2020年12月12日

  • 「みらい」は、午前9時に八戸港に入港しました。天候は曇り、気温は3度程度です。観測点KNOT、K2と南下してきたため八戸は随分暖かく感じます。「みらい」での最後の作業は艤装解除ということで、本航海で使用してきたすべての観測・実験装置ならびに個人の荷物の荷降ろしです。艤装解除の際にも虹が出ており、力仕事の途中の小さな癒しとなりました。昼頃にはすべての作業が終了し、本航海参加者の集合写真を撮り、最後に食堂でカツ丼を食して下船となりました。

  • 今回、私にとってはじめての観測航海でしたが、荒天の合間を縫って観測する難しさや、観測機器の不具合との戦いなど、現場データを取ることの難しさを垣間見ることができました。普段、数値モデルによるシミュレーションを行っていると「もう少し面的にデータがあれば…」、とか「もっと季節的に密なデータがあれば…」と思うこともありますが、観測で取ることが難しい面的な情報や時間的な補完など、そのような時空間的なカバーこそが数値モデルに期待される役割だということを再認識する良い機会となりました。

  • これにて、MR20-E02 「みらい」航海の航海ブログを終了とさせていただきます。

八戸港に入港
クレーンで荷物の積み下ろし

積み下ろし作業と虹
集合写真

2020年12月11日

  • 「みらい」は明け方に観測点G03に到着し、午後13時からウェーブグライダーの回収作業が行われました。本航海最後の大きな作業となります。ウェーブグライダーの回収は、海面を漂うウェーブグライダーを目視で発見後、小型船で近づき「みらい」の右舷まで曳航し、ウィンチで引き上げます。回収時には虹も出て、本航海のフィナーレに相応しい光景となりました。

ウェーブグライダーを曳航
回収されたウェーブグライダー

ウェーブグライダー(左下)と虹

2020年12月10日

  • 「みらい」は引き続きG03に向けて回航中です。朝の9時から観測機器等を荷降ろしするためのボックスパレットの展開作業があり、10時からは今回の係留系観測の結果を踏まえ、次回の観測に向けたミーティングが開かれました。午後3時からは東京海洋大学の学生さん4名による卒論発表の練習会が開かれました。

  • 観測点K2と日本標準時では2時間の時差があります。K2を離脱し日本に近づいてきたため、昨晩そして、本日の夜の22時にそれぞれ1時間の時刻改正がありました。ようやく帰ってきた感じがします。

係留系に関するミーティング
卒論発表の練習風景

2020年12月9日

  • 「みらい」は午前1時半に観測点KNOTを離脱し、観測点G03(北緯40度07分、東経143度58分)に向けて回航中です。KNOTでの我々の観測は無事終了しましたが、これからKNOT周辺海域は波高10m近い大荒れの予報のため急ぎ南下します。時間の経過とともに、徐々に波が高くなり朝方には波高は5mに達しました。既に多くの観測は終了し、皆それぞれのラボ・観測機器の撤収作業に取り掛かっていますが、一部の実験(鉱物粒子を採集するための濾過実験など)は、夜遅くまで作業が続きました。

  • 仕事の終了後、従来の航海では、皆で集まって談笑することもよくあるようですが、本航海ではコロナの感染予防のため、密集する行為は自粛することとなりました(その他、食堂でのマスクを付けない会話の禁止や、娯楽室の使用禁止なども)。致し方ないことではありますが、コミュニケーションの機会が減ってしまうのは少し残念なところでした。

ブリッジからの眺め

時間の掛かる濾過実験
サックスの練習にお邪魔しました

2020年12月8日

  • 「みらい」は、観測点K2からやや南下し、15時頃に観測点KNOT(北緯44度00分、東経155度00分)に到着しました。いよいよ本航海も終盤戦です。到着後すぐにCTD観測が開始され、現場濾過観測がそれに続いて実施されました。採水はこれが最後となるため、研究者と学生さん全員が観測に参加し採水完了後は拍手で終了となりました。

  • この日の夜も、再びISSがまわってくるチャンスだったのですが今回も現場濾過装置の投入時間と重なったため、装置が投入されていく様子を見守っている間に上空を通過してしまっていたようです。明日からは、最初に投入したウェーブグライダーの回収のため、観測点G25(北緯40度41分、東経143度31分)に向けて回航します。

これまでの汚れを洗い落とす

2020年12月7日

  • 観測点K2(北緯47度00分、東経160度00分)最後の日です。この日も夜明け前の午前4時から、FRRFによる植物プランクトンの光合成活性の測定並びに、基礎生産の培養実験がありました。その後、CTDによる採水、時間を大幅に短縮した現場濾過観測、FRRF観測が昼過ぎまで続いた後、「みらい」はK2を離れて次の観測点KNOT(北緯44度00分、東経155度00分)へ向かうこととなりました。

「みらい」での美味しい夕食。メニュー:スペアリブの味噌焼き、カツオの刺し身、魚のホイル焼き、温かいそうめん、キウイフルーツ

2020年12月6日

  • この日は、朝5時のCTDによる採水から観測がスタートされました。その後、朝7時からは24時間培養した基礎生産測定のためのボトルを回収し、陸上に持ち帰るための処理を行いました。続いて朝9時から昼過ぎまで現場濾過観測が実施され、その後、夕暮れまでCTD観測、日暮れ後はVMPSおよびノルパックネットによる動物プランクトンの観測と続きました。このように、観測点に滞在中は、時間を余すことなく観測の予定が組まれています。

  • 私は今回の観測に参加するまでは漠然と、予定したスケジュール通りに観測が順次行われていくものと考えておりましたが、実際には、天候や観測機器の状態により非常に流動的にスケジュールが調整されることに驚きました。たとえば、今回は残念なことに現場濾過装置の複数に不具合が発生したことで、現場濾過の計画は大幅に短縮せざるを得ない状況となりました。また、日没後に予定されていたプランクトンネットによる動物プランクトンの採集も、天候が悪化したため中止となりました。これもまた一つ現場観測の難しさと感じました。

24時間培養したボトルの処理
雪が舞い散る中、数の減った現場濾過装置の投入を見守る(再び)

2020年12月5日

  • 夜明け前の午前4時から、高速フラッシュ励起蛍光光度計(FRRF)による植物プランクトンの光合成活性の測定がありました(光の当たる午後13時からも再度実施)。ウィンチで装置を水深150mまで沈め、鉛直的に光合成活性を測定するものです。それに続いて、基礎生産力の測定のための船上培養実験にも参加させていただきました。CTDで異なる水深から採取した海水試料に13Cならびに18Oの安定同位体トレーサーを添加し、船上の水槽で24時間のボトル培養を行い、植物プランクトンの基礎生産力を測定するものです。

  • 培養実験の横では、現場濾過装置による粒子採集実験が行われました。ワイヤーに深度ごとに6台の濾過装置を装着し(当初の予定では8台、船上で2台に不具合発生)、3,000mまで降ろした後、粒子を採集するものです。装置を設置し3,000mまで下ろすのに120分、設定深度での濾過に220分、装置の回収に80分と、約7時間の長時間観測になります。

  • 日没後はプランクトンネット(VMPSネットとNORPACネット)による動物プランクトンの採集が行われました。VMPSは、鉛直多層曳プランクトンネットと呼ばれるもので、深度0~1,000mまでの動物プランクトンを層別に採集可能な装置になります。今回、観測に参加した、東京海洋大学の学生さんもお手伝いに参加してくださいました。

培養ボトルを実験用水槽に沈める
船員さんの作った雪だるま

雪が舞い散る中、現場型濾過器の投入を見守る
鉛直多層式開閉ネット(VMPS)の投入

2020年12月4日

  • 本日は、ハイブリッド係留系の回収がありました。天候は曇りで、気温は0℃前後ですが、風も波も比較的穏やかで回収に適した日和となりました。今回の係留系は、水深5,213mに設置され、そこから水深150mまで立ち上がるワイヤーに様々な観測機器が取り付けられています。回収においては、係留系の下端の切り離し装置に信号を送り、浮上した装置を順次船上に引き上げていく作業になります。切り離し後、すべての係留系が浮上するまでに約50分かかることからも、そのスケールが分かります。切り離し後は、ブリッジにおいて上端のトップブイがどこに浮上したかを探し、発見したブイに小型のボートで接触し、船のウィンチでの巻き上げを開始します。船上では、次々に回収されていく装置から観測のサンプルを回収しつつ、流れ作業で装置を片付けました。

  • 1年6ヶ月も海中にあったため、もっと付着物が付いているのかと思っておりましたが、光も届かない深度にあるため、とてもキレイな状態であったのは個人的な驚きでした。それでも中には破損した装置もあり、長期間の観測期間の後にデータが取れていないことが判明するという観測の難しさというものも感じました。その後、午後からは水深5,000mの大深度までのCTDによる採水観測が行われました。

小型船で係留系のトップブイを回収
ウィンチによる係留系の引き上げ

引き上げられた装置(時系列自動採水装置:RAS)
CTD観測の様子

2020年12月3日

  • 「みらい」は15時30分に観測点K2(北緯47度00分、東経160度00分)に到着しました。前日に比べると晴れ間ものぞき、天候がやや回復しました(風速7~8m、波高3m)。明日の係留系の回収に期待が高まります。K2到着後は、午後4時から水深3,000mまでのCTD観測が行われました。ちょうど観測終了の時間に、K2上空を国際宇宙ステーション(ISS)が通過するということで、皆空を見上げておりました。

  • 私は一足出遅れたのですが、船上から空を見上げたところ、星明かりが動いているように見えました。ISS?飛行機?と思ったのですが、よく見ると“すべての星”が動いており、実は船が揺れていたという落ちでした。ISSは見逃しましたが、普段の陸上生活では遭遇したことのない経験に満足です。

CTD観測の様子
K2到着までの合間にブリッジ見学

2020年12月2日

  • 「みらい」は引き続き観測点K2(北緯47度00分、東経160度00分)に向かって航行中です。気温もマイナスになり、波高も5mを超えることもしばしばです(最大傾斜は約15度に達したとのこと)。

  • 本日は、13時から今回「みらい」へ初めて乗船した人に向けた採水練習がありました。約13種類の測定項目に合わせて、採水方法も、採水するボトルや容器もそれぞれ異なるため、作業手順の一覧表を確認しながらの慎重な作業となりました(慣れるまでは大変そうです)。これまで、船内見学でしか見たことがなかったCTDに直接触れて採水を行えたことは感慨深いものがあります(まだ練習ですが…)。

  • その後は、16時より船内セミナーが開催され、今回の緊急地震観測の意義についての講演や、センサー開発の歴史についての講演がありました。

モニタで緯度経度・時間・気温や波高などが確認できる

雪が舞う甲板
採水練習の様子

2020年12月1日

  • 「みらい」は観測点K2(北緯47度00分、東経160度00分)に向かって引き続き回航中です。K2付近の天候が不良なため、北上に伴って船の揺れも大きくなってきました(4m前後、立っていると時々おっとっとなるくらい)。13時30分からは係留系を引き上げるためのミーティングが行われ、手順の確認や注意事項、荒天時の対応などが話し合われました。係留系は、様々な観測装置を長期間係留し連続的にデータを蓄積する装置になります。観測点K2における係留系は、2019年6月6日から1年半の間係留されており、その回収が本航海の大きな目的の一つとなります。荒天下では回収ができないため、海況が回復したタイミングを狙い回収を試みるとのことです。

  • 私が参加させていただいた、現場濾過の準備では、終日濾過装置のテストを実施しました。テスト当初は、多くの装置においてそれぞれ問題がありましたが、装置を分解して基盤の洗浄などを行い、無事に多くの機器が動作するようになりました。

  • 船内生活について、事前に「みらい」の食事は美味しいと聞いていましたが、ボリュームもあるため、下船時には体重が増えるのではと心配しております。

船内の夕食(お刺身、おでん、イカの焼き物とサラダ、味噌汁、ご飯、メロン)

2020年11月30日

  • みらいは八戸港から東進し、青森沖に新設する海底地殻変動の観測点G25(北緯40度41分、東経143度31分)に到着後、午前4時から海底局3局の設置(自由落下)ならびに、日の出に合わせて午前6時半から海底地殻変動観測用ウェーブグライダーの投入とXCTD観測が実施されました。天候は薄曇り、波高は2mほどで、作業は30分ほどで順調に終了しました。

  • また、ウェーブグライダーの投入時には、嬉しい珍客の訪問がありました。小さなアザラシがウェーブグライダーに興味を示したようで、時折海面に顔を出し様子を伺っておりました。その後も、しばらく「みらい」に並走し、甲板よりしばらく眺めることができました。

  • 今後は、観測点K2(北緯47度00分、東経160度00分)に向かって回航しつつ、それぞれの観測の準備を進めます。私も懸濁粒子を採集するための現場濾過装置の準備作業に参加させていただき、普段は採集結果を数値データとしてしか触れる機会がない中で、採集までの過程(装置の仕組みや事前準備の重要性)を学べる貴重な機会となりました。

ウェーブグライダーの投入

「みらい」に並走するあざらし
現場濾過装置の準備

2020年11月29日 MR20-E02 「みらい」航海 出港

  • 本航海のブログを担当させていただく橋岡です。数値モデルを専門とするため、今回が人生初の観測航海となります。初学者の目線から、本航海の観測実施内容や船内生活について報告したいと思います。

  • 11月29日午前10時、「みらい」は青森県の八戸港八太郎G岸壁(北緯40度35分,東経141度33分)から出港しました。前日は雪が降っていましたが、晴れ間ものぞく穏やかな天候となりました。本航海はコロナの影響などで、これまでに二度の延期を経ており、今回満を持しての出港となり、見送りには、原田センター長をはじめ、竹谷さん、宮川さんが横浜から駆けつけてくださいました。

  • 初日は、船内での安全教育、操練(避難訓練)、観測ミーティングが実施され、明日からの観測に備えることとなりました。最初の観測は、「青森沖における緊急海底地殻変動・地震観測」ということで、翌日早朝よりウェーブグライダーによる観測が予定されています。