プレートテクトニクスによって莫大な量の炭素が地球内部に持ち込まれています。国士舘大学の大柳良介講師(海洋研究開発機構外来研究員)と東北大学大学院環境科学研究科の岡本敦教授は、流体−鉱物反応に関する最先端の熱力学計算を用いて、東北日本と西南日本の沈み込み帯を対象に、沈み込む堆積物から発生する流体の化学組成と、マントルとの反応を調べました。
その結果、冷たい沈み込み帯である東北日本では炭素を含む流体はほとんど発生しないのに対して、暖かい沈み込み帯の西南日本では炭素が溶け込んだ流体が大量に放出され、プレート境界の上盤マントルと反応し、炭酸塩鉱物と滑石からなる層が形成することを見出しました。炭酸塩鉱物と滑石の層は深さ40 kmから急激に増え始め、深くなるほど厚い層になっていきます。滑石は、摩擦係数が非常に小さく、安定すべりを起こす鉱物として知られています。本研究で厚い滑石層の形成し始める深度が、西南日本で観測される地震の下限域と一致していることが示され、炭素の大循環がスロー地震を含めた沈み込み境界の地震活動領域に大きな影響を与えることを示唆しています。今後、地球深部炭素循環という化学プロセスと地震発生の物理プロセスをつなぐ新たな研究が期待されます。
本成果は2024年8月26日、英国Springer Nature社が発行する科学誌Nature Communicationsに掲載されました。
詳細は 東北大学のサイトをご覧ください。