東京大学、理化学研究所、海洋研究開発機構、変動海洋エコシステム高等研究所による研究グループは、生産開発科学研究所、東京農業大学と共同で微生物型ロドプシン※1 の新たな光利用効率化システムを報告しました。
近年、植物などの光合成生物とは異なり、ロドプシンという光受容タンパク質を用いて光エネルギーを化学エネルギーに変換する微生物が数多く存在することが分かってきました。本研究グループは、海洋に最も多く存在し、光によって水素イオン(H+)を輸送するロドプシン(プロテオロドプシン)が、光の利用効率を高める2つの仕組み―「集光アンテナ」と「光サイクル※2 加速色素」―を備えることを発見しました。また、塩化物イオンを輸送するロドプシンにも集光アンテナが存在することを突き止め、これらのロドプシン-カロテノイド複合体の立体構造を初めて明らかにしました。以上のことから、ロドプシンの光利用効率化システムが細菌の光環境適応を助け、より深層でも光を受容できる可能性を示しました。
図. NM-R1の光サイクルモデル
レチナールが光エネルギーを受容すると、NM-R1(Nonlabens marinus S1-08Tが保有するプロテオロドプシン)は一連の立体構造変化を伴う中間体を経て、基底状態に戻る。この一連の反応過程を光サイクルと呼び、この1回のサイクルの間にH+を1つ輸送する。NM-R1と結合したカロテノイド(Car)は光サイクルを1回転するのに要する時間を85 msから32 msに短縮することで、単位時間あたりのH+輸送量を増大させる。
微生物型ロドプシン
7回膜貫通構造をもつ光受容タンパク質であり、発色団としてレチナールと共有結合している。ロドプシン遺伝子は細菌、古細菌、一部の真核微生物、さらに巨大ウイルスにも広く分布し、イオン輸送や光センシングなど多様な機能を担う。
光サイクル
ロドプシンが光を受容すると、レチナールの異性化を起点として一連の中間体を経由しながら基底状態へと戻る。この一連の反応を光サイクルと呼び、サイクル一回転毎にイオンを一つ輸送する。
詳細は 東京大学のサイトをご覧ください。