地球環境部門 地球表層システム研究センター・海洋生態系研究グループで副主任研究員として、海水中や雪氷中に含まれる鉱物粒子の起源推定に取り組んでいます。現職の前はJSPS特別研究員やポスドク研究員として10年間、国立極地研究所で勤務していました。JSPS特別研究員制度には大変お世話になりまして、博士号を取得した千葉大学大学院在学時にDC2として採用して頂き、その後PDとして1回、さらに第一子を出産した後にRPDとして1回の計3回採用して頂きました。学生時代から継続している研究テーマは、氷河上の不純物に関する研究で、これまで中国やアラスカ、グリーンランドなど数多くの氷河調査に参加してきました。現在、夫と保育園児1人の3人家族です。
公募が出た頃、ちょうどあと1年で学振研究員の任期が切れてしまう予定だったので、新たなポストを探していました。夫の協力もあり、産後10ヶ月ほどでRPD研究員として復職できてはいたのですが、コロナ禍ということに加えて、保育園に通う乳児の体調不良や、自身の体調不良なども頻発してなかなか産前と同じように研究を行うことができず、時間だけが過ぎていくことに不安を抱えていました。
そんな時にリスタート支援公募が開始されたことを知り、応募の経験・資格が自身にぴったり当てはまること、さらに分野や職務内容に制限がなく応募ができること、さらには定年制職員への移行審査資格があることに強く惹かれました。ただ、これまで海洋に関する研究を全く行ってこなかったのに大丈夫だろうか、という少しの迷いと、自宅が遠方のため少し応募を迷ったのですが、JAMSTECの研究者の方達にコンタクトをとったところ、大変親身になって相談にのってくださり、背中を押していただけたことで、新たな環境でチャレンジしてみたいと応募を決めました。通勤に片道2時間半近くかかってしまうため、現在、出勤は週に2~3回程度、残りの日は在宅勤務にさせて頂いています。おかげで育児との両立もでき、大変ありがたいです。
学部時代から継続して、雪氷中の氷河上の不純物(クリオコナイト)に関する研究を行ってきました。氷河の上には、実は雪や氷以外にも様々な不純物が堆積しています。そのうち、氷河上に風で飛ばされてきた鉱物粒子と、寒冷な環境を好んで氷表面で繁殖する雪氷微生物が集まって作られた泥状の物質がクリオコナイトです。
私はクリオコナイトは、その黒い色によって太陽光の吸収を高めるので、氷河上に蓄積すると氷の融解を促進することが明らかになっています。私はこのクリオコナイト中の鉱物の起源とその微生物への影響に着目し、金属元素の安定同位体比分析や、電子顕微鏡観察等の分析手法を用いて、近年、北極域で進行する氷河暗色化のメカニズム解明に取り組んできました。さらに、氷河上に供給される鉱物起源の時間変化を明らかにするため、氷床コアに含まれる微量鉱物の分析も行っています。研究を進めるうち、次第に氷河だけではなく、その周囲に広がる大気・海洋への影響やその相互作用についても理解を深めたいと思うようになりました。JAMSTECでは新たな挑戦として、陸域から海洋、および雪氷圏への鉱物供給の実態把握、さらに鉱物由来の栄養塩が各生態系へ及ぼす影響を評価することを目標としています。
これまで、千葉大学や国立極地研究所において地道に続けてきた研究を評価していただくことができ、とても嬉しいです。この場を借りて、関係者の皆様に深く感謝申し上げます。ようやく新しい環境に慣れてきたところなので、まだ展望、とまでは言えないのですが、JAMSTECには本当に多岐にわたる分野の研究者の方がいらっしゃるので、このような環境の中で、これまでに培った分析技術を応用させるだけではなく、各部門の方とも幅広くコラボレーションしながら、この賞の名に恥じないようさらに研究を発展させていきたいと思っています。
JAMSTECで半年過ごしてみて、分析や研究を行う上でのサポート体制が本当に充実していることに驚きました。また、どの部門の方も、とても快く共同研究や装置利用に関して相談に乗ってくださり、自身の研究を発展させる場として、さらに新しいことに挑戦する場としてとてもやりがいのある職場だなと感じています。子育てや通勤の関係もあり、あまり頻繁に出勤することはできていませんが、上記のサポート体制や周りの方々の理解もあり、ワークワイフバランスを保ちながら研究を進めることができています。
2024.12.25公開