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地球深部探査船「ちきゅう」による国際深海科学掘削計画(IODP)第405次研究航海「日本海溝巨大地震・津波発生過程の時空間変化の追跡(JTRACK)」の終了について

2024.12.20
国立研究開発法人海洋研究開発機構

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 大和 裕幸)は、国際深海科学掘削計画(IODP:International Ocean Discovery Program)※1 の最終航海として実施していたIODP第405次研究航海「日本海溝巨大地震・津波発生過程の時空間変化の追跡(JTRACK: Tracking Tsunamigenic Slip Across the Japan Trench)」について、本研究航海の目的を達成し、12月20日(金)に終了しましたのでお知らせします。なお、本航海により、巨大地震発生後の震源断層の応力蓄積・強度回復過程の解明を進めるためのデータ及びサンプルの取得、水理構造解明に向けた長期孔内温度計測システムの設置に成功しました。

  1. 実施内容
     本研究航海は、2011年東北地方太平洋沖地震が発生した日本海溝において、地球深部探査船「ちきゅう」による調査を行うため、2024年9月6日に開始しました(2024年8月29日既報)。JFAST※2 の調査海域に再訪し、大規模なすべりが発生した断層帯周辺の掘削地点C0019(掘削提案地点名JTCT-01A)と沈み込む太平洋プレート上の掘削地点C0026(同JTCT-02A)で掘削を実施し、長期孔内温度計測システムを設置しました(図1)。その後、地球深部探査船「ちきゅう」は12月20日(金)に静岡県清水港(興津埠頭)に入港し本研究航海を終了しました。
  2. 結果概要及び今後の展望
     本研究航海では、断層帯周辺の応力の蓄積状態の時間変化、断層の構造や物性の特徴、地層内の流体が断層周辺の応力状態へ与える影響を解明することを目的に、C0019とC0026の2地点で掘削同時検層※3 とコア試料の採取を実施しました。また、C0019では、長期孔内温度計測システムの設置を実施しました(図2)。
  • 掘削同時検層
     C0019とC0026で実施した掘削同時検層では、高品質なデータの取得により、海底下を構成する岩石の物理的状態をより高精度に計測することが可能となりました。取得したデータにより、地震発生から13年後の断層帯周辺での応力の分布や強度の変化について研究が行われる予定です。また、C0019での掘削において、総ドリルパイプ長7,906mという海洋科学掘削における世界記録を樹立しました。
  • コア試料の採取
     断層帯周辺を掘削したC0019では、高品質なプレート境界断層のコアサンプルを高い回収率で採取することに成功しました。また、プレート境界断層帯を構成する上盤側(陸側プレート)の堆積物から下盤側(太平洋プレート)の玄武岩層に至る一連のコアサンプルを採取できたことで、断層の強度回復・応力蓄積過程に関する研究や断層帯全体の構造などの研究が可能になりました。太平洋プレート上で掘削したC0026では、表層から堆積層底部までのコアサンプルを採取し、沈み込む前の未変形の地質試料から将来の断層形成過程を検討できるようになりました。
  • 長期孔内温度計測システムの設置
     水深約7,000mの大水深における掘削孔への長期孔内温度計測システムの設置に成功しました(写真1)。本システムの設置は、JFASTの掘削孔C0019Dと本航海で掘削した掘削孔C0019Qにて行われ、これにより、温度変化の観測から断層帯周辺の流体の変化を検出し、水理構造を明らかにできると期待されます。

今後、本航海で取得したこれらのデータ・サンプルから断層の強度回復・応力蓄積過程に関する研究をすすめていきます。

用語解説
※1

国際深海科学掘削計画(IODP)
2013年10月から開始された多国間科学研究協力プロジェクト。日本(地球深部探査船「ちきゅう」)、アメリカ(ジョイデス・レゾリューション号)、ヨーロッパ(特定任務掘削船)がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行っている。2024年9月で終了した。

※2

JFAST
東北地方太平洋沖地震発生後、2012年に実施したIODP第343次研究航海「東北地方太平洋沖地震調査掘削(JFAST: Japan Trench Fast Drilling Project)」。

※3

掘削同時検層
ドリルパイプの先端近くに各種物理計測センサーを搭載し、掘削作業と同時に現場での地層物性の計測を行う調査。

図1

図1 調査海域図

図2

図2 掘削作業の工程

写真1

写真1 9月12日、JFAST掘削孔への温度計設置完了時の水中カメラ映像

※資料映像は以下のURLからご覧いただけます。
https://youtu.be/RxM0_G8armY

本研究のお問い合わせ先

国立研究開発法人海洋研究開発機構
(IODP及び本航海について)
研究プラットフォーム運用部門 企画調整部総括グループ

報道担当

海洋科学技術戦略部 報道室