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プレスリリース

2019年 3月18日
国立研究開発法人海洋研究開発機構

国際深海科学掘削計画(IODP)第382次研究航海の開始について
~南極における氷山流路の歴史を探る~

国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)(※1)の一環として、「Iceberg Alley and Subantarctic Ice and Ocean Dynamics(氷山流路から探る南極の氷圏と海洋の変動史)」(別紙参照)を実施するため、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号(※2)の研究航海が3月20日から開始されます。 本研究航海では、南極域における長期の気候変動史、および、南極氷床の変遷とそれに伴う大気海洋循環変動の関係を解明することを目的として、南極半島北東冲(スコシア海)の6地点での掘削を行います(別紙図1)。これにより、南極氷床が大気二酸化炭素濃度の変化に対してどのように応答したのか、南極氷床の変動が海水準にどのように影響を与えたのかを明らかにします。本掘削計画は、後期新第三紀までの深度600m以上の堆積物コアを掘削する本海域における初の深部掘削です。

この研究航海には日本、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、ブラジル、中国、インド、韓国から計28名の研究者が乗船し、うち日本からは3名が参加予定です。

※1 国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)

平成25年(2013年)10月から開始された多国間科学研究協力プロジェクト。日本(地球深部探査船「ちきゅう」)、アメリカ(ジョイデス・レゾリューション号)、ヨーロッパ(特定任務掘削船)がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を推進する。

※2 ジョイデス・レゾリューション号
図1
JOIDES Resolution ©IODP

IODPの科学掘削に米国が提供する掘削船。日本が提供する地球深部探査船「ちきゅう」と比べて浅部の掘削を多数行う役割を担う。

別紙

氷山流路から探る南極の氷圏と海洋の変動史
Iceberg Alley and Subantarctic Ice and Ocean Dynamics

1.日程(現地時間)

第382次研究航海 

2019年3月20日
研究航海開始日(首席研究者が乗船)
3月21日
日本からの研究者がチリのプンタアレナスにて乗船
数日の準備の後出港
南米大陸南端冲および南極半島北東冲において掘削
5月20日
チリのプンタアレナスに入港

なお、航海準備状況、気象条件や調査の進捗状況等によって変更の場合があります。

2. 日本から参加する研究者(氏名50音順)

氏名 所属/役職 乗船中の担当専門分野
飯塚 睦 北海道大学/大学院生(修士課程) 堆積学
加藤 悠爾 名古屋大学/博士研究員 微古生物学(珪藻)
関 宰 北海道大学/准教授 有機地球化学

3.研究の背景・目的

南極氷床が全て融解すると、海水準が約60m上昇すると言われています。そのため、気候変動に対して南極氷床がどのように応答するのかを理解することは、地球温暖化による海水準の変化を予測する上でとても重要です。過去において、どのような気候状態で、どの程度南極氷床が変化してきたのかを調べることで、その知見を得ることができますが、過去の南極氷床の変動は、よくわかっていません。

そこで本研究航海では、南極氷床から分離した大量の氷山が暖かい海域へと移動する経路(「アイスバーグ・アレー」と呼ばれています)で掘削を行います。本掘削で得られる深海堆積物を調査し、南極氷床の変動史を復元することで、CO₂変動(つまり地球表層の温度変化)に対して南極氷床がどのように応答していたのか、また、南極氷床変動(つまり氷床の融解や成長)が海水準にどの程度影響を与えていたのかを明らかにしていきます。 過去の南極氷床の変動は、堆積物中に含まれている氷山やプランクトン起源の物質を分析することで明らかにできます。また、南極周極流(※1)周辺の海氷分布や、湧昇流(※2)や海流といった海洋構造、底層水(※3)の生成、ダスト(大気中のほこり)の運搬量など、さまざまな現象・物質の変動も復元し、海洋と大気の相互作用を明らかにすることで、炭素循環のメカニズムにも迫ります。特に、本掘削航海で得られる海底コアと既知の南極氷床アイスコアのダスト記録の対比を行うことによって、南半球の偏西風の変動を詳細に復元できることが期待されます。さらに、これまでほとんど得られていない80万年前以前のダスト記録は、気候システムにおいてダストがどのような役割を担っているのかを理解するための大きな手がかりとなります。

※1 南極周極流(Antarctic Circumpolar Current): 南極大陸の周りを西から東に向かって一周する海流(環流)のこと。南極環流とも呼ばれる。これが存在することによって、低緯度域の暖流が南極大陸周辺に流れ込めないため,南極大陸周辺の水温・気温が低く保たれている。

※2 湧昇流: 海水が深層から表層に湧き上がる現象、またその流れのこと。南極海においては海氷の形成に伴い重い塩水が表層から深層に沈み込む際に、深層の海水が表層へと入れ替わるように上昇してくることで発生する。

※3 底層水: 一般的には水深4000m以深の海底に接する部分に存在する水のこと。南極沿岸を起源として三大洋へと流れ込み、熱や様々な物質を運んでいる。

図1

図1 本研究航海の掘削サイトの位置

表1 本研究航海の掘削サイト・孔の一覧(掘削予定順)

サイト・孔名 水深 目標掘削深度
SFSD-03A 780m 300m
SFSD-02A 830m 120m
SCO-11A 3,140m 620m
SCO-13A 3,255m 806m
SCO-14A 3,833m 592m
SCO-17A 3,253m 732m

(航海準備状況、気象条件や調査の進捗状況等によって変更する場合があります。)

*図1はIODPウェブサイトより引用したものを改変
IODP JRSO・Expeditions・Iceberg Alley and Subantarctic Ice and Ocean Dynamics
http://iodp.tamu.edu/scienceops/expeditions/iceberg_alley_paleoceanography.html
【参考】IODP Copyright Statement
http://iodp.tamu.edu/about/copyright.html

国立研究開発法人海洋研究開発機構
(IODP及び本航海の科学計画について)
地球深部探査センター 科学支援部長 江口 暢久 
(報道担当)
広報部 報道課長 野口 剛
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