海洋研究開発機構の石川尚人主任研究員と神戸大学内海域環境教育研究センターの奥田昇教授らのグループは、総合地球環境学研究所による共同研究プロジェクトにおいて、生物間の複雑な捕食・被食関係を簡便に示すことができる「統合的栄養位置(iTP)」を推定する手法を河川生態系に適用し、琵琶湖流域の多地点観測調査により、iTPがダイナミックに変動することを明らかにしました。
植物が生産した有機物は食物網を通じて高次捕食者まで転送されますが、iTPは、生物に含まれるアミノ酸の窒素同位体比を分析することで、そこに至る平均的な捕食・被食回数を知ることができ、生態ピラミッドの形状を表す指標として生態系の構造と機能を理解するのに役立ちます(2023年12月6日既報)。これまで、河川と海洋において、iTPは生物多様性と相関することが報告されていましたが、今回、琵琶湖流域の多地点観測調査により、iTPが異なる河川間や季節間で顕著に変動することを明らかにしました(図)。今後、陸域や水域の様々な生態系から知見を集積することで生態系の構造と機能を評価するツールとしてiTPの有用性が高まると期待されます。
本研究成果は、1月3日にProgress in Earth and Planetary Scienceに掲載されました。
図. 琵琶湖流域河川の大型無脊椎動物群集のアミノ酸(グルタミン酸:Gluとフェニルアラニン:Phe)の窒素安定同位体比(δ15N)から統合的栄養位置(integrated Trophic Position: iTP)を推定した。iTPは生態ピラミッドの形状を表す。
詳細は 神戸大学のサイトをご覧ください。