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地球深部探査船「ちきゅう」による国際海洋科学掘削計画(IODP³)第502次研究航海「東北沖プチスポット探査」の終了について

2025.11.25
国立研究開発法人海洋研究開発機構

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 大和 裕幸)は、地球深部探査船「ちきゅう」※1 による国際海洋科学掘削計画(IODP³: International Ocean Drilling Programme)※2 の航海として実施していた、IODP³第502次研究航海「東北沖プチスポット探査(T-Petit : Impact of Petit-Spot Magmatism on Subduction Zone Seismicity and Global Geochemical Cycles)」について、本研究航海の目的を達成し、予定の作業を全て完了しましたのでお知らせします。

1.
実施内容
 本研究航海では、日本海溝に沈み込む太平洋プレート側(図1)において、地球深部探査船「ちきゅう」を用い、孔内検層およびコア試料採取のための掘削を行うため(図2)、2025年10月30日に開始いたしました(2025年10月20日既報)。

 本航海で実施した孔内検層は、海底下浅部の硬岩層での検層を確実に実施するため、従前とは異なる手法を用いました(図3)。この手法は、陸上掘削では実績がある手法ですが、掘削船やセミサブリグのような浮体式リグでは世界でも初めての実施事例でした。そのため、事前に様々な準備を実施し、慎重に作業を進め、無事に目的の地質情報のデータを取得しました。コア試料の採取では、掘削孔C0027Dにおいて海底面下62mまでの浅部堆積層のコア試料と62-67.5mまでの火成岩層のコア試料を採取し、掘削孔C0027Eでは海底面下59-106.5m まで、掘削孔C0027Fでは海底面下56-63mまでのコア試料をそれぞれ採取しました。その後、「ちきゅう」は11月23日に宮城県仙台港(高松第二埠頭)に入港し、本研究航海を完了いたしました。
2.
結果概要及び今後の展望
 本研究航海では、日本海溝に沈み込む太平洋プレートの外縁部において、孔内検層による地質情報データの取得及びコア試料採取を実施しました。得られたデータ及び試料により、水深約5,400mの海底の下に存在が推定されているプチスポット火山活動が、これまで考えられていたよりも広範囲に及んでいたかどうかを検証し、さらに、プチスポットが沈み込み帯における地震発生や地球規模の物質循環に果たす役割を明らかにすることが期待されます。
3.
特設ウェブサイト
 本航海に関する特設ウェブサイトを開設しています。本ウェブサイトでは、研究航海の概要や参加研究者の紹介を行うとともに、航海の進捗を随時更新しています。
https://www.jamstec.go.jp/chikyu/j/exp502/
用語解説
※1

地球深部探査船「ちきゅう」
IODP³の科学掘削に日本が提供する掘削船

ちきゅう©JAMSTEC/IODP³

※2

国際海洋科学掘削計画(IODP³: International Ocean Drilling Programme)
国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)を引き継いで、2025年4月より開始された日欧が主導する海洋科学掘削に関する多国間科学研究共同プログラム。現在、掘削プラットフォームを提供する海洋研究開発機構と欧州海洋研究掘削コンソーシアム(ECORD:European Consortium for Ocean Research Drilling)がコアメンバーとなり、掘削船を保有しない豪州・ニュージーランド国際科学掘削コンソーシアム(ANZIC: Australian and New Zealand International Scientific Drilling Consortium)がアソシエートメンバーとして参加している。本プログラムは海洋科学掘削2050サイエンスフレームワーク(2050 Science Framework: Exploring Earth by Scientific Ocean Drilling)に基づいて実施され、日欧がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行っている。

図1

図1 調査海域図

図2

図2 掘削計画

掘削点TPC-01Aにおいて4孔を掘削し、以下の項目を実施しました。
1.
孔内検層
掘削孔C0027Cにおいて、水深5,477.5m/海底下98.0mまで掘削し、測定ツールを変えて、3回の孔内検層を実施しました。
2.
浅部堆積層のコア試料の採取
掘削孔C0027Dにおいて、水圧式ピストンコア(HPCS: Hydraulic Piston Coring System)/伸縮式コア採取システム(ESCS:Extended Shoe Coring System)を用いて、堆積物を主とする海底面下67.5mまでのコアを採取しました。
3.
岩石コア試料の採取
掘削孔C0027E及び掘削孔C0027Fにおいて、小径ロータリーコアバレル(SD-RCB:Small Diameter Rotary Core Barrel)を用いて、火成岩を主とする海底下106.5mまでのコアを採取しました。
図3

図3 本航海で実施した孔内検層
掘削孔内にビットを目的の深度まで降下後、ロギングを実施する(Tool Run)。
ロギングツールがビット直上にランディングしたのを確認後、ワイヤを切り離し、船上に回収する(Wireline Trip)。その後、ドリルパイプを引き上げながらロギングを実施する(Log up)。測定完了後、ロギング編成を揚収する。本研究航海では、それぞれ異なる測定ツールを用いた3回の孔内検層を実施しました。

図4

写真1 11月4日 掘削孔C0027C掘削時に使用したドリルビット(中央:使用前/右:使用後)及び掘削編成(左:左が使用前、右が使用後)

図5

写真2 11月13日 掘削孔C0027E SD-RCBにより採取された、堆積物と火成岩の境界部を含むコア試料

お問い合わせ先

国立研究開発法人海洋研究開発機構
(IODP³及び本航海について)
 研究プラットフォーム運用部門 地球深部探査船運用部
(報道担当)
 海洋科学技術戦略部 報道室