EXTRAWING - 地球科学データの中の世界への探検

EXTRAWING とは

はじめに

海洋研究開発機構(JAMSTEC)では、地球シミュレータを用いた地球・環境流体シミュレーションの研究成果を一般社会へ発信し、さまざまな場面で活用できるようするためのWebサイト「EXTRAWING (エクストラウィング)」を開発しました。

この名称は、EXploring and TRAveling the World INside Geoscientific data を略したもので、「地球科学データに基づいて構築された仮想世界の中を飛び回り自由に探検する」という意味が込められています。また単語を直訳すれば「格別の翼」、仮想世界に羽ばたく想像上の翼というニュアンスも含めています。

EXTRAWINGは、シミュレーションデータの可視化結果をただ単に掲載するだけの画像ギャラリーのようなものではなく、その可視化結果を3次元的に観察でき

るWebアプリケーション、および詳細な解説文など複数のWebドキュメントを含む構成になっています。Webアプリケーションには、利用者がマウス操作で3次元的に自由に動き回っていろんな方向からその可視化結果を観察したり、3次元アニメーション表示をさせたり、シーンに合った手短な解説文を適宜表示させたりというような、利用者の理解を助けるいくつもの機能が用意されています。また多くの一般の利用者にも手軽に楽しんでもらえるよう、インターネットという誰でも手軽に利用できる環境をベースに、シンプルな操作性とわかりやすい解説文章の執筆にも心がけました。

このEXTRAWINGを個人で観賞していただく他、教育・学術的用途での利用など、いろいろな場面でもご活用いただければ幸いです。


EXTRAWINGの特徴


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3次元的な観察方法

海流、渦の構造、気温の分布、雲の形状など、海洋現象や気象現象は一般に3次元空間的な広がりを持っており、また時間的にも絶えず変化しています。このような現象を扱う数値流体シミュレーションにおいて、温度や圧力、速度場など、場の量の多くは3次元空間の中に張られた計算格子上で計算されそして出力されます。

このような3次元的な広がりを持つ量を直接3次元的に見渡すことができれば、たとえば複雑に渦を作る風の流れの様子や温度の空間的な分布の様子などを、私たちは直感的に把握することができるようになるでしょう。しかし実際に私たちが眺めることができるのは、一連の可視化処理によって得られた画像(静止画および動画)に映し出された、それらの様子の一側面に過ぎません。たとえば、ビルの裏側へ流れ込んだ風がその先でどのような流れを形成しているかを、画像から判断することは困難です。

EXTRAWINGでは、マウス操作による空間的な視点移動を前提にしています。そして、視点をどこに動かしても場の量の分布や流れの構造を眺めることができるようにするために、データ可視化手法にもボリュームレンダリング技法をヒントに独自の工夫を施しました。こうして、ビルの谷間を抜ける気流を追跡しながら気温変化の様子を観察したり、台風によってわき立つ積雲を地上から見上げるように観察するなど、シミュレーションデータを3次元的にあらゆる方向から自由に観察することができるようにしています。



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Google Earth API によるリアルな表現力と利便性

地球・環境流体シミュレーションによる計算結果を可視化する際、そのシミュレーションの境界条件、すなわち地形や建物の外形のような景観を再構成する形状データの可視化もまた不可欠な要素となっています。特に、そのシミュレーションのリアリティさを実感しやすくするには、景観もまたリアルに表現することが望ましいと言えるでしょう。

このような地球環境景観を容易にかつリアルに表現できる手段として、EXTRAWINGでは Google EarthTM の機能を利用しています。Google Earth とは Google 社が無料で配布しているバーチャル地球儀ソフトウェアで、衛星写真や3D建物などのリアルな表現、インタラクティブな3D操作、レイヤー選択やキーワード検索等の豊富な機能を持っています。

Google Earth を活用して地球科学データを可視化してリアルに見せる方法は科学的成果の伝達や教育にも効果的です。しかし、豊富な機能を駆使することで巧みに活用できる反面、観察すべきデータをすべて揃えておくなどの事前準備や込み入った操作方法の習得など、利用者側にも技術的な面での負担がかかる場合もあります。一般の人々にとってはややハードルが高く躊躇してしまうかも知れません。

そこで私たちは Google Earth そのものを使うのではなく、 Google Earth API というライブラリとJavaScriptを利用してWebアプリケーションを開発することにしました。EXTRAWING では、Google Earth 初心者でも操作方法で困ることがないよう、使用するGoogle Earth の機能をごく一部に制限しています。またWebアプリケーションなので、インターネット経由で誰でも気軽にアクセスして利用することができます。利用者が事前にすべきことは、初めて利用する際に一度 Google Eath プラグインのインストールをするだけ。利用するたびに利用者が毎回データのダウンロードのような事前準備をしておく必要は一切ありません。



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コンテンツ・シーン選択と平易な解説

さらにWebアプリケーションのメリットとして、利用者が選んだコンテンツや、視点選択等で変化するシーンに合わせて、そこに表示されている現象についての解説文を連動させて表示することができます。解説文の表示は Google Earth のバルーン(i)表示機能を用いてもできますが、この場合バルーンが開くとシーンの一部が隠れてしまい、解説を読みながらシーンと見比べることが難しくなります。EXTRAWINGでは、常にシーンと解説文の両方とも同時に見て楽しめるようにするため、シーンと解説文の表示領域を明確に分離しています。そしてシーンを選択すると解説文がそこへ動的に表示されるようにしています。

シーン選択と連動して表示される解説文はできるだけ平易で端的な文章にしました。さらに詳細が知りたい場合には、「もっと詳しく」リンクをクリックして詳細のページへ移ってください。詳細のページでは、各コンテンツのさらに詳しい解説、追加情報、そしてさらに詳しくデータを観察したい人向けに Google Earth アプリケーション用コンテンツデータのダウンロード用リンク等を用意しています。

  1. Google Earth でシーン内に配置されたアイコン(プレースマーク)をクリックすると開く吹き出しのようなもの。HTML形式で文章や画像を貼ることができます。