KIMOPY通信

KH15-J01 白鳳丸観測航海

2015年7月12日(最終回) 東京湾!!

日曜日ですね!(1日ぶん飛ばしたような気がしますが気にしない)
朝から地上波が途切れながらも受信できるようになり、陸が近づいたことを感じます。
日曜朝の定番といえば、ニンニンジャー、仮面ライダーからのプリキュア三連発が観れると楽しみにしていたのに途中で電波が途切れ受信できなくなりガッカリ。きっと船が揺れてるからです。
というのも、台風が南から近づいているせい。強い南風を受けながら白鳳丸は東京湾に入りました。
携帯電話の電波も入るようになり、大量の未読メールが、、、、。いきなり現実に引き戻されますorz

東京湾に入った途端に、まとわりつくような、ムシっとした暑さを感じます。
数日前まで7度の気温にいた我々としては厳しい気温の変化です。あー日本は梅雨だったんだ、、、、

デッキ上ではボックスパレットの展開が始まりました。
ボックスルパレットとは、金属製の大きなカゴのことをさします。折り畳み可能なので、使わないときは畳んでおけます。これを組み立てて、中には大きな観測機材などを入れます。

実験室内では、荷物のパッキングと、実験機材の搬送先の違いによる分類が始まりました。
この部屋のものは横須賀本部行き、この部屋はむつ研究所行き、など、部屋ごとに荷物の行き先が決まっています。この航海にはたくさんの研究機関が参加していますから、このように分類することで、荷物の誤搬送を防ぐことができます。

白鳳丸は自転車並みの速度で東京湾を北上し、いつもの浦安沖にアンカーしました。羽田空港が目の前ですのでヒコーキマニアには嬉しいスポットです!(とくに私に!)

晴海入港は明日の9時。
不思議なもので、研究航海が終わるときはいつも辛い思い出は消し飛び、楽しい思い出しか残りません。
この楽しい思い出が、きっと次の研究航海へのひとつの原動力になっているようにおもいます。
この航海の続きを行うための、来年度の申請書類の作成もすでに始まっています。
さあ、来年も頑張ろう!

そんなわけで、kimopy通信もひとまずこれにて終了です。
後半はオチなしネタなしでしたが(汗)最後まで読んでいただきありがとうございました。

最後に、この航海を成功に導いてくださった白鳳丸の船長をはじめとする乗組員の皆様方、研究者の皆さんに心からお礼申し上げたいとおもいます。本当にありがとうございました!!

それではまたどこかでお会いしましょう〜(^o^)/

以上、通報おわり。さようなら。(船舶通信風に)

房総半島沖を南進する白鳳丸。風が強いけど、気持ちイー!
甲板上ではボックスパレットの組み立てが始まりました。 晴海港で観測機材の積み降ろし作業という、最後の仕事が待っています。
東京湾の夕暮れ。明日でこの航海もおわりかと思うと、嬉しいような、寂しいような。。。
おまけ: ヒコーキ好きの方むけ。このアンカーポイントは羽田D滑走路へのエンルート上にあるので、撮影には好適です。
写真はスカイマークエアラインズのボーイング737-800。左右のウィングレットに描かれたハートマークがお洒落。

2015年7月10日 道具たちに感謝

白鳳丸は北海道沖を南下中です。
半袖で甲板に出ても、問題ないくらいの気温になってきました。船の季節が夏に急速に近づいています。

そして船内では入港が近づいて、すこしずつ片付けが進んでいます。
でもまだ数日あるため、まだ実験中の研究者がほとんどです。

今日は朝から今回の観測で使用した機材、道具などの水洗い(塩抜き)を行いました。
塩抜きはバケツに淡水を張って、その中に一昼夜ほど漬け込みます。そのあと、必要に応じて潤滑油を塗布します。
今回の観測を成功に導いてくれたことに感謝して、そして次回の観測までその機能を保てるように、入念に、入念に。

プランクトンネットも、細かい網の目に生物が残らないように、1枚1枚、手でもみ洗いをします。
そして乾燥させたあと、よーーく目で見て穴が空いていないかどうか確かめます。
結果、いくつかのプランクトンネットで小さな穴が空き始めていました。まだまだ使えますが、穴が大きく広がったらせっかく採ったプランクトンたちがその穴から逃げてしまいます。彼らの逃げ場を塞ぐようで申し訳ないのですが、帰ったら補修(当て布)をしなければならないようです。

夕方には今回の観測の成果報告会が各研究者によって行われました。
今回は観測項目が詰まっていたため、他のメンバーが観測中は睡眠を取らねばならず、係留系、採水チームとはほとんど接点がありませんでしたので、この報告会であらためてこの航海が大成功に終わったことを実感したのでした。

今日19時からは本航海の打ち上げが予定されています。

いまはもう海の中にいるシャックルやスイベル。地味だけど確かな仕事をする大切な道具たち。
きれいに洗って乾燥させた救命胴衣たち。今回もお世話になりました。
MWJ古畑さんと渡辺さん。やりとげた漢の笑顔。 このおふたりの格別の働きがなければ係留系の揚収・投入作業は不可能でした。本当にありがとうございました!
採水器に同架されたCTD装置(水温・塩分・水深を測る)のメンテナンス。とくに電極付近は入念に。左からMWJの古畑さん、押谷さん、松永さん。今回もお世話になりました!

2015年7月9日 白鳳丸研究員トイレの怪

白鳳丸は国境線に沿って、現在国後島と同じ緯度付近を南下中です。

この白鳳丸は1989年(平成元年)に就航しましたので、今年で26年目になります。
これだけ長い間運航していれば、怪談のひとつやふたつはあってもよさそうです。
そういえば、日本は夏ですし、そういう季節ですよね~。

そんなわけで、観測も一息ついた今日、あることが話題になりました。

白鳳丸の第2甲板にあるトイレの入口を示すプレートなのですが、
何故か日によって日本語になったり英語になったりするそうです。。。。

これを最初に発見したのは海洋生物環境研究所の池上くん。
言われてみれば確かに、日によって日本語表記「研究員便所」だったり、
英語表記「SCI TOILET」なこともありました。

これ、実はひっくり返せるようになっていまして、
海外の研究者が載っている場合は、英語表記にするのだと、学生時代に教わった気がします。

しかし、今回は全員が日本人。
わざわざ日によって変える意味がありません。
いったい誰が、何のために….?
「これはきっと妖怪のしわざですよ、ケータ君!!」
「そうニャ!妖怪のせいニャ!!」

便所なだけに
「ヨー出るヨー出る、よーかい出るけん、出られんけん♪ 」
な感じでしょうか?

最後のやつを書きたかったのがバレバレですね!
観測疲れで、朝から晩までほとんど寝ていたのでネタがないのです(テヘ ☆)

明日は観測まとめのミーティング、クルーズレポートの分担などの話し合いが行われます。

これが問題の「研究員便所」プレート。しかし毎日これを確認してからトイレに入る、池上くんの観察力には脱帽です。

2015年7月8日 観測終了!これより帰還!

(白鳳丸はこれより北緯47度東経160度の観測点K2を離れ、東京に向かいます)

みんな昼夜の別なく、ずっと働き続けていますので、疲労も限界点に達しています。
今日も朝2時からプランクトンネットです。はぁ。。。
これぞまさに、吐息でネット (by 南野陽子)

でも今日ですべての観測が終了!/(^o^)/バンジャーイ!
最後まで怪我しないよう、気を引き締めて頑張りましょう!
これから天候が悪くなるそうで、夕方の17時に観測点K2を離脱することがさきほど決定しました。

日も昇って明るくなってきた3時頃、海の中でミサイルのように突進してくる何者かが、、、
オットセイです!!
僕らがプランクトンネットをやっているのを見に来たかのように、ワイヤーのまわりをウロウロしてます。
大きさは1.5mほどでしょうか。時々水面に顔を出したりお腹を見せたりしてます。昨日の係留系投入時にいたやつと同じものかもしれません。頼むからネットにイタズラしないでね?!
船は定点を保つために、ときどき舷側についているスラスター(プロペラ)を回すのですが、そんなことには驚きもせず、全然お構いなしで泳ぎまわっています。
結局、僕らがプランクトンネット観測をやっている3時間程度、僕たちの観測を見守るようにずっと船に寄り添っていました。
さようなら!また来年会いましょう!

作業が終わる直前、洋上はどこからともなく発生した深い霧に覆われ始め、視界が悪くなりました。本当に絶妙なタイミングで観測終了です!
最後に今回プランクトンネット作業に携わった5人で記念撮影。みんなありがとう!
これから大量のサンプル処理が〜〜!!(うれしい悲鳴)
白鳳丸は観測点を離脱し、一路、東京湾に向かいます。

突如あらわれたオットセイ。水中をものすごい速さで泳ぎます。
時々ジャンプしてくれたりして、サービス精神旺盛なやつでした。
Team Zooで最後に記念撮影!寒さに負けずみんなよく頑張った!感動した!!

2015年7月7日 七夕の日に

(白鳳丸はひたすら北緯47度東経160度で観測中です!)

わたしは、とある町の小さな製鉄所で生まれました。

溶鉱炉から取り出されたわたしは、おおきな四角いブロックに整形され、町工場の倉庫でしずかに出番を待っていました。
仲間たちは、鉄道の線路になったり、自動車になったり、様々な部品となって皆さんのお役に立っていると聞きます。
わたしもいつか人の役に立つことを夢見て、いままで過ごしてきたのです。

そしてついにその時がきました。
赤銅色の塗料を全身に塗られたわたしは、6月24日、晴海埠頭で研究船に乗せられ、たくさんの乗組員とともに北の海にでかけたのです。

わたしはいま、水深3500mを、毎秒約2メートルの速さで降下中です。
七夕の日の今日、数十分前に、研究船の甲板から持ち上げられ、海の中に放り込まれました。
皆さんが係留系とよぶたくさんの機器たちを引き連れて。
目指すは水深6000mの海底。
1匹のオットセイが、沈んでゆくわたしをずっと見送ってくれました。

わたしのまわりは暗く、冷たく、そしてとても静かです。
聞こえてくるのは、30メートルほど真上で一定間隔の甲高い音を鳴らしている、音響切り離し装置の音だけ。
この音がわたしの到達する位置を、正確に船上の研究者に知らせてくれます。

なあに、心配はいりません。
あと数百年もすれば、わたしの体はわたし自身を育んだ海の水と一体となり、悠久の時を経てふたたび姿を変えて皆さんの前に現れるでしょう。

トランスポンダのエコーが強くなってきました。さあ、もうすぐ海底です。
海底とはいったい、どんなところなのでしょう?楽しい場所だと、いいのですが。

わたしはアンカー(錘)。
今日この瞬間のために生まれました。
係留系を一年間しっかりと海底に繋ぎとめるというその役割を、わたしは十分に果たすことができるでしょう。

来年のいつの日か、皆さんがふたたびこの場所を訪れ無事に装置たちを回収するまで、ひとりしずかにここでお待ちしています。

トラップ投入作業風景(中野さん撮影?)
投入前のアンカー(中央、赤銅色の立方体)。重量は2.4トン。
アンカー投入後の係留系の位置を見守る研究者たち。
音響切り離し装置(トランスポンダ)からのシグナルをとらえ、三点測量法で正確に係留系の投入位置を特定します。
青いドットが数秒おきの切り離し装置の位置を示します。
係留系投入作業中にあらわれたオットセイ(中野さん撮影?)

2015年7月6日 夏のプランクトンまつり開催中!

(白鳳丸はまだ北緯47度東経160度で観測中です!)

やってまいりました、白鳳丸、夏のプランクトンまつり!
白いお皿はもらえませんが、もれなくプランクトンがもらえます。(えー)
今日は観測のうちほぼ、半分がプランクトンネットに割かれました。深夜2時から始まって、トータルなんと11時間!!
僕の研究人生で、1日のうちにこんな長時間プランクトンネット観測をやったことがありません。
寒風吹きすさぶ7度の気温の中、11時間も立ちっぱなしはさぞ辛かろう、とおもいきや、今日の北太平洋はベタ凪。寒さはほとんど気になりません。これならなんとか乗り切れそう?

今日は最大2000mまでの曳網を行い、様々な動物プランクトンを捕まえます。
深海から冬眠する前の卵を持ったネオカラヌス(カイアシ類)だけを採取する、という創価大学博士課程の平原さん。
翼足類を高濃度二酸化炭素の海水にさらす、というJAMSTECの清水くん。

…えーと、こんなこと書くと、一般の方からはなんかヒドい実験をしているように思われたりしてそう。
僕なんか、とれたての浮遊性有孔虫をそのままエタノールに(以下略)

何はともあれ、 プランクトン班4人で夜中11時までプランクトン観測やり抜きました!もう体力の限界!!
深夜にみんなでカップラーメン。心も身体もほっと休まる、至福の瞬間です。
プランクトンもういいから、明日の午前中は休ませてちょーだい。

主席藤P:「朝4時からプランクトンネットですから。4時間。」
きもp:「お腹いっぱいです!!!」

舷側から投入されるVMPS(鉛直多層曳プランクトンネット)。我が研究チームの虎の子です。
一回の曳網で複数の水深のプランクトンがとれるスグレ物です。海が穏やかなのがわかりますか?
れはNORPACネット。
水深1000mから回収したプランクトン試料を心配そうに見守る平原さん(右)

2015年7月5日 トラップ回収!!

(白鳳丸は現在北緯47度、東経160度のK2で観測中です)

「克典、早く起きんと遅刻するよ!」
母の声でハッと目が覚めました。時計を見たら7時15分。
6時にiPhoneの目覚ましをかけていたはずですが、無意識に止めて二度寝してしまったようです。
こんな北の海にまで僕を起こしにくるなんて、うちのママンもなかなかやります。

さて今日は朝から今航海の目玉となるセジメントトラップ(係留系)の回収です!
朝にさっと雨が降りましたが、視界は良好、波も穏やかで回収日和です。
いろんなことがあっただけにこの回収は感動もひとしお、、、おっと誰か来たようだ。。。。

そんなわけで係留系回収チームの素晴らしい仕事ぶりを写真でご堪能ください!みんなおめでとっ!!
(今日は手抜きすぎ?)

「スラントレンジ確認、切り離し装置より2300メートル!」
係留系チームの班長、喜多村さん(右)、観測慣れしててマジカッチョイイのです。
無事に切り離されて浮かんだ黄色いガラス玉(浮き)と、呑気なコアホウドリ。
回収の瞬間は見逃したけど、1000mのトラップ無事オンデッキ!
超深度のブイが波にもまれて見事に絡まってしまいました(よくあります)。
トラップは、、、え、逆さまなの?!
でも大丈夫!試料はバッチリ回収されましたヨ〜!

2015年7月4日 観測始まる

観測点K2でついに観測始まりましたよっ!

午前2時(日本時間と船内時間は同じです)からプランクトンネット観測でスタートです。 ここは北緯47度、カムチャツカ半島の南端よりもさらに北ですので、明るくなるのが早いです。午前2時にはもううっすらと明るくなり、水平線が見え始めます。日本とは体感で2時間くらいの差がありそうです。
早朝の観測は清々しい、、、いや、寒い!
気温6.5度、関東では真冬と同じ!
うっかり極寒ジャンパーを持ってこなかったことを呪いつつ、例のセリフ「認めたくないものだな、、、人の若さゆえの過ち云々」

そんなこととは関係なく、観測は始まります。うねりが少しキツいですが、十分行えます。
タオルを首に巻いたりレインコート着たりして暖をとり、なんとか3時間の長丁場を乗り切ります。500mより浅いところで合計10回のプランクトンネット観測を行うことができました。

その後はさらにCTD採水を2回、そして夜は20時からミッドナイトまで水深300mまでの現場ろ過観測。白鳳丸の倉庫から現場ろ過装置を8台も人力で引き上げてくるのは本当に大変です。海洋観測機材ってなんでこんなに重いの?ふだん有孔虫より重いものを持ったことがない僕なんですからマジ勘弁。
ろ過したフィルターを回収して作業は完了!ふぅ。甲板員の方「右舷側にオットセイがいますよ」えっ、どこどこ?!真っ黒い海で、真っ黒い生き物どうやって見つけたらいいんでしょ?!

そんなことしてたらいつの間にか時計は午前2時、、、窓の外はうっすら明るくなってきています。あれ?
...1日って早いっスね〜 (汗)

今日、朝8時から、昨年設置した係留系(セジメントトラップ)の回収が予定されています。

創価大のプランクトンネット用サンプルボトルになにやら不穏な文字発見!ランカク用… 卵殻?乱獲??
プランクトン採取は絶滅しないように、ほどほどに。
みんな7研に集合していきなり大反省会?!いえいえ、喜多村次席研究員(右下)のもと、観測プランの話し合いをしているところ。こんな場面でパノラマ写真撮ってる僕は話を聞いてない証拠。
CTD採水。24本の採水ボトルが並びます。班長の脇田さん(写真右)の指示の元、てきぱきと採水が行われます。
さすが、水商売が上手です。

2015年7月3日 観測開始は午前2時!

(白鳳丸は1700現在、北緯46.7度、東経159.5度にいます)

観測点K2への到着を4時間後に控え、いまも準備が着々と進んでいます。 今日は作業中にちょこっとだけ太陽が顔を出しましたが、いまはご覧の通り。

上方に太陽がありますが、この程度。時々海鳥が飛んでるくらいで当然ながらなーんも見えません。

北太平洋だとこれが普通で太陽が見えることの方がまれです。日が差すと温かみを感じますが、陰ると寒いですね。現在気温約7度C。

観測のトップバッターは、私たちの観測、プランクトンネット(NORPAC)です。
今回は、船上で飼育用のカイアシ類と翼足類を捕らえるべく、500mの水深までネットを下ろします。
午前2時(日本時間)にスタート、3時間の長丁場になりますが、気合い入れて頑張ります! さて今日ご紹介する研究者はJAMSTECの中野さん。高性能pHセンサーの製作でいまや時の人となりました。
航海開始前にはアメリカの取材を受け、帰港したら晴海で日本のメディアの取材を受けることになっているそうです。
今回は係留系に彼お手製のハイブリッドpHセンサーをつけて、1年間にわたり海水のpHを測定し続けます。
1年係留するのは初めて、ということで、これが成功したらたいへんな成果となります!! 来年の回収がとても楽しみですね!

RAS(自動採水器)のフレームに装着したハイブリッドpHセンサーとその製作者の中野さん。透明のアクリルチューブが海水を採取する容器で、その下に横たわる白いものがハイブリッドpHセンサー。

まだこの時、私たちを待ち構えていた困難を予想することはできなかった!

2015年7月2日 海の上で陸の巻貝の話をする人たち

(白鳳丸は2200現在、北緯44度東経155度付近にいます)

昨日の大揺れはピークを過ぎたようです。
あの揺れの真っ最中、陸にいる同じグループの長島さんよりメール。「学会の講演要旨の提出期限、伸びましたyo」
長島さん、もう天使かと思いました。あの揺れの中で学会の講演要旨書ける人いたら、ぜひとも弟子入りしたいです。

さて今日は午後からマリン・ワーク・ジャパンによる係留系設置・回収のための安全講習が開かれました。
係留系とは、海底から海洋表面に向かってまっすぐ立った観測システムのことです。これを約1年間係留し、翌年に回収します。
数トンにもなる錘、たくさんの浮き(ガラス玉)、数キロにもわたるロープ、そして観測機材からなるため、これを海中に降ろしてゆくのは大変な作業なのです。怪我のないよう、細心の注意を払って、慎重に行いたいところです。

船上では娯楽が少ないせいか、ちょっとした話題で盛り上がります。
今日は食事中に陸上の巻貝の話で大いに盛り上がりました。巻貝は一緒に乗船しているJAMSTECの清水さんの研究テーマです。
たとえば、巻貝の99%以上は右巻きでなぜか左巻きが少ない、とか、たまたま左巻きになった個体は、体の機能や内臓の配置などが逆になるとか。へ〜。まるで「北斗の拳」に出てくるラオウみたい! 
またかたつむりはパートナーを見つけると、互いに持っている槍(恋矢、れんし、というそうです)で相手を刺しあうのだそうです(痛そう)。これにはフェロモンが塗布されていて、これに刺されることで、別の個体との交接の機会を抑制する働きがあるのだそうですよ。

なんかわたしたち人間も、目に見えない槍が刺さっちゃうことありますからね〜。とっても面白い。
そこで、清水さんに「恋の矢が刺さったことある?」と尋ねてみましたら、おっと、この話は個人のプライバシーなのでやめておきましょう。

明日は朝から係留系の準備(ロープ巻き込み作業)がおこなわれます。緊張も徐々に高まってきました。
気温も水温も8度C。観測点K2はもう目の前、到着は明日の夜20:00です。

今日の写真は、僕と一緒にプランクトンネット観測を行う池上さん@海洋生物環境研究所。
放散虫化石を用いた古環境解析が専門です。
生きた放散虫を見るのは初めてとのことで、目を見開いて大興奮中。

2015年7月1日 出航以来、最大の揺れキターー (^o^)/

(白鳳丸は北緯40度東経149度付近を航行中です)

と喜んでいる場合ではありません!海がどんどん荒れてきています。ロール(左右の揺れ)がきつく、しっかり踏ん張っていないと狭い廊下でうっかり男の子に壁ドンしそうになります♪
顕微鏡を覗いていても座っている椅子が前後に動くため、両足で踏ん張っていなければ覗くことができません。机に体を縛り付けたくなります。また、試料も視野の右から左にザー、ザーっと流れるので、、、もう何が何だか(笑)
しかし研究員のみなさん、さすがにベテランが多く、船酔いのカケラもみせず3日後の観測準備に精を出しています。すごい!

今日は午後から多段式各層プランクトンネット(VMPS)の組み立てを行いました。
観測甲板に隣接する、右舷側の採水器室というところで作業したのですが、船の動揺のため、常に海水が入ってきて足元を洗います。
早めに切り上げたいところですが、なんとここで不具合発覚!!プランクトンネットに裂け目がみつかりました。同じくプランクトンネット観測を行う喜多村さんに針と糸をお借りして、中学校以来の縫製に挑戦!見た目は悪いもののなんとかふさがりました。観測終了まで持ってくれることを祈るばかりです。

先ほど暗室で、暗く作業をしている研究員を見かけましたのでちょっと話を聞いてみました。 彼女はJAMSTECの研究員で同位体生物学がご専門の吉川さん。海水をろ過して、その中に含まれる植物プランクトンの色素を抽出し、クロロフィル濃度を測定するとのこと。たった100mlの海水のろ過に15分もかかるとお嘆きのご様子。なるほど、暗いわけがわかりました。頑張って下さい。

おっとりした喋りが魅力の吉川さん。特注のろ過セットで海の神秘に挑みます!

そして今日のプランクトン!揺れる船上で頑張って写真撮りました。この海域では浮遊性有孔虫は少なく、かわりに翼足類が大量に生息していました。翼足類の分子生物学的研究を行う清水くんは隣で狂喜、僕落胆。なあに明日があるさ!

北緯40度のプランクトンたち。黒潮の群集とは随分違います。丸く見えているのは翼足類のリマシナの幼生、亜寒帯に特有な種です。針状の細い線は珪藻。キラキラ透明でまるで宝石箱をのぞいているかのようで幸せな気持ちになります。

2015年6月30日 黒潮のプランクトン!

(白鳳丸は21時現在、北緯38.0度 東経144.8度 にいます。)

こんにちは!出航から1日経ち、船は順調に北上中です。
予定では約2週間の航海のうち、観測できる時間はたったの5日間しかありません!この貴重な時間にたくさんの観測項目が予定されているにもかかわらず、観測点到着の日、7月4日の海上予報では真上に低気圧が乗っかってます。。。どうやら日頃の行いの悪い人が一緒に乗船しているみたいですねー。
きっとこの中に犯人がいるに違いない。(もちろん僕以外で)

乗船研究者リスト

これは船内の掲示板に貼られている乗船者の一覧です。白鳳丸に乗船する時はいつもこれが船内に貼られます。お互いの顔と名前を一致させるにはとてもよい仕組みですね。

さて夕べは黒潮を横切りました。プランクトンはどういうものがいるのか、さっそく見てみることにしましょう。
実は昨日東京湾を出たあと、実験室にプランクトンネットをセットし、表層海水をろ過していたのです。
白鳳丸をはじめとする海洋観測船の実験室には、直下の表層海水を連続的に採取できる蛇口がありますので、ここに簡易のプランクトンネットを設置することで、そこに生きていたプランクトンを簡単に捕まえることができます。(すごく便利!)

揺れる船の上で写真を撮るのはすごく大変ですが、いくつか綺麗に撮れた写真をご紹介したいと思います。

黒潮にいた動物プランクトン。見えているのはほとんどコペポーダというカイアシ類です。
本航海にも、カイアシ類の専門家が乗り込んでいますよ。
翼足類。とても薄いアラレ石の殻を作る遊泳性の貝です。半透明な部分が殻です。
右下に出ている二股に分かれている部分が側脚で、これを羽ばたかせて水中を泳ぎます。
全長は2ミリほど。海洋酸性化が進行することで、このグループの絶滅が心配されています。
翼足類は、今回の航海の主役とも言えます。
主役の座を奪われてかわいそうな浮遊性有孔虫。ほとんどがグロビゲリノイデスという熱帯から温帯に特有な種類でした。
大きさは300ミクロン(0.3ミリ)程度でしょうか。茶色い部分が細胞質です。
放散虫です。スポンガスター・テトラスといいます。四角いので僕は座布団と呼んでいますが。
赤い色は細胞内器官の色。殻本体はややピンボケですが、注目すべきは殻の直下に薄く出ている細い線状のもの。
アクソフラジュルムという器官で、生きている個体からは必ず1本突き出ています。どのような役割をもっているのかはわかっていません。

航海中におもしろいものが採れたら、またご紹介したいと思います。お楽しみに〜!

2015年6月29日 出航!

2015年6月29日、天気は晴れ。
本日はKH15-J01航海の出航の日です。すべての出航準備を終え、学術研究船白鳳丸は午後2時、静かに晴海の岩壁を離れました。
今回の観測の主目的は、地球規模で進行しつつある海洋酸性化に対し、北太平洋の動植物プランクトンの生物的な応答を探ることです。
(海洋酸性化とは、大気中の二酸化炭素が海洋に溶け込むことで、現在弱アルカリ性の海水が徐々に酸性側に近づいていく現象です。)

全日程は15日、私たちの観測航海のなかでは、比較的短めの航海ですが、セジメントトラップや現場ろ過、プランクトンネットなど、短い期間ですが様々な観測を実施する予定になっています。
乗り込んだ研究チームは総勢17名。少数精鋭?

これから毎日、日々の船内生活や観測の様子をお伝えしていきたいと思います。
お楽しみに〜!

お見送りに晴海まで来てくださった皆さん、ありがとう!期待に応えるよう頑張ってきます!
船側も見送りに応えます。写真中央は今回の航海の首席、藤木さん。
恒例の船舶萌えな方面むけ写真。出航直後に台場沖で後ろから追いかけてきた伊豆七島航路のジェットフォイル、「セブンアイランド愛」にブチ抜かれます。それもそのはず、相手は水中翼船、ジェットエンジンを装備し時速80キロくらい出てます。
後ろにはフジテレビ社屋、右奥の船の科学館前には帆船の海王丸が見えています。
左から、喜多村技術研究員・藤木主任技術研究員・海洋生物環境研究所の池上さん・木元主任技術研究員 
(Photo : Maki Noguchi Aita)
出航直前の女性研究員たち (Photo : Maki Noguchi Aita)
見送る原田グループリーダー (Photo : Maki Noguchi Aita)