東京大学大気海洋研究所の藤井賢彦教授とベルナルド・ローレンス・パトリック・カセス特任研究員らによる研究グループは、国内水産業において重要な貝類養殖種であるマガキの養殖が盛んな国内2地点(岡山県備前市日生海域と宮城県南三陸町志津川湾)の河口部や沖合、藻場、養殖場の付近など環境が異なる複数箇所において、地元の漁業協同組合などと協働し、実際のマガキ養殖域での海洋酸性化の進行状況を連続観測しました。また、本研究グループが自ら開発した数値モデルを上記の観測点に適用し、マガキ養殖の海洋酸性化・地球温暖化影響の将来予測を行いました。その結果、場所や時期によっては海洋酸性化がマガキに影響を及ぼす可能性のある水準に達していることが分かりました。また、今世紀末までに日本沿岸のマガキ養殖は海洋酸性化と地球温暖化に伴う水温上昇による深刻な複合影響を受ける可能性が予測されました。
本研究の結果は、今後、マガキ養殖に対する深刻な影響を回避するためには、人為起源CO2の大幅削減を世界中で行っていくことに加えて、河川からマガキ養殖域への淡水や有機物の流入を抑制する取り組みを地域で行うことも有効であることを示唆しており、地域の実情に応じた対策を講じる上で必要な科学的指針を具体的に提示するものと期待されます。
この研究でJAMSTECは、センサーによるpHと塩分の連続観測データを校正用するために定期的に採取した海水試料の炭酸系(溶存無機炭素・アルカリ度)と塩分の高精度分析を担当しました。
詳細は 東京大学のサイトをご覧ください。