北海道大学大学院水産科学院修士課程2年(研究当時)の濱尾優介氏、同大学院水産科学研究院の松野孝平助教、笠井亮秀教授及び海洋研究開発機構地球環境部門むつ研究所の脇田昌英副主任研究員らの研究グループは、北海道道南に位置する函館湾において、植物プランクトン組成の季節変化メカニズムとカレニア赤潮発生の長期化を明らかにしました。
函館湾は、津軽海峡に面し、恒常的に津軽暖流と沿岸河川の影響を受けている海域です。近年、津軽暖流の流量増加が報告されおり、それに伴う海洋環境の変化が観測されつつあります。環境の変化は、そこに生息する生物の組成を変えます。植物プランクトンは好適環境が種によって異なるため、海洋環境が変化するとすぐに種組成も変化します。また、函館湾では、2015年から有害渦鞭毛藻類カレニアミキモトイによる赤潮がほぼ毎年秋に発生しています。しかし、函館湾における植物プランクトン全体の変化と海洋環境との関係については十分に理解されていませんでした。そこで研究グループは、函館湾七重浜において2年間にわたり、海洋環境と植物プランクトン組成を毎週調査しました。その結果、植物プランクトン組成の長期的な季節変化は水温によって説明でき、1-2週間程度の短期的な変化は、大気由来の影響(降雨、日射、風)で説明できることを解明しました。さらに、2021年8月末から2022年1月まで、高いアンモニア塩と曇りが続いたことで、カレニアミキモトイ赤潮が長期化していたことを明らかにしました。
本研究の成果は、海洋環境による植物プランクトン組成変化と赤潮発生のメカニズムを解明しているため、今後の気候変動に対する海洋生態系の応答と赤潮発生予測構築に貢献する知見となります。
なお本研究成果は、2024年8月27日(火)公開のRegional Studies in Marine Science誌にオンライン掲載されました。
詳細は 北海道大学のサイトをご覧ください。