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小惑星べヌーの砂に生命を構成する「糖」が存在 −アミノ酸、核酸塩基に並ぶ主要な生命材料分子を検出−

2025.12.03
東北大学
海洋研究開発機構
北海道大学
九州大学
帝京大学
株式会社堀場アドバンスドテクノ
株式会社堀場テクノサービス
図1

小惑星ベヌー(Bennu)から多様な糖類の検出と化学進化的意義の概要
Credit: NASA Goddard/OSIRIS-REx/Dan Gallagher

小惑星のカケラである隕石からは、生命の材料分子であるアミノ酸、核酸塩基、糖が検出されています。このことから、隕石によって宇宙から地球にもたらされた分子が、生命の材料として使われたという仮説が提案されています。日米の小惑星サンプルリターン計画「はやぶさ2」と「OSIRIS-REx(オサイリスレックス)※1」では、地球物質の混入がない小惑星試料から、核酸(DNAとRNA)の構成分子である核酸塩基とリン酸、タンパク質の構成分子であるアミノ酸の存在を明らかにし、隕石による生命材料分子の供給を裏付けました。しかし、核酸の材料となる分子群のうち糖だけは見つかっていませんでした。

東北大学、海洋研究開発機構、北海道大学、九州大学、帝京大学、堀場製作所グループらによる研究グループは、アリゾナ大学、ローワン大学、NASAによるOSIRIS-REx チームとともに炭素質小惑星ベヌー※2 から持ち帰った小惑星の砂から、核酸のうちRNAを構成するリボース※3 と、生命代謝の主要なエネルギー源であるグルコースを含む6種類の糖を検出しました。

この結果は、地球外にRNAを構成する糖が存在し、地球に降り注いでいたことの決定的な証拠です。また、宇宙におけるグルコースの存在を示した初の証拠となり、宇宙にはこれまで考えられていた以上に生命活動を支える分子が存在することが明らかになりました。

本研究成果は、日本時間2025年12月2日(火)公開のNature Geoscience誌に掲載されました。

論文情報
著者
古川 善博1*、 角南 沙己1、 高野 淑識2,3、 古賀 俊貴2、 平川 祐太2、 大場 康弘4、 奈良岡 浩5、 三枝 大輔6,7、 吉川 剛明8、 田中 悟9、 ダニエル・P・グラビン10、 ジェイソン・P・ドワーキン10、 ハロルド・C・コーノリーJr.11,12,13、 ダンテ・S・ローレッタ11
所属
  1. 東北大学大学院理学研究科
  2. 海洋研究開発機構 生物地球化学センター(JAMSTEC/BGC)
  3. 慶應義塾大学 先端生命科学研究所
  4. 北海道大学 低温科学研究所
  5. 九州大学大学院理学研究院
  6. 東北大学メディカル・メガバンク機構
  7. 帝京大学薬学部
  8. 堀場アドバンスドテクノ
  9. 堀場テクノサービス
  10. アメリカ航空宇宙局/ゴダード宇宙飛行センター(NASA/GSFC)
  11. アリゾナ大学 月惑星研究所
  12. ローワン大学 地質学研究系
  13. アメリカ自然史博物館 地球惑星科学系
図1

図 OSIRIS-RExがサンプルを採取した小惑星べヌー
Credit: NASA/Goddard/University of Arizona
https://www.flickr.com/photos/gsfc/53141331019/in/album-72177720310727975

用語解説
※1

OSIRIS-REx(Origins, Spectral Interpretation, Resource Identification, Security, Regolith Explorer)(オサイリスレックス)
アメリカ航空宇宙局(NASA)が主導する小惑星サンプルリターン計画。ベヌー(Bennu)から121.6gの岩石や砂を持ち帰ることに成功した。
OSIRIS-REx計画の情報について
https://science.nasa.gov/mission/osiris-rex/

※2

小惑星べヌー (Bennu)
OSIRIS-REx探査機がサンプルを採取し地球に帰還した直径約500メートルの小惑星。

※3

リボース
核酸のうちRNAを構成する分子の一つであり、糖の一種。宇宙物質からは少数の隕石で見つかっている。

詳細は、東北大学のサイトおよび NASAのサイトをご覧ください。

本研究の一部は、海洋研究開発機構と堀場製作所グループによる共同研究(極微少量の水質計測に関する技術開発)における技術立証の一環として行われました。

国立研究開発法人海洋研究開発機構
海洋科学技術戦略部 報道室