海洋プラスチック汚染の源の多く(8割程度)は、街に流出した生活ごみといわれています(Morales-Caselles et al., 2022)。特に河川が近くにあるような海岸では、多くの生活ごみが海岸に漂着するという事実も存在します。ごみ量の削減に向けた対策を策定する上で、汚染源である街中のどこが、どの程度、どのようなごみで汚染されているかを可視化することが非常に重要です。
鹿児島大学大学院理工学研究科の加古真一郎教授、海洋研究開発機構付加価値情報創生部門の松岡大祐グループリーダー、九州大学応用力学研究所の磯辺篤彦教授らは、街中のごみ量を可視化するシステムを開発しました。本成果は、6月28日にエルゼビア社の国際学術誌「Waste Management」にオンライン掲載されました。
本研究で開発したシステムは、街中のごみ量の可視化をスマートフォンアプリと深層学習の組み合わせで実現します。これにより、汚染の源となっている品目や場所を特定し、優先順位を付した汚染対策の立案に寄与することが可能になります。また、これまでは街で清掃活動を実施しても、それが街の継続的な美化にどの程度寄与しているかを知る術がありませんでしたが、本技術により特定の区域を定期的に観測するシステムを確立すれば、清掃がその後のごみ量にどのように寄与しているかを可視化することができます。同様に、ある特定品目の排出抑制対策などを実施した場合、本技術による定期的な観測結果に基づいてその効果を地図上で可視化し、社会に向けて公開することも可能になります。
これらの実現の鍵となるのが市民科学です。一般の方々がスマホアプリを通じてデータ収集に参加することで、我々のシステムが各地域に特化したものに発展していくことが期待されます。
本研究で使用したスマートフォンアプリ、ごみ拾いSNS「ピリカ」は、世界132カ国で利用され、累計3.6億個のごみが拾われています(2024年7月現在)。このアプリは、株式会社ピリカのウェブサイト(https://sns.pirika.org)からダウンロードすることが可能です。
この論文の成果は、以前プレスリリースした「参加型プラスチックごみ画像収集プロジェクト」に関連したものです。
この研究プロジェクトは、環境省・(独)環境再生保全機構の環境研究総合推進費(JPMEERF20231004)、JSPS科研費 JP23H03527, JP23K28217、国際協力機構/科学技術振興機構のSATREPS(JPMJSA1901)からの助成を受けました。
詳細は 鹿児島大学のサイトをご覧ください。