プログラム

13:00-13:20 開会挨拶 西 弘嗣 日本地球掘削科学コンソーシアム IODP部会長
来賓挨拶 文部科学省(予定)
13:20-14:45 【第1部 ― 地球深部探査船「ちきゅう」による科学成果】
温度限界の先に生命を探せ! -海底下に広がる生命圏とその限界を探る-
  諸野 祐樹  海洋研究開発機構 高知コア研究所
南海トラフ沈み込み帯での断層掘削と地震津波研究の最前線
  小平 秀一 海洋研究開発機構 地震津波海域観測研究開発センター
第1部総括 -「ちきゅう」による日本の貢献、これまでとこれから-
  木村 学 日本地球掘削科学コンソーシアム 会長
14:45-15:05 休憩・ポスターセッション
会場前のホワイエにて、講演で紹介しきれなかった主要な成果や今後実施予定のプロジェクトの最新情報などを紹介するポスターを展示し、休憩時間には研究者によるポスターセッションを行います。
15:05-17:05 【第2部 ― IODP・ICDPによる日本の科学成果】
巨大地震発生帯を掘削して何がわかったのか、何がわかるのか?
  坂口 有人 山口大学大学院創成科学研究科
白亜紀末の大量絶滅を引き起こした巨大天体衝突 ‐恐竜はなぜ滅んだのか?-
  後藤 和久 東北大学災害科学国際研究所
地震を間近にみる -南アフリカ金鉱山での地震観測と断層掘削-
  矢部 康男  東北大学大学院理学研究科
17:05-17:15 閉会挨拶 斎藤 靖二 海洋研究開発機構地球掘削科学推進委員会 委員長

講演要旨

温度限界の先に生命を探せ!
-海底下に広がる生命圏とその限界を探る-

諸野 祐樹
海洋研究開発機構
高知コア研究所

我々の住む地球、その表面積の7割には海洋が広がっています。広大な海洋の下には海底があり、その下には地球最後の秘境ともいわれる海底下生命圏が存在します。
海底下に広がる生命圏の発見から二十年あまり、現在では海底下2.5kmの大深度にも生命が存在することが明らかになってきました。
2016年9月、高知県室戸沖で「室戸沖限界生命圏掘削調査:T-リミット」が実施されました。100℃を超える海底下地層に生命は存在するのか、海底下生命圏の限界はどこにあるのか、その問いの答えを求めた研究が始まっています。

南海トラフ沈み込み帯での断層掘削と地震津波研究の最前線

小平 秀一
海洋研究開発機構
地震津波海域観測研究開発センター

2007年から続く「南海トラフ地震発生帯掘削計画」は、科学史上初めて、巨大地震が幾度となく発生してきた海底下の地震断層に向けて掘削し、地震発生のキーとなる岩石試料を採取するとともに、掘削孔内で直接、断層付近の岩石の性質や地殻変動などを計測・観測する計画です。断層のすべりが地震を起こす場合と起こさない場合を決定づける条件や、南海トラフでの地震・津波発生メカニズムの解明を目指しています。さらに、掘削孔に設置した長期孔内観測装置を海底ケーブル式の地震観測網と接続し、リアルタイムで地震断層を観測・監視し、地震の発生に備えようとしています。2016年3-4月に行われた最新の航海の成果や、計画の今後の展開についてご紹介します。

巨大地震発生帯を掘削して何がわかったのか、何がわかるのか?

坂口 有人
山口大学大学院創成科学研究科

巨大地震の震源は遠い地下深部にあります。地表の活断層は、ナマズに例えれば尾っぽのようなものであり、ナマズを捕えるためには、その先の本体を掴むことこそ本丸です。そして「ちきゅう」は史上初めて震源断層まで掘削できるファシリティであり、日本がその最前線に立とうとしています。
プレート沈み込み帯の巨大地震は、プレート境界でスロー地震がうごめく状況で、ある瞬間に巨大地震が誘発され、アスペリティが大きくすべって発生します。そして通常は特定のマグニチュードの地震が繰り返されますが、ごく稀に超巨大地震に発展する場合もあります。なぜこのような現象が起きるのでしょう?震源にはどんな物質がどんな状態にあるのでしょう?巨大地震発生シナリオの一般性と地域性を知るために世界の沈み込み帯で掘削計画が進行中です。

白亜紀末の大量絶滅を引き起こした巨大天体衝突
‐恐竜はなぜ滅んだのか?-

後藤 和久
東北大学災害科学国際研究所

今から約6600万年前の白亜紀末に、恐竜をはじめとする当時の生物が大量絶滅しました。大量絶滅は、巨大天体が地球に衝突し環境が激変したことが原因だったと考えられています。衝突クレーターは、メキシコのユカタン半島で1990年代に確認されましたが、どの程度の規模の衝突だったのか、どのような環境変動が起きたのかはまだ十分に解明されていません。現在、このクレーターの掘削計画が進行中で、様々な新発見が得られつつあります。講演では、こうした最新成果を踏まえながら、白亜紀末の大量絶滅の謎に迫りたいと思います。

地震を間近にみる
-南アフリカ金鉱山での地震観測と断層掘削-

矢部 康男
東北大学大学院理学研究科

南アフリカでは、最大で深さ約4㎞において金の採掘を行っています。採掘跡の空洞は、岩盤の重みで閉塞し、その際に、最大でマグニチュード(M)3程度の地震が発生します。地震は、坑道のすぐ近くで起きるので、100m程度という短いボーリングで震源断層に到達することができます。このため、南アフリカ金鉱山は、地震発生を間近で観測できる世界的に貴重な実験場として世界中の研究者の注目を集めています。25年にわたる金鉱山での地震観測実績がある日本の研究グループは、この分野で世界をリードしています。本講演では、極微小地震観測と断層掘削の成果に基づいて、M2.2の地震がどのようにして発生したのかを紹介します。また、欧米の研究者も参加して現在進行中の、M5.5、M3.5、M2.8の地震の震源断層掘削計画も紹介します。