岩手県南部海域における魚類の再生産に関する実態調査

実施年度

2015

タイトル

岩手県南部海域における魚類の再生産に関する実態調査

課題・テーマ

課題1 漁場環境の変化プロセスの解明
代表機関:東北大学
テーマ5 岩手県南部海域における海洋環境の現状調査
代表者加戸 隆介
所属機関北里大学
所属部署海洋生命科学部

調査内容

調査期間(調査頻度)
2015/04/01 - 2016/03/31
毎月1回
調査地域・海域
越喜来湾・大槌湾・野田湾・盛川
調査種別
フィールド調査
調査概要
東日本大震災が魚類の再生産に与えた影響とその後の回復過程、および防潮堤工事等の影響を把握することを目的として、越喜来湾の砕波帯やアマモ場に設定した定点において仔稚魚の出現動態を調べた。また、浪板海岸のアマモ場の面積測定と防波堤におけるホヤの個体数を調査した。 大槌湾と野田湾においては、ヒラメ稚魚の出現動態を調べた。

調査実施内容

調査地域・海域の座標一覧
位置情報(点)
名称越喜来湾浦浜海岸
名称越喜来湾浪板海岸
名称大槌湾
名称野田湾
調査結果
2015年の越喜来湾浦浜海岸における調査では5目16科29種以上1445個体の出現が確認された。昨年の6目21科26種以上2805個体と比べて種数が増加し、年を追うごとに出現種数の増加がみられた。これは堆積する砂の増加などによって様々な粒度の底質となるなど、環境が多様化していることが一因と考えられる。本地点では越喜来漁業協同組合等が県に要望する形で、防潮堤が陸側に200mセットバックされ砂浜域が保全されることとなったが、これに2011年から始まった一連の研究が果たした役割は大きいものと判断される。  浪板海岸アマモ場では、2015年9目24科46種以上1646個体の出現が確認された。昨年の5目16科29種以上1008個体と比べて種数が大きく増加し個体数も増加した。個体数の増減は、優占種であるクダヤガラの変動によるものであることが明らかとなった。また類似度指数(Jaccard)による種組成比較では、震災前と2012年以降の間に差が認められないことから、仔稚魚相は震災前の水準に回復していることが示唆された。津波により流失したアマモ場は2011年末の680㎡、2013年夏には1200㎡、2014年8月には3300㎡と生育面積が増加していたが、2015年8月には3500㎡となっており震災前より増加していることがGISを用いた空撮映像の解析によって確認された。  2015年に観察されたアユとウキゴリ属の減少、クダヤガラの減少、ホシガレイ幼魚の未出現は、各種復興工事の影響による濁水の増加や産卵基質の減少、およびシルト質の堆積が原因となったものと考えられる。  震災前後(2009,2012年度)野田湾に着底したヒラメ稚魚に関して、炭素・窒素安定同位体比を測定し、胃内容物調査の結果と比較した。さらに、餌環境とヒラメ着底稚魚の減少係数との関係を検討した。同位体比を用いた餌の寄与率推定から2009年は成長に伴いアミ類からカタクチイワシ稚魚(魚)へ餌が切り替わっていた。一方、2012年では、成長の中盤で一時的に魚の寄与率が高まったが、おしなべてアミ類の寄与が高かった。このような成長に伴うヒラメ稚魚の魚食移行の成否が減少率に影響を及ぼすことが示唆された。一方、着底初期のヒラメ稚魚の主要な餌であるアミ類は、5個体/m2より少なくなるとヒラメの胃充満度が急激に低下した。さらに、アミ類の密度が5個体/m2より少なくなると、ヒラメの減少係数も急激に上昇した。ヒラメ着底稚魚の生残は漁獲減少による親魚数の増加という間接的な影響を除けば、震災による直接的影響は認められず、年度ごとの餌環境変化の影響が大きいことが示唆された。

調査項目と取得データ

調査項目取得データ・サンプル
アマモ場調査アマモ場の面積および状況、水中画像
水質調査水温、塩分、PH、DO、濁度
魚類調査魚類(主に仔稚魚)の種組成および出現動態(砕波帯、アマモ場等)

関連情報

実施(調査)窓口担当者

担当者名朝日田 卓
所属機関北里大学
所属部署海洋生命科学部
担当者名林崎健一
所属機関北里大学
所属部署海洋生命科学部

キーワード

実施年度2015
機関北里大学
調査種別フィールド調査
海域区分三陸北部
三陸南部
分野海洋物理 -> 水温
海洋物理 -> 塩分
海洋物理 -> 透明度・濁度
海洋化学 -> 塩分
海洋化学 -> 溶存酸素
海洋化学 -> 水素イオン濃度 (pH)
海洋環境 -> 水素イオン濃度 (pH)
海洋生物・生態系 -> 生物分類
海洋生物・生態系 -> 生態
海洋生物・生態系 -> 対象生物:魚類
海洋生物・生態系 -> 藻場・干潟分布