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リュウグウに残された“衝撃の痕跡”を再現! ― 実験で迫る原始太陽系小天体の衝突の記憶 ―

2025.08.06
広島大学
国立極地研究所
海洋研究開発機構
京都大学
大阪公立大学

広島大学、国立極地研究所、物質・材料研究機構(NIMS)、海洋研究開発機構高知コア研究所を中心とする研究グループは、小惑星リュウグウ※1 に似た「CIコンドライト※2」という種類の隕石に小惑星同士の衝突を模擬した人工的な衝撃を加える実験を行い、リュウグウの粒子で確認された衝突による特徴を再現することに成功しました。

C型小惑星※3 は、水を含んだ鉱物と炭素を含む岩石でできており、その構成は「CIコンドライト」と呼ばれる珍しい隕石に似ていると考えられています。

本研究では、CIコンドライトに分類される世界的にも貴重な「オルゲイユ隕石」と、南極で発見されたCIコンドライトに似た隕石「Yamato 980115」を使って、隕石が衝突を受けたときにどのような変化が起こるのかを調べました。その結果、約4ギガパスカル(GPa)※4 以下の弱い衝撃では、岩石にほとんど変化が起こらないことがわかりました。これは、リュウグウの多くの粒子が比較的弱い衝撃しか受けていないという、これまでの説を裏付ける結果です。

一方、4 GPaを超えると、水を含む鉱物や炭素を含む物質が熱によって水分やガスを放出し、ひび割れや破砕が進みます。さらに10 GPaを超えると、岩石の一部が溶けて、泡のような穴をもつガラス状の物質ができます。これは、水や二酸化炭素が衝撃の熱で抜け出した痕跡です。リュウグウの粒子の中には、ひび割れや小さな空隙を持つガラス状の物質も見つかっていますが、その割合はごくわずかです。()

今回の実験結果から、リュウグウの表面を覆う砂や小石(レゴリス)の大部分は、強い衝撃ではなく比較的弱い衝撃で壊れた岩石が集まってできた「がれきの山」であるという考えが、より確かなものとなりました。

なお、本研究成果は、2025年7月26日公開のEarth and Planetary Science Letters誌に掲載されました。

図1

図. リュウグウ粒子と衝撃実験後の隕石試料に見られる衝突の痕跡(電子顕微鏡写真)
この図は、リュウグウから回収された粒子と、人工的に衝撃を加えた隕石試料を電子顕微鏡で観察した写真です。どちらの試料にも、衝突によって生じた割れ目や、ガスが抜けてできた泡のような構造など、衝撃の痕跡が確認できます。これにより、リュウグウが過去の衝突で破壊され、その破片が再び集まってできたことが裏付けられます。

用語解説
※1

リュウグウ
JAXAの探査機「はやぶさ2」が探査し、2020年に試料を地球へ持ち帰ったC型小惑星。直径約900mの「がれきの山(ラブルパイル)」型天体と考えられている。

※2

CIコンドライト
太陽に最も近い化学組成をもつとされる始原的な隕石のグループ。水による強い変質(=水質変成)を受けており、有機物や水に富む鉱物が含まれる。

※3

C型小惑星
太陽系内の小惑星の約8割を占める暗い天体。水を含む鉱物や炭素質の物質が多く、地球に落下した炭素質隕石と類似した組成を持つ。

※4

ギガパスカル(GPa)
1GPaは約1万気圧に相当する。

詳細は 広島大学のサイトをご覧ください。

国立研究開発法人海洋研究開発機構
海洋科学技術戦略部 報道室