北海道大学大学院理学研究院の川﨑教行准教授、同大学大学院理学院修士課程の宮本悠史氏、同大学総合イノベーション創発機構の坂本直哉准教授、海洋研究開発機構の荒川創太研究員らの研究グループは、宇宙航空研究開発機構の小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」から採取したサンプル中から、約45億6,730万年前に形成した太陽系最古の岩石を発見しました。
これまでの「はやぶさ2」の初期分析により、現在の「リュウグウ」の主要構成物質は低温(約40℃)の水溶液との反応で生成した鉱物であり、約45億6,200万年前に形成されたことが分かっていました。しかし、こうした鉱物はあくまで水溶液との反応によって生成した二次的な物質であり、もともと存在していた原材料物質(リュウグウを形成した最初期の固体物質)の形成年代は不明でした。
本研究では、「リュウグウ」のサンプル中に、初期太陽系の高温領域(約1,000℃以上)で形成された原材料物質である「CAI(カルシウム・アルミニウムに富む包有物)※1」を発見しました。この「CAI」の年代を、北海道大学の同位体顕微鏡(二次イオン質量分析計)によるAl–Mg放射年代測定法※2 で精密に調べた結果、太陽系誕生直後の約45億6,730万年前に形成されたことが判明しました。
今回の発見により、「リュウグウ」が太陽系の誕生直後に形成された高温物質を取り込んでいることが初めて示されました。一方で、「リュウグウ」や同型の隕石(イヴナ型炭素質隕石)から発見されたCAIはとても小さくどれも0.1 mm以下で、他の炭素質隕石に見られる大型(約0.1-10 mm以上)のCAIが存在しないことから、「リュウグウ」は太陽系の遠方で形成された特異な天体である可能性が高いと考えられます。これらの成果は、太陽系の天体がどのように誕生し、進化してきたのかを理解するうえで重要な手がかりとなり、惑星形成理論のさらなる進展が期待されます。
なお、本研究成果は、日本時間2025年7月16日(水)、Communications Earth & Environment誌にオンライン掲載されました。
図. 小惑星「リュウグウ」から見つかった太陽系最古の岩石「CAI」。Al–Mg放射年代測定法により、太陽系誕生直後の約45億6,730万年前に形成されたことが判明。データは電子顕微鏡により取得したMg(赤)―Ca(緑)―Al(青)の合成X線元素マップ。
(©Kawasaki et al. 2025)
CAI(カルシウム・アルミニウムに富む包有物)
小惑星サンプルや隕石に含まれる、カルシウムとアルミニウムに濃集した固体物質。初期太陽系の高温のガスから凝縮した。
Al–Mg放射年代測定法
放射性同位体Al-26が半減期約70万年でMg-26に放射壊変することを利用した年代測定法のこと。初期太陽系で形成した物質の年代を精密に測定することができる。
詳細は 北海道大学のサイトをご覧ください。