ミトコンドリア※1 は、祖先真核生物の細胞内に共生した細菌(α(アルファ)プロテオバクテリア※2 )から進化した細胞内小器官です。独自のゲノム(ミトコンドリアゲノム)を持っており、これはαプロテオバクテリア共生体のゲノムが縮退した結果です。真核生物の多くのグループではPOPと呼ばれるDNA複製酵素(DNAポリメラーゼ)がミトコンドリアゲノムの複製をしています。
本研究では、真核生物の多様な系統からPOPを含めて既知タイプとは異なる10種類の新奇DNAポリメラーゼを発見しました。これらについて、それぞれの進化的起源と細胞内で機能する場所を詳細に解析した結果、その中の一つ「rdxPolA」がミトコンドリアゲノムの複製を行っており、αプロテオバクテリア共生体が持っていたDNAポリメラーゼの直系の子孫であると判明しました。rdxPolAは祖先的なミトコンドリアゲノムを複製すると考えられ、原始真核生物から、現在地球上に棲息する真核生物に至るまでの、ミトコンドリアゲノム用DNAポリメラーゼの進化シナリオが提案されました。
本研究成果は、ミトコンドリアのDNA複製機構がどのように進化してきたか、原始真核生物細胞内でミトコンドリアがどのように確立したのかを解明する上で重要な知見を提供します。
ミトコンドリア
真核生物が持つ細胞小器官。酸素を用いて細胞のエネルギーであるATPを産生する。
αプロテオバクテリア
細菌(バクテリア)の一群。ミトコンドリアの祖先となった細菌は、このグループに属しているか、極めて進化的に近縁であると考えられている。
緑色蛍光タンパク質(Green fluorescent protein;GFP)
GFPは蛍光するため、実験標的となるタンパク質に付加することで、実験標的タンパク質が細胞内のどこに存在するかを可視化できる。
詳細は 筑波大学のサイトをご覧ください。