国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)※1 の第403次研究航海として、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号※2 による「フラム海峡東部の古気候・古海洋変動を探る」(別紙参照)が、2024年6月4日から開始されます。
本研究航海は、グリーンランドとスヴァールバル諸島の間に位置するフラム海峡で実施されます。フラム海峡は、北極海と世界の海を結ぶ唯一の深い海峡として知られており、北極圏の氷床・海氷や海洋循環の影響を受けた堆積層が残されています。この海域での掘削により、過去数百万年間の気候変動に対する氷床・海氷や海洋循環の応答と相互作用を解明し、近未来の気候や氷床・海氷変動に対する将来予測モデルの高精度化につなげることを目指します。
乗船研究者として、イタリア、インド、英国、オーストラリア、スペイン、中国、ドイツ、日本、ノルウェー、米国から計25名が参加し、うち日本からは3名が乗船予定です。
なお、本研究航海はジョイデス・レゾリューション号によって実施される現行IODPの最終航海となります。
国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)
平成25年(2013年)10月から開始された多国間科学研究共同プログラム。日本(地球深部探査船「ちきゅう」)、米国(ジョイデス・レゾリューション号)、ヨーロッパ(特定任務掘削船)がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏などの解明を目的とした研究を推進する。現行のIODPは2024年9月で終了予定。
ジョイデス・レゾリューション号
IODPの科学掘削に米国が提供する掘削船。
JOIDES Resolution ©IODP
氏名 | 所属/役職 | 担当専門分野 |
飯塚 睦 | 産業技術総合研究所/研究員 | 有機地球化学 |
酒井 雄飛 | 京都大学/博士研究員 | 物性科学・検層 |
菅沼 悠介 | 国立極地研究所/教授 | 堆積学 |
IODP第403次研究航海は、全球的な気候変動に対して北極圏の氷床・海氷や海洋循環がどのように応答し、どのように相互作用してきたのかを解明することを目的とし、グリーンランドとスヴァールバル諸島に挟まれたフラム海峡の6地点で掘削を計画しています。
現在、大気中CO2濃度の上昇に伴う地球温暖化が進行しており、近い将来に南極・北極圏の氷床や海氷が融解することで、海洋循環が変化し、地球環境の激変を引き起こすことが懸念されています。しかし、地球温暖化に対する雪氷圏や海洋循環の応答や相互作用には、未だ多くの謎が残されています。
フラム海峡は、北極海と世界の海を結ぶ唯一の深い海峡として知られており、北極圏の氷床・海氷や海洋循環の影響を受けた堆積層が残されています。第403次研究航海では、フラム海峡東部の中央海嶺から大陸棚周縁にかけての6つの掘削地点で掘削と検層を行います。この掘削・検層で得られる試料やデータの解析によって、過去数百万年間にわたる高解像度かつ連続的な環境変動を復元し、気候変動に対する氷床・海氷や海洋循環の応答とその相互作用を解明します。このような研究は、過去の北極域の環境変動を明らかにするだけでなく、近未来の地球温暖化に対する気候予測の高精度化にも貢献します。さらに、海洋底拡大および氷床の成長・融解に伴う地殻応力変化の解析による地殻変形のメカニズムとその影響の解明や、環境変化と微生物種の関連性等の理解にも貢献することが期待されます。
サイト名 | 水深(m) | 目標掘削深度(m) | 作業予定日数 |
BED-01A | 1,647 | 397 | 5 |
BED-02B | 1,665 | 370 | 5 |
ISD-01C | 1,325 | 258 | 6 |
VRE-03A | 1,201 | 738 | 10 |
VRW-03A | 1,681 | 696 | 11 |
SVR-03A | 1,581 | 616 | 9 |
※航海準備状況、気象条件や調査の進捗状況等によって掘削地点を変更する場合があります。
※図はIODPウェブサイトより引用したものを一部改変
本研究のお問い合わせ先