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地球深部探査船「ちきゅう」による国際海洋科学掘削計画(IODP³)
第502E/502/503次研究航海の実施について

2025.10.20
国立研究開発法人海洋研究開発機構

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 大和 裕幸)は、国際海洋科学掘削計画(IODP³: International Ocean Drilling Programme)※1 の一環として、地球深部探査船「ちきゅう」※2 による以下の3つの航海を実施します。

  • ・第502E次研究航海「日本海溝JTRACK観測孔への再訪:長期温度モニタリングシステムの回収と再設置(Extended Monitoring and Resurveying of Japan Trench Borehole Observatories)」
    期間: 2025年10月18日~2025年10月30日
    海域: 宮城県沖 約200km(別紙 図1参照)
    概要: 別紙1参照
  • ・第502次研究航海「東北沖プチスポット探査(Impact of Petit-Spot Magmatism on Subduction Zone Seimicity and Global Geochemical Cycles(T-Petit))」 期間: 2025年10月31日~2025年11月24日
    海域: 宮城県沖 約300km(別紙 図3参照
    概要: 別紙2参照
  • ・第503次研究航海「日本海溝プレート境界浅部すべりの履歴(Hadal Trench Tsunamigenic Slip History)」
    期間: 2025年11月25日~2025年12月12日
    海域: 宮城県沖 約200km(別紙 図5参照
    概要: 別紙3参照
用語解説
※1

国際海洋科学掘削計画(IODP³: International Ocean Drilling Programme)
国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)を引き継いで、2025年4月より開始された日欧が主導する海洋科学掘削に関する多国間科学研究共同プログラム。現在、掘削プラットフォームを提供する海洋研究開発機構とECORDがコアメンバーとなり、掘削船を保有しない豪州・ニュージーランド国際科学掘削コンソーシアム(ANZIC: Australian and New Zealand International Scientific Drilling Consortium)がアソシエートメンバーとして参加している。本プログラムは海洋科学掘削2050サイエンスフレームワーク(2050 Science Framework: Exploring Earth by Scientific Ocean Drilling)に基づいて実施され、日欧がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行っている。

※2

地球深部探査船「ちきゅう」
IODP³の科学掘削に日本が提供する掘削船

ちきゅう©JAMSTEC/IODP³

別紙1

地球深部探査船「ちきゅう」による国際海洋科学掘削計画(IODP³)第502E次研究航海
「日本海溝JTRACK観測孔への再訪:長期温度モニタリングシステムの回収と再設置」の実施について

1
科学的背景・目的
2024年に実施したIODP第405次研究航海「日本海溝巨大地震・津波発生過程の時空間変化の追跡(JTRACK)」では、日本海溝の断層帯周辺の掘削孔(Hole C0019D、C0019Q)に長期孔内温度計測装置を設置することに成功しました。IODP³第502E次航海では、二つの掘削孔から装置を回収、JTRACK航海後から記録され続けている温度データを回収した後、再び装置を同じ孔内に設置します。
得られた温度計測データの解析や孔内調査により、断層帯周辺のより詳細な水理構造を時間変化とともに捉え、また、それらと地震活動との関係を明らかにすることを目指します。
2
航海の概要
IODP³第502E次航海では、東北地方太平洋沖地震が発生した日本海溝において、地球深部探査船「ちきゅう」を用い、二つの掘削孔で長期孔内温度計測装置(以下、「装置」という)の回収と 再設置を行います。
2012年のIODP第343次研究航海(JFAST)の掘削孔C0019D及びJTRACKの掘削孔C0019Qに設置した装置を船上に回収します。船上に回収されたセンサーからデータをダウンロードし、バッテリーの交換等の整備を行います。その後、C0019D及びC0019Qの2つの掘削孔に装置を設置します。
3
IODP³第502E次航海研究チーム
共同首席研究者
Patrick Fulton(Cornell University アメリカ)
Jamie Kirkpatrick(University of Nevada, Reno アメリカ)※非乗船
Nur Schuba(The University of Texas at Austin アメリカ)
このほか、サイエンスコミュニケーター※3 が3名(うち日本からの参加者1名)が乗船します。
この航海は上記共同首席研究者とエンジニア及びラボテクニシャンによる少人数のチームが構成されます。
4
特設ウェブサイト
本航海に関する特設ウェブサイトを開設しています。本ウェブサイトでは、研究航海の概要や参加研究者の紹介を行うとともに、航海の進捗を随時更新する予定です。
https:/www.jamstec.go.jp/chikyu/j/exp405/
図1

図1 調査海域図 掘削孔C0019D及びC0019Qで長期孔内温度計速装置の回収・設置を行います。

図2

図2 掘削計画

1
長期孔内温度計測システムの回収(C0019D)
掘削孔C0019Dのウェルヘッドに掘削パイプを接続し、パイプ内に回収ツールを通して、JTRACKで設置した長期孔内温度計測システムを回収します。
2
長期孔内温度計測システムの回収(C0019Q)
掘削孔C0019Qのウェルヘッドに掘削パイプを接続し、パイプ内に回収ツールを通して、JTRACKで設置した長期孔内温度計測システムを回収します。
3
長期孔内温度計測システムの設置(C0019D)
掘削孔C0019Dのウェルヘッドに掘削パイプを接続して、孔内に長期孔内温度計測システムを設置します。
4
長期孔内温度計測システムの設置(C0019Q)
掘削孔C0019Qのウェルヘッドに掘削パイプを接続して、孔内に長期孔内温度計測システムを設置します。
用語解説
※3

サイエンスコミュニケーター
地球科学に関心を持ち、研究航海に乗船し、航海に関連したアウトリーチ活動を専門に行うスペシャリスト。アーティスト、ビデオグラファー、教師など、様々なバックグラウンドを持ち、航海のサイエンスチームと共に活動し、研究航海の多様な情報発信に貢献する。IODP研究航海においては、JOIDES Resolution号に毎航海1~2名のアウトリーチオフィサーが乗船しており、IODP³においても、Science Communicatorとしてその枠組みを継承する。

以上

別紙2

地球深部探査船「ちきゅう」による国際海洋科学掘削計画(IODP³)第502次研究航海
「東北沖プチスポット探査」の実施について

1
科学的背景・目的
IODP³第502次研究航海では、日本海溝に沈み込む太平洋プレートの外縁部を調査します。この調査地域では、過去の調査から海底下の堆積層が非常に薄いことが明らかになっており、その原因として「プチスポット」と呼ばれる火山活動の影響が指摘されています。プチスポットとは海溝の海側に特徴的に分布する小規模な火山群で、海洋プレートが沈み込む直前に折れ曲がる際にマグマが噴出すると考えられています。本航海では、孔内検層とコア試料採取を行うことで、水深約5,400mの海底の下に存在が推定されているプチスポット火山活動が、これまで考えられていたよりも広範囲に及んでいたかどうかを検証します。さらに、プチスポットが沈み込み帯における地震発生や地球規模の物質循環に果たす役割を明らかにすることを目指します。
2
航海の概要
IODP³第502次航海では、日本海溝に沈み込む太平洋プレート側において、孔内検層およびコア試料採取のための掘削を行います。
3
IODP³第502次研究航海研究チーム
共同首席研究者
山口 飛鳥(東京大学 大気海洋研究所 日本)
北島 弘子(Texas A&M University アメリカ)
このほか、IODP³参加国から選考された乗船研究者24名(うち日本からの参加者13名)、非乗船研究者9名(うち日本からの参加者2名)、サイエンスコミュニケーター4名を含め、合計39名が参加します。
4
特設ウェブサイト
本研究航海に関する特設ウェブサイトを開設します。本ウェブサイトでは、研究航海の概要や参加研究者の紹介を行うとともに、研究航海の進捗を随時更新する予定です。
図3

図3 調査海域図 TPC-01Aにおいて、孔内検層およびコア試料の採取を行います。

図4

図4 掘削計画 掘削点TPC-01Aにおいて3孔を掘削し、以下の項目を実施する。

1.
孔内検層
1) データ取得に必要な海底面下深度まで掘削します。
2) フリーフォールファンネルを設置し、掘削編成を揚管します。
3) 掘削編成を孔内検層の編成に変更し、再入孔します。
4) 孔内に検層ツールを下ろし、海底下深度160 mから孔内検層を行います。
5) 検層ツールを変更し、2回目の孔内検層を行います。
2.
浅部堆積層のコア試料の採取
水圧式ピストンコア(HPCS: Hydraulic Piston Coring System)を用いて、浅部堆積物のコアを採取します。
3.
岩石コア試料の採取
小径ロータリーコアバレル(Small Diameter Rotary Core Barrel)を用いて、火山岩に至る目標深度160 mまでのコアを採取します。

以上

別紙3

地球深部探査船「ちきゅう」による国際海洋科学掘削計画(IODP³)第503次研究航海
「日本海溝プレート境界浅部すべりの履歴」の実施について

1
科学的背景・目的
IODP³第503次研究航海では、日本海溝中央部に堆積する海溝充填堆積物の全層序からコア試料を採取します。得られたコア試料を用いて、プレート境界浅部すべりや巨大地震にともなう変動で生じるイベント堆積物の年代をさまざまな手法で特定し、その発生間隔など過去の歴史を明らかにすること、堆積物中に含まれる間隙水を分析してその起源を明らかにし、流体の存在による地震への寄与あるいは地震による流体への影響を評価すること、また地震に伴って海溝へと運ばれる堆積物が地下生命圏におよぼす影響や物質循環との関係を探ることを目標に研究を行います。
2
航海の概要
IODP³第503次航海では、日本海溝中央部において表層から海底下160 mまで連続的にコア試料を採取します。
3
IODP³第503次研究航海研究チーム
共同首席研究者
Michael Strasser(University of Innsbruck オーストリア)
池原 研(産業技術総合研究所 日本)
このほか、IODP³参加国から選考された乗船研究者25名および非乗船研究者3名(うち日本からの参加者13名)、サイエンスコミュニケーター4名(うち日本からの参加者1名)を含め、合計34名が参加します。
4
特設ウェブサイト
本研究航海に関する特設ウェブサイトを開設します。本ウェブサイトでは、研究航海の概要や参加研究者の紹介を行うとともに、研究航海の進捗を随時更新する予定です。
図5

図5 調査海域図 JTC-01Aにおいて、コア試料の採取を行います。

図6

図6 掘削計画

コア試料の採取
掘削点JTC-01Aにおいて、水圧式ピストンコア(HPCS:Hydraulic Piston Coring System)を用いて、海底下160mまでのコアを2孔で採取します。

以上

お問い合わせ先

国立研究開発法人海洋研究開発機構
(IODP³及び本航海について)
 研究プラットフォーム運用部門 地球深部探査船運用部
(報道担当)
 企画部門 海洋科学技術戦略部報道室