1. TOP
  2. プレスリリース
  3. 小惑星リュウグウの岩石は氷を十億年も持っていた! ――地球の材料天体に従来見積もりの2〜3倍の水があった可能性――

小惑星リュウグウの岩石は氷を十億年も持っていた! ――地球の材料天体に従来見積もりの2〜3倍の水があった可能性――

2025.09.11
東京大学
海洋研究開発機構
量子科学技術研究開発機構
東京科学大学
国立極地研究所
北海道大学

東京大学、海洋研究開発機構、量子科学技術研究開発機構、東京科学大学、国立極地研究所、北海道大学による研究グループは、炭素質小惑星が10億年以上も氷を保持していた証拠を、リュウグウ岩石試料に発見しました。

炭素質小惑星は、45.6億年前に太陽系の外側で氷、有機物、鉱物の塵が集積することで誕生し、その一部が後に太陽系の内側に移動して地球に水や炭素などの揮発性物質をもたらしたと考えられています。これまでの研究により、炭素質小惑星の誕生から数百万年の間に、氷が溶けてできた水が岩石と反応し、含水鉱物※1 ができたことが知られていました(図上)。しかし、その後の太陽系史における炭素質小惑星の水の挙動は未解明でした。

本研究では、はやぶさ2がリュウグウから持ち帰った岩石試料(図下)のルテチウム-ハフニウム同位体※2 を分析することにより、炭素質小惑星の誕生から10億年以上後に、氷が溶けて水が流れ出たことを明らかにしました(図中)。この水の流出は、リュウグウの母体となった炭素質小惑星に別の天体が衝突したことで引き起こされたと考えられます。

本研究の結果は、地球に集積した炭素質小惑星が、水を含水鉱物だけでなく氷として保有していたこと、そしてこの水の総量はこれまでの推定量の2〜3倍であったことを示唆します。

図1

(上)リュウグウ母天体は、今から45.6億年前に太陽系外側で誕生し、その後の数百万年間に水と岩石が反応し含水鉱物がつくられた。(中)それから10億年以上後に、天体衝突によって母天体に含まれていた氷が溶け、流体活動が起きた。(下)天体衝突で破壊された母天体のさまざまな深さに由来する破片が一部集まってリュウグウができ、その表層付近の岩石がはやぶさ2により採取された。(©Iizuka et al., 2025 Natureを一部改変)

用語解説
※1

含水鉱物
結晶構造中に水酸基OHやH2Oを含む鉱物。水と岩石が反応することにより、形成される。リュウグウ岩石は、水酸基をもつ含水鉱物から主に構成されている。

※2

ルテチウム-ハフニウム同位体
多くの元素には、陽子の数は同じものの中性子の数が異なるため、質量が異なる同位体が存在する。ルテチウムには、2つの同位体175Luと176Luが存在する。176Luは不安定なために、ある一定の確率で放射線を出しながら壊変する放射性同位体であるのに対し、175Luは放射壊変せずに存在し続ける安定同位体である。ハフニウムには、5つの安定同位体174Hf、176Hf、177Hf、178Hf、179Hf、180Hfが存在し、176Hfは176Luの放射壊変で生成される。

詳細は 東京大学のサイトをご覧ください。

国立研究開発法人海洋研究開発機構
海洋科学技術戦略部 報道室