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プレスリリース

2019年 12月 25日
国立研究開発法人海洋研究開発機構

国際深海科学掘削計画(IODP)第378次研究航海の開始について
~南太平洋高緯度域における古第三紀の気候記録復元~

国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)(※1)の一環として、「南太平洋高緯度域における古第三紀の気候記録復元」(別紙参照)を実施するため、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号(※2)の研究航海が2020年1月3日から開始されます。

当該航海では、南太平洋高緯度域の新生代における古気候および古海洋変動を明らかにすることを目的として、ニュージーランド沖に始まり、東方へ移動しながら南緯50度線に沿った5地点において海底堆積物の掘削を行います。特に、気候が非常に温暖であった古第三紀の暁新世~始新世(5600万年前~3400万年前)の南半球高緯度域の海底堆積物が初めて連続的に掘削採取され、温室地球における海洋-大気循環の詳細が解明されることが期待されます。

この研究航海には日本、アメリカ、ブラジル、ヨーロッパ、中国、インド、韓国、オーストラリアから計30名の研究者が乗船し、うち日本からは3名が参加予定です。

※1 国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)

平成25年(2013年)10月から開始された多国間科学研究協力プロジェクト。日本(地球深部探査船「ちきゅう」)、アメリカ(ジョイデス・レゾリューション号)、ヨーロッパ(特定任務掘削船)がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を推進する。

※2 ジョイデス・レゾリューション号
ジョイデス・レゾリューション号
JOIDES Resolution ©IODP

IODPの科学掘削に米国が提供する掘削船。日本が提供する地球深部探査船「ちきゅう」と比べて浅部の掘削を多数行う役割を担う。

別紙

南太平洋高緯度域における古第三紀の気候記録復元
South Pacific Paleogene Climate

1.日程(現地時間)

第378次研究航海

2020年1月3日
研究航海開始(首席研究者がフィジー共和国、ラウトカにて乗船)
1月4日
日本からの研究者がフィジー共和国、ラウトカにて乗船
(数日の準備の後出港)
南太平洋において掘削
2020年3月4日
フランス領ポリネシア タヒチ島、パペーテに入港

なお、航海準備状況、気象条件や調査の進捗状況等によって変更の場合があります。

2.日本から参加する研究者(氏名50音順)

氏名 所属/役職 担当専門分野
浦本 豪一郎 高知大学海洋コア総合研究センター/特任助教 堆積学
田中 えりか 東京大学大学院工学系研究科/博士課程 堆積学
安川 和孝 東京大学大学院工学系研究科エネルギー・資源フロンティアセンター/講師 堆積学

3.研究の背景・目的

これまでの海底科学掘削などの進展によって、古第三紀の気候は現在と大きく異なり、北極や南極にも氷床が存在しない、極めて温暖な時代であったことがわかっています。また、こうした温室地球の特徴として、極域と赤道域の気温差が現在の半分程度であったり、深層水の温度が現在より10℃以上も高かったことなども明らかになってきています。このような温度分布となった地球の気候システムを理解する上で、赤道域と極域の間の熱輸送の仕組みを解き明かすことが重要と考えられます。そのためIODPでは、赤道域における第320・321次航海や極域における第379・383次航海などの掘削調査を実施してきました。

世界最大の海洋である太平洋の高緯度域は、赤道域と極域の間における熱輸送のリンクを明らかにし、ひいては両者の気候システムを結びつける上で重要な海域と考えられます。しかしながら、北太平洋では古第三紀に高緯度で形成した堆積物の大半はプレートと共に沈み込んでしまっており、当時の記録を得ることが困難です。その一方で、本航海で対象となる南太平洋の高緯度は“科学掘削の空白地帯”であり、半世紀以上に渡る海底科学掘削の歴史を通じてコア試料が採取されていませんでした。

南緯50度線に沿った海域で掘削を行う本航海では、新生代(約6500万年前から現在に至る)の太平洋における高緯度の地球環境を連続的に記録した海底堆積物を初めて取得できるものと期待されています。これにより、過去の温室地球における全球的な気候システムを理解するための大きな手掛かりが得られるものと考えられます。

図1

図1 本研究航海の掘削サイトの位置
外洋サイトの丸の色は掘削地点の海洋地殻年代を表す
(黄色:5600万年、オレンジ:4000万年)

表1 本研究航海の掘削サイト・孔の一覧(掘削順)

サイト・孔名 水深 目標掘削深度 作業予定日数
DSDP277 1,214m 670m 10日
SP-1B 4,971m 247m 8日
SP-2B 5,075m 147m 4日
SP-13A 4,772m 164m 5日
SP-14A 4,658m 181m 5日

(航海準備状況、気象条件や調査の進捗状況等によって掘削サイトを変更する場合があります。)

*図1はIODPウェブサイトより引用したものを改変
IODP JRSO・Expeditions・South Pacific Paleogene Climate
http://iodp.tamu.edu/scienceops/expeditions/south_pacific_paleogene_climate.html
【参考】IODP Copyright Statement
http://iodp.tamu.edu/about/copyright.html

国立研究開発法人海洋研究開発機構
(IODP及び本航海の科学計画について)
研究プラットフォーム運用開発部門 運用部 調査役 斎藤 実篤
(報道担当)
海洋科学技術戦略部 広報課
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