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地球深部探査船「ちきゅう」による国際海洋科学掘削計画(IODP³)第503次研究航海「日本海溝プレート境界浅部すべりの履歴」の終了について

2025.12.12
国立研究開発法人海洋研究開発機構

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 大和 裕幸)は、地球深部探査船「ちきゅう」※1 による国際海洋科学掘削計画(IODP³: International Ocean Drilling Programme)※2 の航海として実施していた、IODP³第503次研究航海「日本海溝プレート境界浅部すべりの履歴(Hadal Trench Tsunamigenic Slip History)」について、本研究航海の目的を達成し、予定の作業を全て完了しましたのでお知らせします。

1.
実施内容
 本研究航海は、日本海溝中央部(図1)において、地球深部探査船「ちきゅう」を用い、海溝充填堆積物の全層序からコア試料を採取するため(図2)、2025年11月24日に開始いたしました(2025年10月20日既報)。

 本航海では、水圧式ピストンコア(HPCS : Hydraulic Piston Coring System)によるコア採取を掘削孔C0028A、B、C、D、Eの5孔で行いました。水深が7,600mを超える海域での掘削となり、本船が搭載している水中カメラシステム(UWTV:Under Water TV)による海底面の確認が出来ないため、HPCSにより海底面の正確な水深を確認した後、掘削作業を開始しました。なお、掘削孔C0028Eにおける水深7,608.5mでの掘削は、科学掘削史上、ドリルパイプで掘削した最も深い水深での作業となり、1978年に米国の科学掘削船「グローマーチャレンジャー号」がマリアナ海溝で記録した水深7,034mを超える記録となります。コア試料は、掘削孔C0028Aでは海底面下9.5m、掘削孔C0028Bでは海底面下178m、掘削孔C0028Cでは海底面下157.5m、掘削孔C0028Dでは海底面下77.0—86.5m、掘削孔C0028Eでは海底面下7.0mまでそれぞれ採取しました。その後、「ちきゅう」は12月10日に静岡県清水港(興津第二埠頭)に入港し、12月12日をもって本研究航海を完了いたしました。
2.
結果概要及び今後の展望
 本研究航海では、日本海溝中央部に堆積する海溝充填堆積物の全層序からのコア試料を採取しました。得られたコア試料を用いて、プレート境界浅部すべりや巨大地震にともなう変動で生じるイベント堆積物の年代をさまざまな手法で特定し、その発生間隔など過去の歴史を明らかにすること、堆積物中に含まれる間隙水を分析してその起源を明らかにし、流体の存在による地震への寄与あるいは地震による流体への影響を評価すること、また地震に伴って海溝へと運ばれる堆積物が地下生命圏におよぼす影響や物質循環との関係を探ることを目標に研究が行われます。
3.
特設ウェブサイト
 本航海に関する特設ウェブサイトを開設しています。本ウェブサイトでは、研究航海の概要や参加研究者の紹介を行うとともに、航海の進捗を随時更新しています。
https://www.jamstec.go.jp/chikyu/j/exp503/
用語解説
※1

地球深部探査船「ちきゅう」
IODP³の科学掘削に日本が提供する掘削船

ちきゅう©JAMSTEC/IODP³

※2

国際海洋科学掘削計画(IODP³: International Ocean Drilling Programme)
国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)を引き継いで、2025年4月より開始された日欧が主導する海洋科学掘削に関する多国間科学研究共同プログラム。現在、掘削プラットフォームを提供する海洋研究開発機構と欧州海洋研究掘削コンソーシアム(ECORD:European Consortium for Ocean Research Drilling)がコアメンバーとなり、掘削船を保有しない豪州・ニュージーランド国際科学掘削コンソーシアム(ANZIC: Australian and New Zealand International Scientific Drilling Consortium)がアソシエートメンバーとして参加している。本プログラムは海洋科学掘削2050サイエンスフレームワーク(2050 Science Framework: Exploring Earth by Scientific Ocean Drilling)に基づいて実施され、日欧がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行っている。

図1

図1 調査海域図

図2

図2 掘削計画
掘削点JTC-01Aにおいて、HPCSを用いて以下の通り5孔を掘削し、試料を採取しました。
C0028A:水深7,608m/海底面下9.5m
C0028B:水深7,608m/海底面下178m
C0028C:水深7,607m/海底面下157.5m
C0028D:水深7,607m/海底面下86.5m
C0028E:水深7,608.5m/海底面下7.0m

写真1

写真1:2025年11月27日 コア試料から間隙水を採取している様子

写真2

写真2:2025年12月4日 乗船研究者によるサンプル採取の希望が示されたコア試料

お問い合わせ先

国立研究開発法人海洋研究開発機構
(IODP³及び本航海について)
 研究プラットフォーム運用部門 地球深部探査船運用部
(報道担当)
 海洋科学技術戦略部 報道室