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  3. 国際深海科学掘削計画(IODP)第392次研究航海の開始について ~ノルウェー中部沖の大陸縁辺域火成活動~
2022年 8月 2日
国立研究開発法人海洋研究開発機構

国際深海科学掘削計画(IODP)第396次研究航海の開始について
~ノルウェー中部沖の大陸縁辺域火成活動~

国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)(※1)の一環として、「ノルウェー中部沖の大陸縁辺域火成活動」(別紙参照)についての調査を実施するため、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号(※2)による研究航海が2021年8月6日から開始されます。

当該航海では、北東大西洋における大陸分裂時のマグマ活動と気候イベントとの関連性を探ることを目的として、ノルウェー中部沖9地点において海底堆積物の掘削を行います。地球史における大規模なイベントである大陸分裂について未だ解明されていない、大陸分裂時に起きる並外れたマグマ活動の特性、マグマ活動が起きる原因、そして気候への影響について理解が深まることが期待されます。

この研究航海には、陸上での試料分析等に参加する者も含め、アイルランド、インド、英国、オランダ、デンマーク、中国、ドイツ、日本、ノルウェー、フランス、米国から計28名の研究者が参加し、うち日本からは2名が参加予定(乗船は1名)です。

※1
国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)
平成25年(2013年)10月から開始された多国間科学研究共同プログラム。日本(地球深部探査船「ちきゅう」)、米国(ジョイデス・レゾリューション号)、ヨーロッパ(特定任務掘削船)がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を推進する。
※2
ジョイデス・レゾリューション号
IODPの科学掘削に米国が提供する掘削船。日本が提供する地球深部探査船「ちきゅう」と比べて浅部の掘削を多数行う役割を担う。
JOIDES Resolution©IODP

別紙

ノルウェー中部沖の大陸縁辺域火成活動
Mid-Norwegian Continental Margin Magmatism

1.日程(現地時間)

 第396次研究航海

2022年08月 6日
研究航海開始(アイスランド・レイキャビクから出港)
2022年10月 6日
研究航海終了(ノルウェー・クリスチャンセンに入港)

※航海日程は、新型コロナウィルス感染症の影響、航海準備状況、気象条件や調査の進捗状況等によって変更となる場合があります。

2.日本から参加する研究者
氏名 所属/役職 担当専門分野
Chatterjee, Sayantani * 新潟大学理学部/特任助教 無機地球化学
中岡 礼奈 神戸大学海洋底探査センター/助教 物理特性計測

*乗船予定

3.研究の目的と実施内容

IODP 第396次研究航海は、北東大西洋で過去に起きた大陸分裂時の並外れた火成活動の性質、その原因、気候への影響の理解を目的とした海洋科学掘削プロジェクトです。ノルウェー中部沖の大陸縁辺域に沿った9つの主要なサイトでの火山および堆積層の掘削を実施します。過去にここで起きた短期間の大規模なマグマ活動については、いくつかのモデルが存在しますが、詳細はわかっていません。また、その大量のマグマ活動は、古第三紀初期の暁新世〜始新世初期(およそ5600〜5100万年前)の地球温暖化の推進力となったという仮説が提唱されていますが、火成活動の時期は十分に明らかになっていません。1985年に国際深海掘削計画(ODP; IODPの前身の海洋科学掘削プログラム)の一環として実施された第104次研究航海では、同海域の掘削を行い、その後35年におよぶ研究活動を行ってきましたが、未だこの現象について明らかにされていません。今回は、前回の航海以降に実施された反射法地震波探査による海底下の詳細な構造に関するデータも参考にし、より包括的な解明を目指します。本航海では、マントルの融解条件、火成活動のタイミング、マグマの放出量の変遷、噴火環境などの火成活動の特性を明らかにするとともに、気候イベントとの同時性について詳しい手がかりが得られることが期待されます。

本航海では、次の5つの主要目的に取り組みます。

  • マントルの溶融条件
    マグマの起源となったマントルの融解条件(温度、圧力、部分溶融など)を決定します。
  • 溶岩噴出量の時空間変動
    溶岩噴出量の空間的および時間的な変動を復元することにより、火成活動を伴う大陸分裂域の形成に関する地球力学的モデルを検証します。
  • 溶岩流の噴出環境
    大規模な溶岩流の噴出環境の変化(陸上噴出/海底噴出)を復元することにより、大陸分裂から海底拡大へ至る過程において、マグマの生成と地殻の熱的動態がどのように変遷したのかを検証します。
  • 大規模火山活動と気候変動イベントとの関連
    大規模な火山活動と気候変動イベントとの関係を明らかにするために、火山活動様式の時間変化と堆積物に記録された古気候指標を比較します。
  • 北大西洋の拡大初期の火山活動と環境への影響
    北大西洋の拡大初期において、2つのプロセス(マグマから脱ガスした火山ガスと、海底熱水噴出孔から放出されるガス)のどちらが環境改変への寄与が大きかったのかを明らかにします。
  • さらに本航海では、以下の2つの課題にも取り組みます。
  • 前期始新世の温暖期(およそ5300〜5100万年前)と大西洋への淡水の流入過程
  • 玄武岩の大規模岩体における炭素隔離貯留について
本研究航海の掘削地点

図 本研究航海の掘削地点及び入出港地
赤丸は掘削地点、紫の四角は入出港地(アイスランドのレイキャビク、ノルウェーのクリスチャンセン)を表す。

表 本研究航海の掘削予定地点の一覧(作業予定日数は切り上げ)
サイト名 水深 目標掘削深度 作業予定日数
VMVM-20A 2077m 200m 5日
VMVM-23A 2137m 200m 4日
VMVM-31A 1707m 200m 4日
VMVM-40B 1696m 400m 4日
VMVM-55B 2186m 800m 12日
VMVM-61A 1200m 240m 4日
VMVM-07A 1206m 320m 4日
VMVM-80A 2864m 310m 5日
VMVM-09A 3156m 550m 7日

(航海準備状況、気象条件や調査の進捗状況等によって掘削サイトを変更する場合があります。)

*図はIODPウェブサイトより引用したものを改変

国立研究開発法人海洋研究開発機構
(IODP及び本航海の科学計画について)
研究プラットフォーム運用開発部門 運用部 次長  斎藤 実篤
(報道担当)
海洋科学技術戦略部 報道室
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