 m/s前後。体感気温はマイナスといったところでしょうか。海には白波が立ち,やや荒れた感じでございます。

  • そんな中,ベーリング海峡から観測が始まりました。最初の観測点では,慣れている人もそうでない人も,まずは出てきて様子をうかがいます。観測中は12時間毎,2交代制(班分けをワッチといいます)なのですが,2班のワッチのほぼ全員が集まり,採水をする場所には人だかりができていました。初の観測にそわそわする気持ち,気合などなどが交錯して,何だか賑やかなもんです。

  • 私はと申しますと,カメラのSDカード内に残っていた甥っ子の写真を見ながらニヤけていたのですが,なんとまぁ,そんなことをしていたら電池が切れちゃいました。ということで,不肖の私は最初の観測点で写真が1枚しか撮れませんでした。あは。あ,そうだ,ちょっと前に彼は2歳の誕生日を迎えたんだった!おめでとう!

  • 観測に話を戻しますね。ベーリング海峡を抜け,チャクチ海と呼ばれる一帯の水深は40 m前後でとても浅いようです。氷河期には結氷し,海水がベーリング海峡を通過できず,海水の循環が現在とは違っていた!と,伺っております。(詳しくなくてすみません)

  • そんな水深が浅いところでの観測はすぐに終わってしまいます。センサーを降ろすと共に,様々な深度の水を採取するのですが,それを丁寧に10種類ほどの採水瓶に採って。。。としている間に次の観測点に到着してしまいます。準備,採水,片付け,準備。。。常にバタバタとしております。

  • そうこうしている内に,カメラの電池の充電が終わったので,3つめの観測点にて写真を撮りました。なんとまぁ人の少ないことでしょう。確かに深夜1時を過ぎていたので,昼中心のワッチ組は,後の12時間の労働に備えて寝ておりますので,当然なのですが。粛々と採水をしていると,ワッチ交代の午前3時が近づいてきました。これにて本日のワッチ終了!次は午後3時から!おやすm...

  • あ,6時ごろから始まるプランクトンネットの手伝いをしないといけないんだった。。。ええと,いつ寝ようか。。。

  • 働けど働けど,襲い掛かる観測点。じつと海を見る。

(杉江)


9月6日ベーリング海峡を通過した頃
ベーリング海峡通過までの航跡
9月6日 夜中は人が少なめ

2015年9月5日 研究者ミーティング

  • こんにちは、
    「みらい」北極航海、北緯64.6°、西経168.3°まで来ております。
    ベーリング海峡が目前に迫っています。

  • さて、観測をするためには、観測のスケジュールを組まなければなりません。
    様々な分野の研究者が、様々な測器を用いて観測をするため、観測の準備・順番・海氷状況・気象場・測定したいポイントや項目や回数・海の深さや流れ・船の運航・人員の配置・領海・安全管理…など、様々なことを常に気にしながら綿密な計画を立てる必要があります。

  • 今回のleg1のダッチハーバーに寄港する予定はすでに決まっており、 「限られたship timeを有効活用するための観測計画」を練る研究者ミーティングは毎日行われています。

  • 写真が研究者ミーティング(@大会議室)の時の様子です。

  • これは会議の一部ですが、このように今航海の主題一つである「渦の集中観測」を行いたいバロー岬沖ではまだ海氷が残っており、観測計画はこれからも状況に応じて臨機応変に対応しなければなりません。

  • さあ、これから観測が始まります。「みらい」にも緊張が走ってきました。

(北極環境変動総合研究センター 竹田)



2015年9月1日

採水訓練、船内セミナー

北太平洋・晴れ
  • 観測海域である北極海に着くまでに、いろいろな観測準備を進めています。今日は研究者・観測技術員がデッキに集い採水訓練を行いました。さまざまな深さの海水を大きな筒状の採水器で採取し、その海水を小さなボトルに小分けして、海水中の色々な成分を測定します。その成分によってボトルの種類も採取の仕方も違います。これをみんなで確認し合い、実際ボトルに小分けする作業を体で覚えます。ボトルの種類は、なんと30種類近くあります。ボトルを見れば勝手に体が動く。そんなプロフェッショナルを目指して、今日は特訓です。

(北極環境変動総合研究センター 西野)


  • こんにちは、「みらい」からのブログです。
    「みらい」は北極海に向けて着々と前進しております。

  • 「みらい」北極航海では、夕食後毎日18:00より「船内セミナー」を行っています。 西野主席研究員を始め、各課題提案者、研究生、大学院生など、それぞれの専門をもった研究者が乗船しており、お互いの研究成果や今航で行いたいことなどを発表します。
    また、セミナーにはグローバルオーシャンデベロップメント(GODI)さんやマリンワークジャパン(MWJ)さんといった観測技術員の方々も多く参加しています。

  • 発表者は内容を噛み砕きながら発表してくれるので、私としては一つ一つの話を理解するのは大変(あっぷあっぷ)ではありますが、学ぶことが多いセミナーだと感じています。

  • ちなみにこのセミナーは、「みらい」の大会議室という部屋で開催されており、とても格式高い部屋です。写真はJAMSTEC杉江研究員の発表時の様子です。

(北極環境変動総合研究センター 竹田)


採水訓練の様子1
採水訓練の様子2
船内セミナー

9月1日のB

  • 陸上の読者の皆さんは日本では9月2日を迎えていることだと思います。本船は,北緯52度20分,東経170度付近を北東に向かって航走中です。天気は雨。気温10℃,風速は大体8 m/s。外はもうかなり寒くなってまいりました。

  • 経度にして東に15度進むごとに船内時刻を1時間進めてきた本船は,今日の夜か明日には日付変更線を越えそうです。その関係で,船内は本日,2回目の9月1日,すなわち,9月1日のBという日を迎えております。飛行機とは違い,じわじわ時刻改正がおこなわれる様は,船旅ならではの出来事ではないでしょうか。ま,船「旅」ではないんですが。。。

  • さて,本日より,東経にさよならをし,西経にこんにちは。
    また,本日アリューシャン列島を通過するので,太平洋にさよならをし,ベーリング海にこんにちは。

  • 通過するのはアリューシャン列島のアッツ島のすぐ西側。アッツ島。1942年から43年の5月まで日本軍が占領し,その後,アメリカ軍によって守備隊が全滅させられた島ですね。鎮魂の祈りをささげるとともに,恒久平和を心から願っております。

  • 我々のチームのJAMSTEC研究生の伊藤さんの情報では,島に近づくにつれて植物プランクトンの活性が上がってきたとのことでした。きっと植物プランクトンが光合成したり呼吸したりするために不足していた鉄分が島の周辺で供給されたのでしょう。日本を出て,アリューシャン列島周辺やベーリング海まで餌を求めて回遊する鮭などはこの豊かな植物プランクトンの生産に起因するんでしょうね。

  • ということで,今回はプランクトンの写真を掲載します。陸が近いため,ウニの幼生や2枚貝の幼生がちらほら見当たりました。ポンプで勢いよく汲みあげた海水なので,ウニの幼生は傷んじゃってますが悪しからず。。。
    (研究生の伊藤さん,私物の顕微鏡とカメラにて撮影しました)

(杉江)


プランクトン1
プランクトン2

2015年8月31日 海に降る

  • ……..昨日は陸上で忘れ物などないか入念にチェックしていました。仕事場とオフィスを何度も往復。とある仕事場に行く途中のこと,偶然,有村架純とすれ違う。

    WOWOWのドラマ「海に降る」の撮影,まだやってたんだ。デスクに座って打ち合わせをしているシーンかな。じろりんちょ。

  • ……硬いマットレスの上,気が付くと朝食の20分前。いい時間に目が覚めた。昨日は有村架純が見れたし,よかった,よk… 昨日!?あーーー。

  • 有村架純さん,私の夢の中に降っていただき,ありがとうございました。
    しかし,もう陸での夢を見てしまったか。まだ帰りたくなってないんですけどね。

  • 8月31日,日本時間午前6時。北緯47度,東経161度付近を北上中。曇天&濃霧。夏の北太平洋亜寒帯に特徴的な天候です。水蒸気を多く含む温かい大気と冷たい北の海水がふれあうことで霧が発生するようです。冬場の窓の結露と同じ現象ですね。

(杉江)


2015年8月30日 回航中の時化

  • 「みらい」は北東に向かって航走中。現在8月30日6時30分(日本時間),北緯44度41分,東経156度57分。真っ直ぐベーリング海峡(ロシア(シベリア)とアメリカ(アラスカ)の間の細い海)に向かっております。そこを抜ければ北極海はすぐそこです。天候は抜群の曇天+霧,気温は12度。日に日に寒く,北の海っぽくなってまいりました。

  • 本日は,冷え行く大海原の中,時化る海上生活の一端をご紹介します。

  • 本州に上陸することなく太平洋上をさまよっていた台風16号の残党の後ろを追いかけるように北上する本船。昨日は風速が20 m/sを超えることもしばしば。そりゃぁ揺れるよね。海の波の高いところと低いところの差がおおよそ4~5 mで,8~9秒のサイクルで高い⇒低い⇒高い…を繰り返しております。しかもローリング,すなわち,船の横から波がいらっしゃって揺れるんです。船の前後からくる波での揺れをピッチング(船首を波に叩きつける様子)といいますが,それと比較するとローリングの方がずっと揺れるんです。あぁぁ。

  • 失せてゆく仕事をする気力。増す眠気。

  • しかし,寝るにしても本船のマットレスの硬さは尋常ではなく,まるで板の間で寝ているようです。この硬さは私には全く合っておらず,ここ数日で腰痛に悩まされ始めました。快適な眠りを目指して,毛布を体の形に合わせて成形し,寝床をカスタマイズし,少しはマシになりましたとさ。

  • さて,クスリをキメて(酔い止めを飲んで),仕事でもしようか,と思ったものの,まともに座ってもいられないので,今日はお休みに。とりあえずマンガでも読もう。閉鎖的環境の船内で息を抜くために,船内には書庫(マンガ:字の本=7:3?)やトレーニングルーム,サウナまであります(きっとそのうちご紹介します)。さて,マンガ。Vinland Saga,特攻の拓 –early days-,テラフォーマーズなど読み漁った中,ブルージャイアント,これは面白かった。お勧めです。早く続きが読みたいなぁ。洋上にいる限り無理ですが。。書庫のマンガ等はボランティアで持ち込まれたものと伺っております。持ち込んでくださった方々に感謝。

  • あぁ,楽しかった。と,この文章を書きながら少し船酔いしてきました。ク,クスリ(トラベルミン)が切れてきたぜ。ので,この辺でいったん失礼いたします。

(杉江)


現在地とEEZ
マットレス硬すぎ
お勧めのマンガ

2015年8月27日 航海の安全祈願とか。

  • 昨晩東南東に向かっていた本船は,向きを真東に変え。。。あれ,まだ北に向かわないんだ。まるまる1日東に進んでおります。19時半,ただいま,北緯40度15分,東経147度15分あたり。どうしたもんかと航路図を見てみると,北上中での千島列島沖ロシアの排他的経済水域(EEZ)を避けるための東向きに航走しているようです。ふぅん。

  • 本日は,イベントが多く,朝はみんなで採水器を洗い,昼過ぎには非常訓練(非常用のライフジャケットを着けて救命ボートに移動する,など。写真なし。。。すみません。。。),観測ミーティング,金比羅参拝(船橋の神棚に祀ってあります),夕食後の船上セミナー(一昨日から開始,毎日18時~19時)。

  • うかうかしていたら1日がおおよそ終わってしまいました。1日1つは賢くなろうと思って,金比羅についてちょっと調べてみました。

  • 金比羅は香川県の琴平にある神社「金刀比羅宮」です。いわゆる「こんぴらさま」。金刀比羅宮は航海の安全を守る神さまが祀られているので,多くの船の神棚に祀ってあるんです。「こんぴら」はインドのバラモン教の最高原理,梵でいうところのkumbhiraを音写したもので,元は鰐(ワニ)の意味なんだそうです。インドのガンジス河に棲むワニを神格化した仏教の守護神である「こんぴら」は,魚の身をして蛇の形をし,尾に宝玉を蔵するそうな。十二神将の宮毘羅大将,十六善神の禁毘嚕と同体の神。(デジタル大辞泉より)。ふむふむ。
    よし,今日も一つ賢くなりました。

  • そして今日も(明日も…ずっと)夕食は豪勢で,唐揚げ甘酢あんかけ,豚キムチ,カツオの刺身,潮汁,とろろ,でした。
    よし,今日も一つ体重が増えそうだ

  • しかし,寝る前の一杯も忘れません。おつまみで持参したものの中で当たりがあったのでご紹介いたします。SAHALE SNACKSのPOMEGRANATE PISTACHIOS with almonds, cherries + black pepper。ナッツの香りにザクロ(pomegranate)の酸味に香辛料のアクセント。素晴らしい。ワインでもビールでもスピリッツとでも相性がよさそうです。よし,次の航海でも買っていこう。観測が始まって激務になるまでは自分を甘やかしております。

  • ええと…デジタル大辞泉によれば,ザクロの花言葉は「愚劣」。。。 この記事を書きながらビールを飲み,ラフテーの缶詰を開けた矢先に読む熟語としては至極的確!
    少しは自重しようかな。明日から。。。きっと。。。

(杉江)


船上セミナー
金毘羅
2015年8月27日 夕食
これは美味い

2015年8月26日 いざ北極へ向けて出港

くもり時々雨
  • 荒天によって来られなかった給油船が仙台から到着し,本日昼過ぎに給油が完了しました。いよいよ北極に向けて出港する準備が整いました。初の北極圏に膨らむ期待と,過酷で寒くて忙しいウンザリしそうな来たるべき観測現場への想い。

  • そんなそわそわした気持ちが,出港間際の離れ行く岸壁に「…まだ陸に戻れる。少し泳げば戻れる。。。」という様な感覚を呼び起こすわけですが,むつの関根浜で船が陸から離れていく瞬間を見逃し筆者は,八戸でその感覚を味わう事になるんでしょうか。

  • 船内に出港を知らせる放送が入る前に聞こえたのは夕飯を知らせるオルゴールでした(となりのトトロだったかな)。今日のメインはステーキと魚の香草パン粉焼き。あまりに豪勢だったので写真を撮りました。観測が無く働いていない日に,これらを全てを平らげると確実に身体が丸くなります。フォアグラ用のガチョウと同じ生育方法ですね。結局美味しくてほぼ全て食べてしまいました。

  • さぁて,お腹いっぱい。ちょっと外でも見て。。。。

  • 「しゅ,出航しとるやないかー!」

  • 美味しい物を食べさせておいて,そのスキに出港するとは。完全に油断したぜ。。。

  • 台風が太平洋上にあるせいか,風,うねりともに強く,始めから気を引き締める必要がある航海が始まりました。八戸より,北上う・・・?東南東に向かってるなぁ。。。何でだろ。

(杉江)


出航日夕食
いつの間にか出航

2015年8月23日~24日 いってきます!

天気、場所など
  • 24日の朝8時に出航なので,23日のうちに乗船し,夕飯のカレーを食べて翌日の出港に備えます。といっても出港作業はGODIの船員さんが執り行ってくださいます。出港前夜の研究者は待っているだけなので,ハメを外さない程度にお酒を。もう一杯。もう一杯。。。もう一杯。

  • 24日,7時半過ぎに朝食を終え,ふと外に出てみると既に出港しておりました。毎度,岸壁から船が離れていく瞬間を見ると,「まだ戻れる,まだ戻れる」と,陸への執着がにじみ出てくる私ですが,今回はそれがありませんでした。あっさり出港。早い時間帯にもかかわらず見送りに来てくださったむつ研究所の皆さん,岸壁だけでなく,湾口の堤防の先まで来て見送っていただきました。ありがとうございました!いってきます!

  • その日の午後,むつの関根浜を出港した本船は,給油,外変のために八戸港に到着。グループリーダーの原田さんが八戸までお見送りに来てくださいました。何ともありがたや,ありがたや。その感動の余り写真を撮り忘れる始末。。。人気ブロガーへの道は遠いなぁ。

  • ここで,外変というのは,船を外国的にすることで,乗員は出国手続きをとります。国際空港で言うところの免税店があるエリアのような感じでしょうか(船内にそんな華やかさは一切ございませんがっ!)。そして出国後の我々は八戸港にいるにもかかわらず,下船できなくなってしまいました。給油船が何某かの理由で来られないようで,八戸港での滞在時間が長引くようです。でも下船できません。(。。。外変をもっと遅らせればいいのに。)

  • 珈琲工房あらびかの豆のコーヒーを飲みながら。差し入れをしてくれた多田さん,ありがとう。うまいよ。

(杉江)







2015年8月21日 「みらい」MR15-03航海が始まりそうです

  • 前日に横須賀本部から発送した研究機材が出港の地,青森県はむつの関根浜に到着しました。横須賀での作業はそれはもう暑くてTシャツを何度も着替えましたが,本日のむつの最高気温は26℃。日陰に入れば快適な季節になっておりました。荷物は鉄製のボックスパレットという籠に入ってまして,それをクレーンで甲板に上げ,甲板上で移動させたり,籠から荷物を出して移動させたり。。。って,やっぱり暑い!

  • MR15-03航海は45日間です。1ヶ月半の船内生活を少しでも快適に過ごすために,きっと必要になるであろう物資を予想して陸上で補給します。私の場合は食料品をたんまり買い込みます。お菓子の値段制限があった学童時代の私に自慢したくなるくらい大量の買い込みっぷり。一旦ホテルに帰り,部屋に搬入する際,台車を使いました。ホテルで台車を借りたのは初めて。でも写真で映っているのは私が持ち込んだ私物の全体の2割も無いくらいだろうか。。。

  • 船上生活は備えがあっても時折愁いが出てしまうもの。調査と同様かもしくはそれ以上に真剣に船内の生活水準向上のための準備を進めております。

(杉江)