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二酸化炭素変換反応における電極材料性能・要因の予測 -新たな触媒材料群の簡便な設計指針を機械学習により提示-

2024.09.13
東京工業大学
理化学研究所
海洋研究開発機構

東京工業大学 物質理工学院 材料系の山口晃助教、宮内雅浩教授、An Niza El Aisnada(アン・ニザ・エル・アイスナダ)大学院生(博士後期課程)、同 地球生命研究所(ELSI)の中村龍平教授(理化学研究所チームリーダー)、海洋研究開発機構の北台紀夫主任研究員らの研究チームは、多様な複合金属硫化物※1 を用いた二酸化炭素の電解還元※2 において、重回帰分析※3 や分類といった機械学習の手法を用いて従来よりも簡便な触媒設計の指針を見出した。

温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を削減・利用する技術の開発が望まれる中、電解還元によりCO2を他の物質に変換する手法に注目が集まっている。電解還元の際の電極にどの材料を用いるか、という点は変換効率などに関わる重要な研究課題であり、長年にわたり材料検討が進められてきた。中でも、金属硫化物はスケーリング則※4 からの脱却という観点から二酸化炭素変換電極として期待されているが、明確な設計指針は確立されておらず、より簡便なパラメータに基づく電極設計の指針が求められていた。

今回の研究では、18種類の金属硫化物を電極として用いてCO2の電解還元反応を行い、電流効率を比較するとともに、一酸化炭素(CO)生成の選択性を決めるパラメータ解明のために重回帰分析を実施した。結果として、複合金属硫化物を用いた二酸化炭素変換では、一酸化炭素を得る上では構成元素よりも結晶系※5 に着目した触媒設計が必要であることが示唆された。本研究成果は、金属硫化物という自然界に普遍的に存在する材料を用いた二酸化炭素変換触媒の開発の一助となることが期待される。

本研究成果は、9月13日(現地時間)付の「Materials Science & Engineering R」に掲載されました。

図1

図 データベース上に登録されている204個の複合金属硫化物に対する、CO生成効率の予測。(b)、(c)はそれぞれ結晶系、構成元素によって分類したもの。

用語解説
※1

複合金属硫化物
硫黄(S)と、金属元素とが化合した物質の中でも、複数の金属を含むもの。

※2

電解還元
電解質の水溶液に一対の電極を入れて電流を流し、電極面に化学変化を起こさせる電気分解(電解)において、マイナス極(陰極)側では還元反応が起こる。この還元力を利用して物質合成を行う方法。

※3

回帰分析
ある変数の動きが、ほかの変数の動きとどのような関係にあるかを推定するための統計学的手法。

※4

スケーリング則
ある量のスケール(尺度)を大きくしたり小さくしたりする際に起こる、ほかの量の変化に対する一定の法則。

※5

結晶系
物質が持つ結晶構造(周期的な構造)を、対称操作により分類したもの。全32種類に分類される。

詳細は 東京工業大学のサイトをご覧ください。

国立研究開発法人海洋研究開発機構
海洋科学技術戦略部 報道室