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海と地球を学んじゃうコラム

広くて深い海から
地球と生命を探るすごい技術

トコトコ歩いてカワイイのに、追いかけられると怖いロボットボムって、なんだか「しんかい6500」っぽくなイカ?―――え、「しんかい6500」を知らない?
マンタマリア号から大きな船が見えるだろう?あれ、「ちきゅう」にそっくりじゃなイカ?―――え、「ちきゅう」を知らない?どっちも海や地球を調べる最新の研究船だよ。世界の海で活躍するJAMSTECの研究船や探査機のヒミツを学んでみなイカ?

「海は広いな大きいな」と歌にもあるように、海は広く、誰も見たことがない場所がたくさんあります。海の面積はなんと3億6,300万平方キロメートル。地球全体の約70パーセントを占めます。また海は深く暗いところがほとんどです。深さが200メートルを超えるところは太陽の光がほとんど届かない暗い世界で、「深海」と呼ばれます。この深海が海の全体の98パーセントを占めるのです。さらに、深い海ほど高い水圧がかかります。海の平均の深さは、富士山がすっぽり沈む3,800メートルですが、例えばこの深さでかかる水圧は、およそ380気圧。指先に大きなグランドピアノを乗せた時ほどの力がかかります。
このように広く、深くて暗い、大きな水圧がかかる海を調査するのは宇宙と同じように、とても難しく、まだまだ分からないことがたくさんあります。海は地球最後のフロンティアとも呼ばれています。今回は、そんな深海や海底下の調査を支える研究船と探査機の技術を紹介しましょう。

深海や海底下を調査する研究船たち

深海に潜る調査船。ロボットも出現。

深海に潜って調査する方法にはJAMSTECの「しんかい6500」のような人が乗るタイプと、無人のタイプがあります。「しんかい6500」では、中に乗っている人がその場で観察し、船体の前についているロボットアームで生き物や岩石を採取することができます。
一方で、無人タイプは、離れたところから人が操作するため人が事故にあうリスクが少なく、安全に調査をすることができます。海に浮かぶ船からリモートコントロールで航行できる探査機を「遠隔操作型無人探査機(ROVあーるおーぶい)」と呼びます。このタイプのロボットは、母船とつながった通信ケーブルを通じて操縦することができます。
さらに、あらかじめ命令したルートを、障害物をよけながらコンピュータが自ら判断して航行できる新しいタイプのロボット「自律型無人探査機(AUVえーゆーぶい)」も登場しました。


深海巡航探査機「うらしま」。海底に音波のビームを発して、地形を詳しく調べることができる。右の図は色分けで示した海底地図。白や赤の部分が高く、深い青の部分は深くくぼんだ場所。



例えば、JAMSTECの深海巡航探査機「うらしま」は、自分の位置や、どれだけ移動したかを自分で測りながら海底地形を調査することができるロボットです。コンピュータが自分で判断して海中を航行するので、定点での観測や作業が得意なROV(あーるおーぶい)よりも短い時間で広い範囲を調べられるのです。


海底から地球の中を調べる、世界トップの探査船「ちきゅう」

海底の地下を調べるのは、JAMSTECの地球深部探査船「ちきゅう」です。世界トップクラスの掘削能力を持ちます。海面からの高さが120メートルもある塔(正確には「やぐら」です)から何百本ものパイプをつないで下ろして海底を掘ります。ちなみに、東京湾にあるレインボーブリッジの高さは52メートルなので、「ちきゅう」はその下をくぐることができません。

探査船「ちきゅう」が海底を調査する様子。



釣り船やフェリーに乗ったことがある人は、船体が波に揺られて縦に横にユラユラと動くのを感じたことがあるでしょう。しかし、海の上から海底下を深く掘る「ちきゅう」は、海に浮かんだままでも動かないようにピタッと止まっていなければいけません。しかも、深さが何千メートルもある海では、船のイカリが届きません。そこで「ちきゅう」は、宇宙にある人工衛星と海底にある装置から自分の位置を教えてもらい、その点から動かないように船の底にある6つのプロペラをコンピュータが自動で動かすことでピタッと止まっていることができます。「ちきゅう」は、海の上を走るだけではなく、止まることもできる技術もつかって、まだ私たちが見たこともない地球の奥深くの世界を研究しています。

さらに、海底から地下に数千メートルも深い地球の中をどうやって調べるのでしょうか。皆さんは波が打ち寄せる砂浜を手やスコップで掘ったことがあるでしょうか。海水があると、せっかく掘った穴が崩れてなかなか深く掘れないですよね。深海底でも同じようなことが起こり、砂浜よりも格段に掘るのが難しいのです。そこで、船と海底をライザーパイプという管でドッキングして、地層が崩れないようにコントロールしながら掘り進める技術によって、数千メートルも深く掘り続けることができるのです。
ちなみに、地層を削るカッターの先は、世界一硬い鉱物「ダイヤモンド」でできています。地球の地下の岩盤は深くなるほど硬いので、その硬さに負けないためです。

海底に広がる鉱物や熱水噴出孔の周りの独特な生き物たち、海底の下の地層やその中で生きるミクロな生物の研究には、ここで紹介した他にも、さまざまな技術が活かされているのです。

文 田端萌子&JAMSTEC
(2018年4月9日掲載)

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