プレスリリース
国立大学法人北海道大学
国立研究開発法人海洋研究開発機構
グリーンランドで夏に温暖化が減速している謎を解明
~北極海の海氷減少の減速にも影響~
北海道大学大学院地球環境科学研究院の松村伸治学術研究員らのグループは、近年、夏季のグリーンランドで温暖化が減速しているメカニズムを解明しました。グリーンランドの氷床は、温室効果ガスの増加に伴った温暖化によって長期的に見ると融解が進んでいます。ところが、2012年にグリーンランドの気温上昇が過去最高に達してから、最近10年間では低温傾向で氷床融解が減速しつつあると報告されており、その原因はよくわかっていませんでした。
研究グループは大気海洋の観測データの解析を行い、熱帯太平洋からグリーンランドへのテレコネクションが温暖化減速の要因であることを見出しました。気象学的に夏季は熱帯上空が東風であるため、熱帯から北極域へのテレコネクションは発達できません。しかし、2000年代以降、赤道太平洋で発生する従来型のエルニーニョ/ラニーニャ現象よりも亜熱帯太平洋で発生するエルニーニョ/ラニーニャもどき現象が頻発することで、海面水温と降水帯の変化が亜熱帯海域まで北上して東風領域を脱するため、テレコネクションを生み出すことが可能となりました。実際に簡易大気モデルで降水帯の北上を反映させると、グリーンランドへのテレコネクションが再現できました。最近10年間ではエルニーニョもどきが頻発しており、亜熱帯からのテレコネクションがグリーンランド上空で雲を発生しやすい低気圧性循環を強め地上に低温をもたらしています。この低気圧性循環はさらに高緯度の北極海上空にまで及んでおり、最近の海氷減少の減速にも影響している可能性があります。
今後エルニーニョと反対のラニーニャもどきが頻発するとグリーンランドに高温をもたらし、人為起源による温暖化との相乗効果でこれまで以上に温暖化と氷床融解が加速すると予期されます。
なお本研究成果は、2021年12月16日(木)午後7時公開のCommunications Earth & Environment誌に掲載されました。
詳細は北海道大学のサイトをご覧ください。
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- 海洋科学技術戦略部 報道室